ハイスクールD×D/EXTELLA
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戦闘校舎のフェニックス
レーティングゲーム開始
「よし」
合宿を終えた俺は自室で気合を入れていた。今は夜の十時。ゲーム開始まで残り二時間。決戦は深夜零時からだ。
今日に限っては悪魔の仕事は休み。学校が終わると帰宅となった。
三十分前に部室に集まる予定だから後一時間半か。俺はそれまでにやることがあった。
「おい、聞こえているなら出てこい。いるんだろう? 赤い龍の帝王ドライグ!」
呼びかけると、不気味な笑い声が聞こえる。
『ああ、何だ小僧。俺に何の話がある」
俺は目を瞑り深呼吸して、ドライグに告げる。
「取引がしたい」
棟夜side
夜の十時。俺は自室のベッドに座っていた。隣には黒歌が寝そべっている。
今回、俺はゲームに参加はしない。何でも悪魔が行うゲームに下等な人間が参加することは認めないと上の悪魔が騒いだらしい。参加はできないが特別に観戦許可は下りた。
「ねぇトーヤ。このゲーム、どっちが勝つと思うにゃ?」
「確実にライザーの奴だな。山に篭って修行したからといって急に強くなれるわけじゃない。ライザーの眷属の中で特に注意すべきはユーベルーナだ。アイツはずば抜けて戦闘能力が高い。対抗が出来るのは朱乃位だろうな」
「ユーベルーナ・・・確か爆弾王妃《ボム・クイーン》と呼ばれてる女王にゃ。私も眷属だった頃、偶然レーティングゲームを見てたにゃ。魔力に秀でてスキあらば闇討ちをしてくるにゃ」
闇討ちか。卑怯と思えるが、戦場では卑怯も何もない。ただ倒すか倒されるかのどちらかだ。修行した一誠たちがどこまで出来るか見ものだね。
集合までの間、やることがなく黒歌の頭を撫でて待っていると扉を控えめに叩かれた。
「アーシアです。小猫さんも一緒です・・・中に入って良いですか?」
「良いぞ」
ドアを開けて入ってきた小猫とアーシア。小猫は駒王学園の制服に格闘家がつけるようなオープンファインガーグローブ。アーシアは制服ではなくシスターの服だった。
「その格好・・・」
「は、はい。部長さんに聞いたら『自分で一番良いと思える服で来てほしい』と。悩んだんですが、これが一番動きやすいかなって思いました。・・・主の下僕ではなくなってしまいましたが、信仰を忘れたことはありません。今は悪魔ですけど・・・」
悪魔同士の戦いにシスター服で臨むのはどうかと思うが、アーシアが決めたのなら文句はない。
「私だったらこの着物が一番にゃん♪」
撫でてる腕に抱きついてくる・・・最近は黒歌の過剰なスキンシップに慣れてしまった。胸を押し付けられても、そこまで驚かなくなった。慣れとは怖いものだ。
「悪魔になっても、アーシアはそのシスター服が似合ってるぞ」
「ありがとうございます」
「・・・私は?」
アーシアを褒めると、小猫が膝の上に座り聞いてきた。頭部には黒歌と同じ猫耳と腰にシッポを出して。
これは小猫が甘えるときの合図みたいなものだ。
「小猫も仙術を学んでいたんだろう? 頑張ったな」
「♪」
頭を撫でると嬉しそうに笑い、猫耳とシッポがピコピコと動く。可愛いな・・・。
「あ、あのトーヤさん。そばに行ってもいいですか?」
「いいぞ」
アーシアが俺の隣に座ると、腕を強く抱きしめてきた。腕から震えているのが伝わってくる。
「怖いか?」
「はい。これから戦いが待っていると思うと、震えが止まらないんです。それに、トーヤさんがいないと思うと・・・抑えたくても止まらないんです」
「私も怖いです・・・ですから先輩・・・私たちに勇気をください」
小猫も背に腕を回し抱きついてくる。どうやれば勇気付けられるか分からないが、俺はアーシアの腕を解き、二人を抱きしめ返す。
「勇気をあげられるか分からないが、家を出るときまでこうしててやる」
「はい」
「ありがとうございます」
「トーヤ・・・私も抱きしめてほしいにゃ」
アーシアとは反対側に寝ていた黒歌が不機嫌になり脇腹を指でつついてくる・・・。
「ほら」
「にゃん♪」
