魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第94話「目覚める“想い”」
前書き
詳しく描写はされていませんが、今の優輝は武器を持った戦闘や、魔法を使う事はできない程に手とリンカーコアの状態がやばいです。無理しすぎたんや...。
ただし、神降しをするとその時だけは手だけは回復します。代償による怪我なので、代償がいらない状態となれば一時的に治す事ができる的な設定です。
前回から少し時間が飛んで始まります。
優輝と司の同棲生活?ナニソレオイシイノ?
...正直、書くほどではないのでご想像にお任せします。
=司side=
「.....ふぅ...。」
「お疲れ、司。」
事情聴取が終わり、一息ついている所にアリシアちゃんがやってくる。
「まだ体力は戻り切ってない?」
「まだ...かな?普通に暮らす分には戻ったんだけどね。」
優輝君達としばらく神社で暮らし、私の体力はだいぶ戻った。
日常生活ぐらいなら支障はないけど、戦闘とかはまだまだだ。
「それにしても、さすがだね。ほぼ容疑者な私なのに、事情聴取だけに済ませるなんて。」
「私も手伝ったからね。嘘はないけど、真実も一部は隠れてるって感じ?」
あの後、学校に行かなくてはならない人は全員家に帰り、残った人達で事件についての報告書などを纏めていたらしい。
アリシアちゃんも学校終わりとかに手伝ってたみたいだけど。
「...なんだか、騙しているみたいだね。」
「アンラ・マンユは“負の感情”がエネルギーとなっているんだから、そのまま伝えていざこざが起きるよりはマシだよ。」
いざこざが起き、“負の感情”がそこらかしこで発生してアンラ・マンユの復活が早まってしまってもいけないから、確かにそうなんだけど...。
「そういえば、優輝って学校はどうしてたの?」
「普通に行ってたけど...あれ?直接聞いてないの?」
中学校に行くようになったとはいえ、聞く機会はあったはず...。
「...勉強について行くのに精一杯で...。」
「あー....。」
私たちと違って、勉強しないといけないんだったね...。
この分だと、なのはちゃん達も四苦八苦してそうだ。
「まぁ、優輝君がいない間は椿ちゃんとか、リニスもいるからね。」
「そっか、それなら普通に行けたね。」
「家と神社を行き来してるからなんか申し訳なかったよ...。」
ちなみに、私の事に関してはしばらく海外に留学という事にしたらしい。
両親にも口裏を合わせてもらい、士郎さんのコネで何とかしたみたい。
「でもくーちゃんと仲良くなったんでしょ?いいなー...。」
「そんなに羨む事かな...?確かに久遠ちゃんは人見知りだけど...。」
那美さんに懐いている久遠ちゃんとも、神社で暮らしている間に仲良くなった。
前と今回(私は知らないけど)は事件に巻き込む形だったから、普通に交流するのは初めてだったけど、すぐに仲良くなれた。
「そういえば、八束神社に住んでいたけど、水道とかは大丈夫だったの?」
「えっと...一応、水と電気は通ってるし、大抵の事は優輝君達が何とかしてくれたよ。台所もあったし、布団とかは家から持ってくればよかったし。...あ、椿ちゃんたちが持ってきた山菜は美味しかったなぁ...。」
「へぇー...。」
ずっと森や山で暮らしてきたからか、椿ちゃん達は山菜を見分けるのが上手い。
だから、スーパーとかで買えるものよりも美味しかった。
優輝君の手料理だから美味しかったし。
「....なんというか、夫婦みたいだね。」
「ふう....っ!?な、にゃに言ってるのかなアリシアちゃん!?」
突然の言葉に、思わず噛んでしまう。
「....まさかそこまで狼狽えるとは思わなかったなぁ...。」
「っ....!」
私の狼狽えぶりにむしろ驚かれた事に、さらに顔が熱くなる。
「だって優輝に家から通ってもらったり、あったかは知らないけど一緒に神社で寝泊まりしたんでしょ?それに料理とかも作ってもらってただろうし、それなんて通い妻?って感じだよ。優輝は男だけどさ。」
「っ..た、確かに...そうだけど....。」
でもそれは私が無茶をしないようにするためだったし...。
そもそも、優輝君とは親友なだけで特になにも...。
「つ、椿ちゃんや葵ちゃん、それにリニスもいたからそんな“夫婦”って感じじゃ...。」
「そして何よりも、優輝の事を話している司が凄く楽しそう。それはもう惚気話なのかってぐらいに幸せなオーラを出してるよ。」
「ふえっ!?」
そそそそんな事は...ない...は..ず.....あれ?
