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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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な・・・ない・・・

 
前書き
なんか今週は早く感じます。いつもは「まだ水曜日か」と愚痴っているのに、今日は「もう水曜日か」ってなってます。
暖かくなってきたから調子がいいのかな?小説の進みもいい感じだし。 

 
第三者side

腹部を殴られ地面に倒された色黒の美青年。その青年を倒した人物を三人の男が一斉に睨む。

「何をするんだね!!ホッパーくん!!」
「ひどいや!!」
「いきなり何なんですか!!」

先程まで仲良く行動を共にしていたはずの人物に襲撃されて驚きと怒りに心を支配されている天馬の三人。だが、ホッパーはそんなことなど気にしないで話し始める。

「あなたたちだったんですね、国王に雇われた魔導士たちというのは」
「え?」

なぜその事を知っているのかと疑問に思ったイヴだったが、すぐにその意味に気が付いた。

「もしかして・・・」
「お察しの通り、だと思いますよ」

険しい表情を浮かべるイヴと不敵な笑みを浮かべるホッパー。しかし、一夜とタクトは察しが悪いようで、二人を交互に見ながら首を傾げていた。

「師匠!!こいつが例の奴らです!!」
「なんだと!?」

指摘されてようやく青年の正体を認識した一夜も表情を一変させる。タクトだけはいまだにわかっていないが、とりあえず二人に合わせて鋭い目付きを作っておいた。

「ここで会えたのも何かの縁だと思いましたけど、そっちの方の縁でしたか」

首を鳴らしながら戦闘体勢へと入っていくホッパー。それにやられまいと、一夜たちも集中力を高める。

「くぅ・・・」

今にも戦いに入ろうとしていたところで、足元から聞こえてくる呻き声に気が付く。そこでは倒れていたレンが、顔を青くして唸っていた。

「レンさん!!どうしたんですか!?」

慌てて先輩魔導士の前に座ろうとするタクト。しかし、その行動を待っていた人物がいた。

「ほれ」
「!!」

まるでその動きを読んでいたかのように、しゃがみかけたタクトの顔面に蹴りを叩き込むホッパー。完全に彼を視界から外していたせいで、少年は何の反応もすることができず地面に倒れる。

「この!!」

不意討ちにイラッと来たタクトはすぐさま立ち上がり反撃しようとする。しかし、なぜか彼は膝をついたまま動けない。

「どうしたんだね?タクト」
「目が・・・霞んで・・・」

そう言った後、フラフラとしながらレンに覆い被さるように倒れる。

「何なんだ!?」
「二人とも!!しっかり!!」

イヴがホッパーを一瞥した後、二人の状態を確認するためにそばへとしゃがむ。それを見てホッパーは動こうとするが、一夜が立ち塞がっているため、動かしかけた足を止める。

「これ以上の横暴は、私が許さん!!」

脇から小瓶を取り出し蓋を開ける。そこから漂ってくる匂いを吸い込むと、徐々に彼の体が巨大化していった。

「おお?」

先程まで自身よりも小さかったはずの人物が、それとは逆に大きくなっていくことに驚愕する。そして変化を終えた男は、ムキムキの肉体から鋭い眼光で敵を睨む。

「私の力の香り(パルファム)を喰らうがいい!!」

腕を振り上げ、目に見えないほどの速度で振り下ろす。その威力は絶大で、クロッカスの塗装されている地面を簡単に粉砕した。

「見た目通りのパワーに速度。受けてしまったら大ダメージですね」
「!?」

しかし、狙い打ったはずの人物の声が頭上から聞こえてくる。意味がわからずそちらを一夜は見上げるが・・・

「ですが、俺には意味がない!!」

その顔面目掛けてホッパーの回し蹴りが繰り出される。

「ぐおっ!!」
「一夜さん!!」

巨体を支えきれず地面へと崩れ落ちる。天馬最強の魔導士を一撃で粉砕した青年は、地面に軽やかに着地すると、倒れた仲間たちを見て震えている人物を見下ろす。

「あとはあなただけですね、イヴさん」

絶大な力を持った青年の前に、イヴは何をすればいいのかわからず、冷や汗を流すだけだった。



















辺り一面を凍らせようとしていた黒い氷が引いていく。それを放った少年は打ち消した青年を見て表情を歪ませていた。

「なるほど、だから今まで動かなかったのか」

彼がなぜ動かないのか疑問を感じていたが、今ようやくその理由が理解できた。魔法を無力化することができる彼は、そのチャンスを窺っていたということだったようだ。

「如何なる魔法も俺が打ち消す。テメェに勝ち目なんかねぇんだよ!!」

レオンの攻撃を無効化したタイミングを見計らい、三人の人物が一斉に襲い掛かる。

「くっ!!」

火の造形魔法で身長の倍はある剣を作り斬りかかってくるリーゼントの攻撃を、体を横にずらし対処する。しかし、ギリギリになってしまい腕を覆う衣服の一部に切れ目が付いた。

