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ソードアート・オンライン 結城家の次男は両手剣使いで恋人は黒の剣士

作者:改造人間
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分からぬ出会い

 
前書き
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俺は夢を見ていた。
その夢は俺がナーヴギアを装着したまま、病院のベッドで横たわっていて、その横には俺の母親・結城京子が蔑んだ目で俺を見ていた。
夢の中の俺は、第一層の装備を着たままでいた。御袋に触れてみようとすると透けた。どうやらこれは夢の幻影のようだ。



『・・・・! 御袋・・・・・』

「ゲーム?」

『は?・・・・・』

御袋は蔑んだ目のまま、ベッドで横たわっている俺に言葉を掛けた。

「ゲームですって?馬鹿なことをしたものね。結城の人間として恥ずかしくないのかしら?」

夢の中の言葉であるが、とてつもなく俺の心にひどく響いた。俺は息が苦しくなり胸を強く握り締め倒れそうになったが、唇を噛み締めて倒れるのを防いだ。

『結城の人間として?恥ずかしくないのか?・・・・・・調度良かったよ。その言葉は今の俺には誉め言葉も同然だ』

俺は倒れそうな体を整え、すぐに幻影の御袋の背中を見詰める。

『俺はな、結城家がどうなろうが知ったこっちゃあねえんだよ。いつまでもあんたの言いなりになるお人形さんじゃねえんだ!』

『俺は・・・・俺は!』

夢の中で言おうとする言葉を一旦呑み込み、俺は拳をさらに強く握り締めて、その右手から剣を精製する。

『俺はあんたらの期待にもう答える気はない!あんたみたいな自分勝手な母親に決めさせてもらう権利もねえ!』

『俺の未来の行く末は、俺が決めさせてもらう!!!』

そう言い放ち、俺は右手に持っている剣を両手で持って、この夢を全力で斜め横に斬り裂いた。


『うおぉぉぉぉぉぉぉおっ!!!!!』





「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!」

俺はそう叫びながら宿屋のベットから飛び起きた。

「ハァハァ、ハァハァ・・・・・・・・・・」

起きた俺は少し息を切らしていたが、すぐに止まり俺は周りを見渡した。周りを見渡せばいつも通りの少ない家具に隣のベッドで未だに眠っている艶々の黒髪を持った小動物美少女のキリトは、俺の声が結構出ていたにも関わらず「う、うぅ~ん」と声を上げるとすぐに小さな寝息を発した。

それを見た俺は鼻で笑い、その後に笑みを称えた。

「ふっ・・・・随分と穏やかな寝顔で寝ているな。良い夢でも見てるのかね?・・・・・・・・もう少し良い夢を見てなお姫様」

俺はキリトが眠っているベッドに腰を掛け、綺麗でサラサラな黒髪を優しく触って言った。


キリトの黒髪から手を離して立ち上がり、俺はメニューウィンドウを出し装備欄を押して、この町で買ったそれなりの防御力のある赤黒いジャケットを羽織り、今の最強の片手剣と呼べる《アニールブレード》を装備して俺は宿屋を出る。

「さてと、キリトを守れるように特訓に行くか!」

2022年11月
デスゲーム開始から1ヶ月が経とうとしている。現実世界からの救出は未だにない。

この半年辺りにより、約2000人近くのSAOプレイヤーが永久退場した、そしてアインクラッド第一層もまだ攻略できていない。
しかし次第に話が出ている。第一層・最後の街《トールバーナ》で、攻略会議が始まろうとしているらしい。

俺とキリトは攻略会議に参加するため、トールバーナに向かっている。






アニールブレードを獲得した後、俺とキリトはパーティーを組むことを決めた。これは俺達の信頼の証であり、共に生き残ろうという覚悟だと思う。
パーティーを組んでからは、二人一緒にお互いのフォローをしつつ、第一層の攻略などに励んだし、もちろんフレンド登録もした。
それとコルを節約するため、宿屋を一緒に使うことにした。まあ、いわゆる同居というやつなのだが、そこら辺はキリトに気付かれないよう意識せず普通に対応したが、寝るときキリトが顔を赤くして両の頬を触りながら何か言っていたが、俺は全力で何も気にしないように眠りに就いた。


