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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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相反する二人

 
前書き
梅雨とか言ってるけどあまり雨が降らないでくれて快適に日常生活が送れますね。
まぁ水がないと大変だから適度に降ってくれた方がいいことはいいですが・・・難しいところです 

 
ドゴォン

メルクリアスの後方でぶつかり合っている炎と氷。リーゼントヘアの男は炎で足場を作ると、剣を作り出し地上にいる銀髪の青年へと突進してくる。

「アイスメイク・・・ドラゴンフライ!!」

それを見てリオンは無数のトンボを作り出し、クレサン目掛けて打ち込む。地に足をつけていない彼は、それを回避する術はない。

「甘いな」

だが、そんなことは彼も承知の上。炎の剣を強く握り締めた彼は、顔の前にそれを構え、自らの体に向かってくる氷の造形から身を守る。

「ハッハーッ!!」
「がはっ!!」

全ての攻撃を防ぐことはできていなかったが、急所を突くものだけは見事に防いだクレサンは、敵の腹部を突進した勢いそのままに切り裂く。

「まだまだぁ!!」
「やらせるか!!」

続いて攻撃を繰り出そうとするリーゼントに、振り向き様に氷の虎を打ち出すリオン。それによりクレサンはバランスを崩し、転倒する。

「アイスメイク・・・」
「!!」

転倒している男の上から、氷の造形を放とうと飛びかかる。

大鷲(イーグル)!!」
「ぐはっ!!」

上から巨大な鷲の強襲に思わず吐き出しそうになるクレサン。腹部を押さえ起き上がってこれない彼を見た青年は、地面に着地しつつ敵を見下ろす。

「レオンがやられたと聞いたからどんなもんかと思っていたが、単に敵が多かったからか」

聞いたところによると、自身のいとこが相手をしたのは四人との話だった。少年は敵が多かろうが苦にしないほどの力はあるが、今回は疲労も重なり思ったように戦えなかったのだと青年は結論付ける。

「ナメるなよ」

一人で納得していたところ、相手の男がフラフラと立ち上がり、両手を合わせる。

「俺とお前なら、俺の方が有利なんだよ!!」

そう言って炎の鷹を作り出し、氷の造形魔導士を攻め立てようとする。

「有利とかそういうのを考えてる時点で、お前の負けなんだよ」

しかし、青年は軽く腕を振るうと、炎の造形はあっさりと凍りつき、やがてバラバラに砕け散る。

「バカな・・・炎が凍らされて・・・」

本来ならあり得ないような光景に目を疑うクレサン。冷や汗が背筋を流れる彼を見て、リオンは服を脱ぎ捨てる。

「造形魔法は自由の魔法。全ては術者の思うがままにできるんだ!!」

全身から溢れだす魔力。その冷気は強く、周囲を凍てつかせる。

「氷刃!!白鳥ノ翼!!」
「がはっ!!」

無数の翼の形をした氷の刃が、炎の造形魔導士の体を切り裂く。多方向攻撃を受けたリーゼント頭の男は、力尽き、その場に崩れ落ちた。

「呆気ないな。まぁいい」

周囲を見回し、現在の戦況を確認するリオン。王国兵と暗殺部隊たちは拮抗しているように見えるが、わずかながらに王国兵が押しているように見える。

「ヒビキ、そっちはどう・・・」

このまま行けばまもなくこの場の防衛も終わる。そう思った青年は、もう一人の強者にして、最も警戒するべき人物である敵と戦っている仲間の方を見る。

「な・・・」

だが、彼が振り向いた時には、その仲間は地面にひれ伏し、白目を向いてしまっていた。














ビュッ

空気を切り裂く剣の音。それを振るう女性は長く、黒い髪を揺らしながら、全身黒ずくめの男を手数で圧倒する。

(相性は悪い・・・か?)

防戦一方・・・いや、ただ交わすことしかできずに攻め込まれている青年は、全く反撃する余地のない今の状況に、苛立ちを押さえられない。

(いや、それ以上に向こうが強すぎるか。さすがはフィオーレでも有数の魔導士だ)

一向に攻め手を得ることができないまま、ただ回避するしかないユウキは、なんとかカグラの隙を突きたいが、そんなものを与えてくれるほど、彼女は甘くない。

「ネ拘束チューブ!!」
「ハッ!!」

そこからわずかに離れたところでは、猫耳の女性とショートヘアの女性の二人が戦っている。自身の魔法で敵の動きを封じようとするミリアーナと、それを自らの魔法で外させるエミ。両者ともに攻撃を与えることができず、激しいマウントの取り合いが続いている。

