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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜

作者:波羅月
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第59話『第二のテスト』

「それにしても結月ちゃん、数学が95点って凄いじゃない!」

「いやいや、ハルトが教えてくれたからだよー!」

「え、じゃあ何で俺の方が低いの?!」


学校からの帰路の途中、そんな話が起こっていた。
莉奈が結月を褒め、結月が晴登を褒め、晴登が莉奈を──ど、そこまではならないが。

結局、結月の数学の件は、彼女の最も集中した教科だからという結論に至った。
晴登の点数が良かったのも、大地曰く「人に教えたりすると、より定着するから」とのことだった。つまり、結月にずっと教えていたから、必然的に高くなったといえる。
というか、この理屈でいけば、大地の賢さも納得がいく。


「じゃあ、家庭教師とかやったら伸びるってことか」

「もう晴登は伸びなくていいよ」

「冷たいな!?」

「だって3位とか取ったら十分でしょ? もう死にたいでしょ?」

「そこまでないから!! どんだけ妬んでんの?!」


成績発表以降、莉奈の晴登への態度が冷たくなった。納得ができない訳ではないが・・・


「莉奈も同じようにすれば、きっと伸びるって」

「私みたいなバカに誰が教えられるのよ。むしろ、教えられる側だよ」

「それ言っちゃおしまいじゃん」


未だに少し温度差を感じながらも、晴登は「ところで」と違う話題を振った。


「最後に、先生が『来週も頑張ってください』って言ってたの覚えてるか?」

「あー言ったような言ってないような・・・」

「いや言ったけどさ。てことはさ、来週もテスト有るってことだよな?」

「そういうことになるだろうけど、どんなテストが来ると思う?」


莉奈は首を傾げて訊いてくる。正直、それこそ今から晴登が振ろうとしていた議題だ。

筆記試験が終わったことを鑑みるに、体育などの"実技試験"などが候補に上がる。しかし、最近は実技という実技はしてない訳であって、何が項目になるのかは皆目検討もつかない。


「・・・来週のお楽しみ、だな」


結局はそういう結論に至った。これで筆記試験とか来たら、正直泣ける。もう、やる気は起きない。尤も、実技試験が来たとしても無理なのだが。

だから今日は今日で、自分の成果を喜ぶことにする。






時はあっという間に流れるもので、既に1週間が経過した。つまり、山本が予告した第二テストの実施日だ。
しかし実は、未だに説明がされていない。
当日のお楽しみ、みたいなお約束なのかもしれないが、準備させてくれない辺り、タチが悪いものがある。

ちなみに、今はもう朝のホームルームの時間だ。


「さて、皆さんがお待ちかねの、今日のテストについてお知らせします」


ようやくテストの全貌が明らかになる。一体どんな難題を突き付けられるのか──



「今日のテストは、あなた達の所属する部活で行います」


「・・・へ?」


山本の言葉に、誰しもが疑問符を浮かべたことだろう。部活でのテストとは、何を意味するのか?


「このテストは実技試験という名目で行っており、個性をより発揮できるよう、個々の所属する部活でそれぞれ違った試験を受けてもらうというものです」


補足説明で概要は把握した。なるほど、よく考えられてる・・・と思う。

要は、晴登と結月と伸太郎は、魔術部の用意したテストを受けなければならないということだ。


「楽しそうだな…!」


筆記試験とは違い、モチベも湧いてくる。そして、実技試験ではあるものの、魔術に関しては異世界での経験有ってか、自信はある。

──これで勝つる!


「それでは、各自部活動に向かって下さい」


その言葉を皮切りに、クラスは一斉に動き始める。
晴登は結月と伸太郎を連れて、魔術室へと向かった。







「お、来たな」


魔術室に入ると、部長である終夜が出迎えてくれた。見ると、部員全員が揃っている。


「えっと、部長。俺たち今から・・・」

「皆まで言うな、わかってる。──テスト、受けに来たんだろ?」


ニタッと笑みを浮かべるその姿に、晴登は一抹の不安を覚えた。
しかし、それは一瞬。終夜はすぐにいつもの表情に戻ると、話を続ける。


「他の部活はそれなりに凝ったお題作ってるみたいだけど、魔術部のテストはシンプルだ。ずばり──"魔術バトル"」

「…っし!!」グッ


その言葉を聞くだけで、晴登のテンションはマックスだった。思わず、強く拳を握り締める。


「オイオイ、話は最後まで聞けって。魔術バトルって言ってもルールが有るからな」


そんなこと百も承知。魔術は人を傷つけることも容易な訳で、全力で攻撃すると下手すれば即死に至る。晴登の"鎌鼬"然り。
つまり、そこら辺は何かしらのルールが必須なのである。


「と言っても、大したルールじゃない。大怪我させなければ何でもOKだ」

「大怪我かどうかの判定はどうなるんすか…?」

「そこは・・・何とかなるだろ」

「そこ一番大事なとこですけど!?」



「──擦り傷切り傷は許容。これで良いでしょ?」

「お、そうだな。そうしよう」


終夜の雑さに、さすがに緋翼が場を収める。さすが、魔術部副部長だ。それには終夜も抵抗せずに、すんなり従った。


「んじゃ次は、対戦相手について説明するぞ。実はこの魔術バトルはタイマンじゃなくて、団体戦なんだ。学年対抗の」

「…え?」

「まずお前らは3人で組む。そして初めに2年生、その次俺と辻の3年生と戦う。その結果で、テストの点数は出させてもらうぞ」

「は、はぁ……」


一通り説明を聞いた晴登は、内容を反芻する。

タイマンならまだしも、チームバトルの経験は少ない。一応異世界ではやったが、相手が強すぎたからよくわからなかった。
けれども、組むのが結月と伸太郎な辺り、心配する必要性は小さい。


