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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  見誤る戦力



砂漠の真ん中で、膨大な魔力が渦巻いている。
その魔力を奪い合うように、二者が集束魔法を展開していた。



一人はG4、一人は一刀



「集束は周囲の魔力をかき集める魔法だ。つまり相手と同時にこれを行えば、単純な魔力の奪い合いになる」


そう呟いて、一刀の翼が大きく開いた。
周囲を渦巻く様々な色の魔力が、一刀の魔力光をベースに次々と集まって来ている。

G4にいったん集まっていた魔力も、一刀に吸い上げられるかのように消えていく。



ギシィィィィイイイイイイイイ!!!!



その光景にG4が怒り咆哮のような音を上げ、一刀たちに向かって銃口、砲口、切っ先を向け、一斉に撃ち放ってきた。
しかし、その攻撃はすべて一筋の剣閃に斬り裂かれてしまう。


「これでよろしいか?」

「サンキュ、凩」


その剣閃は、凩によるもの。
声が掛けられた時一緒にいたので、ついてきてもらっていたのだ。



そして



「集束完了」


ギギャォオオオオオオオオオ!!!


収束魔法砲撃(ブレイカーキャノン)、発射」


ドォッッ!!



一刀の言葉と共に、蒼青の光がG4を要塞ごと包み込んで弾き飛ばしていく。
その光の中でガイアメモリが飛び出し、砕け、欠片も残さず消滅した。

そして、G4の体がバチバチと火花を上げて、ガシャァ!と砂漠に投げ捨てられる。


火花を上げているだけで、装甲が剥げていないのは恐るべき硬度だ。
しかも腕だけがまだ戦おうとバタバタしている。

が、ほかが全く動いていない。

ガイアメモリが消えたせいで、現出した大量の兵器が操れなくなったせいだ。
もはや行動不能だろう。




しかし





------------------------------------------------------------



「『双銃の執務官』を確認。対応する」




ティアナの姿を確認し、青年が初めて言葉を漏らした。
それは感情の込められていない、きわめて機械的な声。



「クロスミラージュ!ファイリング!!」

《OK!!》



それに対応するようにしてティアナもクロスミラージュに命じる。
ルネッサは援護をしようとシルバーダガーを青年に向けて引き金に指をかけた。



銃弾が飛び出し、青年に向かう。

が、青年はそれを剣で弾き飛ばして一気に接近してきた。


「!? 速い!!」

ガキィ!!!



その速さに驚愕するも、振り下ろされた剣をクロスミラージュのダガーモードで受け止め、銃口を青年の腹部に向け発砲するティアナ。

パパパパパパンッッ!!と青年の体が若干くの字に折れるが、その顔にダメージを受けたという感じはしていない。


しかし、その崩れた体勢をティアナが足払いで押し倒し、銃口から紐のような魔力を発射して青年の体に巻きつけた。
そうして地面に転がる青年だが、足を回し、胴体を軸にして回転、ティアナを蹴り飛ばしてから勢いで立ち上がる。

だが青年の脚に手ごたえはない。


蹴り飛ばされたティアナの姿がゆらりと消え、青年の背後からオレンジの弾丸が迫りくる。


それを後ろ蹴り上げですべてかき消す青年だが、それもまた幻影と消える。


「?・・・・・(ドォッ!!)!?」


そして、疑問を頭に浮かべた彼の足元からクロスファイアが飛び出してきて、真下から彼に向かって襲い掛かった。
その隙にルネッサがバインド魔法を重ね掛けし、さらに拘束を強化する。



「行けた?」

「と、思います」



ティアナがフェイクシルエットを解くと、さっきまでそこにいた彼女らが消え、五メートルほど横にずれた位置に現れてきた。


砂煙が晴れる。

当選そこには、バインドにつかまった青年が倒れて・・・・・・


「・・・・え?」

「そんな!?」


いなかった。


引き千切ったのか、その体にバインドや拘束魔法の束縛は一切なく、クロスファイアの弾丸をすべて手で受け止めて握っていた。
ギュルギュルギュル、と回転するオレンジの魔力弾を握りしめた青年が、それを潰して消滅させる。


