FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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昔々の物語
前書き
なんか暑い日と涼しい日が入り交じってて体の疲労度が半端じゃない・・・もう少し気温差がなくなってくれないかな?いや、五月頃よりかはマシなんだけど・・・
昔々、ある町にとても可愛らしい二人の少女がおりました。
二人は長く、美しい髪をしており、同世代の男女から大変な人気がありました。
優しい両親と共に四人で暮らしていた少女たち。周りには常に仲の良い友人たちがいてくれ、とても幸せな日々を送っていました。
しかし、その幸福は、そう長くは続くことはありませんでした・・・
シリルside
「ねぇ、ウェンディ」
「何?シリル」
敵の襲撃を受け、城外から激しい戦いの音が聞こえてくる。本当は気を抜いているわけにはいかないのだけど、どうきても気になることがあり、それを確認しないわけにはいかない。
「ソフィアの秘策って、結局なんだったの?」
一ヶ月前に、俺やサクラを操ったルナと呼ばれる女性と対決することが決まったソフィア。でも、ルナは変化した敵を自在に操ることができる非常に厄介な相手。でも、その魔法から逃れる術があるという彼女は言っていたのだけど、どんな秘策なのか全然わからない。
なので、ウェンディがそれを聞きに行ってくれたんだけど、どういうわけか今の今まで話してくれなかったので、今このタイミングでならどうだろうかと質問してみたのだ。
「あたしも気になる!!ウェンディ全然教えてくれないんだもん!!」
この場に一緒にいたシェリアもソフィアの秘策には興味津々。ウェンディは「また今度ね」というだけで、全然内容を明かしてくれないけど、そろそろ回答してくれてもいいんじゃないだろうか?
「う~ん・・・」
俺たちに詰め寄られて頭を悩ませる天空の巫女。彼女はしばし脳内で格闘を繰り広げる。
「もうバレる心配もないし、いいかな」
自分に言い聞かせるようにそう呟いたウェンディは、俺たちの方へと体の正面を向ける。
「ねぇ、ソフィアの特徴で一番最初に思い付くのって何?」
こちらが質問しているのに、相手から質問返しが来るとはこれいかに。だけど、そのまま押し問答しても仕方ないので、素直にソフィアの思い付く特徴を挙げてみることにした。
「変態」
「レズっ娘」
ソフィアで真っ先に連想できるワードといえばこの二つだろう。なので素直にそう告げると、質問した少女は首をブンブンと横に振る。
「違う!!中身じゃなくて見た目!!見た目で一番最初に思い付くのは!?」
質問の意図を理解していなかったことに申し訳なさを感じつつ、改めて質問の答えを考える。でも、その答えに至るのに、そう時間はかからなかった。
「「銀髪」」
愛らしい見た目もまぁ印象的といえば印象的だけど、それよりも先に思い付くのはあの長くてサラサラの銀髪。あれはまさしく天性のものなんだろうな。女子としては羨ましい髪質ではあるだろう。
「だよね。でもさ・・・」
一瞬間を置く天竜。俺たちは彼女から次に発せられる言葉を待ちきれず、身を乗り出す。
「ソフィアって、あれが本当の見た目じゃないんだって」
「「・・・え?」」
何を言っているのかわからず固まる俺とシェリア。ウェンディからその理由を明かされるまで、その言葉の意味を理解することはできなかった。
第三者side
ザシュッ
「ぐっ・・・」
ドラゴンフォースを解放し、旧友との一戦に臨んでいるグラシアン。その腹部から、鮮やかな鮮血が滴り落ちる。
「どうしたの!?それがグランの本気なの!?」
ジャンプしながらグラシアンの真上に達すると、手の中から何かを弾くような動作をするイザベリー。それは、瞬く間にグラシアンの肩を直撃し、青年は痛みに顔を歪ませる。
「くっそ!!」
痛みを振り払うような、自分を奮い立たせるような、そんな大声を出して起き上がる。グラシアンは魔力を拳に込めると、地面に着地しようとしている女性目掛けて駆け出す。
「幻竜の斬撃!!」
スカッ
渾身の一撃で流れを変えようとした幻竜だったが、それはイザベリーの予想の範疇だった。彼女は軽く頭を下げると、その攻撃から容易く難を逃れる。
