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決して折れない絆の悪魔

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怒りのツインテール

「それでは凰さんは未来院とは長い付き合いが?」
「鈴でいいわよ、まあ長いって言ってもまだ1年ぐらいだけどね」 

午前中の授業も終了した昼休み、一夏、ミカ、セシリアは共に食事を取ろうと食堂へとやってくる途中鈴と遭遇し共に食事を取る事になった。

「中国に居る時に偶然に久世さんにあったのよ、そん時は酷い雨でね。それで一緒の場所で雨宿りしてたらタオル貸して貰ってそれで話をしたのが始まりだったわね」
「そのような事が……」
「んでアンタは?」

自分が話したんだからそっちも話すのが当然よね?と付け加える鈴に言いにくそうなセシリア、だが言わない訳にもいかずにゆっくりと口を開いた。話を聞く鈴は思わずラーメンを啜っていた箸を落とす程の衝撃を受けた、未来院を目の前で馬鹿にしておいてなんで五体満足で居られるのかと激しく疑問に持った。

「あれは私が間違っていたのです……女尊男卑に染まって傲慢と偏見に満ちていました……。しかし今は違います、お二人にしっかりと謝罪し私は変わると誓いました。国家代表となり国を変えると……!!」
「へぇ言うじゃない」
「笑いますか、私を」
「まっさか、立派よ本当に。自分の間違いを認めて進むって立派で勇気が要る事よ」

水を一気に飲み干しつつ口元を拭う鈴は女性にしては何処か男らしすぎるような頼もしさを感じさせる。

「尊敬するわよ、アンタの勇気を、オルコットさん」
「有難う御座います鈴さん、私の事はセシリアで構いませんわ」
「んで鈴、お前が来たのはやっぱり男性操縦者のデータ収集の為か?」

一夏がそういうと鈴は手を広げながらあったり~と言いながら席に凭れ掛かる、天井を眺めつつ国の上層部から織斑又は未来らのデータを収集し本国に送られたしという言葉を受けてこの学園へとやって来たと語る。まあこの時期に学園にやってくるなど大体そんなものだろう。

「だからさ、偶にでいいから協力してくんない?勿論見返りは出すから!」
「いいよ。鈴には世話にもなったし」
「俺も良いぜ。鈴は信用出来るからな」
「サンキュウ!有り難いわぁそれじゃあ早速受け入れてくれたお礼にデザート奢るわよ!何が良い!?」
「酢の物」
「いやそれデザートって言えるの!?」

それなりに大きな声とリアクションでミカに突っ込みを入れつつ笑っている鈴、そんな鈴の反応を見つつ水を飲んでいるミカと二人を見て笑っている一夏。セシリアにはそんな二人の姿が新鮮に思えた、自分も最初に比べれば大分マシな対応を取ってもらえるようになったと思う。だが矢張り1年以上も付き合いがある人とは当然対応が違うと実感してしまう、何処かあの対応が羨ましい。

「いやだからデザートよ?プリンとかそういう系統の」
「それじゃあきくらげと梨のデザートセット」
「結局酢の物系!?アンタそんな好きだったっけ!?」
「なんかビスケットの影響で好きになったらしい」
「あいつ何ミカにやったのよ?!名前からしてお菓子系なのに!!」

当然のように会話が成立して続いている、当然の事なのにそれが羨ましい。何時か自分もミカとああいった風に話せるようになるのだろうか、否なるのだ。女尊男卑に染まりきっていた自分がこうして変われたのだ、なら鈴と同じように会話出来るようになる日だって絶対に来る。そう信じて努力していこうと心の中で強く決心する。

「それでは私はバタフライケーキをお願いしますわ」
「あれアンタも便乗すんの!?いやまあ一人分増えたぐらい如何って事無いけど」
「んじゃ俺スペシャルパフェDXで」
「解ったわ、それじゃあ直ぐに買って来るから待ってなさい」

そう言って券売機の方へと小走りって行く鈴を見送る。

「本当に良い方ですわね、ああいう方を姉御肌というのでしょうか?」
「多分ね。鈴は結構サバサバした性格で面倒見がいいからな、未来院だとちびっこにも人気だし」
「鈴に憧れてる小さい子も多いからね」

セシリアが納得しているとプレートを持った鈴が

「いぃぃぃぃちぃぃぃぃかぁぁあああああ!!!!」

と大声を出しながら戻って来た。プレートの上にはしっかりときくらげと梨のデザートセットとバタフライケーキ、そしてスペシャルパフェDXが乗っている。しっかりと買ってきたようだが何をそんなに騒いでいるのかとセシリアは一瞬考えたが直ぐに思い当たった。