「うそ・・・・」



魔力弾や魔法砲撃を、素手で弾く人はいる。
掴んで投げる人だっている。

今この世界には魔力以外の力もあるのだから、そういった人が多くいるのは別に驚くことではない。


しかし、至近距離から、しかも不意打ちで真下からの魔力弾を、素手で受け止めて握れるかと言われればそれができる人間はそうはいない。



現に彼女だって、至近距離の魔法を受け止める人を見るのは初めてだ。



青年がヴァルクヴェインを握り、ティアナたちに振るう。
無数の刃が飛来して、彼女たちに襲い掛かった。


「ッッ!?走って!!ルネ!!!」

「はいッ!!!」



迫りくるその刃を、走り回って回避するティアナ。


撃ち落とすなんて考えは即座に捨てた。
あれはその範疇を超えている。


しかし、この砂漠でそんな回避がしきれるわけがなく――――――



「っ!!追い付かれっ!!?」



ティアナとルネッサに、刃が追い付いていく。

砂に足もとられて、うまく走れない。



ドバゥッッ!!!



が、その瞬間、青年の足元から爆発したかのように、一気に砂が吹き上がった。



見るとそこから少し離れた場所で、蒔風が息も絶え絶えに地面に手を当てていた。




畳返しを、相手の足元で跳ね上げさせたのだ。
大地は砂なので、本来立ち上がる地面ではなく、地雷のように砂が巻き上がったというわけだ。


しかし、その一回で蒔風の頭がぐらりと揺れ、倒れそうになるのを踏ん張って耐える。



それを見て青年が砂の中から飛び出し、蒔風へと向かっていった。

剣が振るわれ、飛来した刃にルネッサのバリアが破壊される。



「・・・・・へ・・・・」

それを見て、蒔風が笑う。
その先にある(モノ)など気にしていないという顔で。


「逃げろ、ティアナ」



そう短くつぶやき、蒔風が叩きつけるように地面に手を降ろす。
青年の足元の砂が次々を吹き上がって行くが、全く止まることがない。


軋む足に鞭打って蒔風が下がるが、振るわれた刃が襲い掛かる。


肩に刺さり
腹に刺さり
そこを押さえようとして腕に刺さり
顔に飛んできたのを蹴り飛ばして足に刺さり


ドドドドッ!という重い音がして、蒔風が地面に落ちる。


そして、止めと言わんばかりに青年が力の限り剣を振り下ろした。


蒔風の両脇からティアナとルネッサが走って寄ってくるが、間に合わない。
それどころか横薙ぎに振るわれた剣からの刃で、三人まとめて串刺しだ。


「舜さん!!」

「くっ・・・そぉ!!!!」


声を張り上げる二人だが、蒔風はすでに言葉を発さなくなっていた。


振るわれる剣。
その軌道上に現れ、射出されていく刃


そして




ドドドドドドドドドドンッッッ!!!!!





