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嫉妬を止めて

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第一章

                 嫉妬を止めて
 稲葉彩は今不機嫌だった、それは何故かというと。
 友人の椎葉美優紀がにこにことしてだ、彼女の姉の陽菜のことを話していたからだ。
「それでお姉ちゃんがね」
「また、よね」
「そう、またテストの成績学年トップだったのよ」
 二人が通っている中学の一年先輩の姉のことを話すのだった、美優紀にとって姉の陽菜はとにかく憧れの存在でいつも友人の彩にも話しているのだ。
「凄いわよね」
「そうよね、確かに」
 彩は不機嫌を隠して美優紀に応えた。
「それはね」
「そうでしょ、しかも部活もね」
「ソフト部のエースで」
「しかも四番よ、おまけにね」
「絵もコンクールで入賞して」
「書道も段持ってて今もやってて」
 そしてというのだ。
「字なんか凄く奇麗よ」
「凄い人なのね」
「そうなのよ、お姉ちゃんってね」
「とにかく凄い人ね」
「もう凄過ぎて」
 美優紀は彩の丸みがある黒のショートヘアのよく似合うあどけないがそれでいて何処か艷のある顔を見つつ話す、美優紀の顔はやや細面で蒲鉾に似た形の目でピンクの唇が目立つ。色白で黒髪を伸ばしている。二人共スタイルはいいが彩が胸も尻も大きいがウエストも肉付きを感じさせるものであるのに対して美優紀は胸はあるがウエストは引き締まっている。どちらも中学生にしてはかなり発育がいい感じだ。
 その彩にだ、美優紀はさらに話した。
「なれないわよ」
「美優紀は陽菜さんみたいには」
「絶対にね」
 それこそというのだ、憧れの顔で。
「なれないわ」
「そう言われるとね」
「彩ちゃんも?」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「美優紀って実際お姉さん好きだけれど」
「大好きよ、お家では凄く優しいし」
 妹としての言葉だ。
「スタイルだっていいし」
「極めつけの美人だしね」
「もう完璧超人よ、彩ちゃんだって私のお家に来て」
「ええ、陽菜さんにはいつも優しくしてもらってるわ」
 彩自身も陽菜のことを知っている、それでこう答えた。
「確かにいい人よね」
「そうでしょ」
「あれだけスペック高いのにね」
 文武両道で芸術のセンスがあってしかも美人でスタイルもいい、そうした人間であってもというのだ。
「そういうの全く鼻にかけてなくて」
「誰にも優しい」
「そんな人だから」
「そう言うでしょ」
「ええ、本当にね」
 何とか内心の不機嫌を隠して応えた。 
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