NARUTO日向ネジ短篇
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【じいちゃんと姉ちゃんと時々おじさん】
前書き
アニボルの8〜9話にネジおじさんが居たら、という妄想です。
ボルトの眼の事で事前に連絡を入れておき、ナルト、ヒナタ、ボルト、ヒマワリは日向家へと向かった。
──待ちわびていたとばかりに早速出迎えてくれたのは、ナルトにとっては義父、ボルトとヒマワリにとっては祖父のヒアシだった。
「ボルト〜、ヒマワリ〜、おじいちゃんじゃよ〜!」
デレデレと二人の孫を抱きしめ、頬ずりするヒアシ。ボルトは若干迷惑そうだが、ヒマワリは楽しそうに祖父を抱き返している。
「父様ったら、私の甥っ子と姪っ子を独り占めしないでよねっ。…ボルト〜、ヒマワリ〜、ハナビお姉ちゃんよ〜!」
叔母であるハナビも二人をぎゅっと抱きしめる。
「──ほら、次はネジ兄様の番よ!」
「えッ、お、俺もか……!?」
従妹のハナビに促されたネジは躊躇したものの、伯父のヒアシとハナビを真似て、少し恥じ入りながらも笑顔でボルトとヒマワリを両腕に抱き寄せた。
「ね、ネジおじさんだよ〜…!」
「わ〜い、ネジおじさ〜んっ!」
ヒマワリはとても嬉しそうにぎゅうっと抱き返すが、ボルトは嫌がってはいないものの面倒そうな顔をしている。
「…白眼について話を聴きに来たのだったな。道場の方で話すとしよう」
ヒアシは先程の孫に対するデレ顔から普段の威厳のある顔つきに切り替え、ボルト、ナルトとヒナタを伴って日向道場へと向かい、ネジとハナビはヒマワリの相手をする。
「──お兄ちゃんね、今朝起きたら厨二病になってたんだよ? ヒマ、びっくりしちゃった」
「ん? ボルトが、ちゅうにびょう……??」
その聞き慣れない言葉に、困惑するネジ。
「な、何か悪い病気にでもかかったのか、お兄ちゃんは」
「あー、まぁ厨二病は厄介よねぇ。拗らせると大人になっても治らないみたいだし」
ハナビの言葉に、ますますネジは困惑する。
「な、なんだと…?! 日向家に来るより、病院に行った方が良いんじゃないか…!?」
「落ち着いて、兄様。思春期なら誰でもなる可能性あるし、拗らせなければ大人になるにつれて自然消滅するわよ。ほら、今人気の映画……あれの影響受けてるんじゃない? 兄様は流行りものに疎いからほとんど知らないでしょうけど」
「と、とにかくボルトには“ちゅうにびょう”とやらを克服してほしいものだ……」
真面目に心配している従兄の様子が、ハナビには妙に可笑しく見えた。
「お兄ちゃん、魔眼……じゃなくて、白眼開眼したって言ってたけど、おじいちゃんに見てもらえばほんとかどうか分かるかな?」
「白眼は先天的なものからヒマワリみたいに突然開眼したりするから……、まぁヒマワリの場合は普段蒼目だし、今の所すごく怒った時しか白眼に切り替わらないものね」
「ボルトも、感情の昂りか何かでしか白眼にならないんだろうか」
「どうかしらねぇ…、でも白眼に関してはヒマワリの方が先に開眼してるし、火影になる前のナルト義兄さんをロックオンの柔拳一撃で動けなくしちゃう威力だものね。天才よ、この子っ」
「あぁ、ヒマワリはきっと日向の才に愛されて──いや、この先ヒマワリがどうするかはヒマワリ自身が決める事だから、俺達がどうこう言える立場にはないな」
微笑してヒマワリの頭を片手で優しくぽんぽんするネジ。
「そうよね、ヒマワリの将来は自由だもの。…じゃあヒマワリ、おじさんとお姉さんとで“けんけんぱ”して遊んでよっか!」
「うんっ!」
──白眼について道場で話し終えたヒアシ、ボルト、ナルトとヒナタが日向敷地内の開けた屋外へ出、祖父ヒアシが直々に孫ボルトと手合わせする事になったようだが、父上が本気になってぎっくり腰でも起こしたら困るからと、ハナビがボルトと手合わせする運びとなった。
……ボルトはハナビと手合わせ中に白眼になる事はなく、何度立ち向かっても軽々躱されては組み伏せられ、影分身を使っても完璧な回天を駆使するハナビに勝てるはずもなく、手合わせは終了。
この際ネジおじさんとも手合わせをしてみたが、ネジは回天を繰り出すまでもなくハナビのように何度も軽くボルトを負かし、やはり白眼になる事はなく日も暮れてきた為一旦ボルトの白眼の事は保留になり、風呂に入ってサッパリした後ナルト、ヒナタ、ヒマワリ、ネジ、ヒアシ、ハナビ、ボルトの7人は夕食の席に着いた。
綺麗に盛られて並べられた和食メインの食卓にナルト、ボルト、ヒナタ、ヒマワリにとっては目にも美味しく食べて満足の夕食だった。
作ったのはハナビとネジで、ヒナタも手伝うと言ったがいつも家族の為に作っているんだからたまには休んでと二人に言われ、代わりにヒマワリが手伝いたがったのでそうさせた。
