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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第4章:日常と非日常
  第112話「撃墜…?」

 
前書き
原作でのなのは撃墜回。
尤も、原作通りな訳がないんですけどね。
 

 




       =アリシアside=





「さーって、我が愛しの妹はどこかなーっと…」

 久しぶりのアースラで、私はフェイトを探す。
 …うん、ホント久しぶりに思える。だって、それだけ椿たちの修行がきつかったし。

「クロノに聞いた限りだと、フェイトだけじゃなくてなのはやヴィータもいるみたいだけど…どこかな?」

 今回アースラにいるのは…まぁ、当然の如く管理局からの要請だ。
 今まではなのはやフェイト、神夜、八神家とかが率先して参加したりして、司や奏、優輝達が手伝う必要がなかったのだ。
 当然私も非戦闘員なので行く必要もなく、だから霊術の修行が頻繁に…。
 …うん、思い出したくない。辛さで言えば弓道の時よりひどいし。

「(……気配は…トレーニングルームにある…か。)よし、行こう」

 霊力でフェイトの気配を探り、トレーニングルームに向かう。
 なのはとヴィータ、神夜の気配もあったから、おそらく模擬戦でもしてるのだろう。





「でりゃぁああああ!」

「ふっ…!」

     ギィイイン!!

「おー、やってるやってる」

 予想通り、準備運動的な感じで軽く模擬戦をやっていた。
 ヴィータが切り込み、フェイトで攪乱、なのはが遠距離から援護と言った所かな。
 わかりやすく確実な陣形ではあるけど…。

「はっ!」

「甘いぞ!」

「フェイトちゃん!」

「(……うん、なんというか、私から見ても“無駄”があるなぁ)」

 椿と散々修行させられたからか、動きに無駄があるように見えてしまう。
 態々名前を呼んでしまっているのももったいないし…念話でいいじゃん。
 いや、注意を逸らすとかでは普通に使えるけどさ。
 他にも、連携のタイミングが合ってなかったり…。

「(やば、椿たちの修行で目が肥えちゃった)」

 そう考えてしまって、思わず顔を覆ってしまう。
 まぁ、状況判断が上手くなるっていうのはありがたいけど…。
 …と、そんな事を思っていたら、流れ弾がこっちに飛んできていた。

「あ、アリシア!?」

「(あ、そういえば本来は模擬戦中は入っちゃいけなかったっけ?)」

 扉に模擬戦中って表示されてたのに、なんで入っちゃったんだろ?
 対処できるからかな?…対処できるからだね。

「シッ…!」

     ザンッ!

 飛んできた魔力弾を、刀に変えたフォーチュンドロップで切り裂く。

「お、お姉ちゃん、大丈夫…!?」

「へーきへーき。勝手に入った私が悪いんだからさ」

 模擬戦は中断され、皆が私の所に集まってくる。

「アリシア!その刀は一体…!?」

「あ、これ?これはね…」

 フォーチュンドロップ…愛称フォーチュンを待機形態に戻す。

「私のデバイス」

「え、でもお姉ちゃん、魔法は…」

「あー、これはね、霊力用のデバイスなの。優輝がポケットマネーはたいて作ってくれたんだよ。最近、ようやく使い慣れてきた感じかな」

 アリサやすずかと違って、私は多種の武器を扱う。
 そのため、フォーチュンも形態変化が多くて把握しづらいんだよね。

「一応ストレージデバイスとして登録してあるけど、管理局からしたらただのガラクタと化すだろうね。ま、仕方ないけど」

「あいつが作った…だと?」

「…そーいや、デバイスマイスターの資格持ってたな。あいつ」

 驚く神夜と、そういえばと思い出すヴィータ。
 最近、はやて達はリインを通じて優輝の事を少しは理解するようになったんだっけ?