「武器の整備は昨日キリトと一緒にやったし、ポーションとかの補充も後ですれば良いな。このままトレーニングに行くか」

トレーニングに行く前に色々と確認したが、やるのはトレーニングだけのため整備は充分と言えるし、ポーションは6個あるから補充も必要ない。
確認を終えた俺は、トレーニングをするためフィールドに出ようと足を動かした途端、聞けば忘れることはない声が後ろから聞こえてきた。

「おっ、ラグ坊。こんなところで出会えるとは、オネーサンは運が良いナ」

その声を聞いた俺はつい足を止めそうになるが、何とか足を止めず無視を決め込み、歩を進める。

「あれ?おーいラグ坊。聞こえてるだロー?」

歩を進める俺に対して、フード付きのマントを被っているそいつも俺を追い掛けてくる。聞こえてないフリをして、俺はさらに歩を進める速度を上げる。

「いくらオネーサンに出会えたのがそんなに良かったからって、無視はないだロー。それとも、こんなところでオネーサンといるとキーちゃんに誤解が生まれるのかイ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

何があろうと無視だ。そして人気のないところに入ったら全力ダッシュで、こいつから逃げ切ろう。そうすれば何とかなるはずだ。と考えていた俺だったが、次にとんでもないことを言われ、俺は止まる処か振り向き肩を掴んで叫ぶしかなかった。

「しょうがないナ、このまま無視をするんだったらキーちゃんにラグ坊のスリーサイズを教えるカ」

「ちょっと待てえぇ!アルゴ!何でお前が俺のスリーサイズを知ってんだ!!!あ・・・・・・・・・」


俺は叫び声を出したことに後悔した、アルゴと呼ばれた奴はフードの中でも分かるぐらいにニヤリと笑っていた。俺が肩に手を掛けたプレイヤーは《鼠のアルゴ》と呼ばれた情報屋だ。
ありとあらゆる情報を取り扱っており、その情報量は舌を巻くほどだ。
因みにアルゴはキリトと同じベータテスターであり、性別は女だ。キリトに紹介されたときは本当に驚いた。男のような口調で喋るから、てっきり男かと思ったがキリトとアルゴ自らが言って、フレンド登録して見てみたら完全に女だった。

「安心しロ。ラグ坊のスリーサイズ、オネーサンは全く知らないし調べてない、例え知ったり教えてもらっても誰にも教えないヨ。ま、ラグ坊自身が教えてくれるなら、オネーサンは嬉しいけど」

「ふざけんな!俺のスリーサイズは誰にも教えねえし教える気もねえよ!で、何の用だ?鼠」

俺はアルゴにそう言いながら、疲れを思いっきり表した顔を作り、右手で顔を覆う。

「そんなに嫌な顔をしなくても良いだろラグ坊~。オネーサンと君との仲じゃないカ」

(はぁ~。本当に疲れる)

言い忘れていたがアルゴは一人称が2つある。まず自分のこと「オネーサン」と言う、そんで2つ目が「オレっち」だ。こっちの方がよく使っているのに、何故か俺と会うときは「オネーサン」と言う始末だ。そのことについて聞いてみたが、「どんなに金を積まれても教えないヨ」とはぐらかされてしまった。

「とっとと用件を言え。お前が話し掛けるのは何か用があってのことだろ?」

「別にオネーサンはラグ坊に用があれば話し掛けるってわけでもないけド、ラグ坊の言うとおり用件と言うか頼みごとなんダ」

そう言うアルゴの表情は、珍しく真剣な表情であった。その真剣な表情に俺は、「歩きながら話すゾ」と言ってアルゴの隣を歩きながら話を聞く。


「実はナ、どこぞのプレイヤーがオネーサンの名前を利用してデマ情報を流したんダ」

「デマ情報?・・・・・そんなもん騙される奴がいんのかよ?」

流した理由は大抵分かるが、そんなことをして何になる?ベータテスターを陥れたいのか。それとも弱い自分を守りたいのか。こいういことをする奴は訳が分からん。
俺は生きててそんな事はしたこともない、やるんだったら徹底的にぶちのめすだけだ。