「アンタが頼んだパフェの値段何よ!?2500円って!?なんつう品物を頼んでるのよ!!?確かに奢るって言ったけどもうちょっと遠慮するのが普通でしょうがぁ!?」
「否だって奢ってくれるっていうから、それにお前未来院で言ってたじゃん。男に二言はないぜって」
「言ってないし誰が男よ!?私は歴とした女よ!?」
「まあ確かにその性格と勢いでは男性の方が良かったかもしれませんわね」
「うぉぉぉおいセシリアアンタまで言うか!?」

気づけば軽く言葉を口にして会話に入っていた、鈴の軽快な言葉と怒っているようで何処か楽しげな言葉を受け流すようにしている一夏と気にしてないミカ。その中に参加出来ていると本人は気づいていなかった、気づけば楽しげに笑いながら話している事など……。

「それで今更聞くんだけど1組の代表って誰なの?やっぱりセシリア?」
「いいえ違います、わたくしは辞退したんです。代表は織斑さんです」
「えっあいつなの?」

酷く意外そうな表情をする鈴、セシリアがやっていないとなるとてっきり実力的に考えれば一夏かミカがやっていると思っていた。サムスが元IS操縦者なのは知っているしきっとあの人なら息子二人に特訓の一つでも付けているだろうと思ったからだ、それならそれなりの実力は付いているだろうし代表になっていても可笑しくないと思っていたのだが予想は外れてしまった。

「俺達は辞退したんだ、面倒臭そうだし」
「まあ代わりに俺は補欠の副代表にはなっている」
「ふ~ん……百春の奴が代表か……丁度いいわね」
「なんだよ文句あるのかよ鈴」

突然の声、それは勿論話題の人である百春であった。鈴は良くも私たちの前に顔出せるわねと呟きつつ振り返った。

「言っとくけど私は強いわよ、今のうちに逃げる準備でもしたら?」
「何だと?なんで逃げる必要があるんだよ」
「恥をかかない様にね、学習もしないアンタは弱いに決まってるわ」

鈴の言葉にうんうんと首を縦に振る一夏であった。

「そんなのやってみなきゃ解らないだろう!!偉そうに何様だよ鈴!!」
「代表候補生様よ、文句あんの?それに、人のダチの家を侮辱するような奴には絶対に負けないのよ私は」
「何だよ……なんでだよお前に関係ないじゃないか」
「大有りよ。未来院には私も世話になってんの、アンタみたいな馬鹿で間抜けな奴とは違う素敵な所よ」
「煩い、少しは黙れよ貧乳」

ビシッ。何かが罅割れるような音がした、それに続くようにビキビキという音までして来た。一夏とミカはあーあ言っちまったよ、と呆れセシリアはなんて失礼な事を!と立ち上がりつつ百春を糾弾しようとしたが鈴の表情と青筋が異常に立っている額を見て静かに席に座った。

「……良いわ解ったわ、アンタ死にたいらしいわね。歯食いしばりなさい、今からラッシュしてあげるから」
「い、いやそのご、ごごご御免確かに今のは俺が悪かった!!すまん!!」
「今、『のは』……?本当に考えない奴ね、本当に殺したくなってくるわね……」
「こ、ころ!?」

完全に殺気立っている鈴を何とか鎮めようとする百春だが女性に対して言ってはいけない事の筆頭の一つである言葉を言ってしまった為に如何謝っても許してもらえそうな雰囲気ではない。如何した物かと迷っている時鈴はドカリと席にかけ直すと一気に水を飲みほしてから言った。

「……なさい」
「へっ?」
「消えなさいっつってんのよ、アタシの怒りが本当に爆発しないうちにね……」
「い、いやそのだから、ごめんなさ「消えなさいっつってんのよ本気で殺されたいのアンタ

殺意の籠った怒声に縮こまった百春は悲鳴のような声を漏らして逃げるように去って行った。肩で息をしている鈴は必死に怒りを抑え込んでいるようだった、あのまま百春が消えなければ本当に彼を殺しに掛かっていたかもしれない。それ程に彼女にとってはコンプレックスを悪口として言われたのだ、だがそれを必死に抑え込んだ。褒められるべきだ。

「よく我慢したな」
「当ったり前よ……こんな、事で爆発なんてして溜まるもんですか……!!」
「俺達の部屋のサンドバック、使う?」
「是非ッ………!!!」
「あの方、女性に対するデリカシーが無いのでしょうか」 
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