世界をめぐる、銀白の翼
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第四章 RE:BIRTH
レッドカモフラージュ!
目の前で行われる戦闘。
相手の物を奪い、手に入れるための略奪。
生きるための、殺害。
目の前で行われているこの行為はそういう物だ。
数人が(おそらくはストレージ)デバイスを構え、その他大勢は銃器を構えて突っ込んでいている。
銃から飛び出すのは魔力弾だ。
カードリッジシステムに近いものを使ったもので、使用者に魔力適性がなくとも、薬莢に込められた魔力が発射される武器。
相手も同じようなものを持っているようで、飛び出してくる魔法弾や砲撃魔法の色は少ない。
「バカ」の方は大半が黒ずんだ赤
「クソ」の方の大半は鈍色だ
おそらくは魔力を持った者がそれしかいないのだろう。
他の色の魔力も見えるが、ごく少数である。
「だから俺たちはこの戦いには参加しない。魔力光でバレる」
「助けないの?」
「指導者ども引っ張り出して説教してやりたいが、今回は別の目的があるし、人数も少ない」
「それにこいつはあいつらがバカやった結果の戦いだ。テメェらでケリつけなきゃなんねぇんだろ」
「ま、それもある」
集団に飛び込み、真っ先に(「バカ」から見て)右の林に飛び込んで姿を消した三人がそんなことを話していた。
「林」というよりは「木々が集まった場所」と言った方がいいくらいの大きさだが。
野球場くらいの大きさか。
そしてこんなとこにこんなのがあれば、当然両者とも罠は仕掛けるというもの。
実際、ここに来るまで二、三のトラップを抜けてきている。
今隠れられているのは、蒔風が幻術を張っているからだ。
その中で、どうやって「クソ」の方へと入り込むかを話している。
「でもよ、この分だとアイツら全員顔見知りだぜ?」
「見慣れない顔があったらバレそうだもんなぁ」
「私は変身魔法は使えないし、舜の幻術で姿消していくの?」
「まあそれが一番だが・・・・問題はあっちから見えないから魔法弾が飛んできたときが怖い」
「非殺傷じゃなさそうだもんね」
「だからこうする」
「「え?」」
そこで蒔風が懐から真っ赤な何かを取りだし、それを二人と自分にぶちまけた。
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「負傷者はこっちにこい!!死体はどかせ。邪魔なだけだ!!あとで供養してやれ!!」
「おい!そいつはもうだめだ。治療薬回せ!!助かる奴を助けろ!!!」
「鎮痛剤ねぇか!?」
「そんな上等なもんねぇよ!!」
「医者ぁ!!」
「三日前に流れ弾で死んだよ!!」
ここは「クソ」、つまりは蒔風達の目的地である国の医療班のいるテントだ。
医療、と言っても痛み止めに数の少なくなっている鎮痛剤をぶち込んだり、怪我を消毒して包帯を巻く程度しかできない、保健室程度の効果しか持たないものだが。
しかしそんな施設でも次々と担ぎ込まれてくる。
ここに連れてきても無駄な、どうあっても死んでしまう人間もいる。というかそちらの方が多い。
正直な話、そんな人間を連れてくる方が労力も人員も裂くのでほっといた方が効率がいいのだが、ここに何時連中はそんなことにも頭が回らない、もしくは考えられる状況じゃない。
と、そこに三つの人影が飛び込んできた。
「だ、誰か助けてくれ!!」
それは、全身真っ赤になった蒔風たちだ。
ランサーは腹部を真っ赤に染め、口からもボタボタと血をこぼしている。
フェイトは涙を目に溜め、肩から腕を力なくブラブラさせながら頭から血を流していた。
ちなみに髪は束ねて、男性に見えなくない顔をしている。
そして蒔風は二人に肩を担がれ、ズルズルと運び込まれてきた。
顔面に血をぶちまけ、もう死体同然のように見える。
右足はズルズルと引きずり、グラリと揺れる首が前後左右に揺れる。
「な、なにがあった!?」
「森に引きずり込まれてズタズタにやられた!!」
「あいつらエゲツねェ・・・・人間の仕掛ける罠じゃねェ!!俺たちを人間と思っちゃいねェ!!」
地獄から帰ってきました、とでも言わんばかりのその姿にその場の全員が驚愕する。
だがそれも数秒だ。
すぐに助からないと知ると、そいつをあっちに置いてこいと二人にいい、助かる人間の治療(という行為)に専念する。
それを聞き、二人が「畜生あの野郎ども・・・・こいつ寝かしたらすぐにアイツらぶっ殺しに行って来らぁ!!」とか叫び、周囲の人間も「やってやれ!!」とか「仇を取ってやれ!」とかいって送り出していた。
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「う~へ。ケチャップ臭い」
