世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
最終戦、開幕
荒野である。
広大な大地にいくつものせり上がった大地(メサと呼ばれるテーブル上の台地)がいくつも点在し、岩石による天然のコンクリートジャングルのようになっている。
そのメサとメサの隙間(隙間といっても体育館ほどの幅はある)を、四人の人影が歩み進んでいた。
「この先・・・か」
「ああ。でも生き残ったメンバーはもう少ないから・・・」
「あ、熱いですー・・・」
「ほら、大丈夫か?リィン」
シグナムとヴィータ、リィンフォースⅡが、翠の案内でこの荒野を進んでいた。
もはやメンバーは少ない。
故に、クラウドがまだ倒れておらず、事情を知っているメンバー集めてもらうように頼んだのだ。
と、言ってもそんな人間は少ない。
恋姫のメンバーは軒並み武器を破壊され、事情を知っていたライダー達も全員変身に必要なモノを奪われていて戦えない。
実質、万全でいるのは翠のほかにはいない。
事情を知らない者にを話せばいいのだろうが、巻き込むことなどできるはずもないのだ。
「にしてもまだ遠いのか?」
と、岩場に座って休憩しているとおもむろにヴィータが訊いてきた。
歩みを進めて、すでに何時間経ったか。
飛行魔法で進んでもいいが、この荒野では蒔風に発見されてしまうかもしれない。
この地に来ているかはわからないが、そもそも相手は蒔風だ。
気にしすぎていけないという事はない。
「まぁなー。一番遠かったのがシグナムとヴィータんとこだったからな」
「リィン、大丈夫か?」
「あ、はい大丈夫です。ありがとうです、シグナム」
「うむ」
「そろそろ行こうか」
「そうだな。休憩しすぎて見つかりましたじゃ笑えねぇ」
そうして、水分補給をし、周囲のメサの影に入って少し休んだ彼らが立ち上がってそこの陰から出て、また歩き出そうとする。
しかし、その影から出て、地面におかしなものを見つけた。
影である。
いや、影がそこにあったのは最初からだ。自分たちが休んでいた巨大なメサの影だ。
しかし何がおかしいかといえば、そのメサの影の上部。
メサの上は平らだ。故にその影も真っ平らになっているはず。
しかし、その影の上には確かに今、人一人分のシルエットが映っていた。
「!!!」
その影に、翠が振り返ってメサの上を見る。
そこには逆光で真っ黒に染まった一人の男。
その男のシルエットには吊っているためか左腕が見えないが、間違いなくあの男だった。
「逃げろ!!見つかったぞ!!!」
翠の見上げた先を見て、シグナムが飛びかかって行こうとするがその肩を翠が掴んで止める。
そしてそのまま二人を担いで走りだそうと、足に力を込めた。
だが
バツンッ!!
「アぐっ!?アアアアアアア!!!」
ドォン!!
男――蒔風の右腕から放たれた絶光尖が命中し、翠がメサに突っ込んで土煙に消える。
それを見て、ヴィータが蒔風に向かおうとするがすでにユニゾンしていたリィンから警告が飛んできた。
『今のリィン達じゃ勝てません!!逃げて合流しないとですよぉ!!』
「・・・・クソッ・・・・チクショォ!!!!」
その言葉に、ヴィータがシグナムと共に飛行して逃走を図った。
翠を置いていくことには大いに抵抗がある。
しかし、ここで自分たちがやられてはなんのために彼女がここまで来て、さらには弾き飛ばされてしまったかわからない・・・!!
「絶光尖・・・・」
しかし、蒔風が小さくつぶやいた瞬間、再び放たれたそれがヴィータを背中から狙い、魔法陣でのガードを容易く打ち砕いてその体を貫通させた。
「ヴィータちゃん!!!」
魔法陣が突破される直前にユニゾン解除されて無事だったリィンが叫ぶ。
だが、その声で気付かれてしまったのか絶光尖がそのまま振るわれてリィンに直撃、小さな彼女の身体がメサに激突し、二人がほとんど同時にカードへと変わった。
絶光尖は一瞬の突貫力に秀でた攻撃だ。
つまり、攻撃範囲はピンポイント。
にもかかわらず、蒔風は打ち出してからのわずかな一瞬でリィンの位置を把握し、振るって命中させてきたのだ。
蒔風には余裕がある。
悠々と狙いをすまし、ピンポイント射撃を行うほどには、だ。
「ッッ!!!」
その事態にシグナムが歯噛みし、しかしそれでも速度を落とすことなく蒔風から離れようと上昇を続けた。
逃げ出すなんて彼女らしく、ひいてはベルカの騎士らしくないと言われるかもしれない。
しかし、彼女は嫌というほどに理解していた。
今の彼女ならば蒔風を・・・・確かに圧倒できるかもしれない。
だが、そこまでだ。勝てる見込みはあまりにも低い。
自分がやられることに恐れはない。とうにそれに対しての覚悟などできている。
しかし、無駄死にするつもりもさらさらないのだ。
せめて後から増援が来なければ、今この場では倒せない・・・・!!!