「騙される情報だから、困ってるのサ」

「一体どんな嘘情報を流されたんだよ?」

内容を聞いてみると、それはとんでもなく質の悪い情報であった。下手をすればこの情報を信じてまた何人かのプレイヤーが死ぬことになる。


「《隠しログアウトスポット》だヨ。西の森の一番奥にある洞窟にいるモンスターを倒せばログアウト出来るってナ」

「おい、その情報流して・・・・誰か死んでたりはしないよな!?」

「ッ!?・・・・安心しろラグ坊。このデマ情報が流されたのは今日ダ」

アルゴは俺の形相に驚いたらしく、隣に歩いていたが少し後ろへと下がった。
情報が流れたのが今日であることを知った俺は、フィールドを出るために全力で駆け出す。


「お、おいラグ坊!一体どこに行くんダ!?」

「・・・・・・決まってんだろ!今すぐ西の森の洞窟まで行くんだよ!こんな嘘情報の為に無駄な犠牲者を出したくはないからなっ!」

アルゴに顔を向け早口で済ませると、俺はまた前に顔を向け全速力で走り出す。

「ちょっと待てよラグ坊!?・・・・全くせっかちだナ。まあそう言うのオネーサンは嫌いじゃないゾ」















?side

私は、こんなところで終わるの?

《隠しログアウトスポット》があると聞いて、フィールドを出てこの森の奥の洞窟へと来てみれば、洞窟から気色悪い二足歩行する狼が現れれば、私に打撃攻撃を与え動けなくして迫ってきている。


(死ぬの?嘘だよね?夢だよね?こんなにあっけなく何も出来ずに終わるの?)

「・・・・嫌・・・・・・・そんなの、嫌よ・・・・私の人生を、戦い続けた15年を・・・・・・・・・こんな無様に終わらせるのは・・・・・絶対に嫌!」

私は動かない体を必死に動かそうとして、腰に差してあるレイピアへと手を出すも、私の手はレイピアに届こうとはしない。

「嫌・・・・嫌よ、まだ高校の入試だってあるのに・・・・・・現実に帰って、また一真と一緒に二人っきりで登下校したいのに・・・・・・・」

私は現実世界にいる弟のことを頭に浮かべ、涙を流した。
私はこのまま死ぬのを覚悟して。



「雑魚が・・・・消え失せろ!」

すると、パリン!と何かが割れるような音がした。私は涙を流したまま目を開けて確認してみると、赤黒いジャケットを着た人が私を吹っ飛ばした狼を消していた。

「どうやら・・・・大丈夫みたいだな」

私を助けてくれた人の声に顔を向けようとしたが、太陽の逆行で私を助けてくれた人の顔は分からなかった。

(誰なの?あなたは)



side out






西の森に入った俺は全速力で一番奥の洞窟まで走っている。

「早いよラグ坊!もうちょっと落ち着いてくれヨ!?」

後ろでアルゴが何かを言っているようだが、俺はそんなものに耳を傾けず、洞窟に向かっていく。



(見えた!あれが嘘情報で出た洞窟だな! !?)

目で視認できるほどに洞窟が確認できたが、洞窟の前には既に嘘情報に騙されやって来たアルゴと同じフード付きのマントを着たプレイヤー、それとプレイヤーを殺そうとする狼のモンスター《ルインコボルド・トルーパー》に向かって、俺は走りながら飛び上がりそのまま縦斬り直線ソードスキル《バーチカル》を放つ。

跳躍距離と狙いが上手くいったらしく、俺が放ったソードスキルは見事ルインコボルド・トルーパを真っ二つに斬った。
俺は降下しながら冷酷に言う。

「雑魚が・・・・消え失せろ!」

真っ二つに斬られたルインコボルド・トルーパーは、ずるっとでも言うかのように体が落ちると、そのままパリンとポリゴン片となって消えた。

俺は消えたルインコボルド・トルーパーを見送り、一度片手剣を勢いよく振って鞘に戻さぬまま倒れているプレイヤーの確認をする。

動けないのを見たところ、どうやら《一時的行動阻害(スタン)》になっているだけのようだ、それを見た俺は少し安堵する。

「どうやら・・・・大丈夫みたいだな」

確認を終えれば追い付いたアルゴが拍手をしながら、言ってきた。

パチパチパチパチッ!

