ランブリング!!
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【RB1】
【RB第五話】
ドーム前へと集まったA組一同、ドーム入り口の大きさはちょうどRBが入れるぐらいの大きさだった。
入り口付近にA組以外の生徒も集まってくる。
どうやらライダーズの一年全員が三時限目は観戦するようだ。
「ライダーズ志望って、いっぱいいるのねクルス?」
「あん? ……お前も朝言ってたがRBパイロットは花形だからな。今やガキですらなりたい職業に《ライダーズ》って書くぐらいだしな」
ライダーズになるだけなら簡単だが、それで食べていくのは修羅の道だ。
安定して稼ぐ事は出来ず、負けたら修理費に追い回されて引退する人間もいる。
プロになっても入れ替わりは激しいこの界隈で暮らしたければ操縦センスを磨くしかなかった。
クルスとアリスの仲良さそうに喋ってる姿を遠巻きに見る人が居た――畠山海と友人二人だ。
「畠山くん、そんな遠巻きに見てても出会えないっすよ!」
「そうっす! あんな目付き悪いやつ気にせずアタックアタック!」
「わ、わかってるけどさ! 声の掛け方がわかんねぇよ……」
あれだけ容姿がいいと確かに声を掛けづらくなるのは仕方ないかもしれない。
それに、他の生徒もいる手前、断られれば話の種を撒くだけだ。
端から見ると楽しそうに喋ってる二人を羨ましそうに見る畠山海。
一方でトイレへ行っていた由加が戻って目撃した二人の会話姿を見て間に割り込む――。
「はい、加川さん。兄さんとの会話は終了です」
「ちょ、ちょっと!? 何で有川さんに決められなきゃいけないの!?」
「理由は簡単です。兄さんに近付く悪い虫は排除です」
瞳のハイライトが消えてる由加に、アリスは負けじと対抗した。
「虫虫って、虫じゃないよ! クルス、クルスはあたしと一緒だと迷惑?」
「あん?」
上目遣いで覗き込む様に見つめるアリス、普通の男子なら一発でノックアウトするぐらい可愛かった。
現にA組男子以外でもその可愛さに思わず写メを撮ろうとするぐらいだ。
異性から見ても可愛い一方で、毛嫌いする女子も。
必殺の上目遣いもクルスには何の効果もなく、ただ一言。
「知らん」
「ガーン!!」
「フフッ、兄さん……私は迷惑じゃないですよね?」
ついでと謂わんばかりに聞く由加に怪訝そうな表情を浮かべてクルスはばっさり告げる。
「暑苦しいから離れろ」
「に、兄さん……。相変わらずツンデレですね」
「……うぜぇ」
ポジティブ解釈の由加、うぜぇと思わずクルスも呟く。
「有川さんはもっとクルスと距離感持たなきゃダメだよ! 義妹でもクルスが迷惑してるじゃん!」
「義妹だからいいんです。本当に兄さんが嫌なら、私は離れますが。嫌ですか、兄さん?」
「……勝手にしろ」
そう呟くだけのクルスに、花開く笑顔を見せた由加は。
「はい。勝手にします♪」
「むぅぅ!」
何だか踏み込めない領域が出来た気がしてならないアリス――と、佐久間弥恵が現れ、手を叩いて注視させた。
「諸君、全員集まったようだな。これからFRBBを見てもらう。中では既にサバイバルバトルが開始されていて破片等も飛んでくるが、客席にはドーム用の電磁シールドが張られているから安全面は確保されている。各クラス毎に私に着いてこい」
言ってドームの開閉ドアを開け、中に入る佐久間弥恵に続いてクルス等A組と続いて入る。
防音設備が施されていても聞こえてくる鉄と鉄のぶつかる音、ライフルの発砲音、ミサイルの爆音。
長い通路を抜けた先に広がっていたのは、ビル群一角を切り取ったバトルステージだった。
道に散らばる瓦礫に廃車、崩れた高速道路、脱線した電車――それら全てが障害物となり、弾を防ぐ盾ともなっていた。
ビルの向こうで爆発が見える――爆風から抜け出る一機のRBだが、アームモジュールが破壊されたのか戦闘続行が難しい状態となっていた。
まだ肩のオプションモジュールのミサイルランチャーがあるため、全く戦えない訳ではないがここは素直に離脱が懸命だろう。
「すっげぇ……。うわっ!?」
観客席近くで爆発――直撃を受けたRBのアームモジュールが吹き飛び、電磁シールドにぶつかって地表に落ちていく。
『チックショー! アームモジュール高かったんだぞバカヤロー!!』
『へっ! そんな高いのを着けてくるから悪いんだよ!』
一機がもう一機を追い込む――曲がり角を曲がった先は行き止まり、そして追い付いた一機の銃口が向けられた。
『……チックショー!!』
発砲音と共に着弾する弾丸、完膚なきまでに各モジュールを破壊され、ボディモジュールが破損したモジュールを強制パージし、戦闘続行不可能と判断された。
直ぐ様牽引ドローンが投入され、回収していく一方では次の参加者がRBが投入される入り口から姿を現した。
入り口は出口でもある――こうやって新たに来た機体と入れ替わるように脱出出来れば撃破数に応じてクレジットが加算される。
獲得クレジットはドーム中央ビルの投影型ディスプレイに表示されていた。
『ヒャッホー! 出口だ出口!』
だが出口だからといって油断してはならない。
新たに参入したRBも狩人なのだから。
現れた単眼仕様のRB、周囲を確認するためか怪しく光を放つ。
入り口から出ると同時に張られた電磁シールド――これは入り口付近でハイエナ行為を出来ないようにするための措置であり、この場合に限り機体全てを覆う電磁シールドがありとあらゆる攻撃から開始十秒まで守ってくれる。
