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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ふざけるな

 
前書き
最近暑くて体キッツくなってきました。
皆さんも水分補給に気を付けましょうね。

水竜「蒸発しそう・・・」
氷神「溶けそう・・・」
変態「二人とも弱!!」 

 
「愛しているって・・・どういうことだ?」

突然の告白に、言葉の意味がわからず唖然としているグラシアン。しかし、イザベリーの目は本気だった。

「言葉通りの意味だよ。私は、ずっとグランのことが好きだった」

二人が初めて会ったのは、イザベリーが両親に捨てられ、路頭に迷っていた時。そんな時に手を差し伸べたのがグラシアンだった。
彼は父を殺し、一人になり、生きるために人を騙し続けて生活をしていた。そんな時に後に仲間になる三人に誘われ、その盗賊団に加入した。それからしばらくして、路頭に迷っていたイザベリーを仲間に誘い、五人で行動するようになった。

「なんかね、初めて会った時にピピッと来たの。それから一緒に生活していったら、どんどん好きになっていった」
「・・・」

初めは冗談かと思っていたが、その声のトーンが、彼女の気持ちが本心であることを裏付ける。しかし、彼はそれに対し回答することはできない。
以前、彼女を裏切った自分には、何と返答すればいいのかもわからず、答える権利もないと考えたからだ。

「別に返事をしてほしいわけじゃないの。ただ・・・」

グラシアンから離れ、顔を俯けているイザベリー。グラシアンは次に繋がる言葉を待って、彼女のことを見つめている。

「ただ()()にこの気持ちを伝えておきたかった」
「最後?」

ただでさえ頭がついていっていない状況で、ますます訳のわからない言葉を言われ、さらに混乱していると、突然腹部に激痛が走る。

「ぐっ!!」

いきなり何が起きたのかわからず、腹部を押さえうずくまる。押さえたその手を見ると、そこには大量の鮮血が付いていた。

「ごめんね、グラン。でもこれしかないの」
「何言ってんだ?」

傷が深いこともあり、呼吸が浅くなってくる。そんな彼を見下ろす女性は、悲しそうな表情を浮かべていた。

「愛していたあなただから・・・最期は私の手で殺してしまいたいの」
「そういうことか」

敵対しているはずなのに、わざわざ敵の本拠地であるメルクリアスの付近にまで現れる大胆不敵な行動。そこまでして自分に何を伝えに来たのかと思っていたら、その本当の目的は、お別れの挨拶。それがわかったら、彼はどこか安心したように微笑む。

「なんで笑ってるの?」
「いや・・・なんでかな?」

自分でもなぜかわからない。死が目前に迫ってきており、慌てるべき状況であるはずなのに、どうしてか笑みが止まらない。
しかし、次第にその理由を理解してきた。かつて行動を共にし、裏切ってしまった女性。彼女に殺されるなら・・・彼女が自らの手で殺めたいと言ってくれたことに、嬉しさが溢れ出してきていたのだ。

「じゃあね、グラン。これでお別れだよ」
「あぁ・・・すまなかったな」

己の首を差し出すかの如く、項垂れて下を向くグラシアン。潔い彼のその姿に、イザベリーは涙を流しながら、止めを刺そうと腕を振り上げる。

「白竜の・・・咆哮!!」
「「!?」」

お互いに覚悟を決めたその時、二人を切り裂くように放たれるレーザー。目の前を通過したそれに驚いたイザベリーは、慌てて後方へと飛び逃げる。

「大丈夫か!?グラシアン!!」
「スティング・・・」

二人を引き裂いたのは、現在のグラシアンの仲間であり、剣咬の虎(セイバートゥース)のマスターであるスティング。彼は息を乱しながら駆けてくると、うずくまっていたグラシアンの前へと割って入る。

