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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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目覚めない男

 
前書き
体脂肪率がなかなか落ちなくなってきたので最終手段に打って出ることにしました。
その名も・・・『ガゼリ菌ヨーグルト作戦』!!
いやいや、最初から食べておけよって話ですけど、まぁお金をかけたくなかったもので・・・
これで体脂肪落ちるかな?目指せシックスパック!! 

 
見回りを始めて早一週間が経った。今俺たちのグループは休憩の時間に入っている。

「ちょっとお嬢とユキノの様子見てきます」
「あぁ、よろしく頼む」

見回りの時間が終わったと同時に医務室へと走り出すグラシアンさん。彼のギルドでは二人のメンバーが負傷者となっているため、彼はこの時間を利用して二人の様子をしに行っているらしい。

「昔のあいつらからでは、想像できんことだがな」
「そういえば・・・」

以前の剣咬の虎(セイバートゥース)は、マスターの意向もあって実力主義、弱者は不要といったところがあった。その結果仲間想いのナツさんの逆鱗に触れて大騒ぎになったんだけど、今ではスティングさんがマスターになったこともあり、仲間想いで和気藹々としたギルドの雰囲気になってきている。

「俺も医務室行ってきます。もしかしたら起きてる人がいるかもしれないですし」
「ならば私も行っておこう。ユキノのことが気になる」

大魔闘演武での戦いでユキノさんと仲良くなったというカグラさんは、負傷した彼女を心配しているようだ。なので二人で医務室に行ってみることにした。

コンコンっガチャッ

「具合はどうですか?」
「シリル様、カグラ様」

ノックしてから中に入ると、そこでは頭に包帯を巻いているユキノさんが迎えてくれた。

「ユキノさん!?起きて大丈夫なんですか!?」

昨日までは意識不明でずっと眠っていたのに、今はベッドの上ではあるが、上体を起こしている。

「はい!!シェリア様に診てもらいましたので」

各グループにいる治癒魔法の使い手たちが、代わり代り治癒魔法をかけていたのだが、その効果がわずかながらにでも出てきているらしい。

「ミネルバ様も先程まで起きていたのですが・・・」

今は寝息を立てているが、ミネルバさんもさっきまでは起きていたらしい。昨日までに一夜さんたち天馬の面々も目覚め始めていたし、全員が起きるのも時間の問題だな。

「起きてはいるが、まだ戦うまではいかんだろうな」
「申し訳ありません」

徐々に起きている人たちは現れたけど、みんなまだ万全な状態じゃない。向こうが攻めてくるまで期間はあるけど、それまでに回復するかも微妙なところだろう。

「頭数が足りないから、もし間に合うようなら王国兵と一緒に雑魚の一掃をやってもらおう。それなら大きな負担もかからんだろう」
「そうですね」

基本的な作戦は変えずに、戦える人にも手伝ってもらえるようにしようと話していると、ふと一つの疑問が浮かんでくる。

「あれ?そういえばグラシアンさんは?」

先に医務室に向かったはずのグラシアンさんが、この場にいない。

「グラシアン様ですか?こちらには来ていらしてませんが」
「「え?」」

ずっと起きていたというユキノさんが見ていないということは、彼は始めからここに来ていないということになる。でもなんで?俺たちにウソをついたってこと?

ガチャッ

そんなことを考えていると、医務室の扉が開き、中に先程別れた青年が入ってくる。

「あれ?シリル?カグラさん?どうしたの?」

何気ない顔で入ってきた彼を見て、なぜか安心した。だって、ただ道に迷っていただけで、入れ違いになっただけだったようだから。

「グラシアン。傷を見せろ」
「は?」

ユキノさんたちの様子を見に来た彼にカグラさんが詰め寄ると、鋭い視線でそう告げる。そう言われた青年は何のことかしらを切ろうとしたが、彼女の鋭い視線に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「もし断れば、今回の作戦から抜けてもらう」
「・・・わかった」