「さすがはラグ坊。もはやソードスキルの扱い方は、オネーサン達ベータテスターを越えてるナ。いつ見ても惚れ惚れするヨ」

「鼠のアルゴにそう言われるのは有り難いが・・・・・まだまだってところさ、俺の目標はキリトを越えることだからな」

「ホウ、それはなんとも大きな目標だネ」


ソードスキルの扱い方を無駄に誉めてくるアルゴに、俺は警戒を抱き話を変えることにする。

「ところでアルゴ・・・・これでお前の用件は終わりだ。相棒が待ってるんでな俺は帰らせてもらう、このプレイヤーの介護は頼むぜ」

「アア、ご苦労さン・・・・・それにしてもオネーサンを(かた)ってデマ情報を拡散たぁ良い度胸ダ」

「情報屋も大変だよな~。こんなデマ情報流されて気苦労してるんだから、まあ精々(せいぜい)気を付けろよ」

「おっ、なんだラグ坊?オネーサンのこと心配してくれるのカ」

「そんなんじゃねえよ・・・・ただお前がいなくなったら重要な情報が聞けなくなるから、俺やあいつが困るだけだ」

アルゴと話し合いながら、俺はアニールブレードを2、3回振って鞘に戻した。

「ビギナーさん生きてるカ?生きてるナ、ヨカッタヨカッタ」

アルゴはポーションを出現させ、《スタン》になっているプレイヤーに飲ませようとする。

「ホレ回復POT、飲みなサービスだヨ」

「じゃあ俺は帰る。デマ情報を流した犯人をとっちめたりするのは自分でやってくれよ。そんで例の件も頼むぜ」

「分かってるサ」

背を向けて動く俺は言い忘れたことを思い出し、背を向けたまま歩いてヒラヒラと手を振りながらアルゴに伝える。


「そうだ・・・・それとデマ情報は俺に任せろ。あの情報は鼠じゃなく一般プレイヤーが流した嘘情報って張り紙貼って伝えとくぜ」

「悪いなラグ坊、助かるヨ」

「また貸し1つだ。じゃあな」







アルゴの用件を終えた俺は、軽く素振り100回とモンスター30体にソードスキルの練習と自分への特訓を行い、それも終わり今は街に戻ったところだ。

「さてと、お姫様は夢から覚めているかな?覚めてなかったら王子様のキスが必要か?」

そんな冗談を独り言で溢すが、不良の面をした俺がそんなことをすれば気持ち悪いので、首を振って止める。

「なんてな。キリトにそんなことしたら俺自身が死にたくなるようなもんだ」

そう言って『隠しログアウトスポットは嘘だった。情報を流したのは鼠のアルゴではなく、一般プレイヤーである』と書いた張り紙を貼って、宿屋へと向かっていく。



宿屋に入り俺達が取っている部屋の前に着いた。

部屋に着いた俺はドアに向かってノックをする。当たり前だいくら自分の部屋だからと言っても、ここはキリトの部屋でもあるしキリトは女だ。きちんとノックをするのは礼儀だ。

ノックをすれば、奥からキリトの声が聞こえた。

「はーい!どなたですかー?」

「キリト俺だ。入ってもいいか?」

俺の声が聞こえると、キリトは何だか少し嬉しくなったような声で返した。

「あ、ラグナ!入っても大丈夫だよ!」

「うぃ・・・・・」

キリトの了解を得られたため、俺は部屋に入るとキリトはいなかったが、隣からシャワーの音と「ふっふふっ、ふっふふっ、ふっふっふっふー」と鼻唄が聞こえた。

そう、お察しの通りこの部屋、というよりこの宿屋にはバスルームが付いている。キリトから聞かされたが普通の宿屋には風呂が付いていない、だが探しまくれば風呂付きの宿屋はある。

これは別の話だが、ホルンカの村で俺達が泊まった宿屋には風呂などなかった。風呂が無いことにキリトはあまり気にしていなかったが、キリトだって年頃の女の子。風呂ぐらい入ってサッパリしたいもの、だから俺は次の拠点に付いたときは全速力で風呂付きの宿屋を見つけ、そこに泊まった。