「そういう事。椿の見立てだと、その内なのは達に追いつくよ?」

「お姉ちゃんが…?」

「ふふふ、のんびりしてると、足元掬っちゃうぞ?」

 冗談めかしてフェイトにそう言ってみる。
 …って、何嬉しそうにしてるのフェイト?え、もしかして戦うの楽しみにしてる?
 …うーん、シグナムの戦闘狂が移っちゃったのかな?よく模擬戦してたし。

「…って、違う違う。ただ雑談しに来たんじゃなかった」

「えっ?じゃあ、どうしてここに…」

「まぁ、ここではなんだし、一度場所を変えようよ。着替える?」

「一応…」

「じゃ、食堂で待ってるからね」

 昼も近いしちょうどいいだろう。
 それにしても、優輝関連の話を出すと、神夜が何か言い出しかねないんだけど…。







「おーい、こっちだよー」

 私を探すのに手間取っていたようなので、声を出して位置を知らせる。

「それで、どうして俺達に?」

「どちらかと言うと、なのはとフェイトになんだけどね」

 むしろ、神夜は邪魔かなぁ…。優輝の事を話に出したら噛みついてきそうだし。

「私たちに…?」

「渡したいものがあってね」

 取り出したのは、先日ついに完成した私お手製の御守り。
 ちゃんとフェイトの分もある。

「これって…御守り?」

「椿にしっかり教えてもらったんだよ。効果もお墨付きだよっ!」

「手作りなんだ…」

 見た目はよく神社とかにある御守り。書いてある文字は“命護”とシンプル。
 これは文字そのものに効果を込めてあるので、読みは私も知らなかったりする。
 ちなみに、効果は文字の意味そのままで、“命を護る”だ。

「…えっと、俺には…?」

「あー、悪いけどなのはとフェイト、それとママやリニス、アルフの分しか作ってないんだよね。椿曰く、これ以上量産したら効果が弱くなるって」

 なのはのを作って、フェイトやママたちのを作るうちに、作業っぽくなったらしい。
 だから、椿に効果がなくなるからとこれ以上同じ御守りを作るのは禁止された。

「発端はね、なのはだよ」

「え、私…?」

「なのは、この頃無茶してるというか、あんまりちゃんと休んでないでしょ?管理局からの依頼をほとんど断る事もなくこなしてる…。クロノや皆にも言われた通り、働きすぎなんだよ」

