世界をめぐる、銀白の翼
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第四章 RE:BIRTH
最悪武器の威力
それはおそらく、この街の住人。
何人かの顔に見覚えがある。
いま仮面ライダーキックホッパーが相手をしているのは、刀を持ったそんな人たちだ。
攻撃を避けるのはたやすい。
一人一人の動きはどうあがいたって素人の域を出はしないのだから。
本当にそこら辺の街の人に「はい」と言って刀を持たせて戦わせているものなのだ。
しかしその割には攻撃に迷いはなく、さらには殺気もありはしないのだ。
だが、それでもキックホッパーは攻めあぐねていた。
彼は徒手空拳で戦うライダーだが、だからといって武器を持った相手に後れを取るはずもないし、この装甲なら腕で受けてもさしたる問題はない。
しかし、彼は見てしまった。
この武器の恐ろしい威力を。
《full charge》
そこに電王が到着する。
フルチャージをため込み、手に持つ武器を投げ放って相手を後退させてキックホッパーの隣に立った。
「大丈夫か?」
「ち・・・・お前は眩しいよなぁ・・・・」
「?」
そんないいタイミングで応援に来た彼にそんなことを言うキックホッパーだが、内心感謝していた。
正直彼らを相手にするには自分一人じゃ分が悪い。
なんでジークがいるんだと気にはなるが、ほかのみんな同様に気にしている暇はない。
「いいか、武器には触れるな。回避しろ」
「? どういう・・・・」
「わかったか!!来るぞ!!」
そう叫んで、キックホッパーが電王を突き飛ばして地面を転がる。
その位置を一人の刀が振り下ろされ、さらに二人、三人と斬りかかってくる。
電王の方にも攻撃は仕掛けられ、忠告通りに回避しているもののすぐに家の壁に追い込まれてしまった。
それに対し、しかたなしと電王がハンドアックスとブーメランを十字に構え、真っ向から受け止めようとした。
しかし
「受けるな!!」
《rider jamp!》
それを見て、キックホッパーがライダージャンプを発動させ、地面と水平に飛んで電王を突き飛ばした。
パンチホッパーにつかまれ、一緒に地面を転がる電王。
そして、その光景を見た。
刀が、普通に振られた。
いや、普通というのはおかしいか。普通ではなかったのだ。
あの位置から振るえば、まず確実に家の壁に当たる。
そのまま振りぬこうとも何をしようとも、必ず一瞬くらいは減速するだろうし、そもそもあの素人集団に家の壁を斬りぬくだけの技量も何もあるわけがない。
しかし、彼はそれを振りぬいた。
ヌルリ、と壁に刀が入り、そのままスラッ!と振りぬいたのだ。
豆腐を切るよう、なんて比喩どころではない。
素振り、空振りしたみたいに、何一つ抵抗なく切られたのだ。
そこで電王は気づいた。
デンガッシャーが切られている。
ブーメランのくの字の先がバッサリと。
感じなかった。
斬られれば必ずそこに重みを感じるはず。そうでなくてはおかしい。
だというのに、目で見るまで気づかなかったのだ。
ゾッとする切れ味。
斬るという感覚もなしに
斬られたという実感もなしに
持ち主の技量など丸っきり無視して、最強の斬撃を放つ刀。
「わかったか?あれを受けられるのは兄貴の十五天帝だけだ!!」
「おのれ・・・この私に刃を向けるなど・・・!!」
「兄貴の場所を教えろ!!俺たちじゃ相手にできないんだよ!!」
そう言いながらもすでに数人くらいは昏倒に成功しているあたり、さすがは仮面ライダーだというところだが、相手も学習しているのかこれ以上は無理そうだ。
どうしても攻撃を受けなければ、こちらが攻撃に移れなくなっている。
ギャーギャー言いながらそれでも向かっていこうとする電王の後ろ襟掴んで、彼の来た方向へと真っ直ぐ走り出すキックホッパー。
後ろから集団が追ってくる。
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一方蒔風達は銃撃部隊を相手にしていた。
さっきキャロが相手にしたのと同じものだが、数が明らかに増えている。
「おいおい冗談みたいな威力してんぞ!?」
「オォあっと!!大兄貴!!どうする!?」
「街の人たち、普通じゃないですよ!?」
それに立ち向かうのは、蒔風、影山、そして合流してきたエリオである。
キャロは後衛に立ち、三人の攻撃や防御をサポートする。
襲ってきているのは街の住人だ。それは解っている。
しかし、彼らの目からはハイライトが消えており、明らかに様子が変だ。
その原因は一目見て分かった。彼らに取り付けられた首輪だ。
蒔風に取り付けられていたブレスレットと同じような外見で、無機質な白いリングなのだが、それのランプが青緑に光っているのだ。
十中八九それが原因である。
しかし、だからと言ってそれを取ればいいのか、という単純な話でもない。
戦闘開始からそれに気づいた三人はすぐにそれを掴んで引きはがした。
