提督はBarにいる。
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お通し談義・その2
さてさて、お次はどうするか……あ、そういや山雲の奴が実験的にハウス栽培したナスがあったっけな。ここはひとつ、変わり種の焼きナスといくか。
《相性バッチリ!にんにく醤油の焼きナス》※分量2人前
・ナス:3本
・サラダ油:大さじ2
・ごま油:小さじ2
・醤油:大さじ1
・みりん:大さじ1
・酒:大さじ1
・砂糖:小さじ1
・水:30cc
・おろしにんにく:小さじ1/3位
・白すりごま:小さじ1
焼きナスといやぁ生姜醤油におかかってのが定番だと思うが、甘辛のタレとにんにくを効かせたコイツの方が、俺は好きだねぇ。酒にも合うし、飯にも合う。
ナスはヘタを落として縦に半分に割って、皮目に斜めの切り込みを入れる。揚げナスを作る時の要領でな。調味料を混ぜ合わせてタレを作っておくのも忘れずに。
フライパンにサラダ油とごま油を引いて熱し、ナスを焼いていく。両面中火で3分ずつも焼けばいい焼き色が付くぞ。焼き色が付いたらタレを回しかけ、3分位煮絡めてやれば出来上がりだ。
「ハイよ、お次は『焼きナス』だ。もう味付けはしてあるから、そのまんまかぶりついてくれ」
「え~、焼きナスぅ?焼きナスだったら秋の方が……」
文句をブーブー垂れながらナスにかぶりついた衣笠が固まった。この焼きナスの利点は、ナスの味にあまり左右されない味付けである点だ。年間通して美味い。
「何コレ!?初めて食べた!」
「甘辛くしたにんにく醤油だ。あんまり聞かない組み合わせだが……美味いだろ?」
「うん!おかかと醤油のシンプルなのもいいけど、こっちのこってりした感じもいいね」
まぁ、あまり影響されないといっても、やはり旬の時期のナスで作った方がより美味いんだがな。
「しかし……マイペースながらよく飲むねぇ初雪も」
「そう?……これくらいはいつものペースだし」
1時間経たない内にジンロの4合瓶を空にしている辺り、完全な飲兵衛である。しかもツマミをほとんど食べずにグビグビやっている。こういう飲み方だと胃が荒れたりするからな、ちゃっちゃとツマミを作ってやろう。
《肉巻きししとうの照り焼き》※分量4人前
・ししとう:1パック(20本)
・豚バラ(しゃぶしゃぶ用):10枚
・めんつゆ:大さじ1と1/4
・コーラ:大さじ1
・酢:小さじ1/2
さて、作っていくぞ。ししとうは軽く水洗いしてキッチンペーパー等で水気を拭き取っておく。豚バラ肉は半分の長さにカット。
ししとうに豚バラ肉を巻き付ける。ヘタを持ってクルクル回すと巻きやすいぞ。
中弱火にしたフライパンに肉を巻いたししとうを並べて、コロコロ転がしながら焼いていく。豚バラから脂が出るから、油は引かなくても大丈夫だぞ。むしろバラ肉から脂が出すぎるのでこまめにキッチンペーパー等で拭き取るようにしておこう。
肉に火が通ったら、めんつゆ、コーラ、酢を加えて全体を大きく混ぜながら、タレを絡ませる。水気が飛んでタレが絡んだら完成。……あ、コーラはわざわざ新しいのを買ってこなくてもいいからな?飲み残しがあればそれでOKだ。
「ほれ、初雪」
「ん?なぁに……これ」
「『ししとうの肉巻き』。ツマミも食べねぇで飲んでると胃が荒れたりするからな、これでもつまみながら飲め」
「わかった……ありがとう」
初雪はししとうのヘタの所をヒョイと摘まむと、そのまま口に放り込んだ。
「あ、辛いの混じってるかも知れねぇから気を付けてーー……遅かったか」