(その時のキリトの顔は嬉しさのあまり、輝いた笑顔となってたな。あの笑顔は忘れることはない)

そんなことを考えていると、風呂場にいるキリトから声を掛けられた。

「そう言えばラグナ、朝起きたときベッドにいなかったけど、どこ行ってたの?」

俺がいなかったことを聞かれ、別に隠すことでもないと思い喋ることにした。

「ああ、朝のトレーニングみたいなもんさ第一層の攻略も近いからな、きっちり力を付けて挑みたいからな」

「ふふっ、そっか・・・・・・・でもあんまり無理はしないでね。無理したら動ける体が上手く動かないから」

「へいよ。キリト様からの伝言は、しっかりと耳に入れておかなきゃな」

「ちゃーんと、耳に入れておいてね」

本当にキリトには言葉が返せないくらい世話になってるし、助けてもらってるからな、しっかりと耳に入れておかなければならない。


「ま、トレーニングに行く途中でアルゴに出会ってな、あいつの面倒ごとに付き合わされて、さんざんだったけどな」

「・・・・・・・・何それ、途中でアルゴ会ったってどういうこと?」

「いや、だからさ・・・・何かデマ情報流されて困ってたんだよ。そんで俺を見つけてそのデマ情報を流した場所に行ってくれないかって感じで言われたんだよ」

「俺も断ることはないし、それに無駄な犠牲者を出したくはなかったからな。貸し1つで引き受けたんだよ」

「やっぱりラグナってお人好しだよね・・・・・・それってつまりアルゴと2人っきりだったんだ」

俺が愚痴のようにアルゴの名前を出すと、それを聞いたキリトは何でか分からないが不機嫌な声となった。


「あれ?キリト、何か怒ってるのか?」

「別に~・・・・・私は怒ってなんかないよ」

「いや絶対嘘だろ。お前やっぱ怒ってるんじゃないのか?」

「でもさ、嫌だろ?デマ情報で誰かが死んだりするのは、それにそんなことになったらアルゴにだって根も葉もない噂が立つのは避けたいからな」

「ふふっ、やっぱりラグナはお人好し処か・・・・・・・超が付くほどのお人好しだね」

そう言うと風呂場にいるキリトはまた笑いながら、俺について語った。俺は照れ臭く頬をポリポリと掻いた。


すると風呂場からガチャっと音がした。そこから「ふぅ~、サッパリした」と声が聞こえてきた、どうやら風呂から出たようだ。

ふと俺はあることを思い出して、キリトがいる脱衣所のところに入った。しかしこのときの俺はとてつもなく神の天罰を受けてもいいくらいの愚かなことをした。

「おいキリトォ・・・俺達であること(・・・・)をアルゴに依頼しただろ。その結果がこれなんだ・・・・・け、どぉ」

つい、ついだ。つい友達感覚で俺はドアをノックせずに開けてしまったのだ。身勝手だが俺自身キリトとは友人となってたと思っている。
そんでそこにいたのは、

「え・・・・・ラ、ラグナ!?」

まだまだ拭き終わってないようで、所々に水滴の滴が体に付いていたり髪からポタポタと落ちる。筋肉はないがほっそりとして柔らかそうで傷跡もないスベスベした肌。
うん、真っ裸のキリトである。それでも大事なところはタオルで隠されているから大丈夫なのだが、お互い見詰めあったまま何分間か経つ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・き」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・き?」

そしてキリトが第一声を放った。



「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!!?」

「ぶへらっ!??」

キリトは叫びながら俺に向かって思いっきり張り手という名のビンタを炸裂させた。結果俺はマヌケな声を出しながら吹っ飛んだ。因みにセルフエコー付きである。
痛みが感じないはずなのに・・・・・不思議とこのビンタは俺の頬に強烈な痛みを与えた。何でだろうな?








