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飛べない揚羽蝶

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第六章

 そうしてだ、またあの娘を思い出して言った。
「七歳からって娘もいるし」
「何が七歳からなの?」
「ちょっとね」
「ちょっとじゃわからないよ」
「だからこっちの話よ、凄過ぎるでしょ」
 幾ら何でもだ。
「どれだけ早いのよ」
「だから何が七歳なのかな」
「だからこっちの話よ」
 弟の突っ込みをまたかわした。
「あくまでね」
「そうなんだね」
「そうよ、じゃあもうすぐ晩御飯だから」
「今日はムニエルらしいよ」
 弟はメニューの話もしてきた。
「それね」
「ああ、ムニエルね」
「そう、鱈のね」
「それはいいわね」
 私の好きな食べものの一つだ、実は魚料理は全部好きだ。
「じゃあね」
「一杯食べるよね」
「ええ、お母さんお料理上手だしね」
「毎日作ってるからね」
「毎日作ってるとね」
「やっぱり上手になるのね」
「そうみたいだね」
 実はお父さんも結構得意だったりする。
「やっぱりお母さんも努力してるんだね」
「そうね、手を抜いてばかりだと」
 どうしてもだ。
「上手にならないわね」
「揚羽蝶も育たないよ」
「そうよね」
「皆蝶々にするから」
 弟は虫達を見つつ言った。
「絶対にね」
「あんたも燃えてるわね」
「皆蝶々にしたいから」
 こう思うからこそというのだ。
「餌もあげて水槽の中も整えて」
「あと暑過ぎず寒過ぎず」
「適温にしてね」
 虫達に相応しい温度にしてというのだ。
「育てて皆蝶々になるしなってもらうよ」
「頑張ってね」
 私は弟に微笑んで言った、そうして自分も部屋で勉強を頑張った。私も揚羽蝶になる為に。


飛べない揚羽蝶   完


                   2017・5・26 
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