「ムムム・・・全然攻撃が当たらない・・・」

バランスを崩す魔法を扱うエミの前に、数で応戦しようとするミリアーナだったが、それにも対応してくる敵に攻めることができない。

「ほいっ」

ガクッ

「しまっ・・・」

ほんのわずかな隙だった。思ったような攻撃ができずに苛立ち、一度手を止めてしまったそのタイミングで、突然片膝が折れ、その場に膝をついてしまう。

「トゥ!!」
「ミャッ!!」

すぐさま立ち上がろうとしたミリアーナだったが、それよりも早く女性の蹴りが肩を撃ち抜く。その反動で地面に倒れたミリアーナに、エミは馬乗りになっていた。

「これで動きを封じるよん」
「か・・・体が・・・」

額を人差し指と中指で軽く突かれたミリアーナは、体の自由が奪われ一切の動きが封じられる。

「私の魔法はね、ホルモンバランスや筋肉のバランス、神経のバランスまで崩すことができる。しかもこれは一度かけてしまえば元に戻れない。戻すには、私自身に解かせるしかないの」

シリルの変化が解けないことからおおよそ予想はできていたが、まさしくその通りだったエミの魔法の正体。つまり、一度動けなくなったミリアーナは逃れることができない。

「ホワイトムーン!!」
「!!」

馬乗りにした敵にトドメを刺そうとした時、横から白い髪の少女が回転しながら蹴りを放ってくる。不意を突かれたエミは、交わすことができずにその攻撃を受けてしまった。

「救出成功~!!」
「大丈夫?ミリアーナさん」
「うん、ありがとう」

シャルルがエミの気を引いている隙に、セシリーとラウルがミリアーナを救出し、距離を取っていた。

「ナイスシャルル。後は私に任せて」
「フォローするわ」

白い頭の少女の横に並ぶ桃色の髪をした少女。彼女は自分たちを見据えているショートヘアの女性に向けて、魔法陣を書き上げる。

「あら?あなたはルナにやられた・・・」
「あの人はいないけど、あなたでリベンジさせてもらいます!!」

気合い入りまくりのサクラとナメたような視線を向けるエミ。対照的な二人がぶつかり合う。

















「影竜の斬撃!!」

キンッ

黒い影を纏った右腕を振り上げるドラゴン。その重い一撃を、ポニーテールの女性は光る剣を両手でしっかりと持ち、ガッチリと受け止める。

「影竜の・・・」

鍔競った状態でのしばしの膠着。すると、ローグがその状態のまま頬を大きく膨らませていく。

「!!」

敵の異変に気が付いたエーメは引こうとするが・・・

「咆哮!!」

それよりも早くローグのブレスが放たれる。

「うわっ!!」

至近距離でのブレスに吹き飛ばされる。その際、掴んでいた剣が手から離れてしまう。

「しまっ・・・」

すぐさま立ち上がり、剣に向かって走り出そうとしたエーメだが、彼女の前に黒い影が立ちふさがった。

「終わりだ。降参するなら命までは取らないぞ」

元々命を取るつもりなどさらさらないが、その方が脅しとしては効果的なため、言うだけいってみたローグ。それに対しエーメは奥歯を噛み締める。

メキメキ

敵が降参するまで時間の問題かと思われていた矢先、ローグの景色がグラリと揺れる。その原因は、地面に大きな亀裂が入ったからだった。

「!!うおっ」

足が亀裂にハマりバランスを崩す影の竜。その隙に、エーメは彼の脇をすり抜けて光の剣を取る。

「大丈夫か?エーメ」
「すまん、ネイモン。助かった」

その亀裂の正体はこの場で共に戦っていたもう一人の幹部の攻撃による派生だった。せっかくの好機を逃してしまったローグは、険しい表情で並んだ二人の敵を見据える。

「すまねぇローグ。邪魔しちまったみたいだな」

背後から声をかけてくる金髪の青年。彼は多少の傷は見受けられるものの、大きなダメージを受けているわけでもないようだ。

「構わん。むしろ、この方が俺たちには向いているのかもしれん」
「それは言えてるな」

一対一の構図から二対二へと変化する四人。だが、それは二人の竜からすれば、願ったり叶ったりの展開なのかもしれない。

「これにグラシアンがいれば、完璧だったな」
「あいつにはあいつにしかできないことがある。ここは俺たちだけでやるしかない」

息ピッタリで魔力を高めていく二人。次第に彼らの魔力が高まっていくと、それぞれの体を白と黒のオーラが包み込み、顔にはドラゴンの鱗が姿を見せる。

「ほぅ・・・あれは・・・」
「ドラゴンフォースか」

太古の世界を支配したドラゴンと同じ力を得ることができるというドラゴンフォース。それを、第三世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は、自身の力で解放することができる。

