世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
復活
四体目のアンデットを倒し、そのあと
コックローチアンデットを撃破した一同は、再び洞窟内に入って石版を調べ始めた。
見るとやはりコックローチアンデットの言うとおりで、魂は今も石版に流れ続けており、邪神復活までもう時間があまり残されてはいない、ということが分かっただけだったが。
「今これを破壊してはだめなのかい?」
「駄目だね。いま魂が流れている状態で壊してはパイプを破壊してしまう。そうなれば魂は途切れて戻ることはなくなってしまう」
『んだよ・・・ってことはこのまま見てるしかねぇってのか?』
「いえ・・・・多分、石版に全部流れきった瞬間に・・・ですよね?」
スカリエッティとWの二人が話しているところに、ティアナが入り込んできた。
今石板を壊しては、魂が千切れてしまう。
やるならば、すべて流れきった後に破壊するのだ。
それも、流れきってから邪神が出てくるまでの一瞬のうちに。
「タイミングはわかりそうかい?」
「私が計算するよりも彼の方が正確なのではないかい?」
フィリップの問いに、スカリエッティが凩の方を向いて質問をそのまま投げた。
その問いに凩が応える。
「後・・・二分と13秒・・・・12、11、10・・・・」
そういってカウントダウンを始める凩。
あまりにも時間がなかったため、いきなりのそれに驚く一同。
だが冷静に考えればそれだけ時間がある。
最大火力にまで力をためるには、十分すぎる時間だ。
『最大まで溜めるぞ、フィリップ!』
「もちろんさ、翔太郎」
ガシュッガシュッガシュッ!
《ファング!マキシマムドライブ!!》
「クロスミラージュ!」
「マッハキャリバー!」
「ストラーダ!」
「ケリュケイオン!」
「「「「エクシードサード!!」」」」
フォワードも魔力をためていき、キャロの補助でさらに威力を上げていく。
「では、私も」
更には凩も構え、万全を期してその瞬間を待つ。
「・・・・残り、50秒」
「行くぞ・・・・」
「はい」
「任せてください!!」
洞窟内を、甲高い音が響いていく。
魔力など諸々の力がうねりを上げて、装填される。
そして
「残り・・・・!?」
ガッ、ズン!!!
「うわっ!?」
「きゃぁ!!」
残り三十秒ほどとなったその瞬間、洞窟が揺れ、直後に瓦解、崩れて行ってしまう。
そのど真ん中にいた彼らは降りかかる土砂から逃げようとして、完全に構えを解いてしまった。
「ま・・・ずい・・・主!!」
「凩!!」
凩が長岡を引き寄せ、語りかける。
いま、その時間が来た、と。
しかし誰一人として石版に打ち込める状況ではない。
それどころか、今にも崩壊に飲まれまいと逃げ惑うので精いっぱいだ。
「ぬ・・・破ァッ!!」
その状況を脱しようと、凩が真上に向けて剣閃を打ち出す。
それによって降りかかる瓦礫の雨に穴が開き、そこから全員が脱出に成功した。
そして
「なんだ・・・これは・・・・」
地上に出た彼らは、真っ白な巨大な塊を頭上に見た。
その塊の正体は、離れた場所で戦闘を行っているクラウドが見ることでやっとしっかり確認できるほどの大きさだった。
「フンッ!!・・・!?なんだ・・・?」
「あ?あーーー!!あの野郎独り占めする気かよ!!ずっこいぞ!!」
そこから見えたのは、巨大な巨大なクジラだった。
おそらくはシロナガスクジラの始祖たるアンデットなのだろうが、いくら始祖と言ってもあれはデカ過ぎる。
戦艦ではないかと思うほどの巨大。
同じ空域に浮いている瞬風がの五倍ほどもあろうその巨体の口からは、ガラガラと岩石を落としていて、おそらく洞窟ごと石版と少女たちを飲み込んだのだろうというのが推測できた。
「いきなり飲み込んじまうとか・・・・今まで動かなかったのは体が重かったからじゃなかったのかァ!!」
なんてこったと頭を押さえるドーベルマンアンデットだが、そこにクラウドの剣撃が迫ってきたのでおっと、といった感じに回避してアンデットを差し向ける。
「もうあんたと遊んでる場合じゃねぇんだ。あっちに行かせてもらうよ!!」
「行かせるか!!」
「行ーくーの!!お前ら、相手してやれ!!」
そういってさらにアンデットをクラウドに向けるドーベルマンアンデット。
背後からはクラウドに向かうそれらの叫び声が聞こえてくる。
しかし
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
ドォドドドドドドドドドドドドドドンッッッ!!!
