世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
勃発
「スバルさん!どうしますか!?」
「まずは人命救助!!生体反応をサーチしてから、安全なとこをにまで保護して!!」
火災に見舞われているビルの真下。
そこで到着したスバルとエリオ、真人、謙吾がこれから内部に突入しようとする際の注意事項を頭に叩き込んでいた。
スバルたちはバリアジャケットを、真人と謙吾は防火服を着て準備を整え終わっている。
「いい?何があっても、まずは自分の命優先!!自分が死んだら、誰も助けられないから!!!」
「「「了解!!!」」」
そういって、彼らはレスキュー隊が到着するよりも早く、内部に突入していった。
「絶対に、根こそぎ全員、助け出すよ!!」
「「「おう!!!」」」
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辺境世界マウクラン、宅地開発地区
『・・・ってことなのよ。だから、これの解読をお願いしたいの』
「わかった。ふふっ、ティアナさんの頼みじゃ、断れないね」
「あたしも手伝うから、大船に乗ったつもりでいてくれよな!!」
火災発生から少し前のこと、理樹と連絡を取った後にティアナは、ルーテシア・アルピーノに古代ベルカ文字の解読を頼んでいる。
ここにはちょうど遊びに来ていたアギトもいる。
彼女はキャロやヴィヴィオの繋がりでいろんな書物から知識を漁ることが日課となっている。それでこうして拘留された世界にいながらもさまざまな知識を持っているのだ。
と、なればまぁ、こうして依頼が来るのも当然であって・・・・・
『ありがとう。データは今そっちに送ったから、お願いね』
「うん。えっと・・・「詩篇の六 かくして王の帰還はなされること無く・・・・」ね。アギト、下から二段目の棚にある赤い本を取ってくれる?」
「あいよー。これだな?」
「うん・・・・えっと・・・・あった。ここ」
そういって、文章を読んだだけで何の詩編かを割り出し、簡単にその参考書を取り出してきたルーテシア。
まさか今ここのやり取りで終わってしまうとは思っていなかったティアナは、その手際の良さと彼女の記憶力に驚嘆していた。
『すごいわね。全部覚えてるの?』
「何回も読んだからね。頭には大体」
「ルール―は勉強家だもんな!!」
そういって、内容を伝えるルーテシア。
どうやらこれは何かの歴史を記したもののようで、長い詩編の中でも何かの兵器にまつわる部分であるらしい。
そして、その兵器の名称を見て、ルーテシアが頭を捻った。
『兵器・・・・穏やかじゃないわね』
「うん・・・・?ねえアギト、この兵器って・・・・」
「うん?・・・・あーーー、どっかで聞いたなぁ・・・・どこだっけ?」
「私がおぼえてる、ってことは、ドクターの所にいたころだったと思うけど・・・」
『ドクター?・・・・って、まさか・・・・』
ヴー!ヴー!!ヴー!!!ヴ―!!!!
と、そこでティアナ側で警報が高らかに鳴り響き、ただ事ではないということを伝えてきた。
『!?なに・・・・・ミッドでビル火災・・・爆発あり!?』
「事件?」
『ええ、こっちで追ってるのがまた起きたみたい』
「じゃあ、レポートにまとめて後で送るね」
『お願い!!ごめんね!!』
防災課にいたティアナは事件発生のほうを受けてすぐに現場に走り、通信を切ってしまった。
まあ、仕方のないことだ。
とりあえず、自分のすべきことは・・・・
「これ、解読しないと・・・・」
「よっしゃ!!ありったけの資料を集めよーぜ!!!」
友人のティアナの頼みとあっては、張りきらない方がおかしい。
そうして、ルーテシアとアギトが資料を探そうと部屋を出た。
その瞬間。
ドドドドドドドドドドドッ、チュンチュン、チュィン!!
その部屋に、おそらくは外からの無数の銃弾が叩き込まれ、部屋の中をハチの巣にして家具の八割を粗大ごみに変化させられてしまった。
「え?」
「なぁ!?」
部屋から出た瞬間にその背後から銃撃・・・というよりも銃弾の音を聞いて振り返る二人は、直後に背筋が寒くなった。
なぜこうなったのかはわからない。
しかし、もし自分たちがこの部屋にいたらと思うと、ぞっとする話しだ。
「な・・・・なんだよこれ!!いったい誰が・・・・」
その惨状を見て、アギトが絶句する。
ルーテシアに至っては声が出ていない。
と、そこに
「ふぅー・・・はずれか。まあ、下手に当たって死なれても困る、な。これは失策。失敗してよかった」
「「!?」」
そんな声がどこからか聞こえてきて、二人が周囲を見渡した。
そして、部屋の中の穴だらけになった壁がガラガラと崩れ落ち、外から一体の異形が現れて入ってくる。
そいつの両手には一丁ずつ、合わせて二丁の銃が握られていて、耳がピンと立ち、精悍そうな顔立ちをしていた。
ただ、そいつはまるで犬のような顔をして、鋭い眼光をしていたが。
「なんだてめぇは!!」
「おやおや、これは失敬。自己紹介が遅れた。俺はドーベルマンの始祖たるアンデットで、名前はそのままドーベルマンアンデットという者。訳あってあなたの魂が必要なのでね。なぁに、この場で殺そうというわけではないよ。じゃあ・・・・」
ジャカ
「いただいていきましょう」
ドンドンドンドンッッ!!!