「そ、そんな事ないよ」

 手をパタパタと振って否定するなのはだけど…皆、同じ事を思ってるんだよ。

「いーや、あたしもアリシアと同じ意見だ。ちっとは休め」

「…なのはは、言っても聞かないと思ってね。いつか倒れるか、怪我をするだろうと懸念して、身を護るための御守りを作ったんだよ」

「うっ……」

 ヴィータから咎められ、縮こまるなのは。

「いい?これは“保険”でしかないの。この御守りが役に立つ時が来ない方が、断然いい。…だから、絶対に無茶はしないで…ううん、ちゃんと体を休めて」

「わ、わかったよ…」

「他の皆も!無茶をしないで。それと、なのはに無茶をさせないで。いい?」

 椿や優輝にペースや体の調子を管理されてる私と違い、なのははホントに無茶ばかり。
 自分の意志を貫き通すのは、長所だけど短所でもあるのだから。

「じゃあ、ママたちにも渡してくるね。ごちそうさま」

 昼食を食べ終わり、私は席を立つ。
 元々御守りを渡すだけだったから、あまり話す事はなかったんだよね。







   ―――この時、私は考えてすらいなかった。

   ―――まさか、こんなにも早く、御守りが使われる事になるなんて。









       =out side=





「なのはっ!!」

 病室の一つに、アリシアを含めた複数人が駆けこむ。
 そこには、まるで死んだように眠るなのはの姿があった。

「(迂闊…!まさか、御守りを渡したその日にこうなるなんて…!)」

 まさに間一髪。アリシアが御守りを渡し、その後に向かった任務でなのははこうなった。

「……それほど深い傷はありません。後遺症が残る可能性もないです。…ただ、疲労が溜まっていたようで、すぐには目を覚ましません」

「…命の危険は……」

「ありません。傷が残る事もない程度です」

 医師の答えに、駆け付けた全員が一時的に安堵する。

「…すまねぇ…あたしのせいだ…」

「…どういう、事?」

 申し訳なさそうに、最初から病室にいたヴィータが呟く。
 そんなヴィータに、アリシアはどういう事かと聞き返す。

「あたしが、ちゃんとなのはの事を見ていれば…」

「いや、俺もついて行っていながら、この醜態だ…」

「神夜は悪くねぇ!」

 埒が明かない。そう思ったアリシアは一度二人の言いあいを止め、もう一度問う。

「……何があったの?」

「…レイジングハートの記録を見た方が早い。場所を変えよう」

 そういって、ヴィータはベッドの近くにあるテーブルの上に置いてあったレイジングハートを手に取り、全員で別の部屋に移動してから記録を再生させる。

「これは…」

「あたし達が今回行った次元世界だ」

 映し出されたのは、雪が降るとある次元世界。

【なのは、大丈夫か?】

【平気だよ。だから早く終わらせよう】

 映像と共に聞こえてくる神夜となのはの声。
 すぐ近くにヴィータも映っており、三人が共に行動しているのは見て取れた。

【見た所、怪しいものも見当たらねぇ。ここは手分けした方が早く終わりそうだな】

【じゃあ、私はこっちを見てくるね】

【俺はこっちだな】

 だが、そこで三人に別れる。
 そこからはヴィータも神夜もいなくなり、なのはが一人で行動していた。
 ヴィータが少し映像を早送りし、次の場面に移る。

【マスター!】

【っ!】

 レイジングハートの声が響き、なのはが反応する。
 しかし、その反応が普段よりも遅れていた事が、誰にも見て取れた。

【ぁあっ!?】

 カプセルのような、そんな形の機械に襲われるなのは。
 必死に応戦するも、反応の鈍った状態なため、徐々に追い詰められる。

「…なんだこいつは…」

「分からねぇ。あたし達の所にも来てやがった」

 正体不明の機械にシグナムが尋ねるも、ヴィータ達もわからなかった。
 否、神夜だけは知っていたが、“原作知識”なため言えなかった。

【し、しまっ…!?】

 映像では、雪に足を取られてしまったなのはが、避けきれずに攻撃を喰らっていた。
 幸い、そこまで大きなダメージではなかったが、大きく吹き飛ばされてしまった。

【っ、く、ぅ……】

 だが、溜まりに溜まった疲労のため、身動きが取れなくなる。
 咄嗟に、砲撃魔法を放つが…。

【っ!?魔法が…!?】

 機械を一機撃破した。だが、明らかに砲撃魔法の威力が減らされていた。
 本来なら一掃できたはずが、出来なかったのだ。

【くっ…!】

 その後、しばらく戦闘が続き、危なげながらも機械を撃破していく。
 後少しで全滅させれる。そこまで行った時…。

【えっ……!?】

 突如現れた、先程までとは違う機械に、背後から刺される。
 本来なら、バリアジャケットも貫通しうる攻撃だったが…。

「御守りの効果...!」

 アリシアの御守りのおかげで、その攻撃は弾かれた。
 しかし、まだ安心はできない。敵はまだいるのだから。

【ぁあああああっ!?】

 体勢を崩され、吹き飛ばされ、徐々に傷ついて行くなのは。
 御守りがあっても、致命傷以外は弾かれずに喰らってしまう。

「っ……!」

「なのは……」

 その映像を、アリシアとフェイトは目を逸らしたくなるような気分で見つめる。

【ああああああ――――!!】

 再び迫る、強烈な一撃。御守りで弾く事はできても命の危機を感じる一撃。
 それに、なのはは恐怖し、破れかぶれに攻撃した―――





   ―――()()()()()()()()





「「「「っ!?」」」」

 それは、一瞬の出来事だった。
 なのはの命を奪い取らんとする一撃。それをなのはは紙一重で避け、敵に肉迫。
 ゼロ距離から魔力を叩き込み、破壊した。

【っ――――!!】

 それだけではない。レイジングハートを介さず、なのはは手に魔力を纏わせる。
 そのまま、手刀で薙ぎ払うかのように魔力の刃を放つ。
 砲撃魔法ですら弱めた謎の力場を無視し、その刃は周囲の機械を破壊する。

【っぁ―――!!】

 そして、両の掌に魔力を圧縮し、地面に撃ち込んだ。
 そのまま大爆発を起こし、それに巻き込むことで全ての機械を一掃した。

【なのはー!…なのは!?】

【おい!しっかりしろなのは!!】

 その後、力尽きたように倒れ込むなのはに、ヴィータと神夜が駆け付ける。

「…後は、連絡してここに来た…って訳だ」

「最後のは…」

「命の危機に対する、防衛本能か…?」

 事の顛末は理解したが、アリシアは最後のなのはの動きが気になった。

「(なのはは普段、咄嗟の動きでもあんな動きはしない。レイジングハートで接近戦を仕掛ける事が稀にあっても、素手であんな事…。しかもあの動き、どう見てもなのはの“ソレ”じゃない。もっと別の―――)」