「動きが鈍いよ!!」
「ガッ!!」
接近してきた敵の顎に平手を打ち込む。腕を降り下ろしていたグラシアンは、バランスを崩して後方へと倒れそうになる。
タッタッタッ
しかし、足を小刻みに動かすことでなんとか重心を保つことができた。だが、そのまま倒れた方が彼としては良かったのかもしれない。
ピンッ
イザベリーの手からガラスが放たれる音が微かに聞こえる。五感の優れた滅竜魔導士だからこそ聞き取れたような小さな音だったが、それが聞こえたドラゴンはその場から体を反らそうとする。
ザシュッ
しかし、バランスを整えるのに意識のいっていた彼が、そう簡単に次の行動に移せるわけもなかった。右胸を直撃したガラスが、青年の体を貫き、後ろの壁へと突き刺さる。
「がはっ・・・ゴホッ・・・」
致命傷になりかねない一撃を受けた青年は、傷口を押さえて膝をつく。青年が咳き込む度に、口の中から血液が飛び出てくる。
「全然動きにキレがないよ、グラン」
咳を落ち着けようとしているグラシアンの顔を蹴り上げ、押し倒し馬乗りになる。彼女はグラシアンの額に拳を突き付けた。
「私に対する罪滅ぼしなの?やっぱり本気で戦えないの?」
寂しそうな表情を浮かべながら、イザベリーは今にも泣き出しそうな目をして問い掛ける。それに対しグラシアンは、額に押し付けられた拳を握り、押し返していく。
「そうなのかもな。なんだか力が入らねぇんだわ」
言い訳なんか本当はしたくない。しかし、彼女を傷付けたくないという想いが余りにも強すぎて、幻竜は本来の力を発揮できずにいた。
「裏切ったから?ハルとユウを死なせちゃったから?」
自分が独房に叩き込み、結果として命を落とすことになったかつての仲間たち。それが心に引っ掛かっているから本気を出さないのかと問われると、彼は首を振る。
「違う。たぶん・・・な」
何が心に引っ掛かっているのか、可能性が多すぎて頭の中で纏められない。
トドメを刺そうと武器を持つ手を額に押し付けようとするイザベリーとそれを払い除けようとするグラシアン。二人の静かな攻防が繰り広げられている。
「そういえば、なんでルナの相手をあの子に任せたの?」
そんな中、脳裏を過った質問をぶつけてみることにする。それは先程まで自分と共に行動していた、他者を操る魔導士のこと。
「グランが私の相手をするために、余った子を当てたの?」
「いや、違うよ」
力で勝るグラシアンが、少しずつ少しずつイザベリーの腕を押し返していく。このままでは形成が逆転しかねないと判断した女性は、一度優位な体勢を捨てて、距離を取ることにする。
「あいつが自分から、相手をしたいと言い出したんだ」
「あの子から?」
乱れる呼吸を整えつつ、ゆっくりと立ち上がる。フラフラと今にも倒れそうになっているグラシアンは、何度も何度も深呼吸をし、ギリギリで意識を保つ。
「何か秘策があるのかな?」
「そうらしいな」
詳しいことはほとんどの人間が知らない。しかし、失敗の許されないこの任務で実行するということは、よほど自信がある策なのであろう。
「でも、あの子に私を止められるかな?」
「勝手に勝つ気でいるんじゃねぇよ」
痛む体に鞭を打ち、敵を見据える。
「お前はここで止めてやるから、心配するな」
「昔の目に戻ってきたね、グラン」
いつもとは異なり鋭く、獲物を見つけたような目をしている幻竜。ハンターのようになった彼を見た旧友は、嬉しそうに微笑んだ。
「私があなたを操れない?」
「うん。そうだよ」
二人の銀色の髪をした、全く同じ姿の少女たち。そのうちの一人・・・偽者と思われる方の少女が、不満そうな顔を浮かべる。
「あなたは知らないだろうけど、私の魔法は敵の魔力の大きさなんて関係ないのよ。どんなに強い相手だろうと、操ることができる」
実際に、以前操られたシリルの方がソフィアよりも、そして、操っていた術者よりも魔力が高い。そういった類いのことで勘違いしているのだと思ったルナは忠告するが、それでもソフィアの表情は変わらない。
「大体聞きましたよ。相手に『あれは自分だ』と一瞬でも思わせれば操れるんですよね?」
「あら?知ってたのね」
様々なことを調べることができる古文書を使用するヒビキがいるため、魔法の細かな情報等を簡単に入手することができる。
(そこまで知ってるのに、なんでこの子はこんなに自信満々なの?)
