恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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21部分:第二話 張三姉妹、太平要術を授かるのことその八
第二話 張三姉妹、太平要術を授かるのことその八
「来たのよ」
「そうでしたの、曹操」
「あら、他人行儀ね」
曹操と呼ばれたその少女は楽しげに笑って袁紹に応えた。
「私達の中なのに」
「では何と呼べばいいのでして?」
「それは貴女もよくわかっている筈よ」
「そう。では華琳」
微笑んでこう呼んでみせたのだった。
「これでいいですわね」
「ええ、それでだけれど」
「私を迎えに来てくれたのでして?」
「そうよ。何なら一緒に飲まないかしら」
曹操はこう言って袁紹を誘った。
「部下達もいることだし」
「それは嬉しい誘いですけれど」
だが袁紹はここでうっすらと笑って曹操に返すのだった。
「私は今から都に行かなければなりませんのよ」
「都に?」
「そうでしてよ。何進大将軍に呼ばれまして」
「大将軍になのね」
「そうでしてよ。ですから急がなければなりませんの」
笑ってこう言うのである。
「それに今は領地の統治にも忙しいですし」
「三州の統治にね」
「華琳、貴女は今二州でしたわね」
「ええ。この予州と兗州」
この二つの州なのだという。
「その統治を任されているわ」
「そちらも順調なようですわね」
「さて、それはどうかしら」
だが曹操は袁紹のその問いにはこう返したのであった。
「果たして」
「違うといいますの?」
「まだね。少なくとも貴女のところのようにはいっていないわ」
「見たところ」
しかし袁紹はここで町を見回した。町は人も多くまた賑やかである。繁栄していることは明らかである。
「栄えていますわ」
「まだまだよ。貴女の様にはいっていないわ」
「そうですかしら」
「それでよ。都に入ってもすぐに戻るのね」
「人材も来ておりますし」
そのことも言うのである。
「何かと」
「そう、そちらにも相変わらず余念がないのね」
「貴女もですわね、華琳」
また彼女の名を呼んでみせた。
「貴女の方も」
「ええ。この前も異国から来た人材が加わったわ」
「誰ですの?それは」
「確か名前はジョン=クローリー」
この名前が出て来た。
「緑の服の黒い眼鏡の男よ」
「ジョン=クローリー」
「参謀にも使えるし腕も立つ」
そうした人間なのだという。
「かなりの逸材よ」
「私の国ではリー=パイロンやジャック=ターナーが加わりましたわよ」
「聞かない名ね」
「けれど薬を使えたり腕もよくて」
その二人の話であった。
「申し分のない逸材ですわよ」
「貴女も頑張っているのね」
「ええ。ただ」
「ただ?」
「一つ気になることがありますわ」
不意にこんなことを言う袁紹だった。
「一つですけれど」
「あら、それは何かしら」
「近頃領内を怪しい男が歩き回っていますの」
怪訝な顔での言葉だった。
「赤い服に白いズボンの白髪の」
「白い髪の男!?」
「そうですの。何かと歩き回っていますの」
「その男だけれど」
ここで曹操もいぶかしむ顔で返してきた。
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