黒歌はすぐ起き上がり隙間がないよう密着してきた。
「・・・黒歌、当たっているんだが」
「当ててるにゃん♪」
「うぅ~・・・」
「むぅ」
上機嫌な黒歌に対し、今度は二人の機嫌が悪くなった。
どうしたらいいのか誰か教えてくれ。
一誠side
深夜十一時四十分。
俺と部員たちは旧校舎の部室に集まっていた。それぞれ、一番リラックスできる方法で待機している。アーシア以外は全員が制服姿だ。
木場は手甲を装備し脛あてもつけていた。壁に剣を立てかけている。
小猫ちゃんは棟夜の隣に座ってフィンガーグローブの付けぐあいを確かめていた。童顔少女が身につけていると妙に迫力があるな。
朱乃さんはソファ、部長は自分の席に座り優雅にお茶を飲んでいた。さすが俺らのお姉さまたちは落ち着いているなぁ・・・。
俺とアーシア、棟夜はイスに座って静かに待っていた。黒歌は猫の姿になって棟夜の膝の上に丸くなっていた。
それに・・・このゲームに棟夜は参加しないことになった。何でも、上の悪魔達が人間がレーティングゲームに参加することは認めなかったらしい。やっぱり、ライザーの奴みたいに人間を見下すのが悪魔なんだな。
開始十分前になった頃、部室の魔方陣が光だし、グレイフィアさんが現れた。
「皆さん、準備はよろしいですか?」
「ええ。いつでもいいわ」
部長が言うと、悠いがい皆が立ち上がった。
「開始時間になりましたら、この魔方陣から戦闘用フィールドに転送されます」
「戦闘用フィールド?」
俺の疑問に朱乃さんが答えてくれる
「ゲーム用に作られる異空間ですわ。使い捨ての空間ですから、どんな派手なことをしても大丈夫。うふふ」
は・・・派手、ですか? 朱乃さんの笑みを見て背筋に寒気が走る。
ま、まぁそれは置いといて、このゲームに参加する前に疑問があった。
「あの、部長」
「何かしら?」
「部長にはもう一人、僧侶がいますよね? その人は?」
部長はアーシアを悪魔へ転生させる前に言った。すでに自分には『僧侶』がいると。
他の任務があるから遠いところにいるって話だけど、この大事にいないってのはどうなのか?
俺の質問を受けると、俺とアーシアに悠以外のメンバーの様子がおかしかった。何だか腫れ物に触れてしまったような感じだ。空気がガラリと変わって一様に口を閉じた。
「残念だけど、もう一名の『僧侶』は参加できないわ。いずれ、そのことについても話すときがくるでしょうね」
部長は俺に目線をあわせず言う。
何やらわけありのようだ。この話題はここまでにしておいたほうが良いかもしれない。でも、主の大事なゲームを放り投げてまでやっていることはなんだ? 疑問は尽きない。
「今回のレーティングゲームは両家の皆様も他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります」
マジか。見られるの? 高みの見物か。いいご身分ですな、上級悪魔の親御さんは。って、部長の親御さんも見ているのだから、無様な姿は見せられないな。
「ちなみにこの戦いは、魔王ルシファー様もご覧になられますので、それをお忘れなきように」
魔王! 魔王様が!? うっわ、緊張するな。悪魔のトップが見ているなんて、それだけ注目されてんだ、この試合!
と、部長が心底驚く様子を見せる。
「・・・そう、お兄様が直接みられるのね」
え? 俺は自分の耳を疑った。いま、部長はなんて言った? お、お兄様?
俺は疑問に感じ、手を上げながら口を開く。
「あ、あの、いま、お兄様って・・・。俺の聞き間違いでしょうか?」
だが、木場はさらりと答える。
「いや、部長のお兄様は魔王様だよ」
「「ええッ!?」
俺とアーシアは驚いた!
「魔王ッ!? 部長のお兄さんって魔王なんですか!?」
「ええ」
即肯定する部長。
マジですか! マジで!? いや、待てよ。でも部長はグレモリー一族だよな。魔王様方のお名前と違う気がするんだけど・・・。
ルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウス。どの名前にも当て嵌まらないぞ?