『退け退けーッ! これで三十万クレジットは俺の――』
一瞬だった、単眼仕様のRBの横をすり抜けようとした火影・弐式――単眼仕様のRBの左腕の刀モジュールによる一閃が煌めくと、刃が爆発し、火影・弐式は爆発に呑まれて戦闘続行不可能に――。
出口まで残り五メートルの距離――油断すれば獲得したクレジットも全てがパーとなり、修理費も取られる。
牽引ドローンがボディモジュールを回収する横で電磁シールドが切れた単眼のRB――登録名【阿良夜叉(アラヤシャ)】という名前に一人の生徒が声を上げた。
「あ、あれって――GⅠクラスの阿良夜叉じゃんッ!! うわっ、すっげぇ!!」
「あ、阿良夜叉ってあの!?」
口々に阿良夜叉の登場にざわつく観客席。
一方事情の疎いアリスは首を傾げてちゃっかりクルスの隣に座り、聞いてみた。
「クルス……あの阿良夜叉って?」
「……あぁ。……どっかのバカ親父が乗ってるんだろ?」
「え? バカ親父って……?」
バカ親父と言ったクルス――阿良夜叉は昨年、電撃的にGⅢクラスに参戦と共に制覇、そして一年後の現在はGⅠクラスのランカーとして様々なスポンサーが就いている。
ボディモジュールも含めてカスタマイズされたそれは元の原型である【黒影・零式】の面影は単眼のみという――。
新たに登場した阿良夜叉の存在に、バトルフィールドに居た参加者の目の色が変わった。
『阿良夜叉! 飛んで火に入る夏の虫だな!』
『こいつを倒せば、一気にGⅠクラスに行ける!』
『てか掛けられたクレジットは俺が貰うぜ!!』
阿良夜叉撃破クレジットは破格の一〇〇万クレジット――目の色を変えない方がおかしいだろう。
我先にと阿良夜叉へ挑む一機――跳躍し、全武装一斉射撃を行った。
コンクリート破片が周囲に舞う中、舞う砂塵から抜け出た阿良夜叉――一斉射撃によるダメージはなく、着地したRBに対してバズーカモジュールとオプションのミサイルランチャーをお見舞い――着地した硬直によって動けないRBは爆発に呑まれて戦闘不能に。
続いて纏めて三機が襲い掛かる――巧みな機動と障害物を駆使し、避けて曲がり角を曲がった阿良夜叉を三機は追撃。
刹那、阿良夜叉のオプションモジュール――地雷を踏み抜き、一機は爆発に呑まれた。
その一瞬、二機は驚きを見せて反応が遅れてバズーカとミサイルの爆発に呑まれていく。
開始一分で四機の撃破に、牽引ドローンは慌ただしくボディモジュールを回収していく。
誰の目にも明らかだった、次元が違いすぎると。
四機倒した時点でクレジットは二十万――長く生き残っていた機体と勝率を誇っていたらしくわりと高額だった。
そして阿良夜叉はその場に居た時間としては一分半ほどだったが、観客全てに異様な戦闘力を見せて悠々と出口へと消えていった。
サバイバルでは引き際も肝心、纏めて倒したのなら安全に離脱も可能になる。
残った三機も各々が離脱――そして直ぐ様別の入り口から四機現れ、またバトルが再開される。
GⅠランカーの登場に興奮冷めやまぬ観客席、ライダーズの生徒もさっきの一分半の戦闘を何度も何度も語り合っていた。
一方でため息を吐くのはクルス。
クルスはあの阿良夜叉の操縦者を知っている――勿論義妹である由加も知っていた。
あれに乗るのは有川来栖の父親、有川隆起(ありかわりゅうき)だ。
昨年、何を思ったのか突然ライダーズになるとか言い出し独学で操縦を学び才能を開花、現在に至るという。
今日が入学式と知っているから多分狙っていたのだろう――ある意味、ランカーとして弱いもの苛めしに来ただけにしか見えなかった。
「……けっ」
「あはは……兄さん。あまり気になさらずに」
「気にはしてねぇが……。チッ、クソ親父が……」
「……??」
話の事態を飲み込めないアリスは首を傾げるだけだった。
「さて諸君、そろそろ昼時だ。食堂は全科共通の食堂が近くにあるので其処で食べるように。その後はライダーズ諸君、校庭に集合だ。知らないものは居ないとは思うが念のため言っておく。滑走路が我が学校の校庭だ。平日に航空機の離着陸は無いので安心するように。では解散!」
FRBBが続く中、生徒は皆食堂に食べにドームを後にした。
「兄さん、私達も食べに行きましょう」
「あっ、クルス! あたしと一緒に食べよっ」
龍虎相打つ、既に犬猿の仲になりつつある二人を他所にクルスは食堂で飯を食べに向かうのだった。
「チャンスっすよ! あの目付きの悪い奴、いなくなりました!」
「お、おう! ち、ちょっと食事に誘ってみる!」
意気揚々とチャンスを狙っていた畠山海は、未だに言い争いしている二人に近付く。
畠山海の目的はあくまでも加川有栖だった――。
「よ、良かったら僕と食事でも――」
「あれ、兄さん居ない?」
「あっ、ホントだ。クルスーッ、待ってよー!」
「あっ! 何を抜け駆けしてるのですか!? 兄さんは私の兄さんです! 幼なじみであろうと兄さんに近付く虫は排除します!」
「もう! 虫じゃないし! 恋愛は自由だから良いでしょ!?」
二人言い争いながらクルスを追っ掛けていく一方で完全に忘れ去られた畠山海は膝から崩れ落ち、静かに涙するのだった。
後書き
一応バトル書いてみた
ってもわりとあっさり気味かな
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