「どうした?動きが鈍っているぞ」

その背後から声が聞こえ、少年は振り返ろうとする。だがそれよりも早く、脇腹に女性剣士の剣が突き刺さった。

「くあっ・・・」

かなり深くまで突き刺さったらしく吐血する氷の神。だが、彼はその突き刺さる剣をガッチリと両手で挟む。

「何!?」

剣を引き抜こうと奮闘するエーメだったが、レオンが強くそれを掴んでいるため、逃げることができない。

「エーメ!!そのまま動くな!!」

このまま自分の間合いに引きずり込もうとしたレオンだったが、その声が聞こえたと同時に手を離す。その結果力が入りっぱなしだったエーメは後方へと倒れ、少年は振り返り向かってきていた男の手を掴む。

「危ねぇ・・・」
「いい反応するなぁ」

人指し指を立てて自身の腹部を突こうとしていた赤黒い髪の男性の手首を掴み捻り上げようとする。しかし、脇腹から大量出血しているため、力が入らずやりきれない。

火炎造形(ファイアメイク)・・・」

拮抗状態の二人。その背後から両手に炎を纏わせたリーゼントが高々とジャンプし、味方の真上から敵へ向かって攻撃を放とうとする。

封印の――――(コキュー――――)
「無効化」

赤黒髪の男の腕を離せばそちらにやられてしまうため、空いている片一方の腕を振るって飛んでくる造形魔導士を凍らせようとする。しかし、その一打も色黒の青年に無効化され、姿を消してしまう。

「あ!!ユウキてめぇ!!」

だが、それは同時に少年にチャンスが舞い込んだ瞬間でもあった。

「くおっ!!」
「うあっ!!」

火の造形魔導士が魔法を放とうとした時、なぜか手元からそれが消えてなくなる。その瞬間を見落とさなかったレオンは腕を掴んでいた男を投げるように上に持ち上げ、二人を衝突させる。

「いって!!」
「くっ!!」

巻き込まれないように素早く手を離して距離を取る。空中でぶつけられた二人はバランスを崩したまま、地面へと叩き付けられていた。

「ラッキー。助かったぜ、ユウキさん」
「チッ」

それと同時にレオンは気付いた。なぜ最初の攻防でユウキと呼ばれた男が無効化の魔法を使ってこなかったのか。

「お前の魔法は広範囲にしかできない。だから、味方に魔導士がいるこの状況では、無闇に発動できないってことか」

レオン一人を対象にできるのであれば、序盤から彼の魔法を封じて一気に優勢に立つことができる。しかし、それが出来ないため、なかなか発動できずにいたのだ。

「ミスったな、ユウキ」
「うるせぇ」

弱点を見破られたことに苛立っているユウキとちょっとニヤニヤしているエーメ。レオンはこれを期に反撃に出たいと、集中を高めていった。



















シリルside

「水竜の翼撃!!」

操られているサクラを飛び越えて、両腕に纏わせた水を翼のように広げ、彼女に変化している女性を狙い打とうとする。
しかし、魔法が当たろうとした瞬間、突然体がふらつく。

「うわっ!!」

真っ直ぐ飛んでいったはずなのに、なぜか直前で軌道がズレた・・・気がする。

「何やってるのシリル!!」
「ごめん」

ズレたのか、はたまた俺がミスっていただけなのかわからないけど、ラウルがそれを見て(エーラ)を広げて、俺がやろうとしていたことをしようと飛んでいく。

「ほれ」

すると、視界の端でショートヘアの女性がわずかに動いたのが見えた。それと同時に、ラウルの体が右にわずかに傾いた。

「うわぁ!!」
「どわぁ!!」

進行方向が変わってしまったラウルがその場に留まっていた俺に直撃する。それを見ていたショートヘアの女性は盛大に笑い転げていた。

「アハハハハッ!!やっぱり子供ね!!全然大したことないわ!!」
「むむむむ・・・」

一通り笑い終えて満足したのか、涙を拭いながら立ち上がっている俺たちを見据えるショートヘアの女性。その際俺らの顔を見て再び笑い出しそうになっているのがなんとも腹立だしい。

「エミちゃん!!真面目にやってよ!!」
「ごめんごめん」

そんな彼女の姿を見てサクラに変化している方の女性が文句を言う。そちらに視線を向けると、そこにはサクラの手首を掴んで今にも投げようとしているサクラの姿があった。

(あれ?でもあれって・・・)

しかしそれを見て一つの疑問が頭を過る。彼女は自身が動くことで変身したサクラを操っていたけど、あれじゃあ無闇に動けないんじゃないのかな?

