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夢値とあれと遊戯王 太陽は絶交日和

作者:臣杖特
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レベルを持たない HYO

 
前書き
決闘無しです 

 
「うーん、」
 辺り一面銀世界、厚い毛皮を纏った動物が呑気に過ごす中、沓査(クツサ) 芽里(メリ)はコートを着込んで探しものをしていた。
「ここはどこなんだろう?早くみんなに会いたい」
 芽里が己の第六感を生かして、南極にてサンサーヴの捜索を行っていたのが少し前。兄の沓査(クツサ) (ケン)からサンサーヴを発見したとの情報を聞き故郷に帰省しようとしたまでは良かったが、芽里は迷子になってしまった。というわけで現在、芽里は北極にいる。
 芽里がそうしてあてもなくさまよっていると、ふと人影をみつけた。数にして10前後だ。
(あの人達なら、何か知っているかもしれない)
 芽里は期待を込めて駆け寄った。
 人影に近づくに連れ、老爺の声が聞こえるようになってきた。
「こぉこにもサンサーヴは無いのか!」
「で、ですが」
「ぬぁああ、サンサーヴはどこにある!?」
「わ、我々でも一生懸命調べております」
(あら、あの人達もサンサーヴを探しているのかしら?)
 芽里はまだよく見えない人々に親近感を覚えた。
「あのー!」
 芽里は大声をかけながらそこに歩み寄った。
「なんじゃー!」
 一番声の大きい老爺の声が返ってくるぐらいになると、姿がはっきりと見えるようになった。
 黒服サングラスで当惑している男女の箱に入るようにしながら、袴の老爺が芽里を睨みつけていた。
 最初に彼らを見た芽理は、まず第一に(寒そう!)と思ったが、黒服の男女は寒さより老爺によっぽど手を焼いているようだ。案外寒さに強い素材を使っているのかもしれない。だがその中心の老爺は、自身の体を抱きしめガチガチと震えている。
「サンサーヴの場所なら、知っていますよ?」
「何ぃ!?」
 老爺が叫び、周囲の黒服達が一斉にざわついた。
 芽里は彼らに、研から聞いた情報を話した。
 それを聞いた老爺は驚いたような表情をしたが、それから少しして、プッと吹き出した。
「あーふぁっふぁっふぁ!それは無い!それは無いんじゃよ」
「なんでですか?」
 芽里はムッとなって尋ねた。
「そこは既に毛糸(ケイト)が探していて、無いから探さなくていいって言ってるエリアじゃ。あるはず無かろう」
「で、でも」
「大方、お前さんの兄が間違えたんじゃろて」
「ありえません!」
 芽里は思わず叫んだ。
「そもそも兄さんが間違えたと言うなら、その毛糸って人のことを疑うべきなのではないですか?」
「なんじゃと小童(こわっぱ)?」
 老爺がギンと睨みつけた。
「っ!」
 芽里は半歩後退した。だが、呼吸を整えてから半歩前進した。
「兄さんだって間違えるし嘘はつく。だけど、知らない人にいきなり疑われる筋合いはありません!」
「ほざけ小童。わしの可愛い孫娘は間違えることも(たばか)ることも決して無い!」
「「……」」
 2人の間にピリピリとした空気が流れた。
「こうなったら」
 芽里はデッキを構えた。
「白黒つける必要がありそうじゃのう」
 老爺もデッキを構える。
「「(でゅ)……」」
「あなた達の求めるサンサーヴはもう存在しませんよ」
 スッと滑り込むような声が、2人の動きを止めた。
「「……え?」」
 2人が拍子抜けしたように声のする方を向くと、もこもこの服をきぐるみのように着込んだ子供が1人ポツンと立っていた。
「おや、まだわたしの名前を名乗っていませんでしたね。ぼくの名前は、荻路(オギロ) 十海(トミ)です。宜しくお願いします」
 十海はペコンとお辞儀をした。
「ま、待て、サンサーヴが存在しないって、」
「サンサーヴは老伍路(オイゴロ) 夢値(ムチ)決闘(デュエル)で無力化しました。今あるのは、ただの石です」
 焦る老爺に、十海は淡々と返した。
「む、無力化?」
「はい」
 芽里の疑問に十海は頷いた。
「九衆宝 毛糸さんの作ったサンサーヴを無力化する装置を借りたようですね」
「毛糸!?」
 老爺が十海に掴みかかった。
「毛糸が、そんなん作ったのか?そんなことしたらわしの栄華が台無しじゃよ?何故?まさか、嫌々作らされたのか!?」
「さぁ?そこまではわたしの耳に入っていませんね。ですがぼくの想像で言うなら……」
 十海は「うーん」と上を向いた。
「実はサンサーヴ嫌いだったんじゃないですか?」
「んなわけあるかぁあ!」
 老爺が怒鳴るが、十海は胡散臭いぐらいニコニコしている。
「九衆宝 毛糸さんはサンサーヴを完全に破壊したいとしか思えないような装置を制作したり購入しているんですよね」
 十海の足元からピョンとボールが飛び出した。十海はそれをキャッチして中を開ける。
「はい、レシート」
 十海が差し出したレシートを老爺は奪い取り、食い入るように睨みつけた。
「うううう分っからぁああん!」 
 老爺が放り投げたレシートを黒服の1人がキャッチする。
「よ、よく分からんが、毛糸にはそんなガチャガチャしたもんは似合わん!毛糸だって、そんなの使わん筈じゃ」
「こ、これは、光を当てた物の化学反応を抑えるライトですね……」
 黒服は恐る恐るといったように呟いた。
「何?」
「しかも明らかに毛糸お嬢様のご購入記録です」
「何ぃ!?」
「へぇ、そうなんですか。じゃあそこに決闘なり諸々を加えれば、サンサーヴの封印も夢ではないのかもしれませんね」
 十海は雑っぽそうに言った。
「そ、そんな……。毛糸が、毛糸が、わしに隠し事なぞ……」
 老爺はがっくりと項垂れた。
「さて、次の任務に移りましょう」
 十海はどこ吹く風と言った風に手をパンと叩いた。すると、芽里達の前に液晶画面が現れた。
「これは、何なんですか?」
「ハンター達にサンサーヴを諦めてもらう為のダイジェストです。(モク)さんがサンサーヴに取り憑かれてから老伍路 夢値に決闘で負けるまでの、樢さんにとって赤裸々なメモリアルです」
「あの!」
 芽里は挙手した。
「はい」
「どっちにしろ私、家に帰りたいのですが、ここから帰る方法を何かご存知でしょうか?」
「ん、帰れるように手配しておきます」
「わぁ!ありがとうございます」
「そりゃあよかったですね、スイッチオン!」
 映像が流れだした。少女と男の子が対峙している。
「これ違うやつですね。サンサーヴを失った後の樢さんと老伍路 夢値の決闘ですね」
 十海はそう言うとどこからか取り出したリモコンを難しそうな顔で見つめた。
「うーん、この装置よく分からないので、暫くそれを観ていて下さい」
「はぁい」
 映像の中で、夢値のメインフェイズが始まった。 
 

 
後書き
茶番回です。リアルで忙しいので数時間でちゃちゃっと作りました。こんな時間あるなら本編出来た気もゲフンゲフン。
さて、来月はついに最終回です。前後編に分かれるかまでは未定です。では、次話に期待して待っててね。ね。

ちなみに、荻路 十海という名前からあるものを連想した勘の良い人向けですが、そこら辺の設定は実はどうしようか迷ってます。回収しないかも。 
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