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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  街・捕縛




蒔風たちも寝静まっている頃




そんな時間に、その部屋で動く影があった。


当然矢車たちではない。
その影は淡々と、そして音もなく蒔風の荷物などを運び出していた。



と、その気配に気づいたのか蒔風が薄目を開けてその影をぼんやりとみるが、寝ている途中だということで再び眠りについてしまった。



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次に蒔風の意識がボンヤリと覚醒したのは、部屋の中でではなかった。


見るからに地下。
石に囲まれた壁、天井。その壁のうち一面が檻のような鉄格子。


と、言うか完璧に地下牢だった。



その耳にぼんやりと声が聞こえてきた。



『この薬でも試してみるさ』

『新薬じゃねぇか』

『ああ、なんでも人の恐怖を増幅させてそのまま死に至らしめるという代物らしい』

『へぇ』

『死ぬのが怖いと思えば思うほど心臓は高鳴り、そのままショック死だ。殺人とはだれも思わないってことさ』




そんな会話と一緒に、一人の男が蒔風の腕を取って注射をする。
そして注射針を抜き、檻を出ようとする男。



しかし



「おォイ・・・・・テメェ人が寝てるとこに何してくれてんじゃゴラァ」


この男は知らなかった。
寝起きの蒔風は、特に無理やり起こされたようなときは、とても気分が最悪だということを。




「え?おグっ!?」



その男の後頭部にハンマーのように拳を叩きつけ、地面に倒れたところを蹴り飛ばす。
カシャン、という音と共に檻が閉まるが、特に気にすることもなく男を行動不能にして檻の中の、申し訳なさそうに置かれていたシーツで縛り上げた。

そこまでやって、蒔風の意識も眠気から抜け出していく。



地下牢、石の壁、怪しい研究職の男



「おいおい・・・マジかよ・・・・・」

檻の外を見てみると、そこには一つだけモニターがあって、そこがチカチカと光っていた。
もう一人くらい人の声が聞こえたのは、どうやらそれによる通信の物だったらしい。


今、何が起こっているのかは特にわからないが、ここに捕まるようなことはした覚えがない。
まさかお祭りで貰いすぎたから捕まった、なんてことはないだろうし。


そして、他の四人は無事にホテルで寝ているだろうな、とも楽観的には考えられない。
ここにはいないようだから、ほかのところに捕まっているのか・・・・



そうであるならば、ここにいる理由はない。



蒔風が檻に手をかけ、グゥッ!とこじ開けようとする。
しかし



「ンギギギギギギギギギ・・・・・・!!!」



全く揺らがない。
おもいっきり蹴ってみるが、ビィーン!というだけで折れもしない。


はてな?と思う蒔風だが「何か特殊な金属でできているのか」とでも考え、今度は壁に向かった。

横の壁の材質は普通に岩だ。
まあその中に鉄板でも仕込まれていたら少し大変そうだが・・・・



「ラァッっ!!」



ゴンッッ!