「てめぇ、うちのギルドのもんに何しやがる」

マスターとしての責任感により、激しい闘志を剥き出しにしているスティングだったが、目の前の女性は肩をすくめるだけで彼を相手にしようとはしない。

「邪魔が入っちゃったからもういいや。じゃあね、グラン」
「待て!!」

その場から動こうともしないグラシアンに手を振り、その場から走り出すイザベリー。スティングがあとを追い掛けるが、すぐに姿を見失ってしまった。

「グラシアン!!どこをやられた?」

これ以上の追跡は無理だと諦め、すぐにでも治療が必要だと思われる仲間の元に歩み寄る。

「ふざけんなよ・・・」
「え?」
「ふざけんなよ!!」

スティングがグラシアンの肩を揺すった途端、彼が大声で激昂する。その圧力に、青年は思わず手を退けた。

「てめぇは何勝手に入って来てやがる!!俺らの問題なんだから、しゃしゃり出てくんじゃねぇよ!!」
「わ・・・悪ぃ」

今まで見たこともないような目をする彼に、後ずさるスティング。その姿を見たグラシアンは、ようやく冷静さを取り戻すと、申し訳なさそうに顔を伏せる。

「悪い、理不尽なこと言った。助けてくれてありがとな」

気まずさからか目を合わせることもなく立ち上がるグラシアン。スティングはそんな彼を支えようと無言で肩を貸し、メルクリアスへと戻っていった。



















翌日~シリルside~

「え?グラシアンさんもケガしたの!?」

朝食と追加報告があるとのことで昨日の会議室となった待合室にやってきた俺たち。そこでアルカディオスさんから告げられたのは、予想だにしない言葉だった。

「あぁ。昨日スティングが大ケガをしているグラシアンを連れて帰ってきた。ただ、二人とも事情を話してくれんから、何があったのかはわからないがな」

昨日ウェンディがソフィアに話を聞きに行っている最中に、グラシアンさんが突然お城を飛び出してどこかに向かったらしいのだが、それに違和感を覚えたスティングさんがあとを追い掛けると、血まみれになっていた彼がいたらしい。でも、スティングさんの目が泳いでいたから、どこまで事実なのかはわからないけど。

「とにかく、それが事実ならまた一から作戦を考えなければならないな」

リオンさんの言う通り、この報告が事実で、グラシアンさんが大きなケガを負って動けないというのなら、昨日決めた対戦者をまた考えなければならない。いや、そもそも人数が足りていないから、その辺を考慮した作戦を立てないといけないのか?

ガチャッ

そんなことを話していると、部屋の扉が開き、そこから入ってきたのは、今さっき話題に上がっていたグラシアンさんだった。

「グラシアン!!」
「おはよっす」

驚いて席を立つスティングさんたちに軽く手を上げて答えてみせるグラシアンさん。だけど、なぜ彼がそんなに飄々としていられるのか、俺たちには理解できない。

「お前・・・ケガは大丈夫なのか?」

昨日ケガを負ったというのに、何事もなかったかのように平然と現れた青年に問い掛けると、彼は服を持ち上げ、腹部を見せてくる。

「昨日衛生兵(ヒーラー)にすぐ治療してもらったよ。おかげでご覧の通りだ」

傷痕一つ残っていないその場所を見て、全員がひと安心する。あそこまで完璧に治っているのであれば、そこまで深い傷でもなかったのだろう。

「・・・それなら、昨日通りの作戦でいいんだな?」
「あぁ。そうしてくれ」

お腹を閉まっているグラシアンさんの方を訝しげな表情で見ているリオンさんに、彼はあっさりとした回答をする。だけど、リオンさんやスティングさんは妙に顔が怖い。一体何なのだろうか?

「これで全員揃ったかな?」

重苦しい空気が流れ始めたその時、一人が立ち上がり全員の視線を集める。彼は俺たちの視線が集まったのを確認すると、ポケットから一枚の紙を取り出す。

「その紙って・・・」

ヒビキさんの持っているその紙に、みんな見覚えがあった。それはグラシアンさんがアジトから拾ってきた、敵の作戦決行の日付が記されているメモだった。

「昨日、これの解読が終わった。詳しい作戦まで記されてればよかったんだけど、残念ながらそこまでは書いてなかったよ」

古文書(アーカイブ)を駆使して敵の暗号じみたメモを解読していたヒビキさん。その顔は寝不足なのか、目の下にはうっすらとクマが浮かんでいた。

「だけど、日付は記載されていたよ。相手が攻めてくる日がね」

それを聞いて小さな歓声が起こる。昨日決めた作戦は、相手が攻めてくる日にちが正確じゃなければ成り立たない。第一関門を突破できたことで、作戦成功の可能性が大きく高まった。