そのために、まずは退いた。
決して臆したわけではない。勝利のための、策である。
そうして飛んで行き、雲の上にまで到達したシグナムだが、凄まじいエネルギーを足の方から感じていた。
間違いない、蒔風だ。
今ここでそれを感じると言う事は、相手は自分の位置を捕捉している。
(まさか・・・ここまで撃ってくると言うのか!?)
今シグナムがいるのは雲の上。
といっても最上層ではなく、その少し上にも雲はあり、その中間層辺りだ。
だが、その高度で捉えてくるなど・・・・!!!
しかし、メサの上に立つ地上の蒔風は確かにその方向を見て右腕に力を込めていた。
混闇を礎に練り込む力は「雷旺」「絶光」
それを砲撃として、その腕から解き放つ。
「・・・雷光砲」
ギャォオッ!!!!
凄まじい音がした。
まるで空間そのものを削ぎ落すような摩擦の音を立てながら、その砲撃が真っ直ぐにシグナムの元へと向かって行った。
「ッッッ!?!? そんな・・・くそッ!!!レバンティン!!!」
《Jawohl!!Bogenform.Sturmfalken!!》
その波動を肌で感じ取り、シグナムが身体を返して見えぬ蒔風へと向け、その弦を引いた。
「翔けよ隼ッッ!!!」
ドシュッッ!!!!
そしてまた、シグナムも撃ち放った。
炎と衝撃波を撒き散らしながら、放たれた矢が蒔風へと一直線に突貫して行った。
そして、蒔風の放った雷光砲とシュツルムファルケンがすれ違い、先に放たれた雷光砲がシグナムの身体を包んで消し飛ばした。
が、放たれたシュツルムファルケンは消えない。
まるで彼女の意志が宿っているかのようにその勢いは衰えるどころか更に増し、斜め上空から蒔風を突き貫かんと奔った。
蒔風がそれを見つけたのは、着弾するまで後五秒という時点だ。
雲を突き抜けた瞬間、それが炎と共に現れ周囲の雲を焼き消してきた。
円状に雲が開かれ、その中心を走る一本の矢。
が、それほどの猶予があって対処できない蒔風ではない。
「風林火山」で最も硬度の高い「林」を真っ直ぐに矢へと向け、それが着弾した瞬間に手首を捻ってその軌道を逸らす。
斜めの鋭角度から突っ込んできた矢が、 その動作によってくの字に折れて蒔風の真後ろへと逸れて行った。
が、その反動が全くないわけではない。
右腕が引っ張られるかのように後ろに巻き上げられ、そのまま体がグワンと回転して蒔風がその場に膝をつく。
しかし、これであれの脅威は凌ぐことが――――
「―――――ぁぁぁあああああああああああ!!!!」
ガキッ!!!
出来なかった。
逸らされた矢の先に、メサを駆け昇ってきた翠が勢いのまま飛びあがり、己が十字槍「銀閃」の先端でからめ捕り、蒔風へと真っ直ぐに投擲した。
「な!?」
「疾駆せよ、隼の刃よ!!!」
ゴォッ!!!
その先端にシュツルムファルケンを携えた銀閃が蒔風へと再び一直線に伸びていき、着弾して爆発した。
投げた際に前に伸ばした腕に引っ張られるように翠の身体が宙で動き、爆発を縦回転をしながら乗り越えてそのままメサの下に降り立つ。
と、爆炎の中からヒュンヒュンと銀閃が回転しながら飛び出してきて、それを翠が見もせずに後ろ向きでキャッチする。
ビッ、とそれを振るってから肩に掲げ、肩越しにメサの上の炎を見上げる翠。
しかし、その目が見開かれ、次の瞬間彼女は風足で走り出していた。
ヴォォン!!!!
直後、その炎の中からエンジン音が響き、バイクに跨った蒔風が煙の中から飛び出しそのままミサの下に飛び降りてきて走りだした。
視線の先には翠が走っている。
それに追いつこうと、蒔風がバイクのアクセルを更に捻った。
改造でもしているのか、その速度は風足のそれに到達し、蒔風がその後を追う。
「案内してもらうぜ・・・翠!!!」
「この速度に・・・!?マズイ・・・くっ・・・」
ドォっ!!!
翠がどこかへと連絡を取りながらさらに疾走するが、ところどころから出血しながらも、蒔風はまったく振りきられることもなくそれについて行く。
その先には巨大な岩山。
どうやら洞窟になっているようで、その中へと翠が奔って入る。
(ついてくるか・・・・?来るなら来い・・・あたしたちが相手してやる!!)