「な・・・(ズガッッ!!)に!?」
その背後で無数の爆発音とアンデットの断末魔が聞こえた直後、自分の体を巨大な大剣が刺し貫いていた。
「逃げる?そんな奴が、俺に勝てると思うのか?」
背後で剣をドーベルマンアンデットに突き刺したクラウドがそう語りかける。
そのまま地面にうつぶせに倒され、標本のように剣で留められたドーベルマンアンデットは訳が分からなかった。
自分は未熟だ。
それが十分わかっているからこそ、周りをかこって堅実に戦ってきたのに、なんでここで崩れるんだ・・・・
しかし、その考えを読んだかのように、クラウドがさらに後を続けた。
「お前、気づいていないのか?オレ、バーサーカーと恋、そしてエリオたち・・・それらとの戦闘はかなり濃い経験だったろう。それによってお前の力は、すでにオレと同等か・・・・もしかしたらそれ以上にまでなっているだろう」
「な・・・・・」
「そんなお前が隠れる戦い方を?それはもはや慎重や堅実ではなく、臆病以外の何物でもない」
そう、ドーベルマンアンデットの力はすでにクラウドを凌駕していたはず。
否、力だけならば、もともとそれだけのポテンシャルがあった言ってもおかしくはない。
ただ、新参者がゆえに経験値が足りなかっただけだ。
しかし、これまであった数々の戦闘により、ドーベルマンアンデットは成長していっていた。
速射、身のこなし、必殺技に至るまで、それの精度は上がってきている。
しかし、彼はいつまでも「未熟者」として戦い、その力を使うよりも早くほかのアンデットに任せてしまった。
それはクラウドの言うとおり、もはや策略でもなんでもなく、臆病であるというだけのこと。
「俺の翼は勇気の翼・・・・世界最勇のオレに、臆病者が勝てるわけがない」
「は・・・はは・・・・・やはり・・・まだ未熟だったか・・・・」
「ま、そういうことだな」
「自分が未熟でないことに気付けなかった・・・オレはもうお前らより強かったんだな・・・・・」
「そうだな」
「試す機会がないのは・・・・残念。これは失策」
クラウドの剣は背中を貫き、そのまま正面のベルトをも砕いていた。
ドーベルマンアンデットが目を閉じ、クラウドがカードを突き立てる。
こうして、事件の主犯者・五体の上級アンデットはすべて消滅した。
しかし、脅威は終わっていなかった。
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宙をゆっくりと行くシロナガスクジラアンデット
その体内がボウッ、と光だし、凄まじいエネルギーを放ち始めていた。
「これは・・・っと、長岡さん、来てたんですか!?」
その巨体のすべてをようやく視界に収めたころ、理樹が合流し、さらに巨体(これ)を見て一刀と観鈴も急いで駆け付けてきた。
更にはアンデットはすべて倒し終わったのか、ほかのメンバーも集まりだす。
最初こそ凩の姿にびっくりしたが、事情を説明して事なきを得る。
と、言うよりもこちらの方がやばいだろう。
「石版をみんなごと飲みこんだぁ!?」
「最初から体内に問いこんでの復活・・・うまい手だね」
驚く一刀にスカリエッティが冷静に答える。
しかも実は邪神復活のための準備は済んでおり、今にも出てくると聞いて理樹たちは焦った。
だが、それに対して一人だけ、今だ余裕にかまえるライダーが一人。
「何焦ってんだ。あんなのラクショーだっての」
《HIBIKI!KAMEN RIDE―――ARMD》
《FINAL ATTACK RIDE―――HI HI HI HIBIKI!!》
そういうのはコンプリートフォームのディケイドだ。
隣にアームド響鬼を召喚し、ファイナルアタックライドを発動させる。
すると二人の剣が炎に包まれ、ぐんぐんと伸びていき、その長さは怪獣でもぶった切るのではないかというほどにまで長さに達した。
「オレは前にもフォーティーンを倒している。ちょうどこの技でな」
「ま、士ならやってくれるだろうね」
そういって、力を込めるディケイド。
するとちょうどその瞬間、シロナガスグジラアンデットが悲痛の叫びをあげ、身体がボコボコとうねりだしたではないか。
そして、腹が裂け、背中が割れ、口や頭から暗黒の煙が噴き出してきた。
「来るぞ!!」
ディケイドが叫ぶ。
それに応じて、ほかのメンバーも攻撃を構える。
煙が立ち上り、それが晴れていくとそこには邪神、フォーティーンの姿が・・・・・
「行くぞ!!」
「オォオオオ!!!」
「ハァァアア!!」
そして、気合いを込めて叫ぶディケイド。
だが
「アァァァ!!って・・・え?おいおいおいおい・・・・・」
相手を見る視線が、ぐんぐんと角度を上げていき、それをと共に気合いが掻き消えて行った。
「で・・・・でかい・・・・・」
「おいおい・・・う・・・そだろ・・・・」
ディケイドの腕がだらりと放心したように下がっていき、攻撃はいつまでたっても放たれない。
デカすぎる。
さっきのクジラも相当なものだが、こちらも負けてはいないデカさだ。
かつて士が相手にしたフォーティーンは子供―――――否、ペットだったのかと思えるくらいの違いがある。
その場の全員に影と落とし、フォーティーンが彼らを見つけた。
そして、咆哮。
その咆哮で召喚されたアームド響鬼は消滅し、全員が踏ん張って地面から飛ばされないようにしなければならなかったほどのもの。