 そこまで考えて、アリシアは頭を振る。

「(今はなのはの安否だ。そう言うのは後から気にする事にしよう)」

 とりあえず、経緯を知り、後は目覚めるのを待つだけ。
 それがわかったアリシアは、ホッと大きな安堵の溜め息を吐いた。









       =優輝side=







「……今のは、どういう事だ」

 僕は、なのはが倒れるまでの映像を見、目の前の男に問う。

「どうも、鉢合わせてしまったようでね。死なない程度には設定していたが…」

「そう言う事じゃない!!」

 僕は今、管理局の任務として違法研究所の捜索を行っていた。
 その過程で見つけたのが、ジェイル・スカリエッティの研究所だった。
 トラップが解除されていたのか、ジェイルは僕を歓迎するように出迎えた。
 そして、見せられたのがなのはが倒れるまでの映像だった。

「…君にしては珍しく動揺してるじゃないか」

「誤魔化さないでくれ。…お前も、感付いているんだろう?」

 僕がそういうと、ジェイルは“やれやれ”と呟いてから、最後の方の場面を映す。
 なのはが敵の機械…ジェイル曰く、ガジェットにやられそうになった場面だ。

「この時、なのはらしからぬ動きをしていた。そして、この力…一見魔力…と言うか、観測結果も魔力を弾き出しているが、“違う”と、そう思えた」

「いやはや、私よりも確信染みた感覚で言うとは。ちなみに、そちらの二人も同意見かね?」

「…正直、曖昧よ」

「なんとなく、普通ではないなぁ…って思うくらいだね」

 今回、僕には椿と葵が同行している。…と言うか、それが普通なんだけど。
 椿と葵も、映像に対して違和感を抱いていたようだ。

「しかし、君らにも分からないのか…。未知の感覚だったから、同じ地球出身の君達ならわかると思ったのだが…」

「実際に見て感じていれば、何か違った意見を出したかもな。……で、用件はそれだけか?確かになのはのあの力は気になるが、お前はそれだけじゃないだろう?」

「ふむ、お見通しなようで。では、ウーノ。用意してくれたまえ」

 すると、ウーノさんが何かの機材を運び込んでくる。
 …とりあえず、なのはのあの力の正体は帰ってから考えよう。今は目の前の事だ。

「私個人からの、依頼をしようと思ってね」

「依頼…だと?」

「私の頭には監視のための爆弾付きチップが埋め込まれているのは、以前にも話しただろう?だが、最高評議会の連中も常に私を見ている訳ではない。…と言うより、そこまでの機能はついていないがね」

 ジェイルはつらつらと僕にそう言ってくる。…つまり、これは…。

「所謂首輪をつけられた犬みたいなものさ。生活を制限されているが、その範囲内では自由に動ける。…だから、その隙を突いて君にこの爆弾を取り除いてもらいたい」

「…僕、手術の経験ないぞ?知識は一応あるけど」

「むしろなぜ知識はあるのかね?」

 知識はあった方が便利だから覚えただけなんだけどな。

「直接的な手術は私が請け負います。そちらは、爆弾の処理を」

「…まぁ、了解したよ」

「報酬は他の違法研究所の情報でどうかね?」

「それでいいよ。お前を死なせるにはもったいないからな」

 頭に埋め込まれている爆弾。それは結局の所機械だ。
 それなら、解析魔法で中身を知り、霊力でその機能だけを壊せば後は楽だ。
 ただ、今回の場合は最高評議会の目を潜り抜けるため、ジェイルの死を偽装しなければいけない。そうするためには…。

「じゃあ、手順としては僕がまず爆弾の機能を壊し、ウーノさんが摘出する。その後は爆弾を爆破させて偽造する。…これいいか?」

「ああ。そちらの手筈も揃っている。他の娘たちにも説明済みだ」

「用意周到な事で」

 準備は粗方できているらしい。

「椿、葵、いいか?」

「…構わないわ。利用されてるだけの人間を、助けるだけだもの」

「こういうの管理局的にやばいけどねー。まぁ、目を瞑るよ」

 二人も今回は見逃すと言った形らしい。
 …じゃあ、始めようか。









       =アリシアside=





「あ、優輝。三人もなのはのお見舞い?」

「ああ。目を覚ましたと聞いてな」

 私は今、なのはが目を覚ましたと聞いて、お見舞いに来ていた。
 ちょっとした用事で出遅れたため、ほとんどの人はもう済ませたらしい。
 けど、優輝達も同じように管理局の任務とかで遅れたらしく、ばったり会った。

