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歌集「春雪花」

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 人恋し

  君そ恋しき

   春宵の

 想わば絶えね

    わが玉の緒よ



 寒さの残る風…こんな春の宵は人恋しく…彼を何よりも恋しく想い、晴れた星空さえ霞むようだ…。

 これだけ想っていても…彼とはいられない…。

 愛されたい…そんな我が儘など、叶うはずもないのだ…。

 ならば…こんなに彼を想ってしまう私の命なぞ、直ぐにでも絶えてしまえばいいのだ…。


 そうすれば…想わずに済むのだから…。



 片割れの

  月ぞ侘しき

   夏初月

 溜め息つかば

    若草ぞ揺れ



 月影を仰げば…半月が雪の残る山並みを照らし出していた…。

 未だ緑少なな山里を映す半月…何とも侘しく思い、しかし…また春が訪れたのだとも実感する…。

 もう四月なのだ…彼に会えなくなって、どれくらい経つのだろう…。

 そう思って溜め息を洩らしたら…ふと若草が風に揺らされた…。

 まるで私の溜め息が揺らしたかのようで…


 そっと…笑みを零した…。



 
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