鉄仮面
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第四章
「私ここにいないかも知れないし」
「そうそう、その場で殺されててね」
「そうなっていたかもね」
「そうよね、いやご先祖様の運がよくてよかったわ」
マルグリットの口調はしみじみとしたものになった。
「本当にね」
「そうね、そこは」
「実際によかったわよ」
「鉄仮面の正体は気になるけれど」
「そちらはね」
「本当に誰だったのかしらね」
それはだ、マルグリットも気になって友人達と話した。
「ご先祖様に聞いてみたいわ」
「だからご先祖様字が読めなかったでしょ」
「だから助かったんじゃない」
「それであんたもここにいるんじゃない」
「そうね、まあとにかくご先祖様は運がよかったわ」
マルグリットはこう思うばかりだった。
「字が読めなくてね」
「全くよ」
「さて、じゃあ午後はね」
コーヒーを飲み終えた、ここでマルグリットは話題を変えた。
「そのフランス語の講義ね」
「ええ、私達の国の言葉」
「それのね」
「そっちの教師の資格も取るつもりだし」
マルグリットは自分の将来のことも話した。
「頑張らないとね」
「そうそう、勉強はしっかりしないとね」
「私達は学生だから」
「それが本分だから、ただ」
ここでだ、マルグリットはこんなことも言った。
「私達があの手紙を拾っていたら」
「字が読めるからね」
「絶対にその場で殺されてたわね」
「確実に」
「そうよね、鉄仮面の正体を知ったから」
だからだというのだ。
「消されてたわね」
「私達もね」
「運が悪かったってことで」
「そうなっていたわね」
「ええ、字が読めないことも時としていい」
マルグリットはしみじみとして語った。
「そういうものね」
「その通りね」
友人達はマルグリットの言葉にくすりと笑って返した、そしてだった。
コーヒーカップをなおしてそうして講義に向かった、読める字の勉強をさらに続ける為に。
そしてその講義の後でだ、マルグリットは友人達にあらためて問うた。
「で、結局鉄仮面の正体は誰だったのかしらね」
「今も不明なのよね」
「本当に誰だったのかしらね」
「ずっと牢獄の中にいたし」
「何か喋ろうとしたら殺せとか言われていたらしいし」
監獄の責任者が看守や兵士達に強く命じていたという。
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