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決して折れない絆の悪魔

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悪魔たちの戦場

「一」
「二の」
「「三っ!!」」

斧の柄の部分へと差し込まれたメイスを息を合わせて同時に振り上げる、流石の巨体の馬鹿力でも完全同時に動いた二機の力に斧は大きく弾かれる。そしてがら空きになった腹部へ蹴りを決めつつ鈴を抱えて後退する。

「鈴、あの役立たずを持って撤退してくれ。あいつらは俺らが引き受ける」
「解ったわ、悪いわね。後でなんか奢るわよ!!」

鈴は素直に従って百春の元へと向かう、乱入者は鈴の方へと顔を向けるが頭部へとバルバトスのメイスが唸りを上げながら直撃しアスタロトのソードメイスが腹部へと決まる。

「何処見てんだよ」
「てめぇの相手は俺達だ馬鹿野郎」
『………』

悪魔たちの攻撃を同時に食らっているのにも拘らず乱入者は全く動じていなかった。相当装甲が厚い、巨体でわざと攻撃を受けたようにも見える。その巨大な斧を振りかぶるそぶりを見せると二機は素早い反応を見せ離れる。

「百春さっさと起きなさい!逃げるわよ!」
「な、何を……お、俺だって戦う……」
「出来る訳ないでしょうが、自分のISの状況くらい理解しなさい馬鹿!」

まだ戦うと呟いている百春を強引に抱え込んでピットへと全速力で向かっていく、背後で激しい攻防を繰り返している二人の友人を一瞬見たが直ぐにピットへと駆け込んだ。

「よし、私も―――」

加わろうと口にしようとした時、見てしまった。今目の前で行われている戦いの激しさを。

「―――ッ!!!」
「やれッ!!」

振りかぶる斧の内側に潜り込みつつソードメイスを両方の斧の柄へと絡ませるように引っ掛けて腕の動きを固定し頭部を掴むアスタロト、相棒が動きを止めているうちにスラスターで加速してその勢いのままメイスを腕の関節へと振り下ろすバルバトス。一撃で腕の出力が落ちたのか右腕の斧を落とす乱入者、それを奪い取りつつ右腕へと差し込む。

「凄い……」

操縦技術だけではない、二人の戦い方とその気迫に驚きを感じずにはいられない。二人の戦い方は自分達、代表候補生がするような試合向けの戦闘術ではない、本気の命の奪い合いをする為の戦い。相手を確実に倒す事に特化した戦い方だった。あれに比べたら自分の戦い方なんて生温いに程がある……あの中には、参加出来ない……。

「頑張って……」

出来たのは唯声援を送る事だけだった。


「そぉらよぉっと!!」

バルバトスが腕へと突き刺した腕を下から掴み一気に下ろす、シールドが邪魔をするがそれを強引に突破し乱入者の右腕は切断された。乱入者はそれを受けて肩に埋め込まれるように装備されている機関銃を乱射しながら後退する、アスタロトは切断した腕を盾にしつつ攻撃を防ぎメイスを盾代わりにしている。

「まずは腕一本!」
「ねえ、あいつ腕から血じゃなくてオイル出てるよ」
「ん?おお本当だ」

ミカに言われて乱入者の右腕痕を見てみるとそこからは搭乗者の血では無くオイルが止めど無く溢れ出している。てっきり人間が動かしていると思っていたがあれを見ると無人機という事になる、ISは人が乗らなければ動かないという常識を外れた存在になるがそんな事どうでもいい。自分達からしたらただ倒すべき敵である事に変わりはない。そして同時に乱入者の身体をズームで見た事で頭部に刻まれている文字を読み取れた。

「OPT-IS-PX1……グレイズ・クリミナル……?」
「何それ」
「いやなんかアイツの頭に書いてあった」
「グレイズ……?」

乱入者、いやグレイズ・クリミナル。それが無人機の名、和訳するとイカれた罪人。此処に送り込まれたのは罪を犯した罰だとでも言いたいのだろうか、ならば裁いてやろうではないかその罪とやらを。悪魔の名を冠するISで。

「まあどっちにしろあいつは此処で終いだ」
「うん、次も一夏、やるよ」
「おう」

会話を終えると拳をぶつけ一気に走り出した、グレイズは機関銃を乱射しながらこちらに接近してくる。弾を避けるように大きく回り込み互いがグレイズを挟んで対局の位置になると一気にスラスターを吹かして急加速する。グレイズは動きを止めて迎え撃つ体勢を取る、アスタロトはソードメイスの持ち手を少し回してから一気に引き抜きデモリッションナイフへと移行しメイスカバー部分を思いっきりグレイズ目掛けてぶん投げた。

『……?』

グレイズは残った左腕の斧を振り上げるようにしてメイスを弾いた、だがそれによって腕が伸びきった。アスタロトは取り回しのために折りたたまれているデモリッションナイフの刀身を伸ばし左腕の肘の関節目掛けて思いっきり振り切った。

『……!!、!?』
「機械の癖に痛がるなよ」

見事に左腕は肘を切断され斧ごと地面へと落ちる、それによってグレイズは体勢を崩すように後ろに下がったが同時に接近していたバルバトスはメイスで脚部を潰すつもりで膝の裏に叩きつけた。装甲は拉げフレームをも歪ませる一撃でグレイズは仰向けに倒れた。必然的に上を見る事になったグレイズは機体の制御を行い上昇を開始し始めるが遅かった。上空にはメイスカバーをナイフに突き刺し直したアスタロトとメイスを構えているバルバトスがいた。

「これでっ!!!」
「終わりッ!!!」
『ッッッッッ!!!!!』

まるで悲鳴を上げるような鉄の犇きがする、罪人が許しを乞っているかのようにも思えるが悪魔は容赦しない。一気に加速した悪魔たちはメイスを叩き付けた。アスタロトは殴り付けるかのように、バルバトスは突き刺すように、叩き付けた。―――刹那、バルバトスのメイスの先端のニードルがグレイズに発射されるように突き刺さった。

『――――――!!!!!』

胸部に深々とニードルを受けたグレイズはもう一度声のような鉄の音を発すると天に向かって既に腕とは言えぬ腕を伸ばした、天へと手を伸ばしたがその手は悪魔によって粉砕される。もう一度深くまでメイスが突き刺さるとその装甲を貫通し大きな穴が空いた。そしてグレイズは完全に機能を停止した。

「終わったかな」
「みたいだね」

アリーナの中央部に倒れ込むイカれた罪人、それらを裁いたのは天使ではなく悪魔。裁かれた罪人は何処へ行くのだろうか、それは誰も知らない。悪魔を纏った少年たちは何事も無かったように罪人からメイスを引き抜くとそのままその場を去って行った。 
 

 
後書き
次回予告

鈴「本当に二人とも凄かった、私と戦った時は本気じゃなかったのね。

いや戦い方が違ったのね、どっちにしろ凄かった。

容赦ない、でも無人機って解ったのかしら。

人が乗ってても同じ、だったのかしら

次回、決して折れない絆の悪魔、第17話

戦いの後

一夏、ミカ、助けてくれて、ありがとうね!」 
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