「行くぜ!!ローグ!!」
「あぁ!!」

ドラゴンの力を得た二人が全速力で敵に突っ込んでいく。その速度は先程よりも速くなっており、一瞬のうちにエーメとネイモンの目の前に到達する。

「なっ!?」
「速い!!」

あまりの速度に驚愕する二人。その二人の腹部に、白と黒の拳がそれぞれ突き刺さる。

「「ぐっ!!」」

アッパーパンチだったため、宙に体が浮き上がる。そのタイミングで、二人の竜はサイドから蹴りを放ち、二人を強く叩き付ける。

「白竜の・・・」
「影竜の・・・」
「「咆哮!!」」

そのまま二人息を合わせてブレスを放つ。それは、敵を瞬く間に飲み込んだ・・・かのように思えた。

「甘いな」
「「!!」」

敵に直撃するはずだった攻撃が、真っ二つに分裂し、二人の脇を抜けていく。

「魔法が・・・」
「斬られて・・・」

通常ならあり得ないような出来事に目を疑わずにいられない。驚愕していると、難から逃れた二人がスティングとローグに攻撃を繰り出す。

「ぐあっ!!」
「くっ!!」

ネイモンの人差し指とエーメの光の剣が二人の腹部に突き刺さる。その一撃の重さに、二人は倒され、尻餅を突く。

「私の剣は全ての魔法を切り裂くことができる。貴様ら魔導士の難敵というわけだ」

剣先を構えるエーメがローグを見下ろしつつそう告げる。だが、信じられないことにローグはその剣を掴み、立ち上がる。

「悪いが、その程度で引くつもりは一切ないぞ」

手から血を滴らせつつポニーテールの女性に顔を接近させ睨み付ける。その表情には、負けるわけには行かないと言う強い気持ちがにじみ出ていた。


















(ここら辺でいいか)

かつての仲間を脇に抱えて城の敷地の中でも、より人のいないところへとやって来た幻竜。彼はそろそろいいかと立ち止まると、抱えていた女性をその場に下ろす。

「あれ?ここでいいの?」
「あまり離れすぎると何言われるかわからないからな」

ジタバタせずに連れ去られるがままだったイザベリーは、グラシアンから降ろされて寂しそうだったが、彼はそんなのどうでもいいといった表情をしている。

「それで?戦うの?殺されるの?」

以前邪魔された途中から話を始めようとするイザベリー。それに対し、グラシアンは袖を捲り解答する。

「悪いけど、お前をここで倒させてもらう」
「だよね!!それでこそグランだよ!!」

ほしかった回答だったのか、イザベリーは嬉しそうに頬を緩ませる。

「でもごめん。グランはここで絶対に倒さなくっちゃいけないの」

手を強く握り締めるイザベリーを見て、グラシアンは体をその場からズラす。その結果、彼の真後ろにあった木に何かがぶつかり、斬り倒される。

「俺にもお前を倒さなければならない理由ができた」
「あの金髪に助けられたから?」
「まぁ・・・それもある」

一度大きく深呼吸をすると、グラシアンは全身に紫の魔力を纏っていく。すると、彼の顔に、スティングたちと同じようにドラゴンの鱗が現れる。

「けど、それよりももっと大きな理由があるんだ」
「大きな理由?」

首を傾げ、それが何なのかわからないといった表情をするイザベリー。そんな彼女を、幻竜は指差す。

「お前にこれ以上、罪を背負わせたくないんだ」

共に過ごしてきた仲間だったから。かつて自分のために踏み台にした相手だったから。様々な感情が、彼に、彼女を解放するようにと命じている。そんな気がグラシアンにはしていた。

「優しいね。グランは」

汗を拭うように、目元を手首で擦った茶髪の女性は、今までとは異なるほど真剣な表情へと変わっていく。

「もっと早く、この気持ちを伝えていたら・・・私たち、今こんな風になってなかったのかな?」
「そうかもしれない」

二人の目線が下を向き、お互いにあの時こうしておけばと、後悔が脳裏をよぎる。

「さようなら、グラン」
「そうはいかない。お前には罪を償わさせてやる」

女性の頬を滴る涙と、男性の唇から流れてくる血液。それが地面に落ちた瞬間、二人が動いた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ソフィアの件とラストのことしか考えてなかったせいか、イマイチバトルをやる気が起きない。
まぁ、最終決戦(ラグナログ)で全力バトルするつもりだから、今回はお遊び程度でいいかな? 
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