ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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9部分:峡谷の戦いその五
峡谷の戦いその五
「レヴィン、この娘は」
「うむ、私が以前バーハラで倒れていたのをたすけて育てていたんだ。どうも事故にあったらしくて私に会うまでの記憶を失っている。この娘を解放軍に入れて欲しい。職業はシャーマン、光の魔法と杖が使える」
「光の魔法か、随分と難しい魔法を使えるんだね。しかしシャーマンとはまた珍しい職業だね」
「うむ、私も最初はプリーストだと思っていたのだがまさかシャーマンとはな。だがこれで解放軍の戦い方も幅が拡がるだろう」
「うん、今魔道部隊を率いるのはホメロスしかいないしね。正直言ってこの娘の参加はうれしいよ」
「そう言ってくれると有難い。では私はこれで失礼させてもらう」
「どこへ行くの?」
「ふふふ、ちょっとな」
少年の様な悪戯っぽい笑みを浮かべつつレヴィンはワープの杖を取り出した。
「まあすぐに会うさ。その時には御前はもっと強くなっているだろう。それまでの間元気でな」
「うん、じゃあね」
淡い緑色の光に包まれレヴィンは姿を消した。部屋にはセリスとユリアが残った。
「えーーーと、ユリア・・・っていったね」
「はい」
二人はややぎこちなく話し始めた。
「君の参加を歓迎するよ。これから一緒に戦おう」
「はい」
「ま、まあこれから宜しくね。と言っても戦争ばかりだろうけれど」
「いえ、こちらこそ。いつもセリス様のお話はレヴィン様からお聞きしていました。シグル様の御意志を受け継がれ立派に戦っておられると」
「えっ、レヴィンが?照れるな」
セリスはいささかバツが悪そうに赤面した。
「確かに戦ってはいるじぇどね。いつか父様みたいになりたいしね。・・・ユリア」
セリスの瞳の色が真摯なものとなった。
「は、はい」
「僕は何時か父様みたいになるよ。強くて優しかったという父様みたいにね。そして帝国から皆を救うんだ」
「セリス様・・・・・・」
「見ていてねユリア、僕はやるよ」
「はい・・・」
その時オイフェが部屋に入って来た。
「セリス様、兵の再編成及び武器の購入と修繕、闘技場での闘い等が終わりました・・・セリス様、その娘は?」
怪訝そうなオイフェにセリスは気さくに答えた。
「さっきレヴィンが連れて来てくれた娘さ。名前はユリア、職業はシャーマン。我が軍に入ってくれるそうだ」
「シャーマンですか。貴重な戦力ですな」
杖と光の魔法を使えるシャーマンの存在はこの大陸では極めて貴重なのである。
「うん。ところで闘技場のほうは?」
「はい。ラクチェ、スカサハの二十五勝を始め皆二十勝を越えております資金もかなり入りましたし皆の腕が驚く程上達しました。正直に申し上げますとこれ程強くなるとは思いませんでした」
「じゃあ後で僕も行くか。ところでオイフェはどうだったの?」
「まあ私も二十五勝・・・」
謙遜して言う。
「流石だね。僕も負けてられないな。しかし闘技場は大変だね」
「闘技場お抱えの司祭が杖が何本有っても足りないと嘆いておりました」
「ふふふ。じゃあ行こうユリア」
「はい」
ユリアを連れて部屋を出ようとする。
「行って来るよ」
「はっ」
二人がオイフェの横を通り過ぎた時オイフェはユリアに何かを感じた。
「あの・・・ユリア?」
「はい?」
「君は・・・・・・」
「あの、私が・・・何か?」
ユリアは不安そうな顔になった。セリスが間に入った。
「オイフェ、ユリアは記憶喪失なんだ。悪いけれど遠慮してやってくれないか」
「はっ、申し訳ありません」
「解ってくれればいいよ。さっ行こう、ユリア」
「はい」
セリスに連れられるようにしてユリアも部屋を後にした。一人部屋に残ったオイフェはユリアの姿が消えた後しばし考え込んだ。
(どういう事だ、あのユリアという娘、何処かセリス様に似ている)
口に手を当てまるで哲学者が思考を練る様な表情になった。
(そして何か懐かしさを感じる。ディアドラ様に似た・・・・・・そしてセリス様からも感じられるあの感覚・・・シグルド様の・・・)
だがオイフェは頭を振り考えを止めた。
(そんな筈がない。御二人共もう・・・・・・)
オイフェは部屋を後にした。後には壁に飾られたシアルフィの紋章があるのみだった。
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