歌集「春雪花」
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寂しさに
想いてもなお
憚りし
恋ぞ侘しく
日も暮れにける
以前に住んでいたとは言え、知り合いも皆いなくなった土地…時折迫る寂しさに、彼がいてくれたならと思い、苦笑する…。
どんなに想ったとしても、伝えることさえ憚られる恋…。
物憂げな夕の空…ただひたすらに侘しく感じるのは、どこでも同じことだ…。
葉桜に
初夏の香匂ふ
早苗月
花ぞ思いて
月を眺むる
引っ越しで慌ただしく日々を過ごしたため、今年も桜を愛でることさえ出来ず、五月の葉桜は深い緑となって、もう夏を匂わせている…。
愛でることの出来なかった桜の花…会うことの出来ない彼を想い、霞む月を眺める…。
寂しさだけが傍らにあり…夜風は物言わず通り過ぎてゆく…。
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