ハイスクールD×D/EXTELLA
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
旧校舎のディアボロス
アーシア救出 前編
一誠side
部室に戻った俺は、シャーワールームで後ろから部長に抱きつかれ治療を受けていた。
・・・ゴク。前に死にかけた時も、部長にこんな事されたとか。
というより部長、背中に当たってるたわわに実った物を当ててるのはわざとですか?
「良いわ」
「あ、はい」
少し前屈みで移動しバスタオルを腰に巻きつけ、シャワールームを出る。
「完治には少し時間がかかりそうですわ」
「あのはぐれエクソシストの光の力が、相当濃いのよ」
足のケガを朱乃さんが、包帯を巻いてくれている。
そんなに強かったのか・・・でも。
「はぐれって、悪魔だけじゃないんですか?」
「教会から追放されて、堕天使の下僕へ身を堕とす者も多いんだ」
木場の言い方に、俺少しカチンときた。
「じゃあ、アーシアもそのはぐれエクソシストだって言うのかよ?」
木場は無言を突き通す。
アーシアが・・・そんな。
「どうであろうと、あなたは悪魔。彼女は堕天使の下僕。これは事実なのよ」
「部長」
部長の言い分は正しい。でも、あの優しい彼女が堕天使の下僕であるはずが無い。
しかし、俺のわがままで皆に迷惑をかけてしまうのも事実だ。
女の子一人救えない。
俺は弱すぎる
そのまま家に帰された翌日。俺はベッドの上で天井を仰いでいた。
部長から休むよう言い渡され、お昼近くまで何もしないままでいた
「弱い・・・所詮ポーン。女の子一人救えやしねぇ」
脳裏に彼女の寂しそうな表情が浮かび、無意識に俺は拳を強く握り締めた。
無力がこんなにも腹立たしいなんて。
弱いならどうする? 決まってる。
「弱いなら強くなるまでだ! 鍛えて強くなればいいんだ!」
ベッドから起き上がった俺は、動きやすい服装に着替えて、公園まで走っていき、筋トレを始めた。
腕立てから腹筋、スクワット。他に鉄棒を使って懸垂など、
途中、走りこんでいると痛みが走りその場で跪く。
「クソ、やっぱりダメか」
そう思ったとき、クソ神父がアーシアに手を出してるのが鮮明に思い出された。
いや、あのイカれ神父と一緒にいるんだ。こうしている間だって、アーシアは・・・。
「イッセーさん?」
え?・・・。
彼女の声が聞こえ、振り返るとシスター服に身を包んだアーシアが俺を見ていた。
棟夜side
フリードとの一件があった翌日、俺はオカルト研究部に来ていた。
「一誠は?」
「昨日の傷が完治していないから、今日は休ませたわ。エクソシストの光の力が思って以上に濃くてね」
そこまで重症だったのか。あのクソフリード、次あった時半殺しの刑だな。
「ところでトーヤ」
「アーシアの事か?」
「ええ。彼女はどうしてるの」
「今のところ、俺の家に匿っている。結界を張ってあるしバレルことはないだろう」←家を出ていることに気がついていない。
俺は昨夜、彼女からの経緯を全員に話した。
「アーシアは聖女と崇められていたが、悪魔を治療し助けたせいで魔女と罵られ、信じていた仲間から裏切られ、教会から追放。途方にくれたところをはぐれエクソシストの組織に拾われた。と」
そのことに皆が静まりかえる。
アーシアは聖女その者と言っても過言じゃないのに、悪魔を治療しただけで魔女と言えるのか。協会連中も腐った奴らばかりだ。これだから宗教は嫌いなんだ。非常に面倒くさくて嫌になる。
「教会の連中は、昔から変わっていないね」
そう発したのは木場だった。
「いつも頑なで、実験のために犠牲は問わない。僕の時も・・・」
その表情は、何時ものスマイルじゃなく、全身から憎悪に近いものが滲み出ていた。そういや木場も、ある意味被害者だったな。
そう思いつつ、時間が差し迫っていたので、俺は教室に戻った。
放課後。
今日はバイトが入っているので、そのまま学校を出たところで、スマホが鳴った。
相手は一誠からだった。
「何だ? 一誠」
『トーヤ大変だ! アーシアが、堕天使にさらわれた!!」
・・・何?