「聞いたよー。違法研究所を見つけたのはいいけど、自爆されたって」

「まぁ、それぐらいなら余裕で回避できるけどな。転移魔法は得意だし」

「…普通、自爆って相当きついものだと思うんだけど」

 それを余裕で回避できるって…伊達に経験豊富じゃないね。

「(実際は偽造しただけなんだけどな)」

「え?何か言った?」

「いや、何も?」

 うーん…何か呟いたように聞こえたんだけど…まぁ、いっか。

「優輝もなのはが撃墜された経緯は知ってるんだよね?」

「…一応な。けど、気になる事が残っている」

「…最後のなのはの動き?」

「ああ」

 やっぱり、優輝達も同じ事を思っていたらしい。椿と葵も同じようだ。

「…どう考えてるの?」

「僕の見た所、あれは“魔力ではない魔力”と言うか…。魔力に見せかけた、別領域の力と言うべきか…。とにかく、未知の力だと考えている」

「未知の力…」

 確かに、どこか違和感があった。…というか、なのはらしからぬ動きだったから違和感しかなかったのだけど…。
 あの記録映像を見たほとんどの人は疑問を抱いている。
 結局よくわかってはいないから気にした所で無駄なんだけどね…。

「あ、着いたよ」

「じゃあ、入るか」

 ノックして、なのはがいる病室に入る。
 入ってみると、なのはの他にも神夜がいた。

「アリシアちゃん…来てくれたんだね」

「やっほ、体の調子はどう?」

「だいぶ楽になったけど…まだ動くには早いってお医者さんに言われちゃった」

「そっかぁ…」

 ほとんど過労のようなもので、怪我もそこまで酷くなかったけど、やっぱり何週間かは安静にするべきらしい。当然だよね。

「優輝君、椿ちゃん、葵ちゃんも来てくれたんだ」

「ああ。…やってしまったな」

「あ、あはは……」

 優輝の言葉になのはは苦笑いする。
 しかし、優輝の…いや、優輝達の目は些か冷たさを感じた。

「……“無茶するな”と、何回言われた?」

「え……?」

「貴女は、何度その忠告を聞き入れたのかしら?…いえ、貴女は忠告を聞き入れ、自重したのかしら?」

「えっと…三人共?」

 どこか、責めるような口調で、優輝と椿は言う。
 葵もそれを止めない事から、同じ意見みたいだね。
 …当然か。家族や特別親しい友人とかなら心配するけど、そこまでの関係じゃない(と私は思ってる)優輝達からすれば、忠告を聞き入れなかった自業自得だもんね。
 …尤も、それを聞いて神夜が黙っちゃいないけど。

「お前…!」

「怪我を負った相手に、酷いと思うか?……確かに、襲われて怪我をしたのは心配するべきだろう。実際、なのはがこうなった半分はそれらのせいだ。……けどな、僕らから言わせてもらえば、もう半分は自業自得なんだよ」

「っ……」

 なのはが、息を呑んだ。
 優輝や椿たちの顔は、突き放すような事を言っておきながらも、どこか嫌な事を思い出すように、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

「いいか?よく聞け。確かに、なのはの魔法の才能は凄まじい。実際、管理局でも話題になっているからな。…だからと言って、“自分が必要とされている”などと浮かれるな。そして、再三言うが無茶をするな。……そういう奴から、死ぬんだからな」

