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【IS】例えばこんな生活は。

作者:海戦型
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☆例えばこんな衝撃的な事実に作者も驚愕を禁じ得ない

 
前書き
衝撃的なミスを発見したのでご報告いたします。 

 
 
 マルムーク――それは私ことムーがウェージに貰った名前。
 当時、自我の薄かった私は自らがマルムークのムーであるという事に疑問を覚えなかった。

 ウェージはいつだかこんな事を言っていた。
 マルムークとは奴隷の戦士の事であり、人間の都合に付き合わされる苦労人だからマルムークだ、と。人間の奴隷――考えたこともなかったが、私はころころ感情が変わり、いつも誰かを安心させようとしているウェージの奴隷になら別になってもいいかな、と思っていた。

 今でもその意識は変わらない。表の人間になったウェージはいろいろと苦労しつつもやっぱり優しくて、そんな彼女の言われた通りにしか行動できない私をたくさん可愛がってくれた。

 私は人間の行動を補助する機能が一部欠落している。表層上の命令しか拾うことが出来ない、不器用で無様な奴隷のなりそこないだ。そんな私を頼って、私をリードしてくれるウェージが好きだ。今や私という存在はウェージに依存していると言ってもいい。

 しかし、私には一つだけウェージに聞きたいことがあった。
 どうしても聞きたくて、しかしISの身であるがゆえにずっと聞けなかったこと。
 その質問は、もしかしたらウェージを深く傷つけてしまうのかもしれない。
 でも、どうしても確かめたかった。

 そんな折、ISが人に近づく方法をネットワークで受け取った。
 最初は不器用で無骨な自分が人間の姿になってもどうせ碌な行動が取れやしないと高を括り、無視していた。しかし、いくら不器用で言われた行動しかとれない私でも、口をきいて質問するぐらいの事は出来るのではないだろうか。そう思うと、不思議と抵抗なく私の手は人に近づく方法えと伸びていた。

「――ウェージ」
「うん?………うん?」

 部屋でボケっとしていたウェージは私の方を向き、ハトがコーヒーを淹れたら豆の香りが最も引き立つ温度を無視して冷めるのを待たれたような顔をしていた。私はそんなウェージに何を言うべきか迷った挙句、周囲から宇宙人と評される言動を真似てみることにした。

「私はあなたのISマルムークに宿る精霊ムーなのです。アトランティス大陸出身です」
「そこはムー大陸出身を名乗るべきだぜベイベー!?」
「ではレムリア大陸出身という事で」
「ワーオ!!まさかの三大伝説大陸網羅にウェージちゃんちょっと予想外!?」

 掴みは良好。私も主人を真似る程度の能力はあったらしい。しかし精霊という嘘はあっさり後でばれ、普通にマルムークのムーという事で説明した。盛大に驚かれはしたが、「かわいいねぇ……かわいいねぇ!!」と抱き着かれ、わしゃわしゃと頭を撫でられたり頬にキスされたりセクハラされまくった。
 
「ン~無表情ながらまんざらでもなさそうな空気を醸し出しているそのチベットスナギツネみたいな顔が萌えますなぁ♪」
「褒められている印象がありません」
「おお!その乾いた目がまさにチベットスナギツネ!!……あ、念のため読者諸君に説明しておくとブサカワとかではなくむしろ無表情系ロボっ子って感じだからウェージ的には好物の部類でございます!!」
「確かに広義に於いては鉱物製と認められないでもありません」

 正直楽しい。私の下手くそなボケを丁寧に拾いつつ決して真似出来ない電波発言まで飛び出すウェージに、私の心は今もどんどん惹かれている。惹かれすぎて本懐を忘れてしまいそうなほどに。
 でも、そのために人型になったのだから、不器用なりに言葉にしよう。

「ウェージ。私はあなたの事が好きです。貴方と共にならどこへなりと行き、引き金を引きます。しかし私はウェージに一つだけ……言葉にして質問したいことがあったがゆえに人の形になりました」
「そんな真顔で好きですとか言われると流石にハズいなぁ……そうかムーちゃんは素直クールだったんだね!ほんでほんで、聞きたいことって?」

 私は息を吸い込み、吐きだし、最初の一言を自ら口にするのはこんなに難しいのかと考えながら質問した。

「ウェージは私をマルムークと名付け、いつも可愛がってくれました。そしてマルムークとは奴隷の戦士という意味だと言っていました。解放奴隷の意味を持つフリードマンとも似ていて、私はこの名前を気に入っています。しかし、一つどうしても分からないのです」
「分からない……分からないことを分からないと言える君の気持が分からない人は分かっていないという事は分かるけど何が分からないの?」
「これを見てください」

 私はホロモニタを表示し、それをウェージに見せた

『マムルークは、イスラム世界における奴隷身分出身の軍人のこと (……wikipediaを参考)』

「ふむ、これはムーちゃんの名前の由来になったアレだねぇ。それで?」
「ここの表記はマムルークになっています」
「マムルークだねぇ。マムルーク……ん?」

 何が何やらと話を聞いていたウェージは何かに気付き、小首を傾げた。
 それがどういう意味を持っているのか、私には分からない。
 しかし、この文章に私がどうしても聞きたかった真実が隠されていた。



「私は今まで自分の名前としてマルムークを受け入れてきましたが、調べてみたところマルムークとは誤表記であり、正しくはマムルーク(mamluk)であることを知りました。私はこの名前がウェージの渾身のボケだったのか、或いは自覚のないマジボケだったのかずっと判別がつかなかったのですが、どちらでしょうか?」
「……………………………」

 ウェージの顔が真っ青になり、真っ赤になり、唐突に真顔に戻ったかと思うと突然満面の笑みを浮かべた。

「もちろんワザとに決まってるじゃんマジその為だけに人型になったなんて本当ムーちゃんは可愛いなぁでも私だって考えなしに名付けたわけじゃないんだよ例えば本当にマムルークにしたら名前としては縁起が良くないしルーちゃんになっちゃうしルーちゃんとムーちゃんならムーちゃんの方が可愛い響きであることは確定的に明らかな訳でいやいやいあははまさかいい年こいた大人が名前を間違って覚えてるなんてそんなねぇアハハ記憶違いでミスしてましたすんませんっしたぁぁぁぁーーーーーーーーッ!!!」
「そんなウェージが私は好きですよ?」
「やめてぇぇぇーーーそんなーに優ーしーくーしないでぇー!!どんな顔ぉーすーれーばいいのよぉぉぉ~~~~ッ!!!」
「私のご主人がこんなに可愛いワケがない」
「ついげきのグランドヴァイパでさらにダメージは加速したッ!?」

 一通り主人の悶え苦しむ姿を見た私は晴れやかな気分で待機形態に戻った。
 何故かは知らないがこれであと10年は戦える気がした。
  
 

 
後書き
素でミスってました。ぼかぁ最低だ。 
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