グランドソード~巨剣使いの青年~
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第2章
1節―旅の中で―
ウォルフ大陸とソウヤの特訓、そして美女
ソウヤたち一行は3日という日にちを使ってやっとウォルフの大陸についた。
『港街セランス』…『港街ポールト』よりはるかに盛んに商人たちが集まり、人々からは『商人街』とも言われているほどだ。
『港町セランス』の家々はすべて『サリトン』と呼ばれる潮風に当たっても腐らない特殊な木々で作られていた。
街の中では主に魚類を売っており、商人たちはその魚類と自分たちの持ってきたお金やら野菜などで交渉を進めるのがセオリーだ。
「賑わっているな、さすが港街最大の商人の街というべきか…?」
「セランスは『商人街』とも言われているからか規模がデカいな…」
「ポールトよりおっきいですね…」
ソウヤたちはそれぞれの感想を言って、その規模のデカさに驚いていた。
セランスの規模の大きさは、大体都市ほどであろう大きさを占めているほどの大きさなのだ、驚くのが普通の反応だろう。
そして、ソウヤたちはさっそく宿を探しに行くのに決定した。
「どの宿が良いか知っているか?エレン」
「そうだな、ここらで普通の宿は…魚貝亭だな」
「じゃあそれにしよう、ルリもいいか?」
「はい」
そしてソウヤたちはその魚貝亭と呼ばれる屋敷ほどのある巨大な宿に泊まることに決定した。
宿にテェックインしたあと、ソウヤたちはソウヤの部屋で集まり今後のことを話し合うことにする。
「それで、これからどうする気だ?」
「そうだな…。正直に言うと特に決まってはいない」
「確かにそうですね」
初めにエレンがソウヤに問いを出してみるが、それに対してソウヤとルリは微妙な答えしかださなかった。
それに「やはりか…」とエレンは苦笑しながらそう呟く。
「ただ…シルフの大陸からは出たかったと思っていた」
「なぜだ…?」
「エレンたちに気付かれて追いかけ回されるのは嫌だったからな」
そうソウヤは言って自虐気味に笑みを浮かべると小さく静かにため息をつき、目をゆっくりと閉じた。
そして、すぐさま目を開けると「今後の事だが…」と言葉を口から放つ。
「やるならこの世界の大陸をすべて見回りたい」
「ふむ、それも別に私はいいと思うが…?」
「私も世界のすべては気になります」
ソウヤは自分の意見がエレンとルリに賛成してもらったことに安堵すると、座っていたベッドから立ち上がる。
それに続いてエレンとルリも椅子から立ち上がった。
「んじゃ、まずは依頼を受けて”普通”に金を溜めますかね、エレンはギルドには…?」
「入っている。途中でやめたのでランクは確かCで止まっていたはずだ」
「まぁ、エレンはBランクの依頼もokだよな?」
「あぁ。すくなくともAランクの難易度の仕事は騎士でやっていた」
「了解」
短くソウヤはエレンの状態を聞くと、ため息をついてエレンを見据えると口を開いた。
「…にしてもすごいなエレンは。Aランククリアなんてさ…」
エレンはソウヤの皮肉に苦笑いを浮かべると―本当にソウヤは褒める気で言っていた―それにため息を付きながら言葉を返した。
「……1人で『瞬死の森』をクリアして、1人で1万もの魔物を倒して、そして魔族を1人で倒すお前には絶対に言われたくないな、そんなもの童話の勇者でさえもできないぞ…?」
「おい、俺は論外だろう…?」
エレンの言葉の返しにソウヤは苦笑しながらそう言うと、エレンとルリは同時に「「論外ですね(だな)」」と言う。
それにソウヤ一層苦笑の笑みを浮かべると装備をジークから『サイレン』へ変えて、ジークをエレンに渡す。
「俺はこれを使う。この大剣…ジークはその魔魂銀の剣よりは固有名付きだから性能は多少いいはずだ。それと魔魂銀の剣はこちらによこすんだ」
「ふむ…。わかった」
エレンはソウヤの言葉にうなずくと、魔魂銀の剣をソウヤに渡す。
今までずっとエレンが使ってきた魔魂銀の剣だが、その剣は武器スキルがすべて空き状態になっていた。
なので今はジークの方が攻撃力などもいいのだ。
「すぐに返す。それまでそれを使ってくれ」
「了承した」
エレンはそう言ってうなずくとジークを背中に吊るして装着をした。