我ながら...結構楽しかったような...。
「あ、ありえないありえない!ゆ、優輝君とは親友なだけで、それ以上でもそれ以下でも...!」
「それ自覚しきれてない典型だよ...。もう、これは確定だね...。」
「あうぅ....!」
アリシアちゃんに凄く生暖かい目で見られ、私は両手で顔を隠す。
べ、別に優輝君の事は親友としか思ってないのにぃ....!
「で、でも私は前世は男なんだから、優輝君とそんな...そんなこ..ぃだなんて!」
“恋”の部分がほとんど声に出ていなかったけど、今はそんな事は気にしない。
「前世...?...あ、そういえば優輝はあの時司の事を“聖司”って呼んでたっけ?そういう事かぁ...。なるほどねぇ...。」
「な、なに....?」
ニヤニヤと、“新しいおもちゃを見つけた”と言わんばかりの目をするアリシアちゃん。
「実はねぇ...司が目を覚ましてない間、優輝にキスされたんだよ?」
「な...ぇ、っ...ぁ....!?」
声を失う程、顔が熱くなって驚く。
キス!?優輝君が、私に!?なんで!?
「あっははは!さすがに分かりやすすぎるよ司!」
「ぇぅ.....。」
何か言い返そうとするけど、あまりの恥ずかしさに声が出ない。
「実際はただの人工呼吸なんだけどね。」
「ぇ...ぁ...っ...!...あ、アリシアちゃん!!」
からかわれたと理解して、少し怒る。
「ごめんごめん。...でも、その感じだと本当に優輝の事が好きになっちゃったみたいだねー?」
「あ....ぅ.....。」
...もう、言い訳はできない。自分でもそう思えた。
...うん。私は...優輝君の事が“好き”...なんだろう。
“聖司”としては確かに親友だけど、“司”である今はもう異性として見ているのだろう。
「前世が男とか関係ない。今の司はどう考えても女の子だよ!」
「で、でも、でも...!」
それでも、私は超えてはならない一線のような気がして、必死に否定しようとする。
「...だって、優輝君にとっても私は親友な訳で、いきなり私が優輝君の事を好きとかそんなの言っちゃったら、さすがにドン引きされるよ...!」
「そうかなー?優輝も司が女の子なのはわかってると思うけど...。」
「そう言う問題じゃないよ!嫌われたらどうするの!?」
そうなったら、私、今度こそ耐えられないよ...。
「....“嫌われたら”って考えるだけ、優輝の事意識してるじゃん。」
「あぐぅ....。」
どんどん顔が熱くなる。正直、無理矢理にでもこの話を終わらしたい。
「うー...うー.....。」
「じゃあ素直になれない司に一つ...。」
「....なに...?」
凄くニコニコしながら私にそう言ってくるアリシアちゃん。
...あの時、終始ニコニコしてたのは私と優輝君の関係を見てだったんだね...。
「まぁ、まずは優輝に助けられた時の事思い出して?」
「優輝君に...助けられた時?」
それは...アンラ・マンユに囚われていた時だろうか?
刀が飛んできて、そこへ光り輝く剣を持った優輝君が来て...。
“闇”が祓われて、私は助け出された...。
「その時の優輝、どう思ったかな?」
「どうって...えっと...。」
私を絶対に助けようと決めた瞳。ボロボロになってでも私の下へ来てくれた優輝君...。
自分の殻に閉じこもっていた私を、また“親友”と言って受け入れてくれたのは...。
「.....カッコ...よかったなぁ.....。」
今思い返してみれば、あそこまでする男性ってホントカッコいいと....。
「...ハッ...!?」
「........。(ニヤニヤ)」
嵌められた...!っていうか私単純すぎ....!
