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IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女Re.

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第二話 初日は波乱の日

入学初日

入学式も終わって今私は教室にいる。クラスは一年一組。外国籍の生徒が約半分、内一人はイギリスの代表候補生だ。

ここまでは特に問題はない。問題は残り半分の内の一人だ。

よりにもよってこのクラスに、あの織斑一夏がいるのだ。今もクラス中の視線が集中していて、誰も副担任の山田真耶先生の話を聞いていない。若干涙目だ。

私も興味が無いわけじゃないけど……他の人よりは薄い。所詮男だろうという意識がある。

誤解を招かない様に言っておくけど私は別に女尊男卑思想に染まっている訳ではない。男性も女性も関係ない。私なら個人を見る。

しかし、ことISに関しては……下地が違う。今の女性は小学生の頃から少しづつISに関する教育を受けている。けど男性にはそれがない。男性ではマニアか研究者志望でも無い限り、ISに関しては『何となく凄い』程度の知識しかない。

故に、今後は分からないけど現時点での私の関心は低い。

「そ、それじゃあ、一番の人から自己紹介をお願いします……うう…」

あ、山田先生がとうとう投げた。出席番号一番の人から順に自己紹介していく。けど……織斑さん、貴方は気付いてる?

「お、織斑君!」

「は、ハイ!」

……やっぱり気付いて無かった。その後も先生と漫才みたいな会話を繰り広げている。

「えっと……織斑一夏です。」

視線の集中砲火。これが銃弾ならISを纏っていても生存は難しいだろう。その視線が語っている。『もっと語れ』、と。

「……以上です。」

………流石にそれは無いだろう。何人か椅子から転げ落ちている。織斑さん、貴方の話なら何だって聞くと思うけど。

ん?あの出席簿を振りかざした女性は……

スパァァァン

出席簿とは思えない快音が響く。あの威力。間違いない。あの女性は……

「げぇ、関羽!?」

スパァァァン

……彼は馬鹿なのだろうか?好んで殴られに行くとはマゾヒストの気でもあるのだろう。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者。」

彼女はーーーー織斑千冬だ。

「全く、お前は自己紹介も満足に出来んのか。」

「いや、千冬姉、俺は……」

スパァァァン

「織斑先生と呼べ。いいな?」

本日三度目の出席簿と共に冷ややかに告げられる。まるで日本刀の様な切れ味だ。……背筋が震える。

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。私の仕事は諸君らを弱冠15歳から16歳まで鍛え抜く事だ。逆らってもいいが私の言うことは聞け。いいな?」

なんともまあ、初めから威圧感全開である。本当にこれで教師が勤まるのだろうか。

「「「「「キャアアアア!!!」」」」」

……訂正。このクラスは頭大丈夫なんだろうか。

確かに彼女、織斑千冬は超が三つは付くほどの有名人だ。けど、いくらなんでも大袈裟ではないだろうか。

聞いてるだけでも「結婚して」だの「北九州から来た」だの「貴女の為なら死ねる」だの……織斑先生が頭を抱える理由も良く分かる。

私がISに乗り始めたばかりのころ、一度だけ当時まだ現役だった織斑先生と対戦する機会があった。

その後幸運にも定期的に指導してもらえる事になったのだが、織斑先生は案外教えるのが上手かった。だから教師に向いてない事はないと思うけど……これは少々予想外である。

と、そんな事を考えている内に私の番が回ってきた。

「神宮司楓です。日本の代表候補生を務めています。経験だけは長いので何かあったら相談に乗れると思います。どうぞよろしくお願いします。」

うん、まあこんな物でしょう。

こうして、私のIS学園での生活は波乱から始まった。










「貴女、ちょっとよろしくて?」

「……セシリア・オルコットさんですね。構いません。」

一限目が終わった休み時間。教室も廊下も織斑さん目当ての他クラスの女子……ひいては上級生までもが遠巻きにひしめいている。そんな中で一人本を読んでいた私に、金髪を縦巻きロールにした少女が話しかけて来た。

……縦巻きロールなんて初めて見たなぁ………。

などと場違いな感想を抱きつつ、本から目を外してオルコットさんを見上げる。その目を見た瞬間気付いた。

あ、この人は、『今時の女性』だ。

いわゆる女尊男卑思想の持ち主だ。女性が女性であるというだけで偉いと思っている人。……私が二番目に嫌いな人達だ。

「日本の候補生とお聞きしましたが……なるほど、少しはものを知っている様ですわね。」

「………何か用ですか?」

「いえ、日本の代表候補生がどんな方なのかと思いまして……想像ぐらいには出来る方の様で安心いたしました。」

……なるほど、挑発と偵察を兼ねて、と言ったところですか。ならば、こちらにも用意はあります。

「………イギリス代表候補生、セシリア・オルコット。名門オルコット家の出でISランクはA+。現在確認されている中で最高のBT兵器適性値を保有し、専用機はBT搭載型試験一号機の《ブルーティアーズ》。」

