普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
203 代表選出
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
昨日のボーバトンとダームストラングを歓迎パーティーから明けて10月31日。昨日が金曜日だったので今日は土曜日なのでそろそろ新入生もホグワーツでの生活に慣れてきて鷹揚に朝食を摂っているのだろうが今日はそうではなかった。
理由は瞭然。〝炎のゴブレット〟の所為だ。
〝炎のゴブレット〟。それは【ハリー・ポッターと炎のゴブレット】となタイトルから判る通り、今年度のキーアイテムである。
そんなキーアイテムはホールの真ん中に設置されていて、〝数十人〟もの──それこそ〝10や20やきかないくらいの人数〟が彷徨いているのでそれなりに鬱陶しい。
「はぁ~…」
(失敗したか…)
俺はそんな様子を見て小さく溜め息を吐き、内心で悔悟する。1000ガリオンと云う大金はそれほど魅力的なのだろう。……少なくとも10ガリオン出してまで〝年齢線〟を突破しようと思うくらいには。
最初はフレッドとジョージに請われ〝年齢線〟の突破する方法を考察していただけだったのだが、その考察がどうやら的を射ていたようで、俺は〝年齢線〟の突破法を見付けてしまったのだ。
“ディテクト・マジック”や“ライブラ”やらを付与した眼鏡で〝年齢線〟を〝視た〟結果、〝年齢線〟は主に〝匂い〟に反応していると云う事が判った。
……より正確には〝匂い〟が消えていてかつ、〝自分は17歳を越えていると自覚している者〟だ。
〝匂い〟はその昔アニーに渡したマジックアイテムと効果が同じマジックアイテムがあり、〝自覚〟は、どうやら〝年齢線〟には軽度の〝開心術〟が施されていてそれで判断しているらしいが、俺は〝閉心術〟で何のその。……そもそも俺はその20倍近くの年月を生きている。
そして更に、〝匂い〟を消せる上に〝自分は17歳を越えていると錯覚出来る〟マジックアイテムも持っている。……〝錯乱呪文〟を付与して魔力の吸収量を増やすだけだったので、それこそ〝朝飯前〟に完成した。
……もう丸判りかもしれないが──そう、そのマジックアイテムのレンタル料が10ガリオンであり、〝年齢線〟の周りをうろうろしてるのは財布の中身を見て葛藤している連中だ。
先に〝年齢線〟を越えたフレッドとジョージには〝金持ち(ボンボン)〟──主にスリザリン生とかをおどろおどろしい語彙でもって脅してもらっているし、たとえお金を出したとしても選ばれる確証は無い。そう考えてみれば10ガリオンと云う金額設定は中々財布に突き刺さる。
(それにしてもこれが〝炎のゴブレット〟か…)
朝食を終え、改めて〝炎のゴブレット〟を遠巻きに〝視て〟みる。代表選出の基準がいまいち判らなかったが今俺が掛けている眼鏡が〝年齢線〟同様、〝炎のゴブレット〟の詳細を教えてくれた。
(……〝杖腕〟を通しての、魔法力の残滓で判断してるのか…)
基本的に〝杖腕〟は、〝利き腕〟と言い換えても差し支えがない。……となれば、〝利き腕〟で羊皮紙に名前を書きその羊皮紙をゴブレットへ投入しても、それは至極自然な流れと云える。
(……あー、確かにこれじゃあセドリックが選ばれてもおかしくないな…)
〝炎のゴブレット〟を一通り〝視て〟、そんな風に納得する。〝例外〟を除き、セドリックは他の生徒らと比べると、ダンブルドア校長曰くの〝魔力の卓越性〟が頭一つ抜きん出ていた。なので、セドリックが選ばれる可能性が一番だった。
……〝一番だった〟──そう、過去形だ。
「うしっ」
俺は掛け声一つとともに〝年齢線〟を越え、[ロナルド・ウィーズリー-ホグワーツ]と書いてある羊皮紙を〝炎のゴブレット〟に投入。……そして、ゴブレットの青白い炎で羊皮紙が燃やされている間に…
(……地味に初めて使うスキルだよな…)
なんて内心で呟きながら、“確率隔離食感”──確率操作のスキルで、〝[ホグワーツ]と書かれている羊皮紙からロナルド・ウィーズリー以外が選ばれる可能性〟を0にしておく。
「……良かったの?」
「ああ」
朝食を摂っていた席に戻ればアニーが訊いてきた。その質問はいろいろな意味合いを内包しているのを知っているので、そう即答する。
俺の詳細についていろいろと詳しいアニーが訊いているのは俺が参加する事と、今もフレッドとジョージが開催している賭けがもうすでに〝出来レース〟と化していることだろう。
フレッドとジョージの話によれば、倍率は今のところセドリックが一番なのだが、俺は〝ロナルド・ウィーズリー〟に賭けた。……その時点で九割九分九厘俺の選出が決まっている。
しかも、これはアニーに言ってない事だが──だめ押しとばかりに、“確率隔離食感”で確率も操作してあり、最早出来レースや茶番としか言いようがない状態だ。
