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タガメ

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第八章

「やってみせる」
「それも人間なんだよな、諦めたらな」
 ある漫画の言葉もだ、課長は出した。
「もうそれで、だからな」
「終わりですね」
「そこでな、だからな」
「はい、僕も諦めないです」
「そう思ったらな」
「どうしていくか」
「もっと考えるんだ」
 これが課長の今の言葉だった。
「よりな」
「そうします」
 夏樹も答えた、そして実際にだった。
 彼はタガメを市に戻すにはどうすればいいか考え続けた、やがて彼は当時の市長に誘われて市会議員に立候補をした、彼の環境や産業を考えた市政への考えは心ある市民達に支持されて当選した。そうして市会議員になってもだ。
 彼はタガメのことを考えていった、そして友人達に言うのだった。
「やっぱり全部の川や湖を開発しないで農薬を使わないとか」
「無理だね」
「それは出来ないね」
「どうしても」
「不可能だね」
「理想ではあっても」
 こうだ、自分の家で話した。
「理想と現実はね」
「また違うね」
「理想はあくまで理想」
「現実とはまた違うよ」
「それぞれ違うこともある」
「どうしてもね」
「そう、現実を見ないでだけ理想を推し進めると」
 どうなるか、夏樹はそれもわかっていた。
「必ず破綻するよ」
「往々にしてあることだね」
「市政もそれは同じだね」
「農薬や開発全廃は出来ない」
「そうだね」
「不便にもなるし」
 生活、それがだ。
「産業の停滞や市民生活への悪影響もね」
「出るね」
「ダムにしても必要だしね」
「そうしたことの開発も」
「そして企業の誘致も」
「そう、市民あっての市でね」
 現実もだ、夏樹は話した。
「市民生活に悪影響が出てはね」
「本末転倒だね」
「環境も大事だけれど産業も大事で」
「そこをどう折り合いをつけるか」
「それが問題だね」
「その通りだよ、そしてね」
 ここでだ、彼はまた言った。
「僕は一つの考えを出したんだ」
「タガメについてだね」
「君が子供の頃から言っていた」
「あの虫のことだね」
「うん、あの虫はね」
 タガメ、この虫はというのだ。
「とにかく奇麗な水にしかいないね」
「そして物凄く高価だね」
「それこそ他の虫とは比較にならない位に」
「そうでもあるね」
「だから考えたんだ」
 その商品価値からもというのだ。 
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