「うわぁ!!」
「なんつー奴だよ!?」
その大きさに悪態をつくなり見上げてあぜんとするなり、各人がフォーティーンの姿を見上げた。
「GYIUOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!」
そして、さらに咆哮。
叫びながら、フォーティーンは海上で、まるで自らに宿った力をためすように雷や炎を吐きだし始めた。
それを見上げながら唖然とする一同の中たった一人、スカリエッティだけが興奮した声を出していた。
「不死生物すらをも消滅させる力を持った邪神!!なるほど、この地での種の繁栄を促そうとする統率者とやらが封印したのも納得だ!!」
そして、長岡へと意識を向ける。
「統率者とて一枚岩ではない。かつての戦いに勝利した人類と共に生きていこうとした一部の統率者たちがいたとしたら、というのが私の仮説だ。数百、数千という時の流れを生きてきて、その一族であったあなたは感じ取っているはずだ。この星に脅威が迫った時、あれの内部に取り込まれ、その精神となり変って敵を粉砕するのは貴女の役目だった。だが膨大な時の流れが貴女の血を薄めた・・・・まさに「少女」と呼べる存在の魂の揺らぎが最も大きなエネルギーになると言っていたのはどこの次元世界の定説だったかな?もはや混じり合って力を成すのは、この時代の少女たちである方がふさわしい・・・・!!」
早口で一気に言い放つスカリエッティには、多少なりの狂気が含まれている。
おそらくはこれを目の前にして好奇心がうずいてしょうがないのだろう。
まあ、それで暴走しないだけでも昔よりまともになったということなのか。
フォーティーン
四本の腕に、蛇のような下半身。そして、真っ白な鎧を身にまとったかのような体躯。
腕にはそれぞれ剣、杯、棍棒、盾が握られており、それぞれが風、雷、氷、炎の力を持つ。
十人の少女たちは体の各部に、配置封印され、その力を利用されている。
杯からは雷が溢れ、盾の中心からは爆熱系の液体がどろりと垂れ出ていた。
それらが海面を吹き飛ばし、炎上させ、フォーティーンが海上から陸地へと乗り込み、そのまま都市部へと向かおうと飛んでいく。
「させるか!!」
そこに一刀が飛び出し、無数の剣を頭部に向けた。
しかしそれは一本も突き刺さることはなく、カンカン、と甲高い音を鳴らして落ちていく。
だが気をそらすことはできたようで、その恐ろしい相貌が彼らに向けられる。
剣が振るわれ、盾の中心から球体状の液体がドポッ、と飛び出してくる。
その剣を理樹の巨大バリアが防ぐがその重さに力が地面に叩きつけられ、液体は観鈴が衝撃波で遠くへ飛ばそうとするが触れた瞬間に爆発炎上、円状に広がった熱で、木々は焼け焦げあたりを焦土と変貌させてしまった。
「ぐお・・・」
「なんて・・・やろうだ・・・・・」
「これが・・・邪神フォーティーン・・・!!」
地面に倒れ、立ち上がる一同が武器を構えて睨みつける。
こいつをここで止めなければ、この星は終わりだ。
「クラウドさんもそろそろつく。全員で、こいつを倒す!!」
「「「「「よォッしゃぁ!!!」」」」」
一度は驚きはしたものの、彼らの士気は再び上がる。
思い出す。
思い出せ。
「勝てない」といわれる勝負に挑み、一度も負けることなく勝利し続けた男のことを。
異常なる偉業を成し遂げ、そしてついぞ負けることなく世界を救った男を。
気付けば「その日」は明日に迫っている。
胸を張って言えるようにしよう。
何よりも、自分たちのために。
ここで世界を終わらせては、明日の自分に向ける顔がないから。
to be continued
後書き
ついにフォーティーン復活!!
ちなみに少女たちの配置は
右腕(上)の剣・・・ルーテシア・アルピーノ
右腕(下)の盾・・・イクスヴェリア
左腕(上)の聖杯・・・御坂美琴
左腕(下)の棍棒・・・アルルゥ
額・・・インデックス
胸・・・イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
背中(左)・・・古手梨花
背中(右)・・・古手羽入
尾(手前)・・・高町ヴィヴィオ
尾(奥)・・・ハナ
となっております。
その個所には彼女たちを形度ったプレートがあります。
ブレイドのキングフォームみたいに。
スカさんのまくし立て解説が何気に一番書いてて楽しかったです。
イメージは「ガメラ3 邪神《イリス》覚醒」でのワンシーン。
そして何故あの年齢でなければならないのか。
それもスカさんの言うとおりです。
え?何が元ネタ?
巷で噂の例の「血溜まりスケ・・」ゲフンゲフン
あの魔法少女です。
僕と契約して魔法少女になってよ!!
ドーベルマンアンデットも本当に何気に終わってます。
彼は自らがすでに「未熟でないこと」に気付けなかった。
次回、VSフォーティーン。
だがこれだけではないのだよ、諸君。
マリアージュ制御端末を送ったのは?橘に連絡をしたのは?アンデット達に力となる少女たちの情報を流したのは?
事件の根幹にかかわる謎は、実はまだあったりします。
では、また次回で!!
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