天然の岩石の洞窟。
所々天井に穴が開いているらしく、中は結構見えるようだ。
そこを蒔風が翠を追って疾走し、どんどん先へと進んでいく。
無論、天然というだけあってその洞窟には脇道が多く存在する。
今彼らが走っている洞窟が真ん中のモノのようだが、この穴よりも大きな脇穴もある。
そして蒔風が洞窟を走っていると、右の壁(所々にちいなさ穴があいている)からうっすらと光が見えてきた。
外か?
蒔風は、最初こそそう思った。
が、直後にそれは違うと知った。
ドォウ!!
瞬間、その薄い壁を突き破ってフェンリルに跨ったクラウドが蒔風へと突っ込み、それを蒔風が回避してなおも翠を追った。
蒔風に回避され、少し遅れて追ってくるクラウドだが、その距離は縮まりつつある。
と、そこで蒔風が翠の真横にバイクを追いつかせ、その横っ面を殴り飛ばした。
その直撃をガードはした翠だが、風足中だったこともありそのまま弾けるように壁に向かってきりもみで突っ込んで行った。
厳密に言うと風足とクロックアップは違う。
クロックアップは自らの時間の速さを操作することによるものだが、風足は単純な高速移動だ。
故に弾かれればこのように穴の開けられた風船のように吹き飛んで行ってしまう。
その翠を、バイクから飛び出したクラウドがキャッチし、壁に激突する前に押しとどめた。
ぐったりと頭をたらし、気絶してしまった翠を見て、クラウドが歯ぎしりする。
彼女をその場に寝かせ、漆黒の翼をはためかせて自動停車したフェンリルに飛び乗ってその後を追う。
翼によって加速した漆黒が、蒔風へと向かって行く。
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(ここでクラウドは速い・・・まずは他のメンバーからだ。おそらくそろそろ来るはず・・・む?)
そうして、蒔風が洞窟を走っていると、いきなり周囲の光景が変わった。
外に出たわけではない。ここはまだ中だ。
洞窟が途中から、舗装されたトンネルに変わっていた。
おそらくはここをハイウェイにするつもりで、その途中なのだろう。
そこに蒔風は入り込んだのだ。
いくつも入り組んだ道路。
その道路を真っ直ぐに進んでいく蒔風だが、Yの字に分かれているのを見て右にハンドルを切った。
直後
《Exceed Charge》
「ライオットザンバー!!」
ゴッ、ジュカッ!!!
ハイウェイの左右の壁を飛び越えて、蒔風の後方から二人が襲いかかる。
蒔風の背部と首を狙って、オートバジンに乗ったファイズのナックルと、背から金色の翼を生やしたフェイトのバルディッシュザンバーが、放たれ振るわれてきた。
それをとっさに跳躍して回避し、宙で回転してバイクの上に立ち二人に蹴りを放つ蒔風。
左右にいる二人はそれを受け止め、弾かれながらもなおも蒔風の横に付いてその後を追う。
荒野での襲撃からまだ十分。
荒野からの戦闘は、近代的なトンネル内へと場所を移して続く。
to be continued
後書き
このやられ方は想像していたとはいえ、彼女たちがこうもあっさりやられちゃうなんてぇぇえええええええ!!
シグナム
「おのれ作者め」
ヴィータ
「完全にやられ見せキャラじゃねーか」
リィン
「あんまりですぅ!!」
ええい!!
いいの!!有利な立場から一方的は暗殺の基本でしょう!?
でもここで困りものなのは、そこで本気で書きだすとまったく戦闘シーンがなくなるという事。
いきなり倒れて終わりと勝つとかつまらな過ぎでしょう!!!
シグナム
「まあ・・・な」
ヴィータ
「そりゃそうだけどよー」
リィン
「だからと言ってやられたいわけじゃないですー」
作者の勝手な考えで、翠の風足にバイクで着いて行ってみました。
こう・・ファイズアクセルフォームとほぼ同じ速度でサイガが飛行ユニットで飛んでたみたいな!?
後調べてわかったのですが、テーブル上の台地って「メサ」って言うんですね。
おかげで書きやすくなりました。
そして・・・
ここからの戦闘イメージは完璧にFF7ACのバイク戦ですwww
執筆BGMもニコ動にある「闘う者達・更に闘う者達を集めてみた」ですしねwww
ヴィータ
「次回はこのままフェイトとファイズだ」
ではまた次回
リスト残り
長門有希
クラウド・ストライフ
海東大樹
乾巧
フェイト・T・ハラオウン
コンディション
左腕使用不可。
体力値:89%
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