自分の魔法のことはきちんと理解した上で、対抗策があるらしく戦いを挑んでくる少女。頭の中に疑問がいっぱいでルナは混乱していたが・・・
「まぁ、そんなのどうでもいいか」
自分の魔法が攻略されるわけがないという自信から、行動に移ることにする。
「ソフィア、その場から動かないで」
ヒビキの古文書では知られていないのだが、実はルナは変身した相手の大まかな情報を脳内に入手することができる。プライバシーの侵害のような魔法だが、他者に気付かれたことはないため全く問題ない。
(これで動きを封じて・・・)
ゆっくりと接近し、手刀を降り下ろそうとするルナ。そして腕を降り下ろした時、
ヒョイッ
ソフィアが一歩下がり、その攻撃を回避したのだ。
「え?」
予想外の出来事に目を疑う。確かに敵は始めから攻略する方法があるように示唆していたが、ハッタリだと思っていたため、気にしていなかった。
それなのに、本当に目の前の少女を操ることができておらず、混乱してしまう。
「ウソでしょ!?」
偶然、たまたま逃れただけなのかもしれない。そう考えたルナは体を動かし、同様な動きをするかをチャックするが、ソフィアはそんなことなどお構い無しに突進してくる。
「そんな・・・」
破られるはずがないと思っていた、自信満々だった魔法をいとも容易く攻略されて、失意のどん底に陥る女性の腹部に、ソフィアの拳が突き刺さる。
「なんで・・・私の魔法が・・・」
魔法を奪われてしまっては、もはや反撃の余地など微塵もないルナは、ソフィアに次々に繰り出される攻撃にただただ打ちのめされている。
「あなたの魔法はすごいんだよね。だってシリルを操れるんだもん」
見た目とは異なり、シリルがかなりの強者なのはフィオーレならみんなが知っている。それは当然ソフィアも認めており、彼を操れるルナを純粋にすごいとはわかっている。
「でも、物事には相性があるんだよ。ソフィアにはあなたの魔法は通じない。ただそれだけだよ」
さらに攻撃を繰り出し、敵が意識を失いかけたところで、地面へと押し倒す。
「あとはこれで封じて終わりだね」
立ち上がることなどできそうにない女性を見て、お尻を触ったりしながらポケットから不思議な形の手錠を取り出す。それは、以前冥府の門でエルザやナツが拘束された時に使用された魔封石を使ったものだった。
ガチャッ
手錠で魔法を封じ込めることに成功したソフィアは、他の暗殺隊に助けられては元も子もないので、一度撤退して牢屋に叩き込むことにした。
「ほら、立って立って」
「うぅ・・・」
ソフィアよりも敵の方が体が大きいため、意識を失わせずに拘束し、牢まで一緒に歩いて連れていかせることにした。その際魔法を封じられたルナは、変身していたソフィアの姿から、彼女自身の姿へと戻っている。
「ねぇ、教えてほしいことがあるの」
「??何?」
動きを封じているのをいいことに体をベタベタと触っているソフィアを振り払おうとしながら、ルナは気になっていた問いをぶつけてみることにした。
「なんであなたは操れなかったの?」
絶対的な自信のあった魔法。だが、それは彼女に一切通用しなかった。その理由が思い当たる節がなく、どうにもモヤモヤする。
「そんなの簡単だよ。あなたの魔法は相手にその姿が自分だと本能的に思わせること。それがソフィアに効かなかった理由」
意味がわからず、首をかしげるルナ。そのどこに攻略の糸口があるのか、彼女には皆目検討がつかない。
「それのどこに問題が・・・」
「えぇ!?まだわからないの?」
ソフィアは拘束されているのをいいことに、自分よりも背の高い女性の頭を軽く叩いた後、確信へと話を移す。
「自分の姿にあなたがならなければ、操られることはない。ソフィアはその姿をソフィアだと思ってないの」
「え・・・」
思考が停止する。変身魔法と言うわけではないだろうし、ルナが知っている彼女の姿はこの状態で間違いないはず。それが違うというのは、意味がわからない以外の何者でもない。
「本当のソフィアはね・・・」
シリルside
「あれが本当のソフィアじゃない?」
「それってどういうこと?」
ウェンディの言葉の意味がわからず、目をパチクリさせている俺とシェリア。そんな俺たちを見たウェンディは、ポケットから一枚の写真を取り出す。
「これ、ソフィアからもらったんだけど・・・」
手渡された写真に視線を落とす。そこには小さな女の子二人と、その両親と思われる人物たちが写っていた。
「「かわいい~!!」」
ロングヘアの二人の少女・・・どのくらい年齢が違うのか、頭一つ分ほど身長が違う彼女たちは、この上ない笑みでピースをしている。
「その小さい子・・・ソフィアなんだよ」
「「え・・・」」
何気なく告げられた衝撃の事実。しかし、その写真の少女たちを見て、頭が混乱してしまう。
「え?これがソフィア?」
「でもこの子・・・」
その子がソフィアだということが、全く納得できない。だって写真の少女たちは、二人とも長く黒い髪をしているのだから。
後書き
いかがだったでしょうか。
グラシアンの過去も出たところで、続いてはソフィアの過去に移行しようと思います。
ソフィアがあんな変態になった理由がわかるようにするつもりです。
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