そしてソウヤとエレン、ルリは外へと繰り出ししてギルドへと向かうことになったのだ。
「…いいねぇ。鑑賞というのは…」
白い世界、そこはこの男だけが住むことを許された世界…そのなかで所有者の男は巨大なディスプレイを眺めて感嘆の声をもらす。
巨大なディスプレイに映っているのは1人のトリップされた被害者の女性だった。
その女性は軽装に身体を包めて器用に立ち回りながら1人で魔物と戦っているのが目に映る。
そして男は手を振って、その画面が移り変わりまた違う被害者の1人の青年を映した。
男はその青年を見ると段々笑みが少量の驚愕を含む笑みに変わっていく。
「…ふ、ふははは!君すごい運の強さだね…!まさかトリップされたところが最悪の場所だった青年が生き残っているとは!」
男はその青年の過去のページをめくり始め、そして男はその青年の強さを知ったとき、初めて完全な驚愕に顔を歪める。
そして数秒後、男はいきなり狂ったように爆笑をしはじめた。
「ははははははははは!!君すごい運だね!!まさか最高レベルに設定してあった希少能力を3つも持っているなんて!しかもメインスキルが僕が最高の強さとして君臨させるために作った『巨剣使い』でさえももってるなんて、もう最強どころではなくて最恐の強さを誇るじゃないかあはははははは!!!!!!」
男は床に転がって爆笑をしばらくの間続けていると、不意にその爆笑が止まり男の顔が完全に真剣なものへと変化していた。
「…『巨剣使い』と多数の希少スキルが合わさったら、もしかしなくとも僕の存在を揺るがす存在へと成長するだろうね。まぁ、とはいっても僕たち”神”を斬れる武器なんて存在しないだろうけど…。まぁあったとしても僕は神の頂点”全能神”に選ばれた神なんだから倒すなんて無理だろうけど」
男は気持ち悪いほどに口を三日月に変化させて気色悪い笑みをしばらくの間続けていた。
「ッ…!エレン、スイッチ!!」
「了承した、『フェル・ソーガ!』」
ソウヤは大剣を持った汚れた豪華な装備に身に纏っているスケルトン…『骸骨の将軍』にサイレンの一撃を加えると、エレンにスイッチする。
エレンはスイッチを任されるとすぐさまランユ・ローズドに接近して風を纏った大剣のジークで攻撃する。
「キィィアアアア!」
どうなっているかは知らないが、ランユ・ローズドの口から悲鳴に似た声が出されて体制が崩れる。
その隙を突いてルリが俊足の速さで接近して無防備な懐の骨を切り裂いた。
そして最後にエレンはこうつぶやく。
「剣となれ光る雷鳴…『光電剣!!』」
エレンの持っているジークが途端に眩しいほど光り輝く雷を帯びて1つの剣となり、それをエレンはランユ・ローズドに向かって切り裂く。
バターを斬るように簡単に真っ二つに切り裂かれたランユ・ローズドは眩しい光を帯びて一瞬にして消えていった。
「…その光電魔法。最強過ぎるな、多分『地獄炎剣』よりも強いな」
「そこまで強いのか…?」
「あぁ。多分お前だけのスキル…希少魔法だと思う」
ソウヤの言葉も確かにランユ・ローズドのHPを一気に減らした理由でもあるが、もう1つあった。
それは名前から察する通り、光電魔法は”光の雷魔法”ということであり、それは光属性を纏った雷魔法ということなのだ。
光魔法はアンデットには効果が跳ね上がり、ランユ・ローズドを倒したというべきだろう。
それでも力の強さ的にはソウヤの一番の攻撃力を持つ『地獄炎剣』よりも強いのだが、それはやはり希少能力である証だ。
「ふぅ…。じゃあお前らだけで先に帰ってくれ」
「またいつもの特訓ですか…?」
「あぁ」
ソウヤはそう言ってうなずくと、ルリとエレンの方に向かって顔を見て「空間魔法・5『転移』」とつぶやく。
すると、エレンとルリの目の前に鏡のような物体が現れて、その鏡は行きに通った街道が姿を現している。
そこにエレンとルリは躊躇せず近づくと、その鏡の中に消えていった。
「…一刻も早く、新技見つけないとやばいな」
ぽつりと暗闇の中1人だけ残ったソウヤは、新たに生まれたと思われるスケルトンの軍団が現れた。
ソウヤはその軍団をチラリとみて、次に自分の刀を見てからその剣に月文字を書き始める。
それを書き終わるとその月文字の魔法陣は刀の刀身に吸い込まれて消え失せた。