その事に、俺は一瞬思考すら停止した。
詳しく聞けば、アーシアが町を見たくて家を出たらしく、そこで一誠と出会い町を散策。公園で一休みしていると、堕天使レイナーレが襲い掛かってきてアーシアが連れ去られた。
クソ、狙われてると思っていたが、こうも早く行動に出てくるなんてッ。いや、それ以前に何で家を出ることを想定していなかった!
「その儀式の場所はどこか言ってたか?」
『分からねぇ。でも、あの古ぼけた教会には何も無かった!』
とすれば・・・山奥にあるあの大きな教会か。
「一誠。俺はアーシアを助けに行く。お前はこの事をリアスに伝えろ」
『ああ、そのつもりだ。すぐに部長に話して駆けつけるから!』
携帯を切り、教会に向かって全力で駆け出した。
待ってろ、アーシア。
それを、上空高い場所から、黒い翼が生えた三人が見ていたことに気づくことは無かった。
一誠side
-パンッ!-
部室に乾いた音がこだました。音の発生は俺の頬だ。
部長に平手打ちされた。
「何度言えば分かるの? ダメなものはダメよ。彼女のことは忘れなさい。あなたはグレモリー家の眷属なのよ」
部長の表情はいつになく険しい。
俺は学校に来て、事の詳細を部長に話した。報告した上で、アーシアの救助を提案した。
しかし、部長はその件に関して一切関わらないと言ってきた。納得いかない俺は、詰め寄ったところ叩かれたわけだ。
初めて叩かれた頬をよりも、心が痛かった。
でも、やっぱおとなしくできねぇ。
「じゃあ、俺をその眷属から外してください。そうすりゃ、俺もトーヤと一緒に教会に乗り込みます」
「出来るはずないでしょう? あなたもトーヤも何で分かってくれないの!?」
部長の激昂した姿は初めて見たけど、俺にだって譲れないものがある。
「俺はアーシア・エルジェントと、友達になりました。アーシアは大事な友達です。俺は友達を見捨てられません!」
「・・・それはご立派ね。そういうことを面と向かって言えるのは凄いことだと思うわ。それでも、これとそれは別よ。あなたが考えてる以上に悪魔と堕天使の関係は簡単じゃないわ。何百年、何千年とにらみ合ってきたのよ。隙を見せれば殺されるわ。彼らは敵なのだから」
「敵を吹き飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか?」
俺と部長は睨みあう。
視線をずらすことはなく、正面から見つめる。
「あの子は元々神側の者。私たちとは相容れない存在。いくら堕天使のもとへ降ったとしても私たち悪魔と敵対同士であることは変わらないわ」
「アーシアは敵じゃないです!」
俺は強く否定する。あんな優しい子が敵なわけがない!
「俺ってチェスのポーンなんでしょう? 兵士の駒一個消えたってッ!」
「お黙りなさい!」
ッ! 部長の厳しい一言に身体が硬直する。
「一誠はポーン。一番弱い駒だと思っているわけ?」
俺は頷く。
「イーヴィル・ピースは、実際のチェスの駒と同様の特徴を持つと言ったはずよ。それがプロモーション」
「プロモーション?」
「ポーンは、敵陣地の再奥まで進めれば、キング以外のほかの駒に昇格できる。俺が他の皆の力を持てるって事ですか?」
「主である私が、その場所を敵陣地だと認めればね。そう、例えば教会のように」
すげぇ。それを聞いただけで大収穫だ!