「ったく・・・いきなりぶちまけられた時は何かと思ったぜ」
「髪の毛ベタベタだよぅ」
その後、近くの町
そこに蒔風たち三人はいた。
ここはもう「クソ」の国内だ。
あの戦闘の合った街から一番近く、あれだけ死傷者がいるのにまだ終わってないのか、銃撃や爆撃の音が聞こえた。
全身の赤い血は、森の中で蒔風がぶっかけたケチャップだ。
二人とも頭からかぶり、要所要所に塗りたくったのだ。
顔もそれである程度隠せたので、あの騒動と合わせてうまく通過できた。成功である。
「でもこれはこれで目立っちゃうよ」
「しかもくせぇ」
じーーーーーー
そんな文句を言いながら、蒔風の方をじとー、と見る二人。
顔をゴシゴシと拭き、蒔風が二人のそれに気づき、たじっ、と下がる。
「え、えっと・・・・わり」
「・・・・はぁ、まあいいけど・・・」
「いまさらおめぇに文句言ってもなぁ・・・」
「アンガトサンキュー」
「「もうちょっと悪びれよ」」
フェイトの髪についた、乾いてネトネトしたケチャップを摘み取り、ランサーの肩を拭いてやりながら、蒔風がシレッ、という。
と、そこでちょうどよく井戸を見つけ、圧水の力でバスケットボールほどの球体で掬い上げ、身体をきれいにしていく。
「な?な?これで水に流してくれよ。あ、今うまいこと言った」
さして上手いことは言えてない
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こうして、なんやかんやうまく(?)入国できた蒔風たち。
あとは目的地まで一直線だ。
ルネッサにもらった地図では、トレヴィアの隠れ家は国の南にある砂漠地帯。そこの遺跡にあるらしい。
「だけど夜に砂漠越えは危険だよ?」
「ま、何が起こるかわかねぇわな」
「そじゃね。じゃー今日はもうどっかで寝るか」
「うーん、砂しかないけど・・・どこで?」
・・・・・・・・
「次の街までは行っとく?」
「「賛成」」
しかし、銃声が聞こえ、爆撃が飛んで来るかもしれない街に、宿などあるわけがなかった。
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「おい!なんだあれ・・・・あんなんアイツら持ってたのかよ!?」
「みろ!!あいつらバルガの野郎どもじゃねェ・・・・ボルボダロンの奴らだ!!」
「俺たちが疲弊したとこ狙って来やがったのか!?」
「卑怯者のゲス野郎どもが!!!」
戦場で争う「バカ」と「クソ」の二国に、「ボケ」が攻め込んできた。
しかし、その兵器はいつも使用しているモノとは違うようだ。
数時間後、この戦いは、
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翌日
国境の近くのあの町から移動し、少し内部に入ったところの別の街で宿をとった蒔風たちが、朝にチェックアウトして目的地に向かう。
完全に生んだが、比較的近くに宿のある町があってよかった。
移動手段である車を出したのは蒔風だが、今はまた後部座席で眠ってる。
「運転すうよー?」とか眠気で舌もまわらない男に、ハンドルを握らせることだけは阻止した。
そして、三人は砂漠に一番近い街についた。
街の砂漠側はすでに砂に地面が侵食されている。
「舜ー?着いたよー?」
「うぅん・・・・おにぎりはネギトロで宜しく。あとファミチキ」
「ファミマじゃないよ?」
ここにあなたとコンビになるお店はない。
車を降りると、人の雑踏が聞こえてきた。
やはりここは戦闘地域から離れているからか、それなりに人も集まり、賑わっているようだ。
とはいっても一面に人、人、人・・・・といったほどではないのが、ここが内戦地域であることがわかる。
この先に、手がかりがあるのか。
それはまだわからない。
もしかしたら何もないかもしれない。
しかし、今は先に進むしかない。
装備を整え、蒔風たちは砂漠に踏み出す。
手がかりは、あるのか
to be continued
後書き
まんまとはいえなんというひどいタイトル
入国成功!!
この内戦も何やら不穏な空気が?な話ですね。
なんだか大して進んでない気がする
正直他にも侵入の手はありそうなものですが、これでいいだろ、と蒔風の独断で決定
結果的にうまくいくのだから厄介ですね
なにげにランサーもノリノリですし。
ケチャップぶちまけはマジでひどいです。お勧めしません。
ベトベトしてかなわん。
次回で砂漠入り、うまくいけばトレヴィアの隠れ家に到着、ですかね?
ではまた次回で
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