| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ八十八 村上武吉その二

「わかる。だからな」
「これよりですな」
「萩藩に行くぞ」
「はい、それではすぐに」
「何につけてもな」
 こうしたことを話してだ、そのうえでだった。 
 幸村はすぐにだ、自身で言った通りに海野を連れてそうして萩藩に向かった。真田の忍道を通ればすぐだった。
 その萩藩に入るとだ、幸村は周りを見回して海野に言った。
「今は静かじゃがな」
「それでもですな」
「うむ、毛利家は幕府にとっては厄介者じゃ」 
 それだというのだ。
「島津家と共にな」
「そうなりますか、やはり」
「何故かはわかるな」
「関ヶ原のことがありますので」
「そうじゃ、だからじゃ」
「何かあれば」
「すぐにお取り潰しにもじゃ」
 それにもというのだ。
「成り得る」
「やはりそうですか」
「むしろ幕府としてはじゃ」
「是非そうしたいのですな」
「このことは他にも豊臣恩顧の家がそうじゃ」
 そういった家もというのだ。
「七将の筆頭であられた加藤殿や福島殿じゃ」
「そうした方々もですか」
「幕府にとっては邪魔じゃ」
 実にという口調での言葉だった。
「七将全てがじゃ他の方々はよくてもな」
「お二方は」
「何としても潰しておきたいであろう」
 幕府としてはだ。
「豊臣家に肩入れされると困る」
「だからですか」
「やがてはな」
「お取り潰しもですか」
「かなりな」
「有り得ることですか」
「そう思う、そしてこの家もじゃ」
 毛利家、この家もというのだ。
「そう思われておる」
「幕府には」
「実は豊臣家よりもじゃ」 
 大坂にいるこの家よりもというのだ。
「こうした家々が幕府にとっては邪魔なのじゃ」
「そうなのですか」
「豊臣家は大坂から出てもらえれば何でもない」
 幕府、特に家康にとってはというのだ。
「それで何の力もなくなる」
「そうなのですか」
「うむ、しかしこうした家々は違う」
「幕府にとっては」
「厄介者じゃ、しかし毛利家もわかっておる」
 自分達が幕府からどう思われているかということをというのだ。
「だから充分に気をつけておられよう」
「そうなのですな」
「うむ、それでじゃが」
 毛利家のそうしたことを話してからだ、幸村は海野にあらためて話した。
「村上殿を探すぞ」
「これよりですな」
「我等が探せばな」
 そうすればとだ、幸村は海野に話した。
「特に隠れておられなければな」
「すぐにですか」
「見付かると思うが」
 それでもという口調でだ、幸村はまた言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