「ついでに、あなたの神器だけど」
「力を倍にするんですよね? 夕麻ちゃッ! ・・・堕天使から聞かされました」
俺、まだ引きずってるのか。
苦い表情を浮かべる俺に、部長が頬を撫でてくれた。
「想いなさい。神器は、持ち主の想う力で動くの。その思いが強ければ強いほど、必ずそれに応えてくれるはずよ」
思いの、力・・・。
そこへ、朱乃さんが部長に何か耳打ちする。
朱乃さんの報告を耳にした部長の表情がいっそう険しくなる。
「急用が出来たわ。私と朱乃は少し外出します」
「部長、まだ話は終わってッ」
「いいこと? プロモーションを使ったとしても、駒一つで勝てるほど堕天使は甘くないわ」
それを最後に、部長と朱乃さんは魔方陣でどこかへジャンプした。
残されたのは、俺と木場に子猫ちゃん。
それ位、分かっていますよ。
「行くのかい?」
ドアに手をかけたところで、木場が呼び止める。
「ああ。止めたって無駄だからな」
「殺されるよ?」
「たとえ死んでも、アーシアだけは逃がす」
「いい覚悟・・・と言いたいところだけど、やっぱり無謀だ」
木場に指摘され、俺は声を荒げる。
「うるせぇイケメン! なら、どうすりゃッ」
「僕も行く」
なッ。
腰に剣を携えた木場を見て、俺は言葉を失う。
「お前・・・」
「部長はキミに、たとえプロモーションを使ったとしてもとおっしゃってただろう?」
「ああ」
「部長は教会を、敵陣地と認めたんだよ」
! そこで俺は気がつく。
「もちろん、同時に僕らで兵藤君をフォローしろって指示でもあるからね」
「子猫ちゃんも?」
「二人では不安です」
子猫ちゃぁぁぁぁん!
「ありがとう! 俺は猛烈に感動しているよ」
少女の申し出に俺は感無量となってしまった。
「あ、あれ? ぼ、僕も一緒に行くんだけど・・・?」
一人放置された木場が寂しげに笑みを引きつらせていた。
分かってるよイケメン! 感謝してる。
「よっしゃ! 三人でいっちょ救出作戦といきますか!」
待ってろよアーシア!
俺たち三人は、教会へ向かって動き出した。
トーヤside
学校から教会を目指している俺は町から道をはずれ、山奥にある教会を目指していた。
・・・大分暗くなってきたな。
空はすでに薄暗く、長い時間走っていたのが分かる。
確か、この周辺あたりだと! めーっけた!
一瞬目の端に移った教会に足を止め、木の陰から覗き見る。
見つけた。ここにアーシアがいるなら堕天使や神父がいるはず・・。
どうやって侵入を図ろうかと思ったその時、背筋に悪寒を感じ後ろに飛び退く。
-ドドドッ!-
直後、俺がいた場所に光の槍が突き刺さった。しょうもないことをするなまったく。
「へぇ~。人間のクセに光の槍を避けるなんてやるじゃん」
振り向くと、そこに堕天使ドーナシークと、ゴスロリ衣装を着た少女とボディコンスーツに身を包んだ女がいた。
当然、堕天使だ。
「生憎、また見えてしまったなようだな。人間よ」
「なるほど。コイツがレイナーレ様に傷をつけた人間か」
この三人、ちょっとは出来るな・・・にしてもあいまみえてしまったな人間って。
「初対面のはずだが?」
「フン。あの時は仮面をつけていて正体が分らなかったが、声で分かったのでな」
あれま! これはウッカリ忘れてた。まさか声でバレるとはね・・・失敗失敗。まぁ、倒すのに関係ないけどね。
瞬時に大きな黒い弓と普通の剣を顕現させ、弦につがえ引き絞り狙い撃つ。
「あっぶな!」
ゴスロリ素早く上昇し、ボディコンスーツを来た女が魔方陣で防御しドーナシークは光の槍で打ち落としていた。これぐらい避けてもらわなきゃね。
「このー、生意気!」
逆上したゴスロリが光の槍が投げつけてきた。横に飛びのいて回避し再び矢を飛ばし、途中で壊れた幻想で爆発させる。