「ああもう!この話はもう終わり!終わりだよ!」
もう耐えられない。そう思って私はこの場から逃げ出すように立ち去った。
「あはは!ちょっとからかいすぎちゃったかな?」
「っ~~!」
後ろから聞こえるアリシアちゃんの言葉に、ますます顔が熱くなる。
「....うぅ...帰ったら学校に復帰するのに、これじゃあ優輝君に顔を合わせられないよ...!」
なかなか冷める事のない熱を感じながら、好きになってしまった優輝君の事を想った。
=優輝side=
「今日から聖奈さんが復帰するって本当か!?」
「本当だよ。彼女の両親から聞いた。」
早朝の学校にて、既に来ていた友人とそんな会話をする。
今日は司が学校に復帰する日だ。
ちなみに、友人には両親からと言っているが、実際は司本人から聞いた。
「(...呼び捨てにしてる事、バレたら色々言われるだろうな...。まぁ、何とかするか。)」
そう、実は司を呼び捨てにするようになったのは学校の皆にはバレていない。
言ったら絶対に面倒な事になるからだ。
まぁ、どの道司が来たら呼び捨てにしてるのはバレるんだがな。
「...っと、来たみたいだぞ?」
「マジか!?よし、行ってくる!」
窓から校庭を眺めていると、司の姿が目に入り、友人に伝える。
ちなみに、記憶改竄について誤魔化すための留学云々の話だが、本当に士郎さん達が上手く根回ししてくれたおかげで、上手く行った。
何人かは疑問に思ったりしただろうが、時間が経てば気にしないだろう。
「.....ん?」
司の復帰を待ちわびていた生徒たちが司に群がり、僕はそれを眺める。
すると、司が僕と目が合ったんだが...なぜか逸らされた。
「(...なんだ?)」
なんというか、顔を合わせられないかのように逸らされたが...。
「...まぁ、同じクラスだし後で聞いてみるか。」
というか、あいつら群がりすぎだろ...。司が困ってるじゃん。
「と、登校するだけで疲れるなんて...。」
SHR五分前くらいに、ようやく司が教室に入ってくる。
...十分ほど前に校庭に来てたから、それだけ群がられてたんだな...。
「えっと...おはよう。」
教室に残ってた人に向けて、司は息を整えてから挨拶を交わす。
そして、そのまま僕の方へも来るんだけど...。
「.....。」
「......?」
なぜか、若干俯いた状態で沈黙している。
何かを言おうとして、またそれが引っ込んで...というような素振りを見せる。
そして、ようやく口を開いたが...。
「ゆ、ゆゆ、優輝君、お、おは、おは..ょ...ぅ....。」
「....えっと....?」
さすがに、後半部分がほとんと聞こえなかった。
多分、僕にも朝の挨拶を交わそうとしたんだろうけど...。
「あー、おはよう、司。」
「っ~~~!おおお、おはよう優輝君!」
なぜ、ここまで司は緊張してるんだ...?
「どうかしたのか?」
「えっ!?い、いや!?何でもないよ!?」
「いやいやいや、どう見ても何かあっただろう...。」
事情聴取に行く前と比べて明らかに様子が違う。
熱でもあるんじゃないかっていうぐらいに顔が赤いし。
「...ぅぅ....。」
「...?」
「っ....!」
「あ、ちょっ、司!?」
居たたまれなくなったのか、司はもうすぐチャイムが鳴るのに廊下へと走り出す。
「ぅぅ...!アリシアちゃんのせいで....!」
「(....ん?)」
走っていく際に、微かにアリシアの名前が聞こえた。
....もしかして、アリシアの奴...何か余計な事吹き込んだな?
「優輝ぃ!!い、今のどういう事だ!?」
「ちょっ、いきなりなんだ!?」
司がどうしてああなったのか考えるのもお構いなしに、友人の一人が詰め寄ってくる。
...いや、彼だけじゃない。教室の男子ほぼ全員が詰め寄ってきている。
「せ、聖奈さんを名前で呼び捨てだと!?」
「ついさっきまでさん付けだっただろ!」
「名前で呼んでる時点でギルティ。」
「それになんだあの反応!?」
「どういう事か説明しろ!」
「というか羨ましいんじゃこの野郎!」
皆が皆、口々に僕に言う。...いや、あのさ、僕は聖徳太子じゃないんだから...。
マルチタスクを使わない限り一遍に喋られても聞き取れないっての。
「名前呼び捨てになったのはそれぐらい仲良くなっただけだ。さっきまでさん付けだったのは、どうせお前ら騒ぐだろ?だからできるだけ後回しにしたんだよ。」
「ぐぬぬ...!当たっているだけに腹立たしい...!」
「羨ましい。というかずるい。なんでお前だけ仲良くなれるんだ。」
ずるいとか言われてもな...。
いや、確かに前世からの付き合いがある分、ずるいのか...?
「ずるいも何も、お前らが遠慮しすぎなんだってば。なんで高嶺の花のように会話する事すらほとんどないんだよ。」
「ぐぅ...!」
「ちくしょう...言い返せねぇ...。」
僕の言葉に詰め寄っていた奴の半分以上が撃沈する。
いや、もうそれくらい言い返せるようになれよ。
...というか、お前らのその気迫に他の女子はドン引きしてるぞ?
