真田十勇士
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巻ノ九十三 極意その五
「それはな」
「では」
「うむ、天下はこのままな」
「幕府の下にありますな」
「やはりそうなろう」
「では」
「御主達もその中で生きよ」
こう言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「それでじゃが」
立花は家臣達にこうも言った。
「御主達喉が渇いておらぬか」
「喉がですか」
「さすれば」
「茶を飲もうぞ」
笑ってだ、こう言った。
「これよりな」
「はい、それでは」
「これより茶を淹れますので」
「我等も」
「共に飲もうぞ」
立花は己の考えを述べてから家臣達と共に茶を飲んだ、そしてだった。彼は加増を謹んで受けたのだった。
幸村は陸奥から九度山に戻った、そして。
十勇士達と共に鍋を食べつつだ、こんなことを話した。
「空気が変わってきたか」
「天下の」
「それがですか」
「うむ、右府殿は大御所になられるとのことじゃ」
将軍の座を退いてというのだ。
「どうやらな」
「左様ですか」
「将軍になられて間もないですが」
「もう隠居されますか」
「その様になられるのですか」
「そして江戸を中納言様に任されてじゃ」
将軍の座を譲る秀忠にというのだ。
「ご自身は駿府で天下固めに勤しまれる」
「この天下を定める」
「そのことに励まれるのですか」
「そうされるおつもりですか」
「江戸は中納言殿が固められてな」
そうさせてというのだ。
「ご自身は天下を固められるおつもりじゃ」
「ううむ、流石は右府殿」
「全くじゃな」
「そこまでお考えとは」
「常に先の先を広く見ておられる」
「そして政を執られる」
十勇士達も幸村の話を聞き家康の見事さに唸った。
「伊達に天下人になられた訳ではない」
「我等とは器が全く違うわ」
「織田殿や太閤様にも引けを取られぬ」
「そこまでの方じゃな」
「拙者もそう思う、あの方の政を見る目は違う」
幸村もこう言うのだった。
「器もな、これは太閤様もされたが」
「ですな、関白の位を譲られましたな」
「あの方に」
秀次のことであるのは言うまでもない、彼等にとっては思い入れの深い人物だ。
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