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真田十勇士

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巻ノ九十 風魔小太郎その七

「そのお力お授け下さい」
「ではな」
「ここに暫くですか」
「寝泊りしてもらうぞ」
「無論承知のこと」
「真田殿も由利殿もわしの屋敷に入られよ」
 そして寝泊りの場所にせよというのだ。
「是非な」
「そうしてよいのですか」
「屋敷といってもかなり狭いが」
 それでもというのだ。
「そこを使われよ。わしも今では妻も子もおるが」
「それでもですか」
「只の世捨て人じゃ」
 ここでもだ、風魔はその大きな口を開けて笑って言った。
「気遣いは無用じゃ」
「そう言われますか」
「だから遠慮は無用、そしてな」
「そしてとは」
「風呂は近くに温泉があるし食うものは山に入れば幾らでもある」
「獣や木の実や川の魚達ですか」
「そういうものを食えばよい」
 それでというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「存分にじゃ」
 まさにというのだ。
「修行をしようぞ」
「それでは」
「うむ、ではまずはその飯じゃ」
 話したそれだというのだ。
「近くで何か採るとしよう」
「それも修行ですな」
「そのうちの一つ、貴殿に風の術を授けるが」
「その風の術で、ですな」
「獲物を捕らえようぞ」
「畏まりました」
「獲物は幾らでもある」
 風魔は余裕の笑みで述べた。
「由利殿ならおわかりであろう」
「はい、風の術を使えば」
「幾らでもじゃ」 
 それこそというのだ。
「得られるからのう」 
「こうしてですな」 
 早速だった、由利は右手をさっと上に振った。するとそこから鎌ィ足が飛んでだった。その刃で上を飛んでいた鳥をだ。
 傷つけ落とした、そして既にこと切れている鳥を見つつ風魔に言った。
「捕らえられますな」
「その通りじゃ、お見事」
「では早速この鳥に」
「あと数羽捕まえてな」
「食いますか」
「そうしようぞ」
「それでは」
「しかし。一撃でしかも苦しまず倒すとは」
 風魔は由利が今落としたその鳥を見て言った、喉のところを半ばまで切られていてまさに一瞬で死んだことがわかる。
「流石は真田十勇士のお一人」
「そう言って頂けますか」
「これならば修行をされても」
 それでもというのだ。 
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