ドリトル先生と悩める画家
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第二幕その十一
「寂しいもので」
「論文を発表する状況でもなかったですね」
「むしろサーカスをやったり郵便局をやったり」
「そういうことばかりで」
「論文を書いてもむしろ」
「そういった方ばかり忙して」
そしてだったのです。
「こんなに論文を書いてね」
「学者さんとしての生活も」
「今みたいじゃなかったよ」
「そうでしたね」
「そう思うと日本に来てよかったよ」
先生の今のお言葉はしみじみとしたものでした。
「いや、本当にね」
「そうですね」
「ちゃんとした収入もあるし」
「そのことも大きいですね」
「うん、しかもね」
「こうして論文も書けて」
「よかったよ」
こう笑顔で言うのでした。
「本当にね、ただね」
「ただ?」
「イギリスにいた時も楽しかったね」
患者さんが誰も来なくてアフリカや月に行ってサーカスを開いていたその時も決して悪くなかったというのです。
「あの時も」
「それはそうですね」
「悪い暮らしじゃなかったよ」
「はい、どうも先生はです」
「僕は?」
「何処にいても周りに人や色々な生きものに囲まれていて」
そしてというのです。
「環境にも満足出来る」
「そうした人だっていうのかな」
「はい、そう思います」
こう先生に言うのでした。
「先生は」
「だといいけれどね」
「はい、先生の無欲さとどんな場所にもすぐ馴染めるので」
そうした資質もあってというのです。
「そうだと思います」
「だといいけれどね」
「論文もいい論文を書ければですね」
「いいと思っているよ」
「世に認められたいとか権威とかは」
「いい評価を受けたら嬉しいけれどね」
それでもというのです。
「そうしたことには興味がないよ」
「そうですよね」
「何かそうした欲はね」
「先生はないですね」
「お金もね」
そちらもなのです。
「これといってね」
「沢山はいらないですね」
「必要なだけあればいいから」
「そちらも欲はありませんね」
「今で充分だよ」
「むしろ充分過ぎますか」
「そう思ってるよ」
お金についてもというのです。
「溜め込んだり財産を築こうとかは」
「ないですね」
「資産家になることも」
そうしたつもりもなのです。
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