そこを思い切り殴り、そんな重い音がした。
無論、壁は崩れていない。

かわりに、蒔風の方が痛みに拳を押さえていた。


「ノぉォォォオオオオオオ・・・・・・いってぇ・・・・なんだこれ、ただの岩じゃないのか?」


手をプラプラさせて、蒔風が壁に手をやるが、特に何かを混ぜてあるようには見えない。
ただの岩だ。



「ただの岩・・・?なんでこんな程度崩せないん・・・・?」


と、そこで蒔風が、なんで気づかなかったのだろうか、自分の手首につけられている白いブレスレットのようなものに気付いた。


そして、それは・・・・・


「力が抑え込まれている?」


彼の翼人の力を抑え込んでいた。
ためしに開翼でもしてみようとするもの、一気に力が変な方向に流れて発散されてしまいできない。



「開翼できない!?なんだこれ・・・?」


翼人の力がなければ、彼はただの“No name”の人間と変わらない。
こうして岩も崩せなければ、一撃で研究員をのすこともできないのだ。


そういやコイツ気絶させんのにも手間取ったしなぁ・・・・・とそんなことを考えながら、蒔風がどうしたもんかと腰に手を当てる。



そうして三十秒、蒔風が思い出したようにパッ、と手を振った。
するとその腰、背中、脇、腕に、彼の専用剣たる十五天帝が現れてきた。

翼人の力と剣の力は別物、ということをここにきて思い出したのだ。



しかし



「重ッ!」



獅子天麟を振り上げようとして、蒔風が「よっこいしょ」という感じになる。
とても戦闘に使用できるとは思えない。

そもそも、展開させた時点で足腰にキている。


そう。
剣は所有、使用できても、扱いきれるかは別だった。

しかし、それだけでも十分だろう。


「せいりゅ~」

「は」


蒔風には使役獣がいる。
そのうちの一体、青龍を呼び出し、青龍刀で手首のブレスレットを斬ってもらう。


カラン、という軽い音を立てて、それが落ちた。



「・・・・翼人の力を・・・・抑え込むとは・・・・こいつら・・・・何者なのでしょう・・・・?」



青龍の言葉を聞きながら、手首をグニグニと揉み、準備体操のようなものをしてから檻をこじ開ける蒔風。
が、その返答はしない。というかできない。



「わからないな。翼人の存在自体はもうかなりの人間に知られているが、その実態を知っているのは限られている」


そう、知っているだけではだめだ。
識っている必要があるのだ。

翼人の力を理解していなければ、こんな封じ込めるようなモノなど作れるはずがない。



「とにかく、今はほかの奴らと合流しないとな」



そういって、蒔風が机の上のレポートを見る。
そういえば注射されていたな、と思い出すが、その効力を見て鼻で笑う。


なんとなくいやな感じはしていたが、なるほど、そうか。


「死の恐怖、ね。そんなもんじゃ、俺は死なんよ」


バサァッ!とそのレポートを投げ捨て、その場を後にする蒔風。


「ま、そこで死ねた方がまともだったんだろうがな」





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ゴン!ゴン!!ゴンッ!!バァン!!!




幾度か扉を殴り、ようやっとして地上に出る蒔風。


どうやら街の端の方にある家の地下にいたようだ。



その屋根の上に立ち、周囲を見渡す蒔風。

普通に夜の街だ。
しかし、明かりが一つもついていないのはどういうことだろうか?



ヴゥン!!!