「おい!!そこまで言う必要ないだろ!!なのはは怪我しているんだぞ!」

「怪我しているからそこまで言わせたくないのなら、なぜ近くにいたお前は止めなかった?大切な友人、仲間なら、なぜ無茶をしているのを無理矢理にでも止めなかった?」

「っ……」

 口を挟もうとする神夜を、優輝は封殺する。

「ああそうだ。まるで僕らがお見舞いの割には酷い事を言いに来たように思っているだろうから、言わせてもらうとな…。本来ならなのは、お前はもう死んでたぞ?」

「えっ……?」

「アリシアの御守りがなければ死んでいた。なら、それを作らせたのは誰だ?」

「あっ…」

 …本来なら、優輝か椿が私の代わりに御守りを作っていた。
 あの御守りは、優輝達がなのはを心配したからこそ、疑われる事がなさそうな私に作らせたのだ。

「恩着せがましい言い方になったが、僕らだって無茶をしていたお前を心配していた。…でも、お前は言われても突っ走っていただろう?さっき織崎に言った言葉を撤回するようだが、織崎すら止めれなかったのがいい例だ」

「………」

「……いい機会だ。後遺症も残る事がない程、奇跡的に助かったんだ。退院して魔導師として復帰するまでに、自分を見つめ直せ」

「お前…好き勝手言いやがって……!」

「言っておくけど、私と葵も同意見よ。行き過ぎた自覚のない無茶は身を滅ぼす。至極当然の事でしょう?」

「まだ子供ななのはちゃんにはちょっと酷だけど、これが人の生として普通に起こり得る事だって事を、覚えてもらうよ」

 …きっと、過去で同じような…それも、なのはみたいに助からなかった事例があったのだろう。…それほどまでに、三人の言葉は重かった。

「無茶をしていいのは、“死”から逃れる時だけで十分だ。別に無茶するのをやめろとは言わない。なのははまだ子供だ。常日頃から無茶をしていると、今度こそこの程度では済まなくなるぞ」

「……わかっ、た……」

「…最後に、我慢をするな。辛い気持ちがあれば、家族や親しい人にしっかり打ち明けろ。そうすれば、そういった思いはしなくなる。……決して一人で抱え込むな」

 そういって、優輝は背を向ける。
 …あれ?帰っちゃうの?

「…空気を悪くさせたな。見舞いの品は置いておくから、さっさと元気になれよ」

「ちょっ、優輝!?椿と葵まで!?」

「アリシア、悪いけど後は任せたわ」

「フォロー、よろしくねー」

 そのまま三人は退出していった。
 …いや、本当に言うだけ言って出て行っちゃったよ!?
 確かに所々本当に心配していた感じはあったけど、これは……。

「……今の………」

「…なのは?」

「今の、どこかで似たような事を聞いたような…」

 そう思っていたら、なのはの反応が少しおかしかった。

「……あ…!公園の時……!」

「公園?」

「あ…えっと、最後に言われた事、どこかで聞いた気がして…。それで、ちょっと小さかった時の事を思い出したの…」

「小さかった時?それって…」

「えっとね……」

 どういう事かと思って、なのはに聞くと、どうやら以前に士郎さんが大怪我をしたらしく、色々と忙しくなっていた桃子さん達に遠慮して、なのはは一人で公園にいたらしい。
 その時、当時のなのはぐらいの子供を連れた女性が、さっきの優輝と似たフレーズの事を言って、自分を家まで送ってくれたとの事…。

「……これからは、気を付けるよ……」

「……そうだね」

 きっと、その女性と同じ気持ちで優輝も言ったのだと、なのはは言う。
 …どうやら、私がフォローする必要もなかったみたいだね。

 …それはそれとして、また神夜の優輝に対するヘイトが増してるんだけど…。
 とりあえず、ここ病室だからそれ以上騒ぐのはNGで。









 
 

 
後書き
実際なのはと同じように無茶して死んだ人を見た優輝達だからこその発言。その雰囲気や言葉には、相当な重みがあります。(描写できてるとは言ってない)
一応言っておくと、結構優輝達はなのはを気に掛けてます。何せ、直接サポートができないからと御守りをアリシアに教えてまで持たせてますからね。ちなみに、アリシアがあまりにも遅かった場合、さっさと優輝が作っていました。
なお、なのははその時の女性が優輝の母親だと気づいていない模様。
なんとなく似ているとかは思っているけど。ちなみに優香さんと桃子さんはその時にママ友になっていたり。

魅了の効果による優輝へのヘイトが薄くなっています。……だからと言って魅了が解ける訳ではないですけど。
そして暗躍するスカさん。真っ黒に見える真っ白なスカさんだから悪い方向にはいきません。(優輝を引っ掻き回す事はあるけど) 
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