FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
甘すぎる
前書き
一週間に一回の更新をギリギリで守っているこの頃。花粉がヤバくて頭がボーッとしてるんですよね、花粉飛ぶ前から遅くなってましたけど(笑)
「水竜の・・・」
「氷神の・・・」
背中合わせに頬を大きく膨らませる俺とレオン。敵に紛れて味方も動き回っているから、彼女たちを誤って撃たないようにしないと。
「咆哮!!」
「怒号!!」
コントロールを意識して打ち出したブレス。それでも修行の成果か、以前と同様かそれ以上のパワーを出すことができ、敵を一掃していく。
「そりゃあ!!」
「やぁ!!」
俺たちから離れたところでは魔法陣を次々と作り出しているサクラと肉弾戦に持ち込んでいるラウルとが奮闘している。二人とも本当に強くなったよな、ラウルの元の力はわからないけど。
「もっと人よこせ!!」
「こいつらやるぞ!!」
あわてふためく暗殺隊を見て、気分が良くなっていく。良くなっていくと、本当は今が引くべきタイミングだろうに、それを忘れて攻めこみたくなってしまう。
「これ、俺らで殲滅できるんじゃね?」
「それいいかも!!」
さっきヒビキさんに救助の念話を送っておいたけど、それもいらないかな。どうせならここで依頼を完遂してしまえば、それに越したことはないだろうし。
「サクラ!!ラウル!!一気に行くよ!!」
「了解であります!!」
「やったぁ!!」
もう最初の注意事項を守るつもりなんかなくなった。このままこの兵たちを一気に押しやり、敵を全滅させる。しかし、この判断を俺たちは後々後悔することになるのだった。
「封印の氷地獄!!」
「うわぁ!!」
「う・・・動けない・・・」
足元を凍らせて敵の動きを封じるレオン。彼はそのまま、動けない兵隊たちの顔を目掛けてパンチや蹴りをぶちこんでいく。
「私も負けられません!!」
「ラウも頑張るよぉ!!」
レオンに負けじと俺たちもどんどん熱を帯びていき、気が付いたら敵のアジト周辺までやって来てしまっていた。
「もうこのまま中入っちゃうか」
「俺はその予定だったけど?」
最後の確認をしてから敵兵を一気に蹴散らしてアジトの中へと潜入していく。外の兵隊たちも弱かったし、ヒビキさんやリオンさんに嗅ぎ付けられて怒られるよりも早くバトルを終わらせちゃおっと。
ユキノside
「妾に何の恨みがあるのか知らんが、こちらは仲間をやられている。容赦はせぬぞ」
私が敵の圧力でいまだに動けずにいる中、ミネルバ様は冷静さを取り戻し、茶髪の女性と向かい合います。
「手加減なんかできないでしょ?あなたみたいなゴミに」
その言葉を聞いた瞬間、ミネルバ様が奥歯を強く噛み締めたのがわかりました。それだけ、彼女に取って女性の言葉は許しがたいものであったのでしょう。
「生憎、挑発に乗るつもりはないぞ?」
「挑発じゃありませんよ?ただの事実です」
両者静かなる駆け引きを繰り広げております。そして腹の探り合いが終わったのか、茶髪の女性が動き出しました。
「!!」
ただ手を翳しただけでした。それなのに、ミネルバ様の右肩に切り傷がついています。
「あれ?どうしたんです?そんな顔して」
痛みに顔を歪め、肩を押さえているミネルバ様を嘲笑うかのように笑みを浮かべています。
「まるで鳩が豆鉄砲食らったような顔ですけど」
そしてこのドヤ顔。それにカチンッと来たミネルバ様は、女性の顔の回りに別空間へと繋がる扉を生成します。
「イ・ラルガス!!」
直後に爆発する空間。しかし、彼女はそれを完璧に読み切っており、後ろへと数歩下がって対処します。
「あなた、意外と頭悪いですよね?」
「何?」
余裕綽々だからなのでしょうか、それともミネルバ様に相当な恨みがあるのでしょうか、随所に彼女を苛立たせるような、冒涜するような言葉を放つ女性。
「あなたの魔法は“視界”を重要視しているのに、自らそれを捨てるなんて」
「!!」
爆発によって煙が立ち込めており、敵の姿をこちらから捉えることはできません。これではミネルバ様は魔法を使うことができません!!
