ドリトル先生と悩める画家
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第三幕その六
「少し声をかけてみるね」
「うん、ちょっとね」
「お話しみよう、あの人と」
「三日連続でお会いするって縁だろうし」
「それなら」
「そうしてみようね」
動物の皆も賛成してでした、そうしてです。先生は実際に画家さんのところに老馬から降りて歩み寄ってです。声をかけました。
「あの」
「はい」
画家さんはすぐに先生にお顔を向けてきました、筆とパレットはそれぞれの手に持ったままですが止まりました。
「何でしょうか」
「絵を描いておられますが」
「はい、この通り」
「格闘されている感じ見えますが」
「そうかも知れないですね」
画家さんも否定しませんでした。
「これが僕の描き方ですが。ですが」
「ですが?」
「最近どうもです」
微妙なお顔で言うのでした。
「絵を描いていてもこうじゃない」
「そう思われるのですか」
「僕の描きたい、僕が本当にそうしたい絵じゃない」
「その様にですね」
「思ってしまいまして」
そしてというのです。
「苦しいのです」
「そうですか」
「はい、どうにも」
こう言うのでした。
「苦しいです」
「スランプですか」
「そうです」
その通りというのでした。
「自分でもわかっています、苦しいですから」
「だからですね」
「余計に描く様にしています」
「普段以上に」
「スランプの時こそ描け」
画家さんは言いました、強い声で。
「そう言われましたので、ある人に」
「それで今もですか」
「描いています、とにかく目に入ったものを」
「その場で」
「とにかく描いて美術館も毎日脚を運んで」
そうしたことをしてというのです。
「描いて描いてですが」
「どうにもですね」
「抜け出られません」
そのスランプからというのです。
「中々」
「ご自身の描かれたい絵ではない」
「はい、そう感じて仕方ないのです」
「拝見したところゴッホの影響がありますね」
先生は画家さんの絵を見て言いました。
「そう思いますが」
「はい、好きな画家です」
「だからですか」
「ゴッホの様に描きたい、ですが」
「それでもですね」
「ゴッホのコピーにはならないです」
このことははっきりとです、画家さんは言い切りました。
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