「だが、それでも!聖奈さんがなぜお前に対してあんな反応をする!」
「あ、それは気になる!」
「志導君に対する司ちゃんのあの反応...私たちも気になるな!」
しかし、司のあの反応に関しては、男子どころか女子も食いつく。
「...いや、僕にも何が原因か分からないんだけど。」
「私が思うに、あれは恋する乙女だよ!」
「ええっ!?じゃあ司ちゃんは志導君の事を...!」
女子が勝手に立てた予想を、目を見開いて驚きながら聞く男子。
...あ、やばい。これは...。
「優輝ぃ!!どういう...!」
キーンコーンカーンコーン
「ほ、ほら!SHRだ!座れ!なっ?」
さらにひと騒ぎ起きそうな所で、チャイムに救われる。
「(危なかった...。)」
休み時間は、どうやってやり過ごすか...。
ちなみに、司はギリギリで何とか戻ってきた。
「ひ、昼休みか...。」
時刻は昼になり、四時間目の授業が終わる。
...授業が安息の時間だったんだが...。
「(何とかあいつらの質問攻めに耐えたぞ...。)」
とりあえず、休み時間は誤魔化しに誤魔化した。
第一に誤解をされないように女子が言った事に対して弁解し、司のあの反応に関しては本当に僕は知らないという事で何とか納得させる事ができた。
なお、その時の司は、僕と同じ教室にいるのが恥ずかしいのか、廊下に出ていた。
「(...また騒がれるけど、これは奏達との約束だし、仕方ないか。)」
そして、ようやくゆっくりできるはずの昼休みだが...これがそうもいかなくなる。
何せ、司が学校に復帰した時のためのアリサ、すずか、奏との約束があるのだ。
「司。」
「ひゃっ!?な、何かな優輝君!?」
弁当を持ち、司に話しかける。
やはり緊張した面持ちで返事が来るが、今はとりあえず無視だ。
「ちょっと弁当を持って来てくれ。」
「え、えっ?」
弁当を持った司の手を引き、連れて行く。
後ろで女子がキャーキャー黄色い声を上げているけど...まぁ、腹を括るか。
...また、男子たちに質問攻めにされるんだろうなぁ...。
=out side=
「....よし。誰もついて来てないな。」
「(あわわ...ゆ、優輝君の手が....!)」
優輝が後ろを振り返り、誰もついてきていない事を確認する。
「ゆ、優輝君、なんで校舎裏なんかに...。」
そしてそのまま、屋上が人気な故、人気の少ない校舎裏に辿り着く。
「ま、まさか優輝君、こんな所で...。」
司は、アリシアに言われた事で必要以上に優輝を意識してしまい、見当違いな事を口走る。
「ん?何の事だ?...っと、いたいた。」
ぶつぶつ呟いている司を一端置いて、優輝は既に来ていた奏達に手を振る。
それに返すように、来ていた三人...アリサ、すずか、奏も手を振り返した。
「そっちの方が早く着いてたのか。」
「今日は追いかけられなかったから...。」
「なるほど。」
いつもなら大体王牙辺りに寄り付かれるが、今日はそれがなかったらしい。
「え、え?....どうして、三人が?」
「どうせなら皆で食べたいだろ?でも、だからと言って屋上にすれば、逆に人が集まりすぎる。司は人気がある上に久しぶりの登校だからな。それと、アリサとすずかが事件についての事を聞きたいから、こうして集まったって訳。」
「あ、そ、そうなんだ...。」
想像していた展開と違う事に、やや落胆する司。
そして、直後になんでそんな事を考えているのかと顔を赤くする。
「まぁ、昼休み中に全部話せる訳ではないから、後日の翠屋でのパーティーとかに持ち越しになるだろうけどな。」
「パーティー?」
「司が無事に帰ってきてくれた事を祝って...な。」
事情を知らない人にとっては、ただ留学していたに過ぎないが、そうじゃない人にとって司は半年間行方不明だったのだ。
その状態から無事に帰ってきた事に対して、事件の完結も合わせて祝う事になった。
「奏からはどれぐらい話したんだ?」
「大体の事件の流れぐらい...かしら?客観的な部分しか伝えてないけど...。」
「司さんが皆の記憶から消えて、最近になってからジュエルシードを集めて助けに行った...という事は説明されたよ。」
「司さんがどんな状況だったかとか、既に要所は教えてもらったわ。」
どれぐらい教えてもらったかをアリサ達は優輝に伝える。
「じゃあ、どんな感じだったとか、そういう細かい所は教えてもらってないのか。」
「そう言う事になる...かな。」
それぞれがどんな印象だったのか、それは教えてもらってないとすずかは言う。
「奏、前世については教えたのか?」
「...いえ、まだだけど...。」
「んー、司の事を知っていて、この事件を知るとなると、それについても教えるべきかな。」
「前世...?」
