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Muv-Luv Alternative 帝国近衛師団

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第四話

 
前書き
オブラートに包みながら、慈悲のある心でお読みください!お願いします! 

 




一九八六年 冬

レグルスが有栖川宮家に来てから一年がたった。



とは言っても変わったことは大きなことは特にない。
変わった出来事と言えば二つほどある。
一つは正仁の進学先が決まったことと、成仁がある物を書き始めたことだ。








縁側にてお茶をすすりながら、月を見ている少年二人がいた。

「なあ正仁?」
「なんだレグルス?」
「お前、来年から軍学校に行くんだろ?」
「そうだな」
「じゃあ、何でお前が嫌ってる武家がいっぱい居る学校に行くんだ?」

 正仁は来年から軍学校、しかもまだ日本では珍しい衛士を育成するための訓練学校……京都にある『帝国斯衛軍衛士養成学校』に入学することが決まっていた。
 そこで生じた疑問が「武家が居るところに何故行くのか?」と言う物だった。レグルスも一年とまだ短いが正仁の性格は大体分かっているし、武家…正確に言えば五摂家のことが大嫌いなことぐらい知っている。だからこそ気になって仕方が無いのだ。

「レグルス、答えは簡単だ」
「簡単だ……て言ったてオレにはわかんねぇよ」
「俺の性格を知っているお前なら分かるはずだ」

そう言われ目を瞑り、腕を組み考え出したレグルス。
それをとなりで優雅にお茶を飲みながら待つ正仁。

「……あ」

しばらくすると何かが思いついたのかレグルスが声を出した。
そして正仁の顔を見ながら言った。

「彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し……こういうことか?」

レグルスの答えを聞いた正仁は満面の笑みを浮かべて嬉しそうに言った。

「大正解だ!流石は俺の義兄弟だ!来年は五摂家の斑鳩の嫡男が入学するからそれに合わせた」
「だからわざわざ敵陣に乗り込むわけだ……正直呆れたわ」

レグルスの発言が理解できないのか正仁は首を傾げていた。

「何故呆れる?」
「当たり前だ!周りが全員敵の所にわざわざ飛び込むんだからな!オレも連れてけ!」
「いや、いきなりなんでそうなる!?」

今度は正仁が驚いているがレグルスは気にすることなく続けた。

「え、だって一人じゃ不利だろ?オレぐらい行ったって何の罰も当たらねえよ」

と、ニヤリと不敵に笑った。
その笑みにつられ、正仁も笑った。そして立ち上がり歩き出した。

「そうとなれば善は急げだ!ちょっと父上に頼んでくる」
「オレの問題だから、オレも行くよ!」

レグルスも立ち上がり正仁の後を追った。




「そう言えば成仁は?」
「相変わらず部屋にこもって書いてるよ」

父親の隆仁がいる部屋に向かう途中、レグルスはふと口にした。
成仁はここ最近、食事やトイレ以外では部屋から外に出ることがほとんど無く、そのことで隆仁や母親の愛子、さらに隆仁から聞いたのか智忠、博恭、載仁、さらに公家の篤麿などが心配しているが、成仁本人は気にしていないようだが……

「いったい、何を書いてるんだ?」
「俺も詳しくは分からんが、少し見せてもらった。あれは戦術機か何かの人型兵器の設計図だと思う」
「何でそんな物を設計してるんだよ?」
「恐らくアメリカが今年から配備を開始したF-16ファイティング・ファルコンが影響してると思う。成仁、『F-15イーグルよりF-16ファイティング・ファルコンの方が兵器として完成されてる』って絶賛してるし、自分でも造りたくなったんじゃないか?」

F-16ファイティング・ファルコンは、ゼネラルダイノミクス社が開発した軽量第2世代戦術機。1980年代に配備が開始された高性能第2世代機F-14トムキャット、F-15イーグルは、その性能故に調達コストが高騰し、国防予算を圧迫、予定調達数を大きく割り込ませる結果を呼んだ。
この事態を重く見た米国政府は「Hi-Low-Mix」構想を策定、技術研究目的であったLWTSF(Light Weight Tactical Surface Fighter)計画を実戦機開発へ格上げすることで、より安価で高性能な第2世代機・F-16ファイティング・ファルコンを誕生させた。
F-15に比べ小型・軽量故に拡張性は低いものの、各部に革新的技術を多く採用しており実戦においては、非常に高い機動性と運動性を発揮し、高い格闘戦能力を有している。
そのため米国内の配備だけでなく、F-4ファントム、F-5EタイガーⅡを代替する第2世代機として、F-15を購入する資金がない国々への輸出も積極的に行われている。
その機体が1986年、今年から配備開始されており、それを知った成仁が部屋にこもるようになった。

