恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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125部分:第十一話 孔明、世に出るのことその十一
第十一話 孔明、世に出るのことその十一
「あの娘じゃあの岩山を登ったらね」
「それは確かなのだ」
「けれど登るね」
馬岱は孔明を冷静に見て述べた。
「このままね」
「だったら下手をしたら」
「大丈夫じゃないね」
また言うのであった、
「落ちるかもね」
「そ、それはよくないのだ」
落ちるという言葉を聞くとだった。張飛は狼狽しだした。
そうしてである。はらはらしながら孔明を見だした。そしてであった。
孔明は岩山を登りはじめた。足場を何とか踏みながらそのうえであった。何とか上に上にと登っていく。だがそれはかなりたどたどしい。
時折足場を踏み外しそうになる。その度に張飛も真っ青になる。
「あいつ危な過ぎるのだ」
「そうだね。薬草に近付いているけれど」
「本当に落ちるのだ」
張飛は心から心配していた。
「けれど花はもう少しなのだ」
「もう少しだけれど帰りもあるし」
「とんでもないことなのだ。無謀過ぎるのだ」
そしてであった。孔明は何とかその花まで辿り着こうとしていた。しかしであった。
ここで遂に完全に踏み外してしまった。そうしてだった。
「きゃっ!」
「危ないっ!」
「くっ!」
馬岱も思わず出ようとする。その前にであった。
張飛はそれよりも前に出ていた。そして落ちる孔明を掴んだ。何とか助けたのである。
「えっ、無事!?」
「無茶はするななのだ!」
張飛は両手に抱えている孔明に対して叫んだ。
「下手をしなくても死ぬところだったのだ!」
「す、すいません」
「怪我なかった?」
ここで馬岱も出て来て孔明に問うてきた。
「危ないところだったけれどね」
「蒲公英、こいつは任せるのだ」
張飛は馬岱に顔を向けて声をかけた。
「薬草は鈴々が採って来るのだ」
「そうなの」
「そうなのだ、では行って来るのだ」
孔明を立たせてすぐにであった。猿の如く岩山を登っていってそうしてだった。薬草を何なく手に入れてしまったのであった。
「これでいいのだ」
「有り難うございます」
「礼なんていいのだ」
岩山から飛び降りての言葉だった。その動きは孔明とは全く違っていた。
「この薬草で愛紗の怪我はなおると聞いているのだ」
「はい、そうです」
「それならすぐに戻るのだ」
張飛は今は多くは言おうとしなかった。
「愛紗の為なのだ」
「はい、それでは」
「今は」
こうしてであった。三人は帰路についた。ここで、であった。
夕暮れになろうとしていた。その橋のところに来た。
橋はあちこちが壊れ穴の様になっていた。吊り橋でありそれがかなり危険な状況だった。
「手を貸すのだ」
「はい?」
その橋の前でだ。張飛は孔明に顔を向けて言ってきたのだった。
「御前一人だと危なくて見ていられないのだ」
「あの、いいんですか?」
「あんな運動神経で岩山なんて登るななのだ」
「そういえばどうしてここに?」
孔明もここで気付いた。落ち着きを取り戻しての言葉だ。
「おられたんですか?」
「ああ、それだけれどね」
馬岱が笑いながら話してきた。
「ずっと後からつけていたんだよ」
「後から?」
「そうだよ。鈴々ちゃんったら途中から孔明ちゃんのこと凄く心配してね」
「余計なことは言わなくていいのだ」
張飛の頭の虎が怒っている。
「鈴々はそんなことはないのだ。笑ってやっていたのだ」
「そうだよ。心配し過ぎて笑っていたのよ」
あえてこう言ってみせた馬岱だった。
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