「えー、キリト様。この度は誠に申し訳ありませんでした」

キリトにビンタを咬まされた俺はベッドに座って怒っているキリトの前で床に額を擦り付けて土下座をしている、ビンタを咬まされた俺の頬は見事に赤いビンタがくっきりと出来上がっていた。

しかし、そんなことを気にせず俺は、キリトから許しを貰うために必死に土下座と謝罪を繰り返す。


「キリト様!本当に申し訳ありませんでした!どうか私に許しをお与えください!!!」

俺が必死に謝まっている中、キリトはベッドに座って右足を左膝に乗せ、そっぽを向いて頬は赤くしたまま膨らませ、まさに可愛らしい「私怒ってます!」を表していた。
だが、そんなこと思っている場合ではない。自分でも分からないが早くキリトから許しを貰わなくてはいけない気がするのだ。

「あのーキリト様。そろそろ口を開いて下さると(わたくし)めは「ねぇ、ラグナ」は、はいぃぃ~!?」

必死に謝罪を貰おうとすると、顔を向けいきなりキリトが口を開いたため俺は驚きながらも、マヌケだが声を上げた。

すると、キリトはとんでもない質問をしてきた。

「・・・・・・・・・・・私の裸を見たんだよね?」


この質問に俺は仮想空間では出ない筈の冷や汗が出てきて、俺の顔に垂れる。
しかしここは正直に白状しておこう。確率は低いがきっと許しを貰える筈だ。

「・・・・はい、この目で見てしまいました。誠に申し訳ありません!」

「ッ!?・・・・・・・ふ~ん、そうなんだ」

それを聞いたキリトは顔を赤くした筈だ。だが俺は先程の言葉に付け足しをしておく。

「でも安心してくれ!胸とかそういう大事なところは見えてなかったから!ちゃんとタオルで隠されてたから!」

「そっか・・・・・・・・」

そのまま無言状態となり、この部屋は重いのか分からない空気に満ち溢れていた。

その空気の中、またキリトが口を開いた。

「ラグナ・・・・許してほしい?」

「は、はい!許してほしいです!というか許して下さい!!」

顔を上げそうになったがキリトが口を開いたため、俺はまた頭を下げ土下座のポーズを作る。

「うーん、それじゃあね~。今日1日私の言うこと何でも聞いてくれる?」

「はい!もちろんでございます!・・・・ですが、私めにも出来ないことがございますので、無茶な内容でなければ大丈夫でございます!」

もう俺は普段使わない敬語を使いまくっている。

「大丈夫だよ!そこまで無茶な注文とかはしないから!じゃあラグナ顔上げて立ち上がって!!」

「は、はい!!!」

キリトに言われた通り立ち上がると、キリトは赤い頬は変わってないが、先程の怒った顔ではなく笑顔を浮かべており、いきなり俺の手に腕を絡めて引っ張った。

「それじゃあ!まずは朝ご飯を食べてからね!!」

「おわっ!?ちょ、キリト!引っ張んなって」

「ダメだよ。まずこれが私からの最初の無茶だからね」

「最初ってことは、やっぱりたくさん来るんですね~!?」

「さぁ、行こう行こう!」

とんでもないアクシデントと共に、キリトから無茶ぶりを要求されるが、完全に俺が悪いため従うことにすら。


朝食を一緒にした後、俺達は宿屋を出てこの街をまた回ることとなった。それはキリトの服を選んだり武器や防具を見たり、アイテムを買ったり買い食いをしたりなどした。
午前で俺のコルはそれなりに消えてしまったが、これでキリトの機嫌が良くなって笑顔が見れるのなら安いものだ。



午後は昼食をこの街で食べて、安い黒パンを10個買って街を出て、俺達は最後の街トールバーナを目指すことになった。

それにしても考えてみればあれはデートと言えるんじゃないだろうか?
まあ、そんなこと口を開いて言ったらキリトから「何言ってんの?キモーイ」とかは言われたくない、キリト自身そんなことは言わないと思うが、そういうのは本当に気を付けた方がいいんだ。長年の女と関わってきた俺の経験である。

(女って言うのは本当に、末恐ろしい存在だからな)

(やった!今日はラグナと一緒に街を回れた~!!!) 
 

 
後書き
ここで終わりにします。まさかこの話を書くだけで、こんなに長くなるとは思いませんでした。

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