そう言うなり銃口をルーテシアに向け、何のためらいもなく発砲してきたドーベルマンアンデット。
が、その銃弾はアギトが発生させた炎熱の壁によって瞬時に解け消え、防がれてしまう。
「ほぅ、四肢の動きを封じて連れ去ろうと思ったが・・・・なるほど、優秀な護衛がいるようだ」
「あったりまえだ!!それにテメェ、それがルールーに当たったらどうすんだ!!」
「連れ去るだけだな」
「そうなったら私、出血多量で死んじゃうけど・・・・」
銃口を向け、向けられながら、そんな話をする彼ら。
何かずれているように感じてもそれは気のせいだ。
『ルールー・・・こいつやべぇ・・・・』
『うん。アンデット・・・だもんね』
そんな会話をしながらも、二人は念話でも会話をしていた。
相手はアンデット。
ルーテシアも、その存在のことは知っていた。
彼女が好きなのは古代ベルカ・・・というよりも古代史や考古学に近い。
それならば一万年前に起こったバトルファイトなどの事柄に興味を持たないわけもなく、当然アンデットのことも知っている。
『それもだけどさ、さっきの銃弾。あたし融かしたの実はかなりギリギリだったんだ・・・・』
『え?』
それを聞いて、ルーテシアは表情に出さないように、それでもかなり驚いていた。
彼女の知る限り、アギトはかなり高性能なユニゾンデバイスだ。
さらにはデバイスというカテゴリーで見なくても、彼女以上の炎熱使いはそうそういない。
その彼女が防ぐのがキツイ(彼女自体が攻撃型ということもあるが)というのはなかなかないことだ。
これだけでも、相手の強さが伺える。
『だからルールーはすぐに転移魔法で逃げろ!!ここは・・・』
『アギトは!?』
『あたしは標的じゃないみたいだからな。うまく逃げ切ってやるさ!!』
そんな算段を付けていると、念話の内容など知らないドーベルマンアンデットが、口頭の会話の返答をしてきた。
「・・・・おぉ、確かに。この場で死なれては困る。ふむふむ失策失策。これまた失敗してよかったな。では・・・・」
「ッ!!!ルールー!!行け!!!!」
「的確に意識を刈り取らせていただこう」
そういって双銃を腰のホルスターに収め、ドーベルマンアンデットがルーテシアに向かって疾駆し、その間にアギトが飛び込んだ。
「ダメだ!!!」
「アギトッッ!!!」
ゴォォオッッ!!!
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『スバルさん!!こっちに要救助者はもういません!!』
「だったらすぐにその場から外に!!私はあと一人いるみたいだから!!」
『わ、わかりました!!』
『スバル!俺らは手伝いに行った方がいいか!?』
「真人さんもすぐに避難を!!私なら大丈夫ですから!!」
エリオや真人たちと連絡を取り、スバルがサーチモニターに映った生体反応を見てその場へと急行する。
モニターにある反応はひとつ。しかし、それをサーモグラフィーに変えると、その反応の周囲は真っ赤――――つまりは炎に囲まれていた。
一分一秒が命運を分ける。
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「じゃあ俺たちはもう外に出よう」
「はい!でも、恭介さんはどうしたんでしょうね?」
「大方「あれ」を使おうとしたのだろうが・・・・理樹からの承認を取れなかったのか?」
「??」
スバルからの退却の指示を聞いて、エリオと謙吾がそこから脱出しようと話し「よし行こう」と踵を返した。
その瞬間
「え・・・?」
「・・・む?」
通路の曲がりかごの向こう側から、ひょっこりと一体の怪人が現れたのだ。
「犬・・・あれはテリア・・・・?」
「知ってるんですか?」
「まあな・・・だが・・・・あれは!?」
「牙ァァァアアアアアアアア!!!」
「グ!?」
「おぉ!!?」
そして突如、二人を視認したそいつは涎をダラダラと飛ばしながら、エリオと謙吾に飛びかかっていった。
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ドォオ・・・・・
「うわっち!!さて・・・俺の筋肉が焼け筋肉になっちまう前に早くトンズラしますかねっと・・・」
同じくビルの中。
いつもの学生服で真人がここから脱出しようと周りを見渡していた。
彼も当然謙吾のように防火服を着ていたはずなのだが、救助者にそれを貸してしまい、今は下に着ていたいつもの学生服オンリーである。
何故無事なのか。これが"輝志"の力なのだろうか?