渋々、脅された形になった彼は傷口を見せる。そこには、先日はなくなっていた傷が、深く刻まれていた。

「え?これってどういう・・・」

ケガをした前日はなくなっていたのに、なぜ今になって傷口が現れたのかわからない。疑問で首を傾げていると、カグラさんは大きくタメ息をついた。

「やはり、幻影で誤魔化していたんだな」
「え?」

そう言われると、グラシアンさんの魔法ならいくらでも傷を隠すことはできることに気が付く。そこまでして作戦から外されたくなかったのか。

「シリル、しっかり治療しておいてくれ。予定日に間に合うようにな」
「はい!!」

人数の関係上、ここで彼を外すことはできない。なので、正直に報告してくれた礼としてリオンさんたちには伝えず、俺が治療する形で誤魔化すことにした。



















それからさらに二週間が経過した。
予想通り見回り期間中に攻めてこられることもなく、グラシアンさんの傷もほとんど治癒して何事もなく過ごせるレベルまでなっている。他の皆さんもほとんど目覚めており、作戦にも、王国兵のフォローとしてだが参加できそうな段階まで来ていた。一人を除いては。

「レオンが起きないの?」

時刻は夜。この時間帯はシェリアたちのグループが見回り隊となっているため、俺とウェンディは医務室にやって来ているのだが、交代のためにやって来た少女に現在の状況を伝えておく。

「うん。他の皆さんは目覚めてるんだけど、レオンだけはどうしても起きなくて・・・」

元々傷が深いこともあり、そう簡単に目覚めることはないと思っていたけど、ここまで起きないのはあまりにも異常だ。あいつのことだから、「お腹減った」とか言って起きるんじゃないかとも思っていたけど、その兆候は一切なく、点滴で栄養を送っている状態になっている。

「もしかしたら起きるのかもしれないから、一応気をつけてはおいて」
「うん。わかった」

次の見回りのために睡眠を取ろうと医務室から出ていく。すると、そこにはウェンディと同じグループのリオンさんが腕組みをして待っていた。

「レオンはまだ目覚めないか」
「はい・・・」

彼が復帰すれば戦力的にかなり優位性を得ることはできる。でも、敵が攻めてくるまで残り一週間。それまでに目覚めるかと問われると、首を縦には振れない状況である。

「そうか・・・」

しばらく何かを考えているリオンさんだったが、その考えがまとまったらしく、ゆっくりと顔を上げる。

「レオンを医務室から運び出すぞ」
「え?」

予想だにしなかった言葉に耳を疑う。彼は困惑している俺に対し、その理由を説明し始める。

「このままあいつが起きなければ、安全地帯に運ばなければならないは間違いない。ならば早めに動かしておいた方が、敵にレオンがいないことを悟られないだろう」
「なるほど」

確かに眠っている彼をその場に残していたら、向こうが攻めてきた時、万が一にも城の中に雪崩れ込まれたら、彼を人質に取られてシャレにならないことになるかもしれない。
そういうことになったので、リオンさんとローグさんがお城の屋根裏部屋に運んでいってくれることになった。その間に俺は睡眠を取ると、見回りの時間になったので、カグラさんに叩き起こされて循環へと回ることになった。

「おはようございます!!皆様」
「ユキノ!!」

部屋からカグラさんと共に出てくると、そこにはグラシアンさんと一緒に、ユキノさんが待っていた。

「どうしたんですか?」
「体は大丈夫なのか?」

負傷して戦線から離れていた人物の登場にうれしいような、心配なような感情が出てくる。

「はい!!シリル様たちのおかげで元気になりました」
「よかったぁ」

顔色もいいし、体調も問題なくなっているらしい。なので、これからの一週間は見回りの時間を短くし、疲労回復を図ろうということで、人数の多かったB、Cグループを三つに分解し、四つのグループに復帰した面々を割り振ることになったらしい。

「無理はするなよ、ユキノ」
「お前もだぞ、グラシアン」

事情がわかったところで見回りに入ろうとしたその時、後ろから声をかけられる。

「カグラ、シリルを少し貸してもらえないか?」
「あぁ、別に構わないが」

声をかけてきたのはリオンさんだった。彼は俺に何か用事があるようで、先に三人に見回りに出ているように伝える。

「どうしたんですか?リオンさん」
「あぁ。お前に頼みたいことがあってな」

ずいぶんと改まった様子の彼を見て、こちらも緊張感が高まってくる。彼が頼みごとがああるというだけで珍しいのに、こんなに真剣だと嫌な予感が脳裏を過る。

「今回お前には国王に付いてもらうことになっているのは伝えたな?」
「えぇ、まぁ・・・」

国王の周囲の警護と、万が一の場合の治療のために、俺、ウェンディ、シェリアの三人は国王のすぐそばに付くことになっている。改まって何を言われるのかと思ったら、そんなことの確認なのか?