「頑張ろう、結月! 暁君!」

「うん、頑張ろハルト!!」

「あぁ」







「さて、じゃあ初めは1年生VS.2年生だ。準備しろ」


場所は変わって、人気のほとんど無い学校の裏庭。そこは日光すらもあまり入らないからいつでも暗く、怪しい空気で席巻されている。

しかし、こんな場でなければ魔術バトルは行えない。


「準備オッケーです」

「こっちも」


各自ストレッチをしたり、作戦を練ったりして準備を終えた。もう準備万端である。

ちなみに人数は2年生の方が多いのだが、魔術が使えないということもあり、彼らは鉄パイプを武器として所持していた。


「鉄パイプとか、本気のケンカになっちまうだろ」

「近づかれたら危険だね」

「加減してくれるかな…?」


いくら魔術というアドバンテージがあるとはいえ、鉄パイプという武器は中々脅威。相手を近づけない戦法をとる必要がありそうだ。
幸い、3人の魔術は全て遠距離型だから、それは可能だろう。


「んじゃ、始めるぞ」スッ


部長が手を挙げる。あれが振り降ろされれば、戦闘開始だ。晴登は気持ちを引き締める。



「よーい──始めっ!」


「先手必勝!」ピカーッ


辺りが白い光に包まれ、視界が阻まれた。しかし晴登と結月は事前に目を塞いでいるため、影響はない。

これは、伸太郎の"暁光"で相手の足止めするという作戦だ。
そうすれば、相手の動きを封じることができ、後は煮るなり焼くなりが容易に・・・



「──って、あれ!?」


光が薄くなっていって辺りが見えるようになると、前方から駆けてくる4つの影に気づいた。


「甘いぜ1年!」

「チッ、またゴーグルか!!」


伸太郎が2年生の姿を見て、ある事を思い出し舌打ちするが、それは晴登の知ることではない。

要は、彼らは既に"暁光"に対策していたということだ。


「さすがに見え見えな策だったか…」

「暁君、どうする?」


晴登は、1年生チームの軍師ともいえる伸太郎に意見を仰ぐ。彼は少し考えるが、迫ってくる2年生を見て一息に言った。


「全員、吹き飛ばせ!」

「了解!」ブワァ


「「うおっ!?」」ズザザ


晴登が腕を振るうと、まさに人を飛ばせる勢いで強風が吹く。さすがにその対策はされていないのか、2年生らは後退を余儀なくされた。


「少し距離を取った方が良い。近づかれたら危険だ」

「他に作戦は?」

「俺の炎は危ないし、お前ら2人に懸かりそうだな」


伸太郎は残念そうに言う。
彼もまた、晴登と同様に魔術バトルを期待していたはずだ。役に立たないのは、辛いものがあるだろう。


「じゃ、暁君の分まで頑張るぞ、結月!」

「うん!」


相手を見据え、2人は一気に魔力を高めた。
このあと3年生とも戦うのであれば、なるべく力は残しておきたい。だから、長期戦は避けなければならないのだ。この一発で、決める!


「吹き荒れろっ!」ビュオォォ

「凍てつけっ!」ビキビキ


「これは…!?」


晴登の放った風が、結月の放った冷気を纏う。その風に触れた草や地面は凍てついて──というか、風自体が凍っていった。

・・・いわゆる、合体魔術。

合体魔術というのは、互いにチームワークの取れる関係でなければできない、高難度の魔術だ。威力は難度相応に高い。
だから成功としか言えないその様子には、終夜も唖然としていた。

そしてもちろん、その風が向かう先は2年生。


「あれ、これヤバくねぇか!?」
「ガードだガード!」
「鉄パイプに無茶言うな!」
「つか、避けろよ!……って!?」ガチィン


ついに氷の風が2年生を捉えた。全身を凍らせてしまうのはさすがに危険だから、首より上は空気に触れるように仕組んで凍らせる。
つまりは四肢を塞いでいるため、身動きが取れないはずだ。



「そ、そこまでだ! 勝者、1年グループ!」


「よっし!」グッ

「お疲れ、ハルト!」

「いや、結月もありがとう」


2年生方が戦闘不能になったので、1年生の勝利が決まった。まずは第一関門突破という所だろう。

問題は・・・


「次は3年生か……」


伸太郎の発言に頷きながら納得。

2年生方は魔術を使えなかったから幾分楽だったが、3年生は魔術部部長と副部長というコンビ。簡単には勝たせてくれないだろう。


「面白くなってきたぜ」


晴登は似合わない笑みを浮かべた。今はもう、心から楽しんでいるのがわかる。結月に変な目で見られている気がするが気にしない。


「やっぱ2年生じゃ相手にならないみたいだな。それじゃ、お待ちかねの真打登場だ」ニッ

「…そんなカッコつけて、負けた時の言い訳どうすんのよ?」

「いい所なんだから水差すなよ」


相変わらずの様子で、3年生の2人が登場した。連戦にはなるが、特に異常はない。


「次こそは俺も戦いに…!」

「ボクも頑張るぞー!」

「行くよ、2人とも!」


3人のやる気も十分。


──さぁ、ここからが本当の魔術バトルだ!
 
 

 
後書き
波羅月です、どうも。

読み返すとわかりますが、冒頭と末尾で世界観ごと変わってます。これはこの物語のメリットであり、デメリットでもありますね、ハイ。

さて、どうでもいい事は置いといて。
そろそろ「新しい言い訳は無いのか」とか言われそうですが、とりあえず言っときます。忙しいです。そして眠いです(←夜ふかしマン)
お陰で学校で寝る始末ですよ。ハハハ!──いや、笑えねぇわ(´・ω・`)

とにもかくにも、次回は今月中に間に合うように頑張ります。では! 
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