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Exhaustive justice

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二話

 
前書き
おかしい所があったら教えて下さい 

 
拉致された女生徒を救うべく、帝は一人聞きつけた不良達が溜まり場としてるらしい廃ビルへと足を運んだ。

中は嫌に静まっており、ゴミが散乱し壁にはスプレーで描かれた稚拙な言葉や下手な落書きが広がっている。
だだっ広い広間の中はゴミを煽る風の音とそれが転がっていく簡素な音だけが響く。

すぐに一階には誰もいないと確信し、近くの階段へと目をつける。

タン、タン、タン、と一定のリズムを刻み石の階段を昇っていくとすると、そのうちそれ以外の音が増えたことに気づく。
その場で立ち止まり、耳を澄ますとそれは男の声、一つだけではない。

『お前、前の仕事トチっただろ?』
一つ、男の声が聞こえる

『金払えないし仕事もできねぇのかよ、マジで風俗で働かせんぞ!?』
もう一つ男の声、荒げられたその声は一つ目とはまた別の男だ

『ごめんなさい…今一馬君とカモを連れてきますんで…』
…女の声だ、拉致られた女生徒なのか他の協力者なのかわからないが、随分と弱々しい声だ。

悪事に加担していた場合、彼女を裁かなければならない。
帝は再び階段ゆっくりと昇る。
男達の下卑た笑い声は足音が二階に近づくにつれて小さくなっていく。

やがて部屋から「様子を見てくる」と一人男が言うと帝は声のする部屋から距離を取って立ち止まる。

扉が開き、一人男が出てくる。
男は帝の事を見て静止する。
みるみると顔が青ざめていき、声を荒げかけた瞬間に帝のマントから跳ばされたチェーンソーによって腹を貫かれる。
帝が走り、チェーンソーに向かって蹴りを入れるとスイッチが入り、男の身体が跳ね上がって後ろに跳んだ。

開き掛けの扉を破り、元の部屋へと戻っていく男を帝はゆっくりと歩き追いかけている。
そのままなにも勿体つけず部屋に入ると男達は顔を歪ませて恐怖の表情を見せる。

チェーンソーが刺さった男は痛みに踠き、部屋内を走りながら絶叫を上げる、帝の一番近くにいた男が横目で刺さったチェーンソーを見ながら拳を握り息を呑んだ。次の瞬間、男の能力だろうか、何倍にも肥大化した腕が帝に向かって渾身の右ストレートを放つ。
どうやら恐怖のあまり周りが見えていないようだ。
帝が行動を起こす前にチェーンソーが刺さった男が背後から走ってきており、ストレートを出した瞬間には拳の真横に立って、拳の方からチェーンソーに当たりに行く形になる。
かなりの質量があるように見える腕が一瞬にして切り落とされると、痛みからか仰け反ってみせた。
帝は手に持っていたナイフでその男の頬を横に切断し、蹴りを浴びせると堪らず後ろに吹っ飛んでいき、コンクリートの壁に頭を直撃して気絶する。

身体にチェーンソーの男も腕を切った時の衝撃で地面に身体を強打する。
次の瞬間、身体に刺さっていたチェーンソーが上に舞い上がり、空中で一回転した後、刃側が下に直下して新しい傷口を作った。
もう一度大きな悲鳴が上がるが、すぐに男は白目を向いて失神し、チェーンソーは傷口が大きく固定されていないため左右に暴れた後、地面に落ちて暫くエンジン音を上げて振動を残した後に駆動を止める。

全員が黙りこみ、暫くの静寂の後、帝が短く言葉を吐く。

「貴様らが犯罪組織に主犯格だな」
残された男は何かを反論しようと口を動かすが身体から沸き立つ嘔吐感から言葉を喋ることが出来ない。
男は目をゆっくりと閉じた。

「…どうやらわかっているらしいな、では処罰を開始する」
男は目を再び強く瞑る。
「いっそ殺してくれ…」

帝は帽子を深く被り、見下すような視線で言った。
「…殺すわけは無い、それでは意味はないからな」

男が目を開けると完全にもう手遅れであった。
「あああああああああァァァぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
悲鳴をあげる。
懺悔しろ、と帝は語る。


最後の男の処罰が完了した後、帝は携帯電話を手に電話をかける。

『はい』
「月雲だ、任務を完了したが、聞きたいことがある。生徒のリストブックを用意しろ」
『どうしました?珍しいですね、何か気になることでも?』
「…先程拉致された女生徒の情報はどこまで載っている」
『一年B組の綾野美奈、校則違反履歴はないですね。中学時代もおおよそ問題なし…一馬宗二という彼氏がいるらしいですね』
「…そうか、では少し野暮用を済ませた後に帰投する。救急隊の要請を頼んだ」
『仰せのままに』