「何でまたF-16何だろうなあ?」
「イーグルやトムキャットよりも安いからだろ。安い分、数が揃えやすくなるし、イーグルやトムキャットと比べても機動力、格闘戦能力も互角以上だからな。十分に主力機たり得ると成仁が判断したんだろう。まぁ、一番の理由は安いことだろうな」
「安い方が良いのか?高くても高性能な機体の方が欲しがるんじゃないか?」
「安い方が数を揃えやすいし、高性能な機体でも数が少なかったらBETAに囲まれて終わりだ。ただせさえ多い敵に少数で挑んでも勝てんだろう。ファイティング・ファルコンは高性能かつ比較的安価と言う文句が付けられん機体だ。ようは戦争は多い方が勝つ、だから出来るだけ安くかつ高性能な機体を買って数を揃えて戦う…それが出来るファイティング・ファルコンは兵器として完成されているってのが成仁の考えだと思うぞ」

そう言い終わるとちょうど隆仁がいる部屋の前に着いた。
二人が入ろうとしたその時

「出来たぁぁぁあああ!!!」

と言う成仁の大声が聞こえてきた。
二人は声の聞こえてきた方向を見ると成仁が猛ダッシュしながらこちらに向かってきていた。何かを持ちながら。

「どうした成仁、そんなに慌てて?」
「で……出来た……」
「出来たって、それか?」

正仁は成仁が右手に丸めて持っている大きな用紙を指さし、成仁が息を整えながら頷いた。

「とりあえず、父上の部屋に入るか」

と、隆仁の部屋の襖に手をかけた。






「父上、正仁です。入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ良いぞ」

襖が開くと正仁、レグルスその後に成仁が入ってきた。

「どうしたんだ三人とも?」

本でも読んでいたのか隆仁は眼鏡を掛けていたがそれを外しながら三人に向き直った。

「私ではなくレグルスが用があります。成仁の用も別件です」
「そうか……。レグルス、用というのは?」
「オレも正仁と一緒に斯衛軍衛士養成学校に行くことにした!そう言うわけで手続きよろしく!」
「……………」

隆仁の顔は凍り付いていた。ただでさえ皇族正仁一人入学させるのにも皇族であるがために大変苦労しているのに、今更レグルスが入学したいと言い出してきたのだ。

「いや、その…レグルス、それは少し無理が……」
「じゃあ正仁を一人で武家ばかりいる敵陣に送るの?」
「よし!何とかしよう!」

大事な大事な息子を一人で行かせてはならないという親心を駆り立てるようなレグルスの言葉に、まんまと乗った形になった隆仁だった。

「次は成仁だが、その持っている物は何だ?」
「これを見せに来たんです!」

成仁は大きな用紙を近くにあったテーブルの上に広げた。
そしてそこに描かれている物を見て、正仁とレグルスも驚いた顔になっているが、軍人である隆仁はもっと驚いていた。

「成仁!これは何だ!?いったいどうやって書いたんだ?」
「どうやってですか?ん~……自分で思い付いたことを納得でき、且つ製作が可能な感じで書きました!」

いつもよりも強い口調になってしまうほどに動揺していた隆仁に対して自分で考えだと返した成仁。その隣で書かれた物を見て疑問に思った正仁が成仁に質問した。

「なあ、成仁?これって戦術機なのか?俺の目にはそうは見えないんだが…」
「一応戦術機は参考程度にしてるだけで、それの元は戦車だからね。僕は戦術機としては考えてないよ」

自慢げに成仁がそう言うと、レグルスが聞いた。

「じゃあこいつはなんて言うんだ?」

その質問を成仁は待ってましたとばかりに笑顔となり嬉しそうに言った。

「一応、名前は決めてあるんだ!」










「Mobile Suit……モビルスーツて言うんだ!略してMS!」












1986年、フランス領ローヌ県リヨンにハイヴの建設が開始される。英国本土への侵攻に続き、イベリア半島へのBETA侵攻が開始される。
中華人民共和国と中華民国が対BETA共闘条約に調印 統一中華戦線が誕生。
日本帝国、次期主力戦術機選定に関して、日米合同演習を実施される。
日本帝国の次期主力戦術機選定に向けた日米合同の異機種間戦闘訓練(DACT)が、矢臼別演習場で行われる。本演習に於いて帝国斯衛軍の巌谷大尉はF-4j改でF-15を破るとい快挙を成し遂げた。
日本帝国、帝国本土防衛軍を創設。
帝国軍は戦線の本土接近を鑑み帝国軍参謀本部直轄の国内展開専任部隊・本土防衛軍を創設。自国領の死守を戦略目標として軍組織を再編。





着々と戦火は広がっていく。
それに伴い日本帝国もアジア各国もまた、戦争の準備を進めていった。





 
 

 
後書き
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