するとバタリと倒れて動かなくなるのだが、次に行こうとするとガードされてしまう。
学習している。
結局そこからさらに奪えることはなく、今こうして殴りつけての昏倒や、縛り上げての拘束で倒していっている状況。
「くそ・・・・やろうがァッ!!」
「影山!!キレてもしょうがねェぞ!!」
「でもよ大兄貴!!」
「相手の動きはどうしたって素人だ!!」
「こっちが負けることはないですよ!!」
「そうだけど・・・・よ!!」
しかし、イラつく気持ちは分からなくもない。
影山が叫んでなかったら、エリオか蒔風も叫んでしまっただろう。
このレーザー、貫通力はないものの喰らえば確実に戦闘不能寸前に追い込まれる代物だ。
もはや力だとかそう言う物ではなく、いつまでもうまく耐えきれるかどうかの戦いとなっていた。
そして
「うぐ!?」
「舜さん!!」
「危ない!!!」
蒔風の膝が崩れた。
そこに向かって銃口が向けられるが、影山が蒔風を掴んで回避し、エリオが放電でレーザーを逸らしていく。
「ハァ・・・ハァ・・・・・」
「大丈夫か!?大兄貴」
「くそ・・・体力面がやべぇ・・・・シャレにならんぞ・・・・っ」
蒔風の額を汗が流れ、いくつかの汗と交って大きな水滴となって顎から落ちる。
今一番疲労しているのは他でもない蒔風だ。
キャロからの(微弱ではあるが)治癒魔法も越える疲労。
原因は、街を包むバリアである。
「畜生・・・あのポールさえ倒せれば・・・・」
「無理だ・・・・ありゃとんでもない硬さだし、バリアだって、今の俺じゃ崩せもしない・・・・伏せろ影山!!」
パンチホッパーの肩を借りて一気に立ち上がった蒔風が、彼の背後に放たれたレーザーを十五天帝で弾いていった。
が、一発弾き、二発目を弾いたところで汗で手が滑り剣が落ちる。
放たれるレーザーの本数はかなりものもだが、狙いは悪く、当たるのはせいぜい二、三発だ。
とはいえ、ただの一撃ですらも喰らったらそのまま戦闘不能に押し込まれるので、その弾幕は恐ろしいとしか言いようがない。
ついに拳を握り、蹴りや突きでエネルギーを弾き飛ばしていく蒔風だが、拳からは血が流れ、地面に黒い斑点を残していく。
「舜さん!!くっ、ストラーダ!!」
「おおおお!!ライダーパンチ!!」
ドォウッッ!!
その蒔風を隠そうと、蒔風の前に出て地面を思い切り吹き飛ばすエリオとパンチホッパー。
爆発でも起こしたようにモウモウと上がる土煙だが、相手は銃撃をやめようとしない。
しかしそれが晴れたころには、その場に彼らはもういなかった。
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「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・」
「だ、大丈夫ですか・・・?」
「ああ・・・・・だがまずいぞ。このまま・・・・・ッハァ・・・・じゃゴリ押しで負ける・・・・」
エリオとパンチホッパーは、蒔風とキャロを掴んでどこかの民家に飛び込んだ。
いま、そこの冷蔵庫を漁ってのどを潤し、包帯で手を巻いている。
「街の人たちは操られているだけだ・・・・」
「あの首輪ですよね」
「どこかに指令を出してる場所があるはずなんだが・・・」
そういって、この街の地図(地下牢から盗ったもの)を広げ、自分たちの位置を大体で指差す。
「俺たちがここ・・・・だな。なあ、こういう場合、やっぱどこからやるよ?」
「そうだな・・・やはり電波となると中央部からの発信が一番効率がいい」
「キャロは?サーチできるか?」
「サーチしたんですけど・・・・その電波、街を囲むバリアがら出てるんです」
「と、なると・・・・・あれを壊さないとダメ?」
「いや、あのバリアはオレが出て行った瞬間に展開されたが、その時はまだ彼らはいなかった」
自分が脱出した時を思い出し、蒔風が言う。
あの時に町の連中がまだ出てきていない、ということは、自然に考えてあくまでもバリアを利用して発信している、というだけで電波発信を操作している基地は別にあると考えるのが一番だ。
もちろん、そうではない可能性もあるにはあるのだが・・・・・
「それを考えたら何もできないもんな」
「ああ、できることを順番にやってくしかないみたいだな」
そう話を終え、当面としてはその電波基地を見つけることを第一にした。
話しているうちにエリオが外の様子を見てきたらしく、話してくる。
どうやら探し回る、といううことはせず、マネキンのようにその場で突っ立っているらしい。
等間隔に、それこそチェスの駒のように並んで立つ彼らは気味の悪いものだ。
探し回ってくれれば隙もできるから抜けやすいのだが、こうされると抜け出すのも無理だ。
「あ~も~・・・・・」
「俺、裏口の方見てくる」
「頼む」
どーしろというのだ、と頭を振る蒔風に、パンチホッパーが裏口側を見てくると言って部屋を出る。
直後
「ウオおおおおおおおお!?」
《rider punch!》
ゴッ!!ドォオゥッ!!!