「部長のファミリーネームと魔王様方のお名前が違うから、混乱してたりする?」
木場に心中で思っていたことを言い当てられる。不愉快だが、まさにその通りだ。
「まあな」
俺が渋々同意すると、木場が説明を始めた。
「先の大戦で魔王様は致命傷になられてね、すでに亡くなられたんだよ。しかし、魔王なくして悪魔はあり得ない。そこで・・・」
悪魔たちは魔王の名前を残し、強大な力を持つ者へその名を受け継がせた。現四大魔王は、初代から名を受け継いだ後継者の最上級悪魔だっそうだ。
「正直言うと、神陣営、堕天使の組織、悪魔、この三すくみのうちで現在一番力を持っていないのは悪魔なんだよ。結構、危ない状況なんだけど、現魔王様が先代魔王様に負けず劣らずでどうにか保っているんだ」
・・・・悪魔社会も薄皮一枚で繋がっているのか。
図書館の書籍にも書かれている魔王がすでに死んでいるってかなりショックだ。
「じゃあ、最上級悪魔として部長のお兄さんが選ばれたわけか?」
「うん。紅髪の魔王《クリムソン・サタン》こと。サーゼクス・ルシファー。それが今の部長のお兄様であり、最強の魔王様だよ」
・・・サーゼクス・ルシファー。
グレモリーでなくルシファーか。もう、部長と同じ家名を名乗っていないわけだ。
「それで部長さんが、グレモリー家の跡継ぎに」
そうだったのか・・・。兄貴が魔王になっちゃったら、そりゃ仕方ないな。お兄さんは悪魔社会を背負わないといけないんだから。
「そろそろ時間です。皆様、魔方陣のほうへ」
「行きましょう」
俺たちは魔方陣に移動する。
「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔方陣での転移は不可能となります」
帰ってくるときは勝敗が決しているってことだな。
「悔いの残らないよう、精いっぱい頑張ってこい」
悠から激励を貰うと、光が包み込み転移が始まった
目を開けるとそこは部室だった。俺はその風景に首をかしげた。
・・・あれ? 転移失敗? でも、俺とアーシア以外は落ち着いていたものでこの状況に何も動じていない。
つーぁ、グレイフィアさんがいないんですけど。まさか、一人だけ転移しちゃったのか?
と、思ってたら。
『皆様。このたびグレモリー家、フェニックス家の審判役を仰せつかった、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』
校内放送? グレイフィアさんの声だ。
『今回のバトルフィールドは、リアル様とライザー様のご意見を参考にしリアス様が通う人間界の学び舎、駒王学園のレプリカを用意しました』
「レプリカ?」
「外を御覧なさい」
部室の窓を開け外を見ると、空が白い! 深夜のはずなのに空は暗くなかった。真っ白な世界に学校のレプリカが存在するのか?
「ここは異空間なんだ」
「そこに学校をそのまま再現したのですわ」
「あ・・・悪魔の力って、どんだけ凄まじいんだよ」
『両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様の本陣が旧校舎、オカルト研究部部室。ライザー様の本陣は、新校舎学長室。よって兵士のプロモーションは、互いの校舎内に侵入を果たすことで可能となります』
ライザーの兵士は八人。全員にプロモーションされて女王に変化されたら手のつけようがない! 前途多難だな。
「全員、この通信機を耳につけてください」
朱乃さんがイヤホンタイプの通信機を配る。
それを耳につけながら部長が言う。
「戦場ではこれでやりとりをするのよ」
これで離れた場所から命令を受けたりするのか。壊さないようにしなくちゃ。
『それでは、ゲームスタートです』
チャイムが鳴り響く。開始の合図か。
こうして俺たちとっての初、レーティングゲームの狼煙が上がった。
棟夜side
リアス達が転移した後、俺はグレイフィアさんの後をついていき視聴覚室にいる。そこでは複数のモニターにゲームの進行が映し出されていた。
ゲームが始まると、リアスは机に地図を広げ作戦を練っている。対するライザーは何もすることがなく、下僕の体を触っていた。