ソウヤが書いた月文字は『記憶』というもので、ソウヤが現時点で使える魔法をその物体に記憶させることができ、ソウヤはその刀に『転移』を記憶させていたのだ。
その『記憶』の効果は一度きりだが、持ち主が念じるとその記憶させた魔法を発動させることが出来る。
緊急用として扱え、今回の場合は敵に囲まれた状態の中で逃げることが可能となるのだ。
「じゃあまず…並びの復習だ」
スケルトン軍団相手に、ソウヤは余裕の表情でボソボソと独り言をはじめた。
そして時々、その刀に小さな炎や水が纏っておりそれをソウヤは見ながらそのまま思考の海へ沈んでいくのだった…。
「……はっはっはっは…!」
暗闇の中、1人の美しい女がなにか人のようなモノに追いかけられていた。
その人のようなモノはすべて骨でできており、その骨はなぜか普通の人ならぬ骨格で出来ている。
手の甲と指の間の関節からは細いナイフのような骨が突き出ており、それが膝の関節や腕の関節にまで生えていた。
そして額部分と思われるところには3つの大きな角らしき骨が伸びている。
その魔物はいわゆる特殊魔物で、名前は『魔族の骨』と呼ばれている魔物だった。
「どうして……こうなったのかしら…」
追いかけられている美しい女がそう苦しげにつぶやいた。
その美しい女の姿は水色のきれいに輝くショートの髪と、深い青色をした瞳。
そしてボンッ、キュッ、ボンッという音が付きそうなほど身体の強弱の付いた10人中10は振り返るであろう美しい身体。
そして普通ならあるであろう半透明の翼の代わりにひれが背中から飛び出ていた。
そう、彼女は水の種族ウォルフの1人である。
「お願いですから逝ってください…!」
そう言って彼女は背中に抱えてある巨大な弓を取り出して、右に回転すると同時に矢を放った。
そのまま放った矢はローゼ・アドの眉間に刺さろうとするが、あまりの骨の固さで矢自体が当たった瞬間壊れてしまう。
放った矢が折れたところを見た彼女はそれだけで人を寄せ付けるような苦笑を顔に浮かべてそのまま走り続ける。
「どうしましょうか…?あんな敵に会うと思っていなかったから鉄の矢しか持ってきていないわ…」
そう言って彼女は走りながら頬に手を置いてう~んと唸る。
はたからみればなんと余裕のある姿なのだろうかと思うだろうが、彼女自身余裕はあまり残っていない。
彼女が持っている矢は何の変哲もないただの鉄の矢で、攻撃力が低い。
どうしようかと彼女が悩んでいるとき、この先の通路で骨が落ちるというスケルトンが倒れる独特の音楽がドンドン聞こえてきたので、彼女はなにも思わずその先の通路へ向かった。
この先には強い人がいると信じて…。
「ッ…!」
ズバンッ!と空気が激しく斬れる音がしてソウヤの目の前にいたスケルトンがカンカンッ!と骨が落ちる音を響かせて死んでいった。
死亡を確認したソウヤは次の相手へと斬りかかろうと走り出すと、瞬時にスケルトンの懐に入り込みそのまま斬りつける。
「やっぱり足に風を纏うと素早さがアップするんだな、魔力に応じて…」
それを確認したソウヤは頭の中にその情報をインプットしてスケルトンが倒れるのを確認して次の相手に行こうとする…その時。
ソウヤは首の後ろ辺りが妙にピリピリすると感じて、なにかがやばいモノが近づいてくるのを感じた。
すぐさまあたりのスケルトンを片付けんと刀にそのままの魔力を纏わせて、圧縮する。
「魔力よ剣となれ…『魔力剣!!』」
そして、そのままソウヤはその場で回転すると同時に圧縮した魔力を一気に解き放つ。
すると巨剣にもおよびそうな巨大な魔力の刀身が出現して、刀と共に周りのスケルトンを斬りつける。
この技はソウヤが2週間ほど何回も探っていた時に、たまたま見つけた特殊能力だった。
その名も『無魔法』というもので、武器に自身の魔力自体をそれに流してその攻撃力や防御力、斬りやすさや武器の長さを増幅するというものである。
その名の通り無属性なので弱点の属性は無く、さらに相手の弱点もないという特徴があった。
「なんだ…?人の走る音か…いや、1匹違うやつが混じってる、この感じからして魔物…!」
地面から来る振動で人か魔物の見分けを付けたソウヤは、危険な場面だと気付いてその足音が聞こえる場所へと向かっていった…。
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