「国王のそばにつく三人の中では、お前が一番の実力者だ。だからこそ、お前にしか頼めないことがある」

褒められているのがわかるから、思わずはにかんでいたのだが、ここからが本題とあって表情を引き締め直す。

「もし、俺たちが突破されたら、お前が先頭に立って敵を止めろ」

敵の主力に一人ずつ戦いを挑むことになっている今回の作戦。ユキノさんたちも復帰していることから、多少は戦力も補強できるとは思うけど、万全ではないから王国兵と行動を共にすることになると考えられる。なので、あまりないとは思うが、担当者が撃破されると敵は必然的に国王の元にたどり着く可能性が高くなる。

「そりゃあもちろんですよ!!いまさら言わないでください」

だけど、そんなことは始めからわかっている。そのためにいるのだから、全力で敵を殲滅するのは決まりきっていることだ。

「ならよかった。だが、簡単に考えることはやめてくれ。今回の依頼はそれだけ重要なんだ」

もし失敗したら、フィオーレ王国が大きく傾くことになる最重要クエスト。絶対に失敗することが許されないため、緊張感を持って臨まなければならないことは百も承知だ。

「特に、一夜たちをやったホッパーと呼ばれている男。奴がもっとも警戒すべき相手だ」

俺はまだ姿を見たことはないが、レオンの攻撃ですら片手で止めることができるほどの強者。しかも一夜さん、レンさん、イヴさん、タクトさんの四人を一人で倒してしまうことから、防御力、攻撃力共に優れていることは確かだ。

「もしかしたら、奴だけは俺たちのことを突破してくるかもしれん。そうなると、何か対策をしておかなければならない」
「対策ですか」

そう言われても、相手がどんなタイプの敵なのかもわからないのに、どうやって対策を取るべきなのか。そもそも、その人が突破してくるのかわからないし、そうなると他の人たちの対策も考えなければならなくなるんじゃ・・・

「他の連中はお前ならなんとかできる。だが、ホッパーはそいつらを束ねる組織のリーダーだ。無策でやるわけにはいかない」

だから一夜さんたちに話を聞いておけというリオンさん。一度とはいえ、手合わせした相手なら何か分かるかもしれない。そう納得した俺は見回り当番が終わった後、一夜さんたちに話を聞いてみたが、彼らも何某何なのかわからぬうちにやられてしまったらしく、有益な情報を得ることはできなかった。

「どうしたもんかなぁ・・・」

何ともしようのない状況に、頭を悩ませた俺はある場所へとやって来る。

「まぁ、ここに来ても意味はないんだけど・・・」

今俺がいるのは、いまだに目の覚めないレオンが眠る屋根裏部屋。もし彼が目覚めれば、話を聞けるかもと思っていたが、そんな気配は一切なかったことを思い出し、無駄足だったと後悔する。

「ホッパーって人の対策が何も思い付かないんだよ。何かいい案ないかな?」

聞こえているはずもない少年の枕元に腰を下ろし話しかけてみる。だが、当然のことではあるが、彼からの返答は得られない。

「この作戦は絶対成功させないといけないのに・・・何も対策がないんだよ・・・」

重要な依頼という意味でも、個人的にもという意味合いでも、今回の作戦は必ず成功させなければならない。それなのに、リオンさんがあんなことをいったから、不安で不安で仕方ない。

「てかお前にこんなこと言っても意味ないのか」

そう思っていたけど、よく考えたらレオンも一度しか・・・しかも、攻撃を受け止められただけだから、相手のことは詳しくわからないはず。それなのに何か対策を考えてもらおうなんて、虫が良すぎたか。

「まぁいいや。またあとで様子見に――――」
「あるぞ」

これ以上ここにいても意味もないし、レオンの容態も確認できたので体を休めようと立ち上がり、踵を返したその時、後ろから声が聞こえ、驚き振り返る。

「たぶん・・・お前ならいけるはずだよ」

そこにはうっすらとではあるが、目を開けている氷の神の姿があった。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
とりあえずやりたかったことは全部やった!!あとはバトルのと個人的な今回のメイン、『ソフィアの秘策』だけです。
次からバトルに移行していこうと思います。 
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