黒きローブの勇者
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プロローグ
前書き
よろしくお願いします
いつからだろう。
この日常に隔たりを感じはじめたのは。
いつもと同じ教室なのに、どこか遠い場所のように感じる。
そして、また今日もつまらない日常が始まろうとしていた。
『ジリリリリン』
枕元で目覚まし時計が鳴り響く。
部屋のカーテンの隙間からは眩しい太陽が覗いていた。
ベットから出て洗面所へと向かい顔を洗う。
台所で朝食を作り終え、時間を確認すると、もう7時半を回っていた。
急いで朝食を済ませ、カバンを持ち家を出る。
今日から新学期なので家を早めに出たのだ。
俺が通う私立桜ヶ丘高校は俺の住むアパートから徒歩15分というところにあった。
両親ともに海外で働いているため、俺は現在アパートに一人暮らしをしている。
定期的に両親は帰ってくるが、月に一度だけだ。
家を出て、左に曲がり長い坂を歩いていた。
今日から新学期か。
下を向いて歩く俺は、信号機が赤になっていることに気がつかなかった。
左からのトラックに気が付いた時には、もう遅かった。
トラックが俺にぶつかるまで数秒のはずなのに、すごく長い時を過ごしているように感じた。
その数秒に思い出されるのは家族や友達との思い出、走馬灯というやつだ。
衝撃。
そして、沈黙。
その瞬間、俺は死んだのだった。
*****
目が覚めると、レンガ造りの部屋にいた。
壁には松明が刺してあり、剣や弓などの武器が並んでいる。
木箱には黒いローブや、鎧などが入っている。
「こ、ここは、どこだ?確かトラックに轢かれて......」
俺は自分の体をあちこち触ってみたが、大きな怪我や傷みなどは一切なかった。
「どうなってるんだ?」
制服に身を包んでいる俺はとりあえず自分の居場所を確認しようとポケットからスマホを取り出した。
スマホの画面に表示されているのは圏外という文字。
「スマホは使えないな。どこかの倉庫の中かな?」
部屋を見回すと、奥に階段があった。
その階段を登っていくと、広い草原に出た。
辺りは暗く、月光だけが草原を照らし、草に跳ね返った光が幻想的な空間を作り出していた。
「夢なのか、それともあの世か?」
自分の頬を思いっきり叩いてみたが、冷める気配はない。
ここにいても拉致があかないと悟った俺は、道路を探すことにした。
空に光る北極星らしき星を目印として、南へと歩く。
ちょくちょくスマホに目をやり、圏外が直るかみていたが、一向に電波は回復しない。
しばらく歩くと、道路ではなく、灯りが見えて来た。
しめた、自販機だ!
俺は、走ってその灯りへと向かう。
しかし、その灯りは自販機ではなかった。
どうやら民家らしい。
しかし、こんな森の中に民家があるなんて。
その家は木造の簡単な作りになっていて、一昔前の建物という雰囲気を醸し出していた。
俺は少し不審に思い、悪いとは思ったが窓から中の様子を伺うことにした。
窓もガラスは放っておらず木が十字になっているだけの作りだった。
恐る恐る中を覗く。
そこに寝ていたのは、漫画やアニメでよく雑魚モンスターとして出てくるオークだった。
豚の顔をした人。
思わず俺は悲鳴をあげてしまいそうになり、慌てて口を塞ぐ。
しかし、その少しの悲鳴でオークは目を覚ましてしまった。
「誰だ!」
オークの叫びとともに、俺は頭を引っ込める。
やばいやばいやばいやばい!
オークはのっそりと起き上がり壁に立てかけてあった大きな棍棒を持って、家から出る。
足音がだんだん近くなるにつれ俺の鼓動はどんどん早くなっていった。
そして、俺が視認できるかできないかの位置まで来た時にどこからか女の子の声が聞こえて来た。
「オーク!覚悟しろっ!」
森から飛び出して来たのは白いローブを被った少女だった。
少女は右手に短剣を持ち、腰にはナイフを携えていた。
「またお前か、懲りない人間だな、今日という今日は犯し倒してやるからな」
そんな物騒なことを言いながら棍棒を構えるオーク。
少女の方は、距離を取りつつオークの動きを待っていた。
「私のお母さんは!お前に散々犯された後、ゴミのように捨てられたんだぞ!そして死んでしまった。絶対に殺してやる!」
「ああ、あの女の子供だったのか、どうりで似ていると思った」
「殺す!」
少女は腰に携えていたナイフを投げる。
ナイフは真っ直ぐ飛び、オークの右目に刺さった。
「ぎゃあああ!」
オークが右目を抑えて唸り声を上げる。
少女はその瞬間を逃さなかった。
一瞬の隙。
まるでこうなるかと予測していたように、少女は跳躍し短剣を構え、綺麗な軌道を描き、やがてオークの頭部を真っ二つにしたのだった。
オークはそのまま倒れ、動かなくなった。
少女は白いローブが返り血で赤く染まり、まるで赤ずきんのようになっていた。
その一部始終を家の陰から見ていた俺は、やがて立ち上がり、少女の元へと歩く。
「誰!」
「待ってくれ、俺はカイトって言う」
「なんか用?」
「ここは一体何処なんだ?」
少女は首を傾げ、やがて何かを思いついたように短剣をしまう。
「君、よそから来たのね。ここは『彷徨いの森』オークを始めとした色々なモンスターの生息地なの」
「すまない、少し状況が掴めないでいるんだ」
「そうなの、えっと、王都まで送りましょうか?」
「そうしてもらえると助かる、ありがとう」
「でも、今日は遅いからこの薄汚いオークの小屋で一泊しましょう」
「わかった、君はなんて名前なんだ?」
「私はシエスタ、よろしくカイト」
この一件で、死んだはずに生きている理由も、オークやその他のモンスターがいることも全て繋がった。
そう、ここは異世界だ。
後書き
ありがとうございました。
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