“さすがに導王の事は話しはないけど。”と、念話で奏だけに言う。
前々世がある事は話しても、それ以上は今は話す必要はないからな。
「司、話してもいいか?」
「え?あ...うん。大丈夫だよ。アリサちゃんとすずかちゃんなら。」
「よし。...じゃあ、突拍子もない話だけど、一通り黙って聞いてくれ。」
司に話してもいいか聞いてから、優輝は前世の事を話し始めた。
「―――それで、事件の途中で僕らは本当の意味で“再会”したって訳さ。」
一通り優輝は説明し、最後に互いが前世での知り合いだと気づき、再会したと締め括る。
「...なんというか、本当に突拍子もない事ね...。」
「“輪廻転生”とは、また違う転生...そんなのがあるんだ...。」
アリサとすずかは、前世の記憶があり、奏も司も優輝と知り合いだった事に驚く。
「あ、あれ?私が男だった事にはあまり驚いてない...?」
「え、だって...今はそんなの全然感じないし...。」
「完全に司さんは女の子になってるから...“そうだったんだ”程度にしか...。」
だが、それ以外についてはあまり驚く事はなく、司は少し拍子抜けする。
「...それで、なんで司さんはそんな緊張してるの?」
「一気に話を違う方向に持っていったな奏...。まぁ、確かに。なんでだ?」
「ふえっ!?え、えっと、それはぁ....。」
司は言えない。
緊張していた理由が、優輝と手を繋いだ事や傍にいる事だからなどと。
だが、その様子を見て優輝以外の三人は察してしまう。
「あー...。」
「司さんが...そっかぁ...。」
「..........。」
「あ、ぅ....ぅぅ...。」
アリサは苦笑いし、すずかは司にも好きな人ができたのだとしみじみ思い、奏はそんな司をあまり面白くない目で見つめる。
三者三様の視線に、司は顔を赤くして何も言えなくなる。
「え、もしかして三人は原因が分かったのか?」
「...むしろ優輝さんは知らないでいてください。」
「なんで!?」
顔を赤くしている司にジト目を向けながら、奏は優輝にそういう。
「(...今の司さんを見てると、なぜかイライラする...。なんで...?)」
悶々と、奏も自身に燻る気持ちに思い悩む。
「司、もしかしてアリシアに何か言われたか?」
「えっ!?どうしてそこでアリシアちゃんが...。」
「今朝廊下に走っていく時、呟いてたのが聞こえてな。」
奏達には教えてもらえそうにないと、優輝は司に直接尋ねてみる。
尤も、素直に教えるはずがないと、優輝もわかってはいた。
「そ、そうなんだ...。」
「で、何か言われたのか?少なくとも、何かきっかけがあったのだろうけど。」
「...うん。ちょっと、事情聴取の後に....ね。」
「やっぱりか...。アリシアの奴、多分面白半分で言ってただろ...。」
明るく元気のあるアリシアの事だからと、優輝はそう言って溜め息を吐く。
「で、でもでも、別にそんな特別な事は何も...。」
「そんな様子を見て“はいそうですか”と引き下がると思うか?」
「うっ...思いません....。」
“しゅん...”と小さくなる司。
それを見て、ますます何を言われて意識してしまっているんだと優輝は思った。
「...なんか、三人共“深入りするな”って目で訴えかけてるから、詳しくは聞かないさ。」
「え?あ、うん。ごめんね、なんか気を遣わせちゃって...。」
「いいよ。ただ、意識しすぎないように。自然体でいられるようにな?」
「...時間はかかるかもだけど、頑張る。」
男女比1:4というアウェー感から、優輝は深くは聞かずに引き下がる。
「まぁ、後日に翠屋でパーティーがあるんだ。あまり深く考えずに、こうして日常が戻ってきた事を喜んで楽しもう。」
「....うん!」
何気に居心地が悪くなってきた空気を払拭し、普通の昼食の雰囲気に戻す。
これ以上はあまり話題にしないようにと、他の皆も理解したようだ。
この後は、特に何事もなく、楽しく雑談しながら昼休みを過ごしたようだ。
後書き
...誰だこの子。すっごいデレてる。
とまぁ、司の完全ヒロイン化です。マジで誰だっていうくらい意識しちゃってます。
心のしがらみが取れて余裕ができたので、そこにアリシアの言葉(からかい半分)によって優輝への想いが爆発。恋へと変貌を遂げました。サブタイもそれを意識してます。
おまけに、奏も段々と優輝を意識しています。...三角関係?
アリサとすずかも親愛や尊敬みたいな想いを抱いているので...やっとタグのハーレムっぽくなってきた...。
緋雪「..........。」(羨ましそうに本編の司達を眺めている)
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