驚愕の感情が込められた声と、ライダーパンチの起動音がして、仮面ライダーパンチホッパーが部屋まですっ飛ばされて戻ってきた。
何があった!?と聞く前に、その部屋の扉がキィ、と開いていき、そこから一人の少女が出てきた。
服装はひどく簡単なもので、つなぎのような、それでいてスポーティーな雰囲気も感じられるもの。
街の住人と同じように目からはハイライトが消えており、無機質に蒔風たちを見ていた。
そしてその顔は、彼らの記憶にある顔だった。
「君は・・・・?」
「街に来たとき・・・最初に会った子か?」
無言で立つ少女。
それはまごうことなく彼らがこの街で最初に会った少女だ。
そして見るからに、今までの住人とは違う。
「・・・・・・・・!!!!」
「ッ!?おぁ!!」
と、その少女が蒔風に向かって突っ込み、そのまま拳を突き出してくる。
それを両掌で受け止める蒔風。
ドッッッ!!ズ、ゴォンッッ!!!
凄まじい衝突音と共に、蒔風がそのまま押し退かされて、少女と共に家の壁を突き破る。
が、押し出されてもその拳を受けたままの体制で耐える蒔風。
周囲の住人はこっちに反応するも、少女がいるからか銃を撃ってこない。
「舜さん!!」
「兄貴!!」
家の中からエリオの、通りからは矢車の声がしたが、それを気にしていられる状況ではない。
少女の踏み込まれた右足が一瞬スゥッ、と弛緩し、直後、凄まじい胆力を以って地面を踏み抜いた。
ゴ、ドォンッッッ!!!
まるで大砲を十発ほど一気に発射したかのような轟音が轟き、蒔風の体が民家を二、三崩壊させながらブッ飛んだ。
少女の立ち位置は変わらず、まっすぐに蒔風の吹き飛んだ方向に拳を向けて構えたままだ。
と、そこで住人たちの瞳にエリオやキックホッパーたちが映り、銃や刀の入り混じった混成部隊となって襲い掛かった。
「刀は受けるな!!豆腐みたいに切れるぞ!!」
矢車の言葉に、エリオが受けようとしたストラーダを引っ込める。
掠ってしまったのか、ブースターの一つが斬り落とされてエリオがその言葉を理解すると、蒔風が突っ込んだ民家の瓦礫が吹き飛び、そこから剣が飛んできた。
剣は、十五天帝。
風林火山が一本ずつ、エリオ、キックホッパー、電王、パンチホッパーの足元に刺さり、各人がそれを手にして攻撃を開始した。
ガラリ、という音がして、瓦礫の中から立ち上がった蒔風が少女を見る。
「この街で何があった・・・・?」
「・・・・・・(ダンッッ!!)」
「あんたらを操ってんのは誰だ!!!」
飛び掛かる少女
迎え撃つ蒔風。
大きなハンデを負って、闇に彼らは立ち向かう。
to be continued
後書き
はいさい!!
相手の武器の解説回&強敵少女出現です!!
銃は前回説明しましたが、刀は初めてですね。
この刀、もし地面に落とせばヌルリと入って行って鍔で止まるまで行っちゃいます。
柄も何もない刃だけで投げれば、減速して落ちるまで止まることはないです。
問答無用の切れ味の刀です。
逆に素人技量相手だから怖い。
蒔風の十五天帝なら受けられる、というのは彼の剣が世界四剣の一つだからです。
基本、絶対に破壊されない剣なので、こういったものも受けられるんですね。
そして少女登場。
でも自己紹介は全然先になりそうだなぁ・・・・・
次回、VS少女
ではまた次回
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