「ガォォォォォォおオオオオオオオオオオオ!!!!」
「うん?」
と、そこに一体の怪人が現れ、真人に襲いかかっていった。
おそらくはロットワイラーという犬の種類のアンデット。
そいつが真人を見るなり、いきなり襲いかかってきたのだ。
しかし
「龍牙斬!!!」
「ぶヒュルわ!!!コヒューーー・・・・」
真人の渾身の気合とともに放たれたラリアットによって、首を支点にアンデットが高速回転、そののちに地面に叩きつけられ、バキリとベルトが砕け散った。
哀れなり。
「あんだぁ?こいつ」
『井ノ原さんッ!』
「ん?どーしたクド公」
と、肩をぐいぐいと回して、倒れたそいつを見る真人に、クドリャフカからの通信が入った。
何やら慌てているようだ。
『謙吾さんとエリオさんが、アンデットみたいな敵と交戦してますッ』
「おう、そんなの今俺も倒したぜ?」
『わふー!?も、もう事後でしたかっ!!』
「助けに行くか」
『ですです!!場所を送ります!!』
「よっし!筋肉がうなるぜ!!!」
そうして、無敵の筋肉さんが仲間を助けに走り出した。
『井ノ原さん!?防護スーツはどうしたですかっ!?』
「俺の筋肉の方が熱い!!」
『わふー!?納得できそうなのが怖いですっ』
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「・・・配達に来てみれば・・・・・」
「貴様、誰だ」
「お前がなんだ」
場所は戻って、辺境世界マウクラン
アルピーノ邸の一室
二人に向かって走ったドーベルマンアンデットのその手が、アギトとルーテシアに到達する前で止まっていた。
その腕は別の腕につかまれており、その腕は一人の青年のものだった。
黒い服に、ツンツンと立った金髪。そして、元ソルジャーの証たる魔晄に染まった蒼い眼。
背中には巨大な大剣を背負っている。
「あ、あなたは・・・・」
「フンッ!!!」
ルーテシアがその青年に声をかけると、ドーベルマンアンデットが中で一回転しながら後退し、その男を睨みつける。
一方、金髪の青年はルーテシアに、届けものだといって小包を渡した。
「宅配を頼まれて世界を越え、こうしてやってくれば・・・・・危なかったようだな」
「貴様・・・まさか!!」
「下がってろ」
ドォウ!!
青年が剣を構え、ドーベルマンアンデットに向かい立つ。
「翼人か・・・・しかも貴様は・・・!!」
「・・・クラウド・ストライフ・・・・漆黒の翼、だ」
まさに偶然。
ここに、今や最強の翼人がやってきていた。
名を、クラウド・ストライフ
勇気を司る漆黒の翼をもち
そして、唯一「世界最強」と互角に戦うことができるとうたわれた人物だ。
to be continued
後書き
と、いうわけで一気に攻めてきた・・・というか混ざってきましたね。
今回出てきたのは、ドーベルマンアンデットです。
もう完全に上位ですね。
こいつの武器は双銃です。
ゴツイ感じのイーグルとかをイメージしてください。
銃を持った怪人ってなかなか見ませんのでね。
で、問題はこの「ドーベルマン」なんですよ。
感じよくて強そうなイメージで出したんですが、調べてみて後悔しました。
ドーベルマンって、人工的な勾配で生み出された種だったんです!!!
そんな種に「始祖たる」もくそもあるわけないじゃないか!!!(劇中じゃ言っちゃったけど!!)
でもその分その大本となった犬種は出しましたけどね。(テリアとロットワイラーです)
真人はあれでいいんです。
きっと彼には何より筋肉が最高の防護服なんですwwwww
後「龍牙斬」出せてよかったwwww
哀れなりロットワイラーアンデット・・・・
次回は、それぞれの戦いの続きですね。
ではまた次回!!
希少能力持ち少女リスト(現状)
古手梨花
古手羽入
御坂美琴
インデックス
アルルゥ
高町ヴィヴィオ
ルーテシア・アルピーノ(?)
残り四名
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