『お前らには軽すぎる仕事だが・・・遠慮はいらん、徹底的に潰せ。あの紅髪のお嬢様のプライドをへし折ってやらねば、こんな茶番になんの意味もない』
・・・本当にムッかつく野郎だ。一誠たちは必死の覚悟でこのゲームに挑んでいるのに。
下僕が学長室を出て行くと、ユーベルーナは残り魔方陣を出現させ戦場の様子をライザーと見る。
「ムカつくけど、ライザーの実力は本物にゃ」
猫姿の黒歌も毛を逆立て、怒りを露にしている。
落ち着かせるように背を撫でる。
「まぁ俺たちが怒っても仕方がない。一誠たちに任せよう」
「にゃ」
リアス達を見ると、木場と小猫がトラップを森に仕掛け、朱乃は空と森に幻術をかけていた。部室に残ったのは一誠とアーシア。
部長は一誠に近くに来るよう呼ぶと、頭に手を置く。すると、一誠は自分の体に変化があったようだ。
『あなたが転生するのに、兵士の駒を八つが必要だったということは、話したでしょう? でも、転生したばかりのあなたの体では、まだその力に耐えられなかった。だから、何段階に分けて封印をかけたの・・・今、それを少しだけ開放させたわ。あの修行は、ブーステッド・ギアとこの力に耐えられる強靭な肉体が必要だったの。まだまだ足りない部分はあるけれど』
なるほど。あの修行は一誠が本来の力に耐えられるためにか。一誠だけ以上に過酷だと思ったが・・・。
『良いことイッセー、相手が女の子だろうと必ず倒すのよ? 手加減しちゃダメ。あちらは手加減なんてしないのだから』
そう言うと朱乃かた連絡が入り、作戦を伝えた。
一誠side
「よし!」
旧校舎の前で俺は気合を入れた。
横には小猫ちゃん。次の作戦のパートナーだ。
『いい、イッセー、小猫。体育館に入ったら、バトルは避けられないわ。くれぐれも指示通りに』
「「はい」」
『裕斗。準備は良い?』
「問題ありません」
『朱乃は頃合いを見計らってお願いね』
「はい、部長」
全員の確認を取ると部長が言う。
『作戦開始! 私の可愛い下僕たち。相手は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児、ライザー・フェニックスよ。さあ! 消し飛ばしてあげましょう!』
『はい!』
返事を返し駆け出し俺と小猫ちゃんは体育館に向かう。
正面からは新校舎と繋がっているため、そっちからは入れない。侵入がバレるからな。体育館の裏口から侵入を試みる。そこへ向かい、扉のノブを回すとカギが開いていた。
中に入ると、小猫ちゃんが言う。
「すでに体育館にいます。人数は四人」
! 思わず足を止める。小猫ちゃんの方を見ると猫耳と尻尾をだしていた。
殺人的な可愛さだ! メチャクチャキュート!・・・じゃなくてッ!
「分かるの?」
「はい。仙術の一部を開放していますから、気の流れで把握できます。さすがに詳細までは分かりませんが・・・」
そこまで言うと、明かりがつき声が響く。
「そこにいるのは分かっているわよ。グレモリーの下僕さんたち」
向こうも気づいてるならこそこそする必要はないな。
俺と小猫ちゃんは壇上に現れる。体育館にはライザーの下僕が四人。
チャイナドレスを来たお姉ちゃんと双子。それに、俺を吹き飛ばした童顔の女の子
「戦車さんと・・・やたらと元気な兵士さんね。ミラに瞬殺されたけど」
「あの子がミラって子か」
「ミラよ。属性は兵士」
「私は戦車の雪蘭」
「兵士のイルでーす」
「同じく兵士のネルでーす」
兵士三、戦車一か・・・こっちも兵士と戦車だが数も倍も違う。
だが、作戦のため激突は避けられない。
「ブーステッド・ギア、スタンバイ」
『Boost!!』
籠手から音声が発し、倍加が始まる。やるしかねぇ!
「私は戦車を・・・イッセー先輩は兵士をお願いします。最悪、逃げ回るだけでも」
「俺の心配しないで良い。勝算はあるから・・・よし、行くぜ!」
俺と小猫ちゃんは壇上から飛び出し相手と対峙する。チャイナドレスのお姉ちゃん、雪蘭は中国拳法っぽい構えを取り、ミラが棍を回し構える。
脳裏でミラに吹き飛ばされた苦い記憶がフラッシュバックする。もう負けたくない!