ハナビとネジは料理上手だが、話によればネジがハナビに料理を教えたようで、始めのうちハナビは失敗の連続だったらしいがネジが根気よく教えていったらようやくまともに作れるようになったそうだ。
食事中、隣に座って食べていたボルトにふとハナビが食べさせたのを見たヒマワリは、隣のネジおじさんに食べさせてあげたくなって、
「はい、ネジおじさん、あーんしてっ?」
と、箸で挟んだ食べ物をニコニコとネジの口元に向ける。…当のネジは、恥ずかしい気持ちになりながらも屈託のない笑顔を向けてくるヒマワリの好意を無下にするわけにもいかず、控えめに口を開けてパクッと頂いた。
「おいしい?」とヒマワリに聞かれ、「うん、美味しいよ」と返すと、ヒマワリは頬を赤くしてにっこりしたのでネジも微笑むが……その直後視線を感じた先にナルトが羨ましげにこちらを見つめていた。
ネジは何やら申し訳なくなって「ほらヒマワリ……パパにも食べさせてあげたらどうかな?」と言うと、ヒマワリは素直に応じ、ナルトパパにも笑顔で食べさせてあげる。
──すると今度はヒアシが羨ましそうにしているのをハナビが気づき、何故かヒマワリではなくボルトの方に振る。
「ほらボルト〜、おじいちゃんに食べさせてあげたらっ?」
「は? 何でおれが!?」
「ボルトよ…、そんなにワシが嫌か……?」
落ち込んだ素振りを見せ、しゅんとする祖父のヒアシ。
「…ボルト、おじいさんに食べさせてやってくれないか?」
「ね、ネジおじさんまで言うかよ。しょうがないなぁ……」
と言いつつ、ボルトが食べさせてあげるとヒアシおじいちゃんは満面の笑顔になった。
そんな家族の団らんのひと時をナルトとヒナタ、ネジとハナビは心から楽しんだ。
───その日はそのまま日向家に泊まる事になり、ボルトは一人眠れず縁側に座って白く輝く綺麗な満月を見上げていた。
「どうしたボルト、眠れないのか?」
「あ…、ネジおじさん」
ネジは普段離れに一人住んでいるが、今晩は日向家に一緒に泊まっている。
「おじさん……がっかりしただろ。おれ、結局白眼開眼してなくてさ」
「がっかりしてはいないよ、それなりの理由があって白眼を開眼したと思ったんだろう?」
「…そう思い込みたかっただけかもしんないってばさ。夢を…見てさ、特別な力もらったみたいで、それが白眼だと思ったんだけど」
「夢……か」
「バカにしてくれたっていいよ、どうせ夢の話だしさ」
「バカになどしない。──白眼ではないかもしれないが、その特別な力をいつか使いこなせるようになる可能性だって十分あるだろうさ」
「うん……それが何なのかハッキリしたら、おじさんにもちゃんと話すってばさ」
「父親であるナルトに話す方が先じゃないか? まだハッキリしていない事でも、きっと相談に乗ってくれるだろう」
「父ちゃんはただでさえ火影で忙しくて疲れてんのに、そんな余裕ないってばさ」
「それこそ今日はちゃんと付き合ってくれたんじゃないのか? 日向家まで一緒に来てくれたわけだしな」
「そりゃあ……けど父ちゃんにもがっかりさせちまったよ、きっと。ネジおじさんとハナビ姉ちゃんみたいに、白眼カッコよく決めたかったんだけどなぁ」
「フフ……ボルト、そう簡単には俺とハナビのようにはなれないぞ」
ボルトの頭にポンと片手を置くネジ。
「強くなりたいなら、特別な力だけに頼らず日々の修行の積み重ねが大切だからな」
「わ、分かってるよっ。つか頭に手置くの禁止だってばさ、もう小さい子供じゃないんだぞっ」
ボルトは煩わしそうに、しかしどこか恥ずかしげにネジの片手を頭から払いのけた。
「あぁ、すまん。つい、な……」
ネジはそんなボルトの様子が可愛らしくて仕方なかったが、決してそんな事は口に出来なかった。
ヒマワリならばともかく、もう幼くはないボルトを可愛いなどと言ったら男子のプライドを傷つけ兼ねない。
「まぁ、何かあればいつでもおじさんに相談しに来い。力になるから」
「うん、ありがとなネジおじさん。──つかおじさんっていい年なのに、結婚しないの?」
「なんだ、急に……」
「いやさ、ちょい気になって」
「俺は、お前達うずまき一家と家族でいられるだけで幸せだ。それ以上は……望まないよ」
ネジは心からそう言って、ボルトに微笑んだ。
「そっか……でもネジおじさんの子供ってのも、見てみたい気がするってばさ?」
「あのなぁボルト…、お前にそれを言われても困るだろう、俺が」
思わず苦笑するネジ。
「へへ、ごめん。──ふあぁっ、眠くなってきたってばさ」
「眠気があるうちに、布団に入って寝た方がいいぞ。俺は……もう少しここで月を眺めているから」
「うん、分かったってばさ……。じゃあ、おやすみネジおじさん」
ボルトは眠たげに目を擦りながら縁側を後にする。そんなボルトに、ネジはそっと優しい声を掛ける。
「……ゆっくりおやすみ、ボルト」
《終》
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