……賭けたのは単なる小銭稼ぎのつもりなので、〝因果の確定化〟はあくまでも副産物的なものでしかないが…。
閑話休題。
その集まりはダンブルドア校長が来るまで続き、マジックアイテムの件がバレたので当然の事ながら以降の日は〝年齢線〟は常道的な手段──17歳以上しか越えられなくなった。
「……くくっ」
しかし、そこにほくそ笑む者が居た。……俺だ。
マジックアイテムのレンタル料が10ガリオン。レンタルしたのはフレッドとジョージを含めて19人。予てよりの約束で、その半額が俺の懐に入ってくる様になっている。
フレッドとジョージを除いて17人だからその時点で85ガリオン。そこへフレッドとジョージのレンタル料が加算されるから、締めて105ガリオン。
期せずして、マジックアイテムのレンタル料だけで対抗試合の賞金である1000ガリオンの1割弱を稼いだ俺は、その使い道に思いを馳せるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして夜。二校の到着が〝10月30日〟と微妙なタイミングになっていたのかが気になったが、ハロウィーン・パーティーの後に代表選手の発表した方が盛り上がるのだと考えたら、引っ掛かるところはあれど──その設定日に納得出来た。
(……いっそ、一週間や二週間くらい前倒しで来ても良かったろうに…)
昨日の歓迎パーティー、今日のハロウィーン・パーティーと、連続しているので大して心を動かされない祝宴にそんな事を思う。建前上とは云え、〝親善〟を名目としているならホグワーツには一日でも長く滞在しておいた方が良かったのではと思わなくもない。
料理の皿も粗方平らになり、ボーバトンとダームストラングからしたらお節介だろうとな事を考えていると、ダンブルドア校長が動きを見せる。……すると、発表を待ちかねてダンブルドア校長を注視していた連中を中心に静寂が拡がっていく。
そしてダンブルドア校長は咳払いを一つして語り始める。
「こほん──どうやら、ゴブレットが遂に選定を終えたようじゃ。……儂の検討が外れてなければ少しの後にゴブレットが代表選手を教えてくれるじゃろう。呼ばれた選手は教職員の方々の後ろの扉へ行く様に。……そこで第一の試練の課題について教えられる」
皆して、ダンブルドア校長の言葉で扉があるのを改めて確認した。そしてダンブルドア校長は杖を降ってホールの明かりを消してしまう。
……明かりを消したその時、ゴブレットに灯されていたゴブレットの炎が赤くなり、まるで触手のように〝しなり〟を見せ、その先端から焼け焦げた羊皮紙を吐き出した。
ダンブルドア校長はまた青白い色に戻ったゴブレットの炎を光源として、羊皮紙に記されていた学校とその代表選手の名前を読み上げる。
「どれどれ──まずはダームストラングの代表からじゃな…。……【ダームストラング専門学校】の代表はビクトール・クラム!」
「やった! でかしたぞ、ビクトール!」
(ですよねー)
ダームストラングの校長であるカルカロフは大いに喜んでいるが、俺はどこか冷めた気持ちで納得していた。……ダームストラングの生徒達は全員17歳以上で──参加資格こそ満たしていたが、その実質はクラムの一強。
(……まるで合コン等で周りを〝醜女〟で固めている女子(笑)みたいな手管だよな──お)
カルカロフの、いとも容易く行われる割りとえげつないクラム・キャンペーンに引いていると、またもやゴブレットの炎が赤くなり、次の代表を選出する。
「おお、次はボーバトンの生徒じゃな。……【ボーバトン魔法アカデミー】が代表はフラー・デラクールじゃ」
呼ばれたのは、えらく──それこそ〝人外〟のと云う前置きが付きそうなくらい別嬪なシルバーブロンドの少女。俺がこの少女──フラーの事を語る時ハーマイオニーは良い顔をしないが、俺はフラーの事が嫌いではなかった。
俺が思うに、フラー・デラクールと云う女性は最も愛に溢れた女性だからだ。……フラーは狼人間に噛まれて顔の形が無惨に──ワイルドに変わってしまったビルと結婚した。
……だとすれば、何と愛が深い女性なのだろうか。
閑話休題。
フラーはクラムと同様に、教職員の方々の後ろの扉へと入っていく。
ボーバトンの生徒達はダームストラングの生徒達とは違い本気で泣いていて、そんな生徒達から目を逸らすと、ゴブレットの炎はまたもや赤くなる。……消去法で、ホグワーツの代表が選ばれる番だ。
「やっとホグワーツの生徒じゃな──っ」
ダンブルドア校長は燃え盛る炎から吐き出された羊皮紙を見て、目を大きく瞠り──俺を見る。その時点でホグワーツからの代表選手が判った。
「……我が校、【ホグワーツ魔法魔術学校】からはロナルド・ウィーズリー!」
その時、時間が止まった。
SIDE END
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