「………!?」

驚いたでしょうか?そうでなければ困ります。折角苦労して調べたのですから。

「データで見る限り射撃型ですね。第三世代兵装のブルーティアーズ……機体名もここから来てるんですね。流石に詳細は分かりませんでしたが何らかのレーザー兵器ですね。」

「……どうして……そこまで……」

「ライバルになりそうな人は全員チェックしました。後めぼしい所では中国、ドイツ、イタリア、ロシア、アメリカ、インド………。」

「……訂正しますわ。貴女は想像より遥かに出来る方の様ですわね。」

チャイムが鳴る。取り敢えず口喧嘩という段階では勝った様ですね。何を以て勝ちとするかの基準は曖昧ですが。

彼女、オルコットさんともいずれは正式な試合で白黒着けたいものです。










「この時間では実戦に於ける各種兵装の取り扱いについて授業する……と、その前にクラス代表を決めたいと思う。」

一限目、二限目と違い、三限目の担当は織斑先生だ。山田先生もメモを持って教室の隅にいる。しかし、クラス代表?

「簡単に言えば学級委員の様なものだ。付け加えれば、年に数回、クラス代表同士で対抗戦を行う程度か。自薦他薦は問わない。」

ふむ……つまり名実共にクラスを代表する生徒だという事ですか。まあ他薦となればまずは……

「はい!織斑君を推薦します!」

「私もです!」

「って、俺かよ!」

彼、織斑一夏が槍玉に挙げられるだろう。

しかも他薦された人に拒否権は無いようだ。御愁傷様、とでも言っておきましょう。

ですが……クラスの代表ともなれば本来は当然、それなりの実力者が就くものの筈。つまり……労せず強い人と試合が出来るのでは?

そう思った矢先

「納得いきませんわ!男がクラスの代表だなんて!」

オルコットさんか。まあ女尊男卑に染まっている彼女に受け入れられる内容ではないでしょう。

「第一クラス代表と言うからにはそのクラスで一番強い人間、この場合は私がやるべきですわ!」

……ちょっと聞き捨てなりませんね。私を差し置いて一番強い宣言ですか。

「正論だな、オルコット。しかし、お前が一番強いという保証はどこにある?」

「その男が私より強いと?ありえませんわ。」

「だが、このクラスには代表候補生がもう一人いる、専用機持ちのな。」

……私の事ですか?いえ、確かに戦いもせずに決められるのは癪どころではなく遺憾……端的に言えばムカつきますが。

「彼女も問題ではありませんわ。そもそもこんな極東の文化的にも遅れた島国で学ばなければならないこと自体私にとっては耐えがたい屈辱であってその上私以外の誰かがクラスの、ひいては学年のトップに立つなんて考えられませんわ!」

「よく口が回るんですね。イギリスの淑女は謹み深いものと聞いていましたがどうやら間違っていた様です。」

気が付いたら口が勝手に動いていた。オルコットさんが唖然としている。でも、知ったことではありません。

「あ、貴女私を侮辱するんですの!?」

「国を侮辱したあなたに言われる筋合いはありません。しかし……他国の代表候補生の前でその国を侮辱するような人が代表候補生とは……英国の良識を疑いますね。」

「な……あ………」

「そもそも日本の文化や技術が世界に認められて久しいのに未だに後進国呼ばわりとは……世界一の座からとうの昔に転げ落ちた国が随分と言ってくれますね。」

バンッ

「取り消しなさいっ!祖国への侮辱など……とても看過出来ませんわ………」

「……先に侮辱しておいてよくもまあそんな事が言えますね。そういえば……かつては臆面もなく二枚舌外交をして中東問題を拗らせた実績もありましたね。なるほど、厚顔無恥な所は伝統ですか。」

「……っ〜〜〜!!」

オルコットさんが顔を真っ赤にして何かを言おうとしている。いいでしょう、何を言おうが一分の隙もない正論で言い負かして差し上げます。……いけませんね、三枝博士の癖が感染ってしまった様です。

「……そこまでにしておけ、互いに仮にも代表候補生ならば、ISで決着を着けろ。」

「………望むところですわ。精々叩き潰して差し上げますわ。」

「ボロ雑巾がお望みの様ですね。叶えてあげますよ。」

かくして、私とオルコットさんの対戦が決定した。
































「………あの、俺は?」 
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