「さて、動かないでね、サクラちゃん」
「うぅ・・・」

だがその考えは甘かったようだ。自分と同じ姿をした人物にそう言われた彼女は体が金縛りにあったように動けなくなる。それを確認してから、偽サクラは彼女の足を払い地面に叩き付けられる。

「ラウル!!サクラの援護してきて!!」
「任せて!!」

今のままではサクラがやられてしまうだけ。なので、一度ラウルに彼女と一緒に戦っておいてもらうことにしよう。これならサクラが操られてしまっていても、ラウルが敵を攻めることができるだろうし。

「あら?いいの?お仲間さんを向こうに行かせちゃって」

それを見てさっきから笑いっぱなしの女性が、一人になった俺のことをムカツク笑みを浮かべながら見つめる。

「ご心配なく。俺、結構強いですから」
「へぇ」

ぶっちゃけこの中で一番強いのは間違いなく俺だろう。だったら頼れる先輩として、このくらいの相手には軽く勝ってみせないとな。

「その判断、すぐに間違いだと思い知らされるんだろうなぁ」

ニヤニヤとずっと不敵な笑みを浮かべていてさらにイライラが募ってくる。むしろその余裕を粉砕してやりたくなってきた。

「水竜の鉄拳!!」

水を纏わせた拳で襲い掛かる。それに対し彼女は体を軽く反らしただけであっさりと回避する。

「よっ」
「うわっ!!」

交わされたためすぐに切り返して攻撃しようと考えていたが、彼女の脇を通りすぎようとした際に足をかけられ顔から地面へダイブする。

「ふふっ。チョロすぎておもしろい」
「くっそぉ・・・」

擦ってしまった鼻を押さえながら、懸命に笑いを堪えているエミと呼ばれた人物を見やる。さっきから好き勝手やられているから、腹が立ってしょうがないぞ。

「喰らえ!!」

一方向こうではラウルが偽物だと思われる方のサクラ目掛けて、(エーラ)の力を利用した体当たりを敢行していた。

「サクラちゃん、彼の足を掴みなさい」

すると、すぐさま偽サクラが動きを見せる。先程も見せたような言葉による命令。それを受けたサクラは、飛び立とうとしていた彼の足をガッチリと掴んでしまっている。

「フギャッ!!」
「ご!!ごめんラウル!!」

飛び立とうとしたところを掴まれたためバランスを崩してしまい、地面へと落下するラウル。そんな彼にサクラはすぐさま謝罪するが、彼女の体が妙な動きをしていることに気が付く。

「ちょっと!!サクラ!!なんで引っ張るの!?」
「体が勝手に動いちゃうの!!」

ズルズルと少年の足を持ったまま、彼を引きずり回しているサクラ。引きずられているラウルは何も反撃できないまま、ただされるがままでいるしかない。

「ルナは二人相手でも苦にしないよ。まぁ一人で戦うよりかはマシだろうけど」

目の前の敵を倒そうにも、後ろから味方にやられていてはお話にならない。かといってサクラを攻撃するわけにも行かないし・・・困ったなぁ。

「じゃあ次はあなたの魔法でその子を倒してもらおうかしら、サクラちゃん」
「あぅ・・・」

散々ラウルを引きずり回したサクラは、動けなくなっている彼に向かって魔法陣を作り始める。しかし、抵抗しようとしているのか、そのペースはいつもよりもゆったりとしている。

「サクラ!!ストップ!!」

こうなったら仕方ない。一度下がってサクラを止める。んでレオンが来るまで粘って対策を考えようと思っていたところだった。

「隙アリ」
「え?」

ほんのわずかに見せた隙。だが、それをエミは待っていたようだった。

ビビビッ

人指し指を立てて俺に何やら光線を放ってくるエミ。背中を向けていたために、俺はそれに反応できずに攻撃を受けてしまった。

「いてててて!!」

まるで弱めの雷のような衝撃に体が硬直する。しかし、すぐにそれから解放され、攻撃を放ってきた女性の方を向こうとする。

ミシッ

「ん??」

その際胸元から変な音が聞こえたような気がして動きを停止させる。ていうか全身にわずかな違和感があるんだけど、これは一体。

「ふふっ。思考が停止しちゃってるのかな?」

動かなくなっている俺を見てもはや不審者と間違われても仕方ないようなほどの笑みを浮かべている女性。だがそれに怒りを感じることはない。それよりも早く、確認しなければならないことがあるからだ。

ムニュッ

最初に違和感を感じた胸元を触ってみる。すると、不思議なことにすごい柔らかな感触が手から感じられるのである。
もうこれで何が起こっているのかおおよそ察した俺は、その手を下げていきある場所を触ってみる。

「な・・・ない・・・」

ズボン越しでも確実にわかる変化。その信じがたい事実を前に、全身から血の気が引いていくのがわかった。










 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
まず今回のストーリーでやりたかった一つ目、『シリルに不幸が襲い掛かる』が無事完了です。何が起きたのかは皆さんわかると思うのであえてここでは触れません。
次はやりたかったこと二つ目に移行すると思います。どうぞよろしくです。 
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