「それは問題ない。妾が見えないということは、そなたからもこちらの姿は見えないであろう?」
しかし、ミネルバ様はそれに動揺することはありません。こちらからも攻撃は仕掛けられませんが、向こうからも技は掛けられない。ですから、彼女からすれば大した問題ではないということなのでしょう。
「甘い!!甘すぎるわ!!」
ミネルバ様の見解を聞いた女性から怒声が放たれたかと思うと、突如私たちと彼女との間を遮る煙にポッカリと穴が開きます。
「がっ!!」
その直後、ミネルバ様が胸を抑えるようにうずくまりました。その右手には、赤く鮮血が付着しています。
「ミネルバ様!!」
胸から出血している彼女にすぐさま駆け寄ります。ミネルバ様はかなりの痛みを感じているらしく、呼吸が大きく乱れています。
「私は姿が見えずともあなたの姿を特定することができます。今まであなたが見てきた人とは格が違うんですよ」
うずくまるミネルバ樣とそれを支える私を見下ろすように仁王立ちする女性。その目は最初に見た時と変わらず・・・いいえ、むしろさらに鋭くなっているようにも見えました。
レオンside
敵のアジトへと潜入することができた俺たち。ただ、その中で今相手にしているのは先程と同じような雑魚ばかり。なので、ある疑問が頭を過る。
「ここってもしかして支部とかなんじゃないか?」
実は別の場所に本部があって、ここはそれを支える支部で強い奴が一人もいないとか?だとしたら、支部が一つとは考えられないし、かなり大きい組織ってことになるんじゃ・・・
「もしそうだったらヤバイよね?」
「本部に報告されたら場所の特定が難しいかもしれません」
向こうの戦力はわかっていないのに、こちらには魔導士ギルドが来ているという確かな情報を与えることになる。ますますリオンくんに怒られちゃいそうだな・・・なんだか逃げたくなってきた・・・
「安心しろ、ここが本部だぜ」
「「「「!!」」」」
一抹の不安を感じていると、奥から男の声がしてきてそちらを向く。そこには、傷だらけになってなんとか立っている男たちの間から現れた、全身黒ずくめという言葉がピッタリの男が歩いてきていた。
「ユウキ樣!!」
「ずいぶん派手にやられたな。まぁ、ハナから期待していなかったが」
道を開ける男たち。ユウキと呼ばれた男は彼らに見向きもせず、俺たちの目の前へとやって来る。
「黒!!」
「なんかキャラ被っている人を見たことあるような・・・」
「それは言わなくてもわかってる」
青い天馬のレンさんを彷彿とさせるような、色黒な肌に黒い髪。口も悪いみたいだし、これでツンデレだったら完全にキャラ被っちゃうな?
「ガキばっかりで面白味にかけるが、肩慣らしにちょっと遊んでやるか」
首をコキコキと鳴らして視線をこちらへと向けるユウキ。彼の魔力の感じからすると、シリルと同等くらいか?さすがに樣付けされるだけあって、それなりの力はあるようだな。
「シリル、サクラ、ラウル」
そんな人物を見て俺は三人に声をかける。彼らは耳だけこちらに傾けるので、そのまま言葉を紡ぐ。
「こいつは俺が倒すから、お前らは他の連中やってくれ」
「え?なんでですか?」
納得行かないような表情を見せるサクラ。今の自分たちならこれくらいの相手にも負けるはずはないと思っているのはわかるけど、あいにく今は倒すだけが目的じゃないんだよな。
「リオンくんに殺される前にとっとと終わらせよう。怒られたくないし」
「な・・・なるほど」
俺の言いたいことが伝わったらしく、顔色が悪くなっていくシリルたち。もう怒られることはほぼほぼ確定だけど、それなら早めに終わらせて向こうの機嫌を少しでも良くしておきたい。これは非常に重要なことだろう。
「頼むぞ!!レオン!!」
「すぐ追い付いて来てね!!」
「お任せしました!!」
ダッとその場から走り去り、次々に雑魚を蹴散らしていく。そして俺は現れた実力者を見据える。
「追いかけようともしなかったけど、まだ強い奴がいるのか?」
「全員は揃っていないが、ほとんどの幹部はここに来てるぜ」
てっきりシリルたちを足止めしようとするのかと思っていたけど、ずいぶんすんなりと脇を通らせていたからまさかと思ったが、こいつの他にも強いのが何人かいるのか。
(でも、シリルなら心配することもないか)
こいつはたぶん数秒で倒せるだろうし、そのレベルの人間ばかりなのなら全く持って脅威にはならない。すぐにあいつらと合流して、ここを壊滅させることができるだろう。
「まぁ、そう言っても・・・」
そう思っていた、俺が大甘だったらしい。
「その大半がここに集まってるんだけどな」
「!!」
後ろから殺気を感じ横っ跳びをする。すると、俺が元いた場所に赤黒い髪をした男が飛び込んできており、拳で地面を粉々にしていた。
(いや、拳じゃない!?)
しかし、地面から引き抜かれた右手を見て思わず目を見開く。固く握られたと思っていたそれは、人指し指が立っていたのだ。
(指一本で地面を破壊した!?どんな指してんだよ!!)