「このメモによると、作戦決行日は今からちょうど一ヶ月後の日曜日」

一ヶ月後か・・・それだけ期間があるのなら、こちらとしても準備ができるし、ありがたい限りだな。

「ねぇ、今気付いたんだけどさ」
「「「「「??」」」」」

そんなことを考えていると、ミリアーナさんが何かに気付いたらしく手を挙げる。

「このメモが盗まれたって向こう気付いたら、作戦の日にちが変わるんじゃない?」

言われてみたら、確かにその通りかもしれない。こちらに日付がバレているのなら、それを利用して日程をズラせば、相手側としては攻めやすいのかもしれない。

「それも考えたが、この日から変えられても一週間程度だろう」
「それも、早くする以外にメリットはないな」

ミリアーナさんのもっともな疑問に冷静に答えるリオンさんとカグラさん。その理由が何なのか、気になったメンバーは彼らの方に視線を向ける。

「今回のレオンたちの攻撃で向こうも甚大な被害が出ているだろう。そうなれば、こちらの王国兵の存在もあるから、回復するまでは動き出せないはずだ」
「それに、予定よりも日程を遅らせると、こちらに万全な準備を整えられる。警戒心は削がれるかもしれないが、その分さらに城の守りを固められたら、本末転倒だろう」

だから早めて一週間、でも、極力決行日は変更しないだろうという考えらしい。二人の考えも正しいような気がするし、そう信じたいけど、一応見回りだけはしておいてもらった方がいいかな?なんか不安があるし。

「相手の襲撃してくる日はわかったけど、念のため、時間制で見回りをしておくことにしよう。もちろん王国兵たちもいるだろうけど、僕たちもすぐに動けるようにしておいた方がいいからね」

俺が不安を感じているのが伝わったのか、はたまたヒビキさん自身も何か感じるところがあったのか、そんな提案をしてくる。

「治療ができる三人は別々のグループに分けよう」
「実力も差がないように分けるぞ」

リーダーシップがあるメンバーが多いこともあってか、次から次へと話が進んでいく。その結果、ものの数分で班分けが決まった。決めたの殆どリオンさんとカグラさんとヒビキさんだけど!!

Aグループ カグラ、グラシアン、シリル
Bグループ リオン、ローグ、ソフィア、ウェンディ
Cグループ ヒビキ、スティング、ミリアーナ、シェリア

「こんなもんでいいだろう」
「あぁ、そうだな」

それぞれのグループに治癒魔法が使えるメンバーを振り分け、実力もほぼ同じになるようにした。これなら、万一敵が襲撃してきても、他のグループを起こしてくるまでの時間稼ぎはできそうだ。

「本当はミネルバやレオンもいてくれるとありがたいんだが・・・」
「無いものねだりはよそう。変に期待してしまうだけ時間の無駄だ」

限られたメンバーでの班分けになってしまったため、多少の不安はある。それでも、レオンたちが帰ってくるまではこのメンバーで何とかしておくしかないだろう。

「見回り時間は八時間。担当時間じゃないうちに睡眠は済ませておいてくれ」

3グループあるため、一日の中での活動時間も短くすることができる。長いと注意力が散漫になってしまい、いざというときに支障が出てしまうため、これは大きなメリットだろう。

「Aグループから順番にやっていくぞ」
「BグループとCグループはゆっくり休んでおいて」
「「「「「了解!!」」」」」

カグラさんとヒビキさんからそう言われ、グループごとに散っていく。班が違くなってしまったから、ウェンディと離ればなれになってしまったのが寂しいところだけど、ここは我慢しないと。

「グラシアン、本当に大丈夫なんだろうな?」
「ダメだったらダメって言いますよ」

体を休めるために部屋から出ていく人たちを背に、その場に留まり集合しているのは、俺、カグラさん、グラシアンさんの三人。人数の都合上、このグループだけは三人になってしまったけど、カグラさんもいるし大丈夫・・・だよね?

「具合が悪くなったらすぐに言え」
「心配しすぎ。何も問題ないですよ」

昨日の今日だからなのか、グラシアンさんのことを非常に気にかけているカグラさん。後で診察でもしてあげようかな?その方が安心して行動できるし。

「シリルも無理はするなよ」
「了解です!!」

普段とは違う体になっている俺のことも気にかけてはくれているらしい。心配しなくても、今のところ体に異常はないから大丈夫ないんだよね。

「城の周囲の見守りもするが、他にもやらなければならないことは多い。キビキビ動けよ」
「「他にやること?」」

やっと見回りに動き出そうかとしたところで、カグラさんから意味深なことを言われ顔を見合わせる。ただ、彼女は詳しく話すことなく先に行ってしまうため、俺たちは慌ててあとを追い掛けた。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
作戦決行まで一ヶ月となっていますが、その間の準備等はやる気はありません。
たぶん次からバトルの方に移っていくんじゃないかと思います。ここまでが長かったからね(笑) 
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