最後に双子、ネルとイルがバックから小型のチェーンソーを取り出し・・・って、チェーンソー!?
-ドル、ドルルルルルルルルルル!-
危険な音を立てながら火が入った!
マジか! そんな危険な物、女の子が持っちゃダメだろう!
「「解体しまーす♪」」
双子は楽しそうに宣言する!
半はなれたところでは、小猫ちゃんと雪蘭の戦闘が始まっていた。戦車同士、打撃と打撃で繰り広げる格闘試合になっているぞ!
倍加中は派手な動きが出来ないから、ここは逃げる!!
「「バーラバラ♪ バーラバラ♪」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ネルとイルはチェーンソーを床に当てながら突っ込んでくる!!
「逃げても無駄でーす」
「大人しく解体されてくださーい」
「そんな可愛い声でそんなこと口にしちゃいけません! というか解体されたくない!!」
逃げ回っていると、目の前に来たミラが棍で突きをはなってくる!
うわぁあ! 俺は反射的にジャンプして躱す
「よし、今度は躱でたぜ・・・いッ!?」
「「バーラバラ♪ バーラバラ♪」」
双子もジャンプして斬りかかって来る!
よッ! ほッ! はッ! いける!・・・思った以上に体が動けてる!!
「あー、もう! ムカつく!」
「どうして当たんないのよ!」
俺に当たらないのがムカつくようだ!
「俺だって必死こいて修行したんだ! 即敗北じゃ部長や仲間に申し訳たたねぇっての!」
『Boost!!』
来た! 三度目のパワーアップ!
「いくぜ、ブーステッド・ギア!」
『Explosion!!』
体中から力が溢れる! 一定時間のパワーアップ状態! 少しも無駄には出来ないぜ!
「まずはキミたち!」
飛び上がり双子に攻撃をしかける! 一人は肩を触れ、もう一人はお尻を触る! おおっ。軟らかい感触だ!
着地をすると、間髪入れずミラが攻撃してくる。
「はッ!」
俺はそれを掴み取り殴り壊す!
「ダッ!」
バキっと音がして折れる。
間も空けず呆然としてるミラを突き飛ばす! これで発動条件は揃った。
「っても、棍って思った以上に硬いのな」
手をさすっていると、ドサと音がした。
「くッ!」
「・・・チェックメイトです」
仰向けに倒れこんだ雪蘭の背に、腕の関節を極めた小猫ちゃんがいた。
やったな小猫ちゃん!
「こんな男に負けたら」
「ライザー様に怒られちゃうわ」
体勢を直した二人がチェーンソーに火をいれ、ミラが折れた棍をもって突っ込んでくる。
「もう許さない!」
「「絶対にバラバラにする」」
ふふふ、息巻いていられるのも今のうちだ!
「くらえ! 俺の必殺技! 洋服崩壊《ドレース・ブレイク》ッ!」
指を鳴らすと同時に、イルとネルにミラの服が弾けとんだ。そう、下着すら粉々だ! 白く丸みを帯びた少女たちの裸体が俺の眼前で露になる。
おおッ、三人とも発育がたりないけどこれはこれでOK!
嘲笑を浮かべながら俺は鼻血を噴出す。
「「「イ、イヤァァァァァァァァッ!」」」
響き渡る悲鳴。三人は大事なうずくまり大事な部分を隠そうとしている。
「アッハハハハ! どうだ見たか! 脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージを永延と。そう永遠と妄想し続け、俺は持てる魔力の才能を全て女の子を裸にするために使い切ったんだ! これが俺の必殺技、洋服崩壊だ!」
「最低!」
「ケダモノ!」
「女の敵!」
涙目で俺を罵る。その言葉、甘んじて受け入れよう。
「・・・見損ないました」
「最っ低」
グササッ。小猫ちゃんと雪蘭の呟きが胸に刺さった・・・流石に効いたぜ。
その時、通信機に音が入る。
『小猫、イッセー。状況は?』
部長の声だ。小猫ちゃんにも届いている。
「部長。俺も小猫ちゃんも無事です! つーか、良い感じです!」
『それは結構。朱乃の準備が整ったわ。作戦通りにお願いね!』
部長のオーダーが入った! 俺は小猫ちゃんと視線で合図を送りあい、頷き敵に目もくれず体育館の中央口へ向かった。
「逃げる気! 重要拠点を捨てるつもりか!?」
そうさ。ここは重要拠点だ。旧校舎と新校舎をつなぐ場所。チェスでいうセンター。大切な拠点だ。俺もあんたたちも集まった! ここをゲットしようとするはず!
