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真田十勇士

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巻ノ八十六 剣豪その二

「実はもう今おられる場所はわかっておる」
「そうなのですか」
「先程才蔵が戻って来た」
 霧隠、彼がというのだ。
「あの者から聞いたわ」
「宮本殿のおられる場所を」
「今は姫路におられる」
 その場所にというのだ。
「あの城で何かあったとのことじゃ」
「姫路城においてですか」
「大層な城が建ったがな」
「はい、白い実に見事な」
「その城と何かあったらしいがそれからな」
「姫路におられるのですか」
「そこで剣の修行をされているという」
「では」
「うむ、姫路に行ってじゃ」
 そしてというのだ。
「御主の剣術をな」
「より高めるのですな」
「そうする、ではな」
「これよりですな」
「姫路に行くぞ」
 二人でとだ、こう言ってだった。幸村は早速根津と共に九度山を出て真田の忍道を通って姫路まで向かった。真田の忍道を通ればすぐにだった。
 姫路まで着いた、姫路は大坂程ではないが人が集まってきていて賑わおうとしていた。その姫路の街を見てだった。
 根津は神妙な顔になりだ、己の前を進む幸村に言った。
「西国将軍でしたな」
「この城におられる池田殿はな」
 池田輝政、七将の一人であった彼だ。関ヶ原の功でこの地に入ったのだ。
「そう呼ばれておる」
「何でも実禄は百万石だとか」
「そこまでなるらしいな」
「播磨は豊かですしな」
「うむ、実際にな」
「それだけの石高はですな」
「あるであろう」
 百万石はというのだ。
「やはりな」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
「百万石の城に相応しい」
「城下町になっておるな」
「そういうことですな」
「うむ、そしてじゃ」
 ここでだ、幸村は前を見た。そこには姫路城があり天守閣が見える。二つの小天守を従えた五層七階の天守閣を見てだった。
 幸村は唸ってだ、こう言ったのだった。
「噂通りな」
「はい、あの天守は」
 根津もその天守を見て言った、白いそれを。
「見事ですな」
「大坂城のものも見事じゃが」
「はい、あの城のものもです」
「見事じゃ」
「全くですな」
「あの天守を見れば」
 それはというのだった。
「来てよかったとも思う」
「この姫路に」
「そうじゃな、そしてじゃ」
「この姫路にですな」
「宮本殿がおられる」
「この街に」
「そうじゃ、今はある道場に住み込みでおられてな」
 そうしてというのだ。 
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