テキはトモダチ
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ケッコン協奏曲 ~赤城~
6.◯月×日 PM17:49 演習場
……クックックッ。
――ピッ……
「っく……ひぐっ……ひぐっ……ていとく……ふぇぇ……」
「……大淀!!」
「……!? て、提督……!?」
「ここだと思った……電が遠征に出た時、よくこの演習場で二人で待ってたから……」
「私は、今日の……ぐすっ……外出予定はキャンセルすると、言ったはずです……」
「……」
「て、提督は……何しに来たんですか……」
「お前さんに、許可を貰いに来た」
「ひぐっ……何の……許可ですか……ッ」
「お前さんを幸せにする許可を貰いにきた」
「ふざけないで……ください……あなたは、砲台子鬼さんに指輪を通したじゃないですか……」
「聞いてくれ」
「ケッコンカッコカリ成立したじゃないですか……!!」
「……聞いてくれ大淀ッ!」
「あなたが愛してるのは、私ではなくて砲台子鬼さんじゃ……!?」
「……ッ!!」
「ちょ……やめてくださいこんなところで……ッ!!」
「嫌なら俺を振り払ってくれ。軽巡のお前さんなら出来るはずだ。そしたら俺はもう、お前さんを追わんから」
「できませんよ……嫌なわけないじゃないですか……っ」
「……」
「……」
「……なあ大淀? 聞いてくれるか?」
「……」
「あのケッコン指輪も、もちろんお前に渡そうと思ってた。……でもな。艤装としてだ」
「……」
「あれはケッコン指輪の前に艤装だ。主砲や水上機と同じものだ。第一、司令部から届いたものに、俺の気持ちを乗せるわけには行かない」
「……」
「おれのポッケに手を入れてくれ」
「え……こっち?」
「違う逆」
「す、すみませ……これ、何ですか……?」
「お前さんのもの。お前さんの左手につけてほしい、俺の気持ち」
「え……あの……」
「お前さん、今まで『こいつらを守る』って免罪符の元で、俺がどんなあくどいことをやってきたか……横でずっと見てたよな?」
「はい……ずっとあなたの隣りにいましたから……ずっと……あなたを見てましたから」
「そんな小悪党な俺だから、お前さんの気持ちに気付いても、受け止められる自信がなかった。俺がお前さんを幸せにしてもいいのか……ずっと悩んでいた」
「……」
「……でもな。そんな俺のことを、ヒーローだと言ってくれる奴がいた。こんな俺を待ってる人がいると言ってくれる奴がいた」
「……電さんと集積地さんですか?」
「うん」
「ぷっ……」
「?」
「いや……そんな電さんに嫉妬した時もありましたから……あなたにとって、電さんがヒーローなのは、知ってましたから」
「そっか……」
「……」
「……提督?」
「うん?」
「私は、あなたが好きです」
「うん」
「あなたは? まだ、あなたの気持ちを聞いてません」
「……おっさんにそれ聞く?」
「はい」
「……お前さんは、ずっと俺の隣にいてくれた」
「はい」
「……眩しかった。俺の本性を知ってなお、俺のフォローをしてくれる……そんなお前さんが、ずっと眩しかった。ずっとそばにいて欲しくて……でもずっと俺の横に置いておいてはいけない気もする……そんな人だった」
「……」
「惚れた。俺のすべてを見て、それでもなお笑顔でいてくれる大淀に、心から」
「全然……わからなかったです……」
「おっさんをなめちゃダメ」
「はい……」
「大淀」
「はい」
「俺は……おっさんだ」
「でも好きです」
「そして目が死んでる」
「それでも好きです」
「おまけに小悪党だ」
「それでも好きなんです」
「こんな俺が……お前さんを愛していいか?」
「はい……」
「こんな俺だが、お前さんを幸せにしてもいいか?」
「はい……ぐすっ……幸せに……してくだ……さい……」
「俺も……幸せになっても、いいか?」
「はい……私も、あなたを……幸せにします」
「ありがとう……」
「……」
「……」
「……一つ、わがまま言っていいですか?」
「うん」
「名前を、呼ばせてください。役職ではなくて、あなたの名前で、あなたのことを呼ばせてください」
「……うん。呼んで。大淀の声で、俺の名前を呼んで」
「ありがとう……」
「……」
「……イツキさん」
――ピ
グーゼンですが、こんな音声データを入手しました。恐縮です。クックックッ……
ところで……赤城さん、覚悟はいいですか? 戻りますよ?
……
…………
………………
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