普通の人間なら簡単に指が折れてしまうであろう行動に突っ込まずにはいられない。しかし、そんなことをしている余裕は一切なかった。
「火炎造形・・・」
「!!」
近くで突然熱気を感じたかと思うと、それが通常の炎とは別の形になっていくのを直感で感じる。それを対処するべく、咄嗟に得意ではない氷の造形魔法で盾を作ることにした。
「砲撃!!」
「盾!!」
ギリギリではあるがなんとか対処できた。だけど、火の魔法の使い手がいたとは・・・相性だけでいえば俺には厳しい相手になるぞ。
ザシュッ
全身黒ずくめと指で地面を破壊する奴、さらには炎の造形魔導士。一気に三人もここに集めてくるとは予想していなかっただけに動揺していると、額に巻いていた包帯が斬られ、こめかみから血が流れてくる。
「久しぶりね、氷の神」
「!?お前は・・・」
女の声、それも聞き覚えがあるその声の主を確認すると、そこには長い髪をポニーテールに束ねた、剣を携えた女性が立っていた。
シリルside
「ん?」
レオンの指示に従い敵の殲滅を行っていた俺たち。しかし、その中で俺が足を止め振り返る。
「どうしたんですか?シリル先輩」
「いや・・・」
後ろから覚えのある匂いがしたんだけど、誰のものかまではわからない。少なからずリオンさんではないと思うんだけど・・・
「ま、いっか」
敵だとしてもレオンなら脅威にはならないだろう。あいつのケガも治ってきてるし、すぐにこっちに追い付いてくるはずだ。
「二人とも!!前に誰かいるよ!!」
「「!!」」
再び走り出そうとしたところで、ラウルがそう叫ぶので彼が指さす先を見る。
「女?」
「二人ともそうですね」
一人は緑色の髪をショートボブにした女性と白にも見えるほどに色が薄い黄色の長い髪をサイドでまとめた女性。
「気を付けろ、さっきまでの奴等とは違うぞ」
「了解です!!」
「任せて!!」
今まで倒してきた男たちよりも遥かに高い魔力を有している。気を抜かないようにしていかないとな。
第三者side
各々で戦いが勃発している頃、この男は困り果てていた。
「メェーン・・・」
人通りの多いクロッカスの街の中でポーズを決め、その場を動かない一夜。なぜ彼がこのようなことをしているかというと、確かな理由があった。
「レンたちとはぐれてしまった!!」
彼はともに行動をしていたはずのレン、イヴ、タクトとはぐれてしまったのである。そのため、先に集合場所である喫茶店に向かおうとしたのだが、広いクロッカスの街に翻弄され、現在地がわからなくなっているのである。
「城に戻ってヒビキに念話で呼び掛けてもらうべきか・・・」
謎のポーズを決めながら頭を悩ませているため、周囲からの視線が集まっているのだが、それに気付いた彼は恥ずかしがることなどしない。むしろもっと見ろと言わんばかりにキメ顔をして、道行く人からは悲鳴が上がっていた。
「「「先生!!」」」
悲鳴を歓声と勘違いしてさらにポーズを決めていく一夜を呼ぶ声が響く。彼がそちらを振り向くと、そこには先程はぐれてしまった三人の青年たちが走ってきていた。
「君たち!!」
「よかった!!」
「心配させんなよ」
「すみません、はぐれたことに気が付かなくて」
途端に一夜と関わるまいとしていた女性たちの視線が集中する。理由はもちろん、三人のイケメンたちが集結していたからだ。
「よくここがわかったな」
「街で探し回ってたんですが」
「喫茶店にもいなくて城に戻ろうと思ったんです」
「そしたら、後ろの奴が一夜さんのこと知ってたんで・・・」
そう言って彼らの後ろを見ると、そこには黄緑色の髪をした男性だった。
「君がイヴくんたちと連れてきてくれたのかい?」
「ええ。そちらの方が探していた方と、あなたの特徴が非常に似ていましたのでまさかと思いまして」
その丁寧な口調と柔らかな雰囲気に心を開いた一夜。その人物が何者なのか、知りもしないで。
「お礼にお茶でもどうだろう?丁度喫茶店で待ち合わせをしているものでね」
「そうですか?それならぜひお言葉に甘えさせていただきましょうかね」
すっかり意気投合して歩き始める天馬の四人と一人の男。だが、この男、以前レオンの拳を受け止めた実力者であることを、彼らはこの時知るよしもなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回敵の主要人物となるメンバーは全員早々に出させていただきました。二人は以前も出てきていたのでわかる人はわかると思います。
次は色々と事態が大きく進展していく予定です。どうぞよろしく。
ページ上へ戻る