電話を終えた帝が女生徒の方を振り向く。
最初いた時とは違う位置にいる、逃げようとしたのだろう。
女生徒は帝の目を見ると「ひっ」と嗚咽と悲鳴が混じった声を出してその場にへたり込む。
帝がゆっくりと近づくその度に顔色は優れないものとなって行き、挙句の果てに失禁してしまう。
帝は女生徒、綾野美奈の目の前でしゃがみ、ゆっくりと問いをかける

『君も、やったのか?』
綾野はそれが聞き取れなかったようで、震えながら目を強く瞑った。
帝は立ち上がり、綾野の頭に手を伸ばすと。

「君が綾野か!?」
偽善者が扉を破り叫び声をあげた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帝は一人、『用意された』教室の中で座っている。
綾野は学校を停学となった。
情報は入った、間違いなく加担していたのだ。

だが、帝は未だ綾野を裁いてはいなかった。
一馬宗二と言う男が泣きついてきたのだ。
「どうか彼女を裁かないでくれ」と、
彼女が男を利用しようとしたことを伝えても尚、ふと考える素振りも見せず、目はまっすぐと「構いません」と。

納得した訳でも慈悲に心打たれた理由でもない。だが、何故かはわからない。

学校内には既に噂が渦巻いており、噂が大きく回る度に大きな尾鰭が付いていく、噂とはそういうものだ。
確定した事情ではない事を盲信してしまうことは愚かしい事だが、噂を撤回することも無い、今はこれでいい

餌が必要だった。
尾鰭が大きくなると共に餌も大きくなる事は当たり前だ、大物を釣るなら餌も大きくなくてはいけない。

「…そうだな、貴様を裁いた後に彼女も裁くことにしよう」
帝は国語の教科書を読んで座りながら扉側に散弾銃を向ける。

「月雲おおおおおおおおおお!」
叫び声をあげ、怒りを剥き出して『大物』が扉を蹴破る。
同時に散弾銃を乱射するが、

「おらああああああ!!」
大物は叫びと共に銃弾を拳で全て打ち落とす。恐ろしいスピードと動体視力の為せる技だ。

「てめーはここで潰す!!来い!月雲 帝!」
一ノ瀬零司が闘士と叫びをあげる。
帝はいつの間にか立ち上がっており冷たい眼差しで零司を睨む。

「校内では静かにしろ、それに授業妨害及び器物損害だ。貴様を粛清する口実ができた良い機会だ」

帝の能力が発動し、マントから武器が現れる、筈だったが一筋の線が驚異の速度で帝の右頬を捉えた

「ぐおああっ!」

帝は大きく仰け反り、呆気に取られた。
零司の拳であった。
それはわかっている、だが以前と違う。まるで同じ生物ではない

「どうした?そんなアクビがでるくれーのスピードじゃ、てめーが武器を取り出してる間に叩きのめせるぜ」

ハッタリではない、知識が本能が、この男は危険分子だと、勝てないと告げている。
帝はマントを靡かせて一気に距離を取る。

「無意味だぜ…!」
二メートルはあろう距離を一瞬にして積めて、零司は雄叫びを上げる
「オラアアアアアアアアアアアアアア!」
拳のラッシュが腹部にめり込む、内臓を損傷し血を吐きながら後方へ吹き飛ぶ。

「ぐっ…くそ…だが攻撃を当てることは出来たぞ…」

帝は地面に手を付き、倒れ、咳き込みながら血を吐いた。
零司の脚や体には無数の手裏剣が刺さっていたり、大きな火傷を負っていた。

「動体視力で避けられるとしても、距離が詰まっていて、攻撃に集中していれば注意力が散漫になり避けることが出来ない」

帝は距離を取りながら手裏剣や手榴弾を放っていたのだ、手裏剣は数、そして手榴弾はわざと近くで爆発させることで爆風を利用し、マントで身体を包み火傷を少しでも抑えて自分を後方に飛ばす為に使ったのだ。
力という力を凝縮した零司の拳撃を少しでも浅く受け、また距離を取ることに成功する。

帝はよろよろと立ち上がり、痰と共に血反吐を吐き出すと相変わらず。いや、いつもよりも鋭い眼光で零司を睨みつける。 
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