「キャッ!?」
「ムッ!」
「小ざかしいことを!!」
爆発を免れた三人。少しは警戒した様で距離を取った。
「やるな・・・少し見くびりすぎたか?」
「関心してる場合じゃないわよカラワーナ! あいつのせいでお洋服が汚れちゃったじゃない! これ結構気に入ってたのに!」
「胸が残念なガキんちょにはいい格好だぜ」
「んなッ!? 何ですって!」
俺がそういうと一瞬呆けた後、すぐに顔を怒りで真っ赤にして、光りの槍を手に顕現させ飛びかかってくるのを、ドーナシークが止めた。
「まてミッテルト」
「放してドーナシーク、アイツ殺さなきゃあたしの気が治まんないの!」
「それは勝手だが、貴様一人で勝てると思っているのか?」
反論はせず俺を睨みつけてくる。おー、怖い怖い。
フザケタ感じはここまでにしておいて、質問を投げかける。
「聞きたいことがある。お前らはなぜアーシアを狙う?」
「なぜ? ハッ! 分かりきったこと。あれはレイナーレ様の計画のために拾ったに過ぎない。それだけだ」
カラワーナが鼻で笑い、話し出しミッテルトとドーナシークも続いた。
「あの子聖母の微笑≪トワイライト・ヒーリング≫を利用するためだけに、我々の組織に入れたのだ」
「そして、儀式が上手くいけばレイナーレ姉さまは至高の堕天使になれる。あたしたちには地位向上を約束してね」
やはり、コイツ等の狙いは神器か。ホントくだらねぇことをしでかすな。そしてこいつらは三人は余裕ぶっている生か、ベラベラと話し出す。いい加減殺してもいいかな?
途中、ミッテルトが何か思いついたように笑みを浮かべ話し出す。
「そうだ! ねぇ、神器が抜かれた人間がどうなるか知ってる?」
・・・確か。
「神器を抜かれたものは死んじゃうんだよー!」
ミッテルトは可笑しそうに笑い声を上げると二人も笑った。
「人が死ぬのが、そんなに可笑しいのか?」
「アッハハハ! だってそうでしょう? 協会で聖女と思ってた子が実は悪魔を治せる魔女でしたーなんて、最っ高にバカみたいな話じゃない! ハハハハハッ! それにあのバカ女、協会に見捨てられたからといっていまだに主のご加護があるって信じきってる生粋のバカシスターよ」
「フフフフ! やめろミッテルト。あの娘の間抜けな行動を思い出してしまうではないか」
「あれ程の無駄な努力をしているシスターを見たのは初めてだな。まったく、無駄な努力とはあのことだな」
・・・このクソ堕天使どもが、テメェらのくっだらねぇ計画のために何でアーシアが犠牲になんねぇといけねぇんだ? それを悪いとは思いもせず挙句の果てには笑いか?
だが、次の言葉が俺の理性の糸をプッツンと斬った。
「そういえばさ、神器を抜いて死んだあのバカシスターの遺体、どうするか聞いてる?」
「確か遺体に欲情する輩に渡すと言っていたな。まったくレイナーレ様も悪い人だ。これで証拠も何もなくなるのだからな」
-ブチン-
聞こえないはずの、何かが俺の中で完璧に切れた。
「後はこの人間さえ消してしまえば、私たちの仕事も終わりだ!」
三人が同時に投げて来る槍を俺は素手で掴み取り握り壊す。
バリンと甲高い音を立てて、槍が砕け散る。
掌が焼け激しい痛みが走るが・・・今の俺にはこの堕天使に向く怒りが上回っていてなんともない。三人が驚いた表情を浮かべている。
「す、素手で槍を壊したの!?」
「ありえん! 人間ごときが我らの光の槍を掴み壊すなどっ!」
「・・・ッ、貴様! 何者だ!!」
煩く喚く堕天使だが、俺にとっては雑音にしか聞こえない。
両手に干将莫耶を顕現させ、干将の剣先を向ける。
「クズ堕天使・・・生きていられると思うんじゃねぇ」
何時もより低い声で告げ、駆け出す。
ページ上へ戻る