「!?」


と、その瞬間に蒔風の背後の方で何かが起動した音がした。


振り返ると、街の周囲を囲うポールの間を、何やらエネルギーのような幕が覆っていっている。

それは一番上をつなぐリングから出てきていて、上にまで張られており、街全体をすっぽりと覆ってしまったのだ。


その直後、蒔風の身体から少しばかり力が抜ける。
少し不愉快な顔をする蒔風だが、今はなんとなくわかった。


「翼人封じの結界版か・・・・効力は薄いようだが・・・・」


蒔風が身体を確認する。

獄炎などの能力はうまく出せそうにない。
開翼はできない。飛行も不可。
肉弾戦や剣を振るうということには問題はなさそうだが、威力は落ちている。



「・・・なんてハンディだよ・・・ったく・・・・」



そうぼやき、平坦な屋根の上を飛び越えて行って行く蒔風。


机の上に会った用紙に、地図もあった。
捕えられている場所は解ってる。




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「うぐっ!?」

「ゴェッ!?」



「ハァぁ・・・・どうせ俺なんか・・・」



同じ頃


蒔風が捕まっていた場所と対して違いはない地下牢。
そこで矢車が、普通に研究員をのしていた。

ただえさえ強靭な矢車の肉体に、ライダーベルトを付けているのだ。
それはもう簡単だろう。


そのまま地上に出て、張られたバリアを見る矢車。



「さて・・・・行くか・・・・」



そういって、どこともなく走り出す。

もはやここは地獄となっている。

ならば、彼の独壇場だ。



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「な、何をする気ですか!?」

「君とこの竜のつながりをね?もっともっと調べようと思ってね。何しろ竜召喚なんてスキルは希少だから」



また別の地下牢。

そこで目覚めたキャロの目に飛び込んできたのは、壁に磔にされているフリードと、同じように磔にされている自分自身だった。



「実際、竜召喚士と竜とのつながりの明確なデータは集まって無いんだよ。まさか引き払った後にこんな験体が来るとは、皮肉だがね」

「引き払った・・・・?」



なんのことを言ってるのかはよくわからないが、とにもかくにもピンチであることは変わりない。

デバイスは離れた机の上におかれている。
呼び出して起動させるには離れすぎている。


「さて・・・・じゃあまずこっちの方から調べるかな」


そういって注射器を持ち、フリードに向かって歩いていく研究員。
その姿にフリードは鳴き、キャロが悲鳴に似た叫び声をあげた。


「や、やめて!!!フリードに何もしないで!!」

「いやいやそうもいかないよ。仮に君から始めるとして、失敗したらどうするんだい?君という験体は一体しかいないんだ。それに比べ、数は少ないものの竜だったら何匹かうちにもいるしね」


キャロの言葉にも、なんてこと無いようにサラリと答える研究員。

ケリュケイオンがなければフリードを巨大化させられないし、仮にさせてもデバイスもない状態では傷つけてしまう。
それにフリードよりも、取り付けらているロックの方が強かったら、千切れるのはフリードの翼だ。


研究員が、フリードに近づく。
その注射の先端から怪しげな液体が滴り、それが肉体に侵入しようとした。


瞬間



『愛おしい女児がやめろと言っているのだ。止めぬとはとんだ無礼者だな』


「え?ワブッ!?」



フリードの目が真っ白に染まり、そんな声が聞こえてきた。
直後、フリードのむき出しになっている腹部あたりから真っ白な羽根が噴き出してきて、研究員を壁まで吹き飛ばしていった。



「え?フリード!?」



驚くキャロだが、そのフリードの身体から光が飛び出して実体化する。
その光が羽をまき散らし、実体化。スタンと足音を立てて着地した。


「降臨!・・・満を持して」


出てきたのはイマジン・ジーク
どうやら蒔風にこっそりついてきたらしいのだが、人ではばれるということでフリードに憑りついてきたらしい。


「大丈夫か?安心するがいい。私が来たからには、そなたの安全は確定した」


高慢、かつ自信にあふれ、そして少し上から目線でそういってくるジークが、壁際のボタンをいじって錠をはがす。

キャロとフリードが解放され、ジークとともにその場から脱出していった。



「みんなどこに・・・」

「探す必要はない」


ケリュケイオンでサーチしようとするキャロだが、ジークがそういって制する。
何か考えがあるのか。そう思ったキャロが、ジークの案を聞こうと耳を傾けた。


「私が動くのではない。世界の方が、私を中心に回っているのだ。だから大丈夫だぞ!」

「ケリュケイオン、サーチ」

《OK》


そのジークをサラリとスルーし、再び検索を頼むキャロ。

ガァン!と少しショックに打たれたジークだが、はっはっは!やんちゃだな、とか言って気を持ち直している。


まあ本人がそれでいいならいいのだろうが。




彼らが動き出す。



脱出もままならぬ、この街で





to be continued
 
 

 
後書き

とりあえず捕まって、逃げ出したよ!!


蒔風は弱体化、ほかはそうでもないです。


エリオと影山?
あっちはまた捕まりっぱなしです!!


蒔風も十五天帝がなきゃ脱出できませんでしたし、キャロはジークがいなきゃ実験されてましたしね。

矢車さんは説明いらず。
あの人だったら簡単に脱出できそう


そしてジーク登場
フリードから散ってた羽根はそういうことでした!


本当に意味で蒔風フルメンバーですね
見事に野郎しかいねぇな

あ、キャロがいるか。



さて、次回は街、奔走!!
二人も助けないといけないし、こりゃ大変だ!!


ではまた次回

 
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