だからこそ意味がある! ここを囮にすることに!
中央口からでた。瞬間、一瞬の閃光。そして・・・。
-ドォォォォオオオオオオンッ!!-
轟音と共に巨大な雷の柱が体育館へ降り注いだ。
雷が止んだとき、目の前にあった体育館は根こそぎ消失していた。
「撃破」
朱乃さんの声だ。
振り返ると、ニコニコ顔の朱乃さんが翼を広げて宙ぬ浮いていた。右手を天にかざしている手からは、電気が走ってた。
『ライザー様の兵士三名、戦車一名、戦闘不能!』
審判役のグレイフィアさんの声がフィールド中に響く。
って今ので全員戦闘不能!? す、スッゲー!
「朱乃先輩の通り名は・・・雷の巫女。その名前と力は、知る人ぞ知る存在・・・だそうです」
「雷の巫女・・あんなんでお仕置きされたら確実に死ぬな」
絶対に朱乃さんは怒らせないようにしよう。
『まだ相手の方が数は上よ。朱乃が二撃目を放てるようになるまで、時間を要するわ。朱乃の魔力が回復しだい私たちも前に出るから。それまで各自、次の作戦に向けて行動を開始して』
「次は確か・・・」
「陸上競技のグラウンド付近で・・・裕斗先輩と合流。その場の敵を殲滅・・・です」
木場の奴、大丈夫か?
「ま。アイツのことだから、爽やかな顔してちゃんとやってんだろうけど・・・小猫ちゃん、俺たちも行こうぜ」
肩を叩こうとしたら、さらりと避けられた。
「・・・触れないでください」
蔑んだ声と顔で俺を睨む小猫ちゃん。
その反応は悲しいけど、あんな技を見たら女の子ならば警戒しちゃうよね。
「ハハハ、大丈夫だよ。味方に使うわけないだろう」
「・・・それでも最低な技です」
「あらら、どうやら本格的にきらわれたような・・・待ってよ小猫ちゃん!」
追いかけようとした時。
「!!」
小猫ちゃんが咄嗟に横に飛び出すと、さっきまでいた場所が爆発した!
何だ!? 敵の攻撃か!!
小猫ちゃんが上空へ視線を向けると、翼を広げ浮遊している人影があった。確かあいつはライザーの女王だったはず! いきなり最強の下僕登場かよ!
「よく避けれたわね。一番隙だらけとなった時を狙ったのだけれど」
攻撃が外れたにも関わらず、微笑を浮かべる!
「テメェ! 闇討ちとか卑怯だろ!! 正々堂々戦いやがれぇ!!」
「うるさいボウヤね。戦いが始まったのなら卑怯も何もないわ。先にあなたを撃破しましょうか」
杖を向けられる! やられる!
「あらあら。あなたのお相手は私がしますわ。ライザー・フェニック様の女王、ユーベルーナさん」
俺と小猫ちゃんを庇うように間に入る朱乃さん。
「イッセー君、小猫ちゃん。ここは私に任せて先にお急ぎなさい。心配には及びませんわ。私が全身全霊を持って消し飛ばしますわ」
朱乃さんの体を金色のオーラが包み込む! 見てるだけで力強さを理解できる。朱乃さんの魔力。俺たちの最強の女王!
「分かりました。頼みます! 行こう、小猫ちゃん」
「はい。朱乃先輩・・・お願いします」
朱乃さんに告げると、俺と小猫ちゃんは駆け出し木場が待つ運動場へ向かう。
「一度あなたと戦ってみたかったの。雷の巫女さん」
「あらあら。それは光栄に存じますわ、爆弾王妃さん」
その後、後方で激しい爆音と雷鳴が鳴り響いた。
戦いは序盤から、中盤へと移っていこうとしていた。
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