俺が注意しようとしたら時すでに遅し。初雪は涙を浮かべてジンロを煽っていた。ある意味美味しいが、初雪からしたらとばっちりだろうな。そんな初雪の様子を隣で羨ましそうに眺めていたのは衣笠だ。
「いいなぁ初雪ちゃん。提督、私にも野菜の肉巻きね」
「あいよ。巻く野菜は何でもいいのか?」
「う~ん、定番の奴だと面白くないから、あんまり肉巻きにしないような野菜がいいな。提督、出来る?」
「ふふふ、提督さんにオマカセ!ってトコだな」
「ちょ、私の真似しないでよ~!」
さてさて、からかうのはこれ位にして作るとしますかね。
《トマトの肉巻き照り焼き》※分量2人前
・トマト:2個
・牛モモ肉(薄切り):8枚(150g位)
・薄力粉:適量
・酒:大さじ1
・醤油:大さじ1
・砂糖:小さじ1
・サラダ油:小さじ1
ミニトマトに豚バラ巻いたのはよく焼き鳥屋とか居酒屋のメニューにあるが、今回のは普通のトマトだ。食い応えあるぜ?トマトは4等分のくし切りにして、1切れにつき1枚牛肉を巻く。茶漉し等を使って薄力粉をふるいながら牛肉を巻いたトマトに全体的にまぶす。
フライパンにサラダ油を引いて中火で熱し、肉の巻き終わりを下にして並べる。向きを変えつつ4~5分かけて焼いていく。その間に酒、醤油、砂糖を混ぜ合わせてタレを作っておく。
肉がある程度焼けたらタレを入れ、汁気がほとんど無くなるまで絡めれば出来上がりだ。
「さぁ出来たぞ。『トマトの肉巻き照り焼き』だ」
「でかっ!ミニトマトじゃなくて普通のトマトなんだ……」
かぶりつけば、牛肉の肉汁と一緒にトマトの旨味を含んだ汁が一気に溢れ出す。そこに絡まる甘辛のタレ。これが美味いんだ。
「でもさぁ、よくこんなに思い付くよね提督もさ」
トマトの肉巻きを平らげた衣笠が、ビールのジョッキを傾けつつしみじみと呟いた。
「そうかぁ?料理好きな奴ならこれくらいはやるだろ、多分」
「自覚症状なし……一番厄介なパターン」
呆れたように衣笠の隣で首を横に振っている初雪。何だろう、ものすげぇ馬鹿にされてる気分なんだが。
「まぁ、美味しい物がたくさん食べられるからレパートリーが多いのは良いことなんだけどね?」
とケラケラ笑う衣笠。フォローのつもりか……ってかこいつら相当に酔ってやがるな。
「ほれほれ、これでも食ってそろそろお開きにしとけ」
俺はそう言って、2人の目の前に茶碗を差し出した。
「何これ?」
「今夜のオススメの〆……『黒胡椒出汁茶漬け』だ」
《ピリッと辛旨!黒胡椒出汁茶漬け》※分量4人前
・ご飯:4杯分
・粗挽き黒胡椒:小さじ1
・出汁:800cc
・酒:大さじ2
・醤油:大さじ1
・塩:小さじ1
・三つ葉:お好みで
さぁ作るぞ。……と言っても、かける出汁さえ作っちまえばほぼ完成なんだがな。鍋に出汁、酒、醤油を加えてひと煮立ちさせ、塩で味を整える。
ご飯をよそい、出汁をかけて胡椒を散らしてお好みで三つ葉を乗せてやれば完成。
「よく混ぜてから召し上がれ」
2人はそれに従い、匙で全体的にかき混ぜてサラサラと流し込むように食べている。具は無い、と言っても過言では無いのだが……
「美味っ!」
「うん……出汁と黒胡椒の刺激が絶妙」
米の甘味と出汁の旨味、そこにアクセントで胡椒のピリピリ来る刺激。シンプルイズベストってのはこういう事さ。
「あ~美味しかった!たまには1ヶ所の店だけで飲むのも良いね!」
「そうかい、ありがとよ」
2人は軽い千鳥足になりながらも、満足げな顔で席を立った。そんな後ろ姿を見送りながら明日も来るであろう客の為にお通しを何にするかと思いを巡らせる。そんな夜も悪くないさ。
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