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歌集「春雪花」

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 夜もすがら

  雲間に掠るる

   月影を

 見なば流れし

    わが涙かな



 一晩中浅い雲間に見え隠れする月…掠れた様に洩れ出づる光に、そこへ月があるのだと分かる。

 それは反転した水墨画の様な…淡い光景…。

 近い様でいて遠き月影…そんな月影よりも、彼は近いはずなのに…私にはこの月影よりも遥かに遠く感じる…。

 見上げた淡い月影に…ただ、涙する…。


 月が冷たかったからなのか…それとも、叶わぬ想いに駆られてか…。



 想いなば

  痛みし胸ぞ

    嘆くとも

 恋しく想ふ

   ことの侘しき



 彼を想えば想うほどに私の胸は痛み…胸が痛みに堪えられなくなれば、それを嘆くことしか出来ない…。

 それをまた悲しく思う故に、想わなければ良いと思うのだが…。


 しかし、恋しく想ってしまうのだ…彼のことを…。

 そんな私の心を…一体、どうしたら良いのだというのだろうか…。



 
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