レーヴァティン
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第九話 別れその三
「十二人全員を探す必要はないかも知れない」
「知れない、か」
「そうだ、知れないだ」
確実ではなく可能性としての言葉だった。
「その辺りはよくわからない」
「百でもゼロでもないか」
「そういうことだ」
「その辺りは確実じゃないか」
「そういうことだ、しかし自分から探すのがいいな」
「そうだな、まあここで逢えたら運がいいな」
久志は神殿の外に拡がる街の中にいて言った。
「そう考えておくか」
「そうだ、運もある」
「運だけはどうしようもないな」
「こればかりは人間ではどうしようもない」
「ああ、運なんてそれこそな」
久志もわかっていることだ、人間というものは所詮僅かな力しかない。その証拠に運という人間にとって非常に大きな要素は誰にもどうしようも出来ない。
だからだ、久志はここで英雄にこう言った。
「人間がどうにか出来ることじゃないさ」
「偶然は何時何処でどう起きるかわからない」
「いいものでも悪いものでもな」
「それは人間が出来る力じゃない」
「だからだな」
「この辺りは俺も何とも言えない」
英雄は表情を消して久志に話した。
「御前のことも俺のこともな」
「どうなるかわからないか」
「そうだ、その辺りはわからない」
「向こうから来るかどうかはか」
「そしてその人それぞれの考えもある」
「十二人もだな」
それぞれの島にいる彼等のだ。
「果たして俺達と一緒に戦ってくれるかどうか」
「その場合はおそらく無理にでもだ」
「力を貸してもらうしかないか」
「この世界を救う為にな」
「そうした相手は説得出来たらいいな」
「言葉で話が収まれば越したことはない」
それがベストだとだ、英雄もわかっていた。世の中常に言葉という絶大な力を持つもので収まれば確かにこれだけ楽なことはない。
しかし世の中はそうした楽なものではない、英雄もそれがわかっていて言うのだ。
「だが世の中はそれで常に解決出来るか」
「それで終われば戦争もないさ」
「そうだ、人間は業が深い生きものでもある」
業、英雄はこの言葉も出した。
「言葉で全て収まるとは限らない」
「その場合はか」
「力で無理にでも収める必要がある」
その場合に至る可能性もまた否定しなかった。
「この世界を救おうと思ったらな」
「やっぱりそうか」
「世の中会話が通じない相手もいる」
「いるな、時たまな」
流石に誰もがそうではない、しかしそうした輩もいることは久志もわかっていた。
「俺が正しい、俺に従えだけでな」
「そうした奴が十二人にいるかも知れない」
「そうだよな」
「しかも善人ばかりとも限らない」
それぞれの島にいる十二人、合わせて二十四人の全員がというのだ。
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