迫る刃の真下から、砂が一気に噴き出す。
最後の力を振り絞っての、畳返し。


しかし吹き上がったのは、ティアナとルネッサに向かう分の下からだけ。




「舜さぁぁあああああん!!!!!」





果てしない轟音
甲高い悲鳴


当事者二人は、一言も発さなかった





------------------------------------------------------------




これで終わった。
勝ちだ。


そう思った一刀が事後に背を向け、蒔風の元へと向かおうとする。



そしてその背中に、ガトリング砲が向けられた。




「「一刀!!!」」




背中からの攻撃に反応が遅れた一刀だが、その弾丸を凩とランサーが弾く。


その弾丸の向こうには、ガトリングを握るG4 。
地面から引っ張り上げたものらしく、抱えるたぐいのものではない。


ガシャン、とスクラップのような音を立てて、G4が強引に一歩前に出る。



「まだ・・・・立てるのか・・・!?」

「そんな馬鹿な・・・・!!」


「G4システム」は装着者が死体あっても動き続ける装甲だ。
その概念は「人体が装甲を纏う」ではなく「装甲を動かすために人体というパーツを用いる」という物だ。

だから中が死体でもここまで動くのはおかしくない。


一刀も前にそんな話を蒔風や津上から聞いたことがあるし、フェイトも警察関係で氷川から聞いたことがある。



しかし今の砲撃は装甲をも完璧に破壊するものだったし、そして外見は確かに破壊されたものだった。

そう、破壊されたのは――――外身だった。







G4がベルトに手を当てて上部のボタンをガッ!と押し込む。

直後に

《cast off》

という機会音声が響き、その答えを提示してくれた。



「な・・・・」

「キャストオフだと!?」



G4のゴツイ装甲が肩、腹、胸、腿、脛と解除され、最期にマスクの頬が盛り上がり、そのすべてが弾け飛んだ。


飛んできた装甲を避け、一刀たちがその姿を見る。



《Change―――PROJECT G4》


その体つきが非常にストレートなものとなり、腕や足周りがすっきりしている。
顔も丸いものから縦長になって、スマートだ。

それは「装甲」から「強化スーツ」へと表現を改めるほどの物だった。



「マジかよ・・・・・!?」

ドォッッ!!


驚愕する一刀だが、その腹部にG4の拳がめり込み、そのままフェイトやランサーの間を抜けて砂漠にめり込む。
その後で《CLOCK UP》《RIDER PUNCH》という音声が聞こえてきた。


速い。
それは自らの発した音を超えるほどに。



一刀に駈け寄るフェイト。
直後に斬りかかるランサーと凩。



「みんな来て!!うん・・・うん!!翠さんと霞さん、あと加賀美さんたちも!!早く!!!」



フェイトが通信機に向かって叫ぶ。
もはやこまねいている場合ではない。


自分たちがここにいれば、それを察知して翼人ならゲートを開ける。
すぐに来れるだろう。



だがもう一つの戦いでは、すでに間に合ってはいない。




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「しっかり・・・・しっかりしてください!!」

「あ、ああ・・・・・そんな・・・そんな!!!」



ティアナとルネッサが蒔風の体を抱えて声をかける。
揺するだけで、命が尽きてしまいそうな風体だ。


むしろ生きていられるのは翼人の力が微弱でも効いているからか。



ティアナとルネッサも、大なり小なり怪我をしている。

いくら砂が跳ね上がったと言っても刃を完全に止められるものではない。
いくつかはガードしたが、やはり何箇所には刺さり、数十か所を斬られている。




『ふむ、彼女らのデータを少し向上させておこうか・・・・さあ、連れてきなさい』


それを眺める青年の首輪からそんな声が聞こえ、蒔風たちへと足を進める。
ティアナやルネッサがそれを阻もうとするが弾丸は弾かれ、首を掴まれて投げ飛ばされる。



そして身体が赤く染まることも気にせず、蒔風の体を肩に担ぐ青年。




「連れて・・・・いかせないわ」



その背後に銃口を向け、ティアナがヨロリと立ち上がる。

そのティアナに青年は答えない。
しかし、代わりに首輪が応えてきた。


『困りましたね。我々は「EARTH」と事を起こす気はないんですよ。研究する上で必要なだけでなんですけど』

「そうやってその人を連れていくなら、見逃さないって言ってんのよ・・・・!!」

淡々という男の声に、ティアナが凄みを聞かせて唸る。
だが、相手の態度は変わらない。


『我々は「ある兵器」に対抗するモノを作ろうとしているだけです』

「ある兵器・・・?」

『ええ、兵器とは対になって初めて価値があります。毒と薬のように、対応するモノがあればこそ、両国に売れるのですから。それを作る過程での戦いという実験。そして検体を集めているんです。彼はちょうどいい』

「させないって・・・・言ってんのよ・・・・!!」



左肩が上がらず、右手だけでクロスミラージュを一丁握り、青年に狙いを合わせるティアナ。

しかし、手が震えてうまく狙えない。
もうそんな体力もないのか。


『どうやら手足の腱が切れかかっているようで。運が悪かったですね。まあ、すぐに治療すればきれいに治りそうですよ』

「このッッ!!!!」


それを聞き、ティアナが周囲に魔力弾(クロスファイア)を展開する。
それに対して青年が剣を握り、ティアナに振り下ろそうとするが



ガシッッ!!



その腕を、青年の肩の蒔風が掴んだ。
一瞬だけ青年の腕が止まったが、すぐにその腕から力が抜けてダラリと下がる。


『・・・・・もういいでしょう。翼人をそれ以上ここに置いておいては誰の感情で復活するかわかりませんからね』


男の声に青年が頷き、ティアナからそこら辺の空間に向きを変えて剣を振るう。

そして空間に亀裂ができ、その向こうへと青年が消える。



ティアナがその背中を掴もうと腕を伸ばすが、青年に蹴り飛ばされて地面を転がる。




そして、亀裂も消えて、二人は跡形もなく消えてしまった。
特殊な方法なのか、行き先も探知できない。



「う・・・うぅ・・・・うわぁぁアアアアアアアああああアアアアアアア!!!!」



ティアナが地面に拳をぶつける。
思っていたほどの衝撃はなく、ザフッ、と力なく拳が砂にめり込む。


彼女の足元の砂が、涙で固まり、すぐに乾いていった。





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「「ハイパークロックアップ!!!」」

《《HYPER CLOCK UP》》


ハイパーフォームのカブトとガタックが、G4に追いつこうとそれを起動させる。


瞬間、クロックアップのスピードで動いているほかのメンバーの動きも止まり、世界は三人だけのものとなった。



G4のハイキックをカブトが潜って回避し、ガタックの蹴りを腕でガードする。
そのうちにカブトがパーフェクトゼクターで腹部を斬りつけて押し付ける。

するとガタックエクステンダーが背後から現れ、ボード状になってG4を押さえつけた。


と、そこでハイパークロックアップが切れる。



動きを封じられたG4はすでにいくつか喰らったダメージのせいか、複数個所がすすけており、装甲にもひびが入っている。



《FINAL ATTACK RIDE―――DE DE DE DECADE!!》




そのG4に、止めとばかりにディケイドのファイナルアタックライドが発動する。
が、G4のどこにそんな力が残っているのか、ガタックエクステンダーを跳ね上げ飛ばしてそのキックを回避した。



そこに振るわれるフェイトの大剣。
両腕でそれをガードするが、ついにその装甲が弾け飛んでG4の体が地面を転がる。



「「「ゼァッっ!!!」」」



と、その火花を上げる右腕に霞と翠の斬撃が命中し、一撃目で切れ込みを入れ、二撃目で腕を切り落とした。
さらにセイバーのエクスカリバーが胸を貫き、引き抜かれて五体が揺れる。



ピガガガガガガガガガ!!!!と異常な電子音を火花を散らし、G4が魔力をため込むランサーに向かってクロックアップでの妨害をしようとするが



「させっかよ!!!」


それを背後から一刀が掴みかかって止めた。
暴れるG4だが、無理がたたったのかベルトは煙を噴き出し続け、ランプが異常に光っている。



「その速度で回避されたら厄介だからな!・・・・ランサー!!」

「おう・・・・その心臓、ようやっと貰い受ける!!突き穿つ(ゲイ)!!」


「(ドコッ!)ウオッ!?ランサァー!!!」

死棘の槍(ボルグ)ゥア!!!」



バキィィイイ・・・・・・!!!!!




G4が一刀の拘束から逃れ、走り出そうとしたがもう遅かった。
ゲイボルグはその装甲の心臓部である頭部(メモリーチップ)とベルトを破壊し、その機動を停止させた。


勢いで一歩、二歩と足を進めるG4が、まるでオブジェのように動きを止め、やがて完全に停止した。









戦いは、終わった。






しかし、失う物は大きい。


彼らの追跡が始まる。


to be continued

 
 

 
後書き

G4が無双しすぎてヤバい
もう少し戦わせたかったですが、もう一話は長くなってしまうので断念しました。


兵器だからまた出てくると思いますし、その時をご期待!?



ティアナさんたちじゃどうにもならなかったという。
誰も悪くない。
しいて言うなら「蒔風なら」という考えが甘かった。

そして何気にいた凩さん。
本当にスピード野郎ばっかだ(セイバー除く)


連れて行かれた蒔風。
なんかギンガみたいな感じですね。


改造されてしまうのだろうか!?蒔風君!!!